経営企画部の仕事は本当に「花形」なのか?【生の声】

ハイキャリアを中心に人気の高い、経営企画職(経営企画部/経営企画室)。会社への貢献度の大きさ、高難度な仕事ならではのやりがいに加え、収入も比較的高めということもあり、転職の機会を伺っている方も多いのではないでしょうか。

そんな経営企画職ですが、高いやりがいに起因してか、企業にとっての「花形」ポジションのイメージを持たれている方も多いのではと思います。しかしながら、実際に経営企画部で働かれている方々のお話によると、派手な結果に反して日々の業務内容は花形とは程遠く、世間的なイメージと大きなギャップを感じておられるケースが多いように感じられます。

そのような状況を受け、今回は経営企画部は本当に「花形」なのか?という点について掘り下げ、実際に経営企画部業務を経験されている方の生の声なども参考に、リアルな側面をお伝えします。

【目次】

  1. 日経新聞1面に掲載されるようなプロジェクトなど、どうしても「花形」「優秀」のイメージが強い経営企画部
  2. 実際に経営企画部で働く方からは「地味でつまらない社内調整」「MTG議事録」「Excelにデータをひたすら入力」などつらいという声も多い
  3. よくある経営企画部の「つらい仕事」①人の調整業務
  4. よくある経営企画部の「つらい仕事」②契約交渉の準備業務

日経新聞1面に掲載されるようなプロジェクトなど、どうしても「花形」「優秀」のイメージが強い経営企画部

経営企画部の業務といえば、時に日経新聞の1面を騒がせたり、社内リリースで驚きの業務提携を発表したりと、社内外に与える影響の大きい仕事を取り扱う部署です。

その結果、会社にとっては最も能力の高い人が揃う部署だったり、出世コースの王道に近いポジションであったりします。またコンサル出身者や海外MBAを引き抜いて責任者を任せる等、経営能力を重視した登用がなされる部署という、優秀な人材を選抜する側面もあることは否定できません。総じて経営企画部は、ほとんどの会社で大きな期待を寄せられているポジションであり、目指す若手社員の目には、特に「花形」の部署のように映っていることでしょう。

また実際に担当する案件も、社長直下の特命プロジェクトを請け負ったり、社内外の関係者を巻き込んだ大規模プロジェクトのリーダーを務めたりと、社運を左右する案件で重要な役割を任されます。その結果、社内リリースの発信者となったり、報道機関や外部専門家に対する窓口になる等、いい意味で「目立つ」存在だといえるでしょう。

これらの業務はやりがいも大きく、達成時の充実感もあることから、まさしく「花形」のイメージにフィットします。ハードな業務ながら転職市場に人が集まるのもこういったイメージからでしょう。

実際に経営企画部で働く方からは「地味でつまらない社内調整」「MTG議事録」「Excelにデータをひたすら入力」などつらいという声も多い

一方でよくある転職者または社内異動者の勘違いの一つに、「花形」のイメージが強すぎて、泥臭い業務の多さに面食らうことが挙げられます。

特に大きなプロジェクトであればあるほど、地味な社内調整に奔走したり、MTG議事録に多くの時間を奪われたり、エクセルにひたすらデータを打ち込んでいたりと、かなり「地味でつまらない」「つらい」と感じられる業務が多いのがリアルな実態です。

M&A案件を例に取ってみると、関係者のMTG調整から始まり、MTG資料の準備、MTGの事前根回し、議事録作成といった、普通の部署では新卒やアシスタントレベルが行う仕事もこなさなければなりません。特に情報秘匿性が高いプロジェクトについては、いたずらに関係者を増やすこともできず、少数先鋭の名のもとに地味な仕事を大量にこなす必要があります。また一人一人の給与が他部署と比して高いため、若手スタッフを入れる予算が振分けられず、必然的に一人がこなす業務量が多くなるという社内事情も存在します。

実際に、大手の経営企画部で働かれている方も「それこそ日経新聞の1面に掲載された大きな案件においても振り返って自分のやった仕事を見てみると、ほとんどが雑務に分類されるような業務ばかりで、成果に比して得られた充実感が乏しかった」という声がありました。経営層に近い戦略を練る力のある方々からすると、どうしても「地味でつまらない」と感じられる仕事なのかもしれません。

「もちろんしっかり議論に参加し、自分でやったと思えるような案件に出あったこともあるが、その裏では同じ経営企画部スタッフが地味でつらい業務をやってくれたことがあり、そのお陰」ということです。やはり雑務と経営企画業務は切り離せない関係にあるでしょうか。

その他、経営企画部を離れる方々の理由を見ていくと、意思決定に関われるが意思決定者ではない、といったジレンマが伺えます。経営企画部はMTG資料やサポート資料を通じた意思決定補助を行う一方で、実際に意思決定を行うのはあくまで社長や取締役会であり、場合によっては資料作成の努力が社長の気分一つで無駄になるというケースもあり得ます。

