企業の中でも経営企画部門は少数精鋭部隊であり、経営陣を支える重要な役割を果たします。
メンバーである経営企画職は、経営面におけるスキルを持ち合わせていなければならず、また精神的にもタフな局面が要求されることもあるでしょう。
そのため、経営企画としてのキャリアによって、一定の評価をされることも考えられます。
今回は、企業にとっても重要な位置づけとなる経営企画職が、年収1,000万円に到達することが可能なのかを確認していきます。
【目次】
- 経営企画として年収1,000万円は可能か
- 経営企画で年収1,000万円を超えるために求められるスキルは?
- 経営企画で年収1,000万円を超えるために求められる職種経験は?
- 経営企画職で年収1,000万円以上の求人例
経営企画として年収1,000万円は可能か
経営企画職は、他の職種に比べて高年収が期待できる職種であるといえます。
そのような経営企画職に従事することにより、会社員の高年収の目安である1,000万円を、どのようなキャリアを積めば獲得できるのでしょうか。
エージェントによる調査や、求人媒体で公開されている経営企画職の求人状況、さらには政府のデータも参考にひも解いてみます。
経営企画の年収レンジは
やや古いデータですが、エン・ジャパン株式会社が2019年8月に発表したプレスリリース「『年収1,000万円以上の求人』実態調査」によると、56%の転職コンサルタントが「年収1,000万円以上の求人は増加している」と回答しています。
さらに、年収1,000万円以上の求人トレンド、業種は「IT・インターネット」であり、職種は今回紹介する「経営・経営企画・事業企画系」が増加傾向とのことです。
また、経営企画の年収を調べてみると、エージェントや求人媒体が独自に調査、分析したデータが掲載されています。
その中から経営企画の年収について確認していくと、平均500〜600万円台というデータが公表されています。
経営企画の給与は、おおむね他の職種に比べて高額であるとの評価が多数であり、一般的に見て難易度も高い職種であると考えられるでしょう。
具体的には後述する経営企画の求人例にあるとおりですが、1,000万円を超える求人も比較的存在します。
通常の集計や管理会計業務等、定型的な経営企画業務である場合は、1,000万円に届かない可能性もありますが、問題解決等の非定型的業務においては、平均値をかなり超える求人も比較的見受けられます。
経営企画職を時給換算で確認
厚生労働省が出している「令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」というデータがあります。
このデータは、無期雇用かつフルタイムの労働者の「所定内給与額」及び「特別給与額(12ヶ月で除したもの)」を合算した額を、各労働者の所定内労働時間で時給換算したものの平均値を算出しています。(同データの注釈より参照)
この中で、経営企画業務にそのまま当てはまるものは見当たらず、近いのは、分類「管理的職業従事者」または「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」といった業務です。
前者は、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制等、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するものをいう(総務省資料)」とあります。
経営企画部門でも、マネジメントに近い層が想定されるかもしれません。
一方の後者は、「高度な企業経営・金融・保険に関する専門的知識や実務経験に基づき、他人の求めに応じて、財務会計、人事労務に関するコンサルティング、財務監査、税務指導等の仕事及び資産運用や金融取引に関する助言・リスクヘッジ・リスクマネジメント・投資戦略の設計等の仕事に従事するものをいう(政府統計の総合窓口e-Stat)」とあります。
こちらはどちらかというと士業やコンサルティング等独立系の業務に近いかもしれません。
それぞれについて、経験20年を想定した時給換算をしていますが、前者は5,767円、後者は5,834円という数値が出ています。
仮に、1日8時間、20営業日、12ヶ月として、年間1,920時間労働すると考えた場合、前者の管理的職業従事者は11,072,640円、後者のその他の経営・金融・保険専門職業従事者は11,201,280円となり、それぞれ年収1,000万円を超える値が算出されます。
経営企画で年収1,000万円を超えるために求められるスキルは?
求人を出している企業としては、一定の市場価値がある人材に対しては、他社よりも自社で活躍してほしいことから、入社してもらって年収1,000万円を社員に払うことも普通でしょう。
今回ご紹介する全てのスキルを持ち合わせていないと年収1,000万円に到達しないのかというわけでは必ずしもありませんが、複数持っていたら到達の可能性も高まると考えられます。
必要なスキルについて、一般的に出ている企業の求人情報からの傾向も踏まえながら、確認します。
マネジメント・リーダーシップスキル
1,000万円以上の求人には、部長やマネージャー等のマネジメント職が比較的多くなっています。
経営企画部門の責任者として、メンバーのやる気を引き出す部門マネジメントだけではなく、利害関係も発生する他部門との交渉や調整、さらには、経営層との円滑なコミュニケーションを行えるスキルを兼ね備えている必要があります。
また、役割によっては対内的な調整スキルだけではなく、対外的な交渉スキルも求められる事もあるでしょう。
冒頭でもご紹介した、エン・ジャパン株式会社のプレスリリース「『年収1,000万円以上の求人』実態調査」の「年収1,000万円以上の求人で転職成功する人に共通する、仕事の能⼒」で上位に挙がってきているのが、このマネジメント・リーダーシップスキルに該当しています。
具体的には、「⽴場や価値観の違う社内外の関係者を調整する能⼒」「⾃分の⾒解やビジョンを周囲に伝え、動かす能⼒」「社内外の関係者に、納得感⾼く物事を伝える能⼒」がそれぞれ、2位、3位、4位に挙がっています。
さらには、1,000万円以上の求人の中にはプロジェクトマネジメントスキルを求める求人も比較的多い傾向です。
会社全体のプロジェクトとして、各部門からアサインされた方に対するリソース管理や、進行管理を行っていくのは、経営企画が適任ということとなります。
特に社長直轄のプロジェクトであれば、遅れることは大きな経営判断ミスにも繋がってくるので、重責と言えるかもしれません。
それに耐えうるスキルとマインドを持ち合わせていることが、経営企画職の年収1,000万円クラスになると求められるのではないでしょうか。
問題解決スキル
マネジメントスキルと同様に、経営企画職で1,000万円を視野に入れるとなると、自分自身のタスクをこなすスキルに長けているだけでは難しいと考えられます。
自分の事だけではなく、会社やグループ全体の課題解決や、経営陣からの要請に対処するためのスキルとして、問題解決スキルは必要となってくるでしょう。
経営陣からの相談はもちろんのこと、部門長やメンバー、さらには必ずしも利害が一致するわけではないグループ会社の社長や役員等の方からの課題に対して、解決していける問題解決スキルが備わっていることが求められます。
先ほどご紹介したエン・ジャパン株式会社のプレスリリースにおいて、「年収1,000万円以上の求人で転職成功する人に共通する、仕事の能⼒」で一番に挙げられるのが「問題意識に基づき、課題や目標を設定する能⼒」でした。
したがって、問題解決スキルは年収を上げる場合においての、最重要スキルの一つであると言えるでしょう。
英語スキル
経営企画の求人の中には、大企業で幅広い権限を持ちながらやりがいのあるものも比較的多く見られます。
中でも、グローバル展開をしている企業で経営企画業務を担うこととなると、海外子会社や取引先とのやり取りも必須となります。
経営企画の全人材が英語を使いこなせるわけではないにせよ、英語を中心とした外国語のスキルは一定程度必要になると考えておいた方がよいでしょう。
求人企業によっては、英語スキルの証明として、TOEICの点数を求められるところもあります。
経営特有の専門的スキル
経営特有の専門スキルとしては、資格で言えばMBAや中小企業診断士等を持っていれば一定の知識はあるとみなされる可能性はあります。
周辺資格としては、対外企業のデューデリジェンスが的確にできる公認会計士や税理士も挙げられるかもしれません。
経営企画に所属することは少ないかもしれませんが、弁護士資格を持つ社員も見かけるようになってきています。
また、経験の中で経営企画業務に関連する、管理会計・計画・戦略立案・M&A・業務提携・新規事業開発等・企業成長・意思決定に重要な役割を果たす業務に精通していることは、単に資格を保有しているよりも強みとして機能する可能性があるでしょう。
経営企画で年収1,000万円を超えるために求められる職種経験は?
求人サイトに掲載されている経営企画職の求人例を見ても、おおむね次の2職種は年収1,000万円を超えるためには必須に近い要件と考えられます。
経営企画職の経験
経営企画職として年収1,000万円を超えるためには、多くの求人において経営企画の経験が必要ということになります。
経営企画部門未経験である場合は、次のコンサルティングが主に該当することとなります。
企業の求人によって役割はそれぞれ異なることから、前述したスキルとしてマネジメント経験や英語スキルに秀でていることが必ずしも必要であるわけではありません。
コンサルティング経験
コンサルティング会社を中心に就業してきた方の中には、経営企画職経験がない方も多いでしょう。
一方で、コンサルティング会社での経験を求めている求人も多数あります。
企業経営に関わる全般的な業務は、コンサルティング会社で特に企業戦略コンサルティングに従事していた方にとっては、親和性がある業務と言えるためです。
先に挙げたスキルとしても、問題解決スキルや、経営特有の専門的スキルはすでに持ちあわせている上、外資系コンサルティング会社出身者なら英語スキルも期待できるでしょう。
経営企画職で年収1,000万円以上の求人例
最後に、経営企画職で年収1,000万円を超える求人の例を確認してみます。
中には年収に幅があるものもありますが、期待する以上の要件を満たせば、年収1,000万円を大きく超えることも十分可能です。
募集終了済みのものを含みますが、直近の参考情報としてご覧ください。
大手流通業A社
募集ポジション:経営企画リーダー候補
業務内容:プロジェクトの立ち上げおよび実行マネジメントを行います。各本部の業務に対し、客観的/データ分析等の改革/改善を行うことが主な業務です。
また経営課題に対する大きな方向性を決定するための分析や洞察、資料作成等を行います。
経営をサポートする業務として、以下が挙げられます。
1.戦略立案・戦略的施策策定を支援
2.プログラムおよびプロジェクトマネジメント
3.各本部の改革および改善を推進
年収:1,000万円~1,600万円
必須経験はコンサルティング経験もしくは事業会社での経営企画経験:3~5年以上。
歓迎経験はMBA修了経験です。
情報セキュリティ系B社
募集ポジション:経営企画管理職候補
情報セキュリティ産業のリーディング企業として、官公庁文教を含む社会インフラを支えている会社です。経営企画部の業務全般を通じ、経営戦略策定・実行支援を行います。
東証プライム市場にあり続け、さらなる新サービスを創出するべく、経営企画職を募集しました。
業務内容:
・経営戦略立案および経営計画の策定(短期~長期)
・年次・月次の予算策定
・予実分析および予算管理
・内部管理体制の整備と見直し・改善活動等を実施
年収:1,000万円~1,300万円
必須スキルは経営企画部門でのマネジメント経験と事業会社での経営戦略立案・経営計画策定の経験です。
日用品販売・マーケティングC社
サステナビリティ本部の本部長直下にて、社のサステナビリティ機能構築と強化を推進する役割です。
以下のような業務内容が挙げられています。
・ パーパスを起点とするサステナビリティ経営の戦略策定および実践支援
・ 広報/IRや経営企画、ブランド等の部門と連携した業務推進(複数の横断タスクフォースを主導)
・ サステナビリティに関する経営層のメッセージを発信
・社員の意識啓発を推進
年収:900万円~1,700万円
必須経験は事業会社でのサステナビリティ・ESG分野でのマネジメント経験。
もしくは、同分野におけるコンサルタントとしてのプロジェクトマネジメント経験です。
さらにTOEICでおよそ730点以上のスコアがある、英語での読み書きが可能な人材を求めています。
大手外食チェーンD社
予算策定業務・事業管理業務を遂行する業務で、具体的には、以下のような内容が挙げられます。
・事業計画の策定と承認
・予算策定業務
・予実管理・進捗管理・経営へのレポート業務
・事業拡大に対する戦略立案・実行に向けたロードマップ策定
※業務提携や新規事業の立案等に携わる可能性もあり
年収:900万円~1,300万円
管理会計の実務経験もしくは事業会社・コンサルティング会社・金融関連等での経験。
上記において、経営管理の数値に対する知見を培った方が対象です。
歓迎条件としては「監査対応経験」が挙げられています。
経営企画はスキルや経験次第では年収1,000万円に到達できる
会社員の中でも比較的高給となる経営企画職において、年収1,000万円を超える可能性について確認しました。
エージェントのコンサルタントや、求人情報からのデータを見る限り、経営企画はスキルや経験次第で年収1,000万円に到達できる職種と言えます。
今はまだ年収1,000万円に到達しない方でも、継続的に経営企画のスキルや経験を積めば、将来的には十分可能性があるのではないでしょうか。
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