このように、「花形」のイメージと実際の業務内容のギャップに苦しむ方が多いのも、経営企画部の仕事の特徴です。

そもそも「経営企画部はいらない?」「必要か」という疑問に対する参考記事:経営企画の将来性とAI時代に生き残るためのスキルを磨く方法

経営企画部のよくある「つらい仕事」①人の調整業務

ここからは実際に経営企画部で働かれている方々の生の声を元に、ここまでで「地味」「つまらない」「つらい」と形容した業務を具体的に掘り下げていきたいと思います。

最初に挙げるのは、人の調整業務です。
部門横断のプロジェクトを担うことの多い経営企画部ですが、主な仕事は人の調整といっても過言ではないようです。ここでいう人の調整とは、リソース配分の話ではなく、関係者を同じ方向に向かせるために行う根回し業務を指します。
特に利害が対立する案件において、この調整業務は想像以上にストレスが大きい反面、成果が見えづらく非常に地味な役回りとなりがちです。本来経営企画部としてはこのような業務を積極的に担当する必要はないのですが、プロジェクト責任者に近い立場上、プロジェクト成功の障害を取り除くため、対応を要する業務となります。

実際にお聞きした例をお伝えすると、とある内部統制プロジェクトで、MTG中終始怪訝そうな方がおられました。その方は営業部門の責任者の方で、内部統制プロジェクトのうち、営業部門で書類業務が増えることに難色を示され、当初より後ろ向きな発言が目立つ方でした。
プロジェクト自体は緊急を要していたためスケジュール通りに進行する一方、営業部門のスタンスは悪化。徐々にプロジェクトの成功も危ぶまれる雰囲気がありました。

その状況に危機感を覚え、会議の外で個人的に営業責任者と接触、融和を図るも、当該人物からはプロジェクトに対する多くの不満をぶつけられ、かつそのほとんどが論理性の乏しい、クレームに近いようなもので、プロジェクトの改善に繋がらない、後ろ向きなものでした。例を挙げると、「集められたがプロジェクトの趣旨が何度聞いてもよくわからない」「アポイントを断って参加したが営業部があまり登場しない回で時間を無駄にした」等です。

この状況を放置する訳にもいかず、せめて説明だけは懇切丁寧に行なおうと、定例MTG実施後には必ず、個別の説明MTGを実施し、その場で受けるクレームや指摘は直せるものは直し、難しいものは説明するといった時間を過ごしました。にもかかわらず最後までクレームは止む気配を見せず、定例MTG準備だけでも多くの時間が奪われる中、さらに追加であまり前向きになれないルーティン業務を背負うこととなってしまったのです。

結果的には、この裏での個別MTGで不満を吐き出せたことで、全体MTGの進行を止める発言は減り、プロジェクトとしては空中分解を避けることが出来ましたが、1名の賛同を得るためにかけた時間と労力は当時としてはかなり大きなもので、かつ他人の目に触れない裏側での地味な役回りということで、かなりストレスフルな業務だったようです。

経営企画部のよくある「つらい仕事」②契約交渉の準備業務

M&Aのようなディール業務は経営企画部にとって特に高いモチベーションで臨める業務の一つという声をよくお聞きします。それがグローバル案件で有れば尚のこと、業界内での地位も上がる等のインセンティブもあり、多くの経営企画部員が実際に経験してみたいと考える案件の1つではないでしょうか。

しかしながら実際の業務内容を細分化していくと、かなり地味でストレスの大きいタスクが多くあり、かつそのほとんどを経営企画部が対応しなければならない場面に多く遭遇するようです。
その最たる例が契約交渉で、詳細に解説すると、実際には以下のようなルーティンを契約が妥結するまで繰り返します。

①英文の契約書を読み解き→
②翻訳し内容を自社関係者に展開→
③訂正事項を取りまとめて反映→
④先方にフィードバック→
⑤先方から提案があればまた翻訳し自社に展開→
③~⑤を繰り返す

ここで特につらいのが②や⑤の翻訳作業のようです。
案件としての秘匿性の高さやスピード感、限られた予算といった背景から、本来ジュニアスタッフや外部の翻訳業者に任せたいような業務にも関わらず、ご自身で対応する必要があります。

特に業務提携の契約書では200ページに上ることも稀ではなく、またどこまで丁寧に対応しても、社長または取締役といった意思決定者に伝わらなければ意味がないこともあり、地味だが誤りの許されない、非常にセンシティブな業務となります。

また作業上の負荷もさることながら、最も歯がゆいのが、いくら時間と労力をかけしっかり翻訳し正確に情報を伝えても、社長または取締役会の判断であっさりとディール自体がブレイクしてしまうことのようです。
「その時のあっけなさは何とも形容し難く、どこまでいっても経営企画部は意思決定者ではなく意思決定の補助にすぎないことを痛感させられた」という声もよくお聞きします。

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>経営企画へのキャリアに関する記事

【実話】経営企画に転職した元戦略コンサルにありがちな失敗とその対策
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/stconsulk

「”当事者”として関わりたい」ポストコンサル転職時・入社後の注意点
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/senseownership

MBAを取得したら経営企画になれるのか?
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/mbaneeds

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今回は、実際に経営企画部で働かれている方の生の声や事例なども交えながら「花形」といわれる経営企画部業務の、つらい部分をお伝えしました。
特に良いイメージが先行するがゆえに、ギャップを感じる方が多かったのではないでしょうか。一方で上述のような側面がありながらも、目に見える結果をきちんと残せるポジションであるという点も、ご理解いただけたかと思います。

このような負の側面も理解しつつ、その上で経営企画ポジションを目指されるという方は、是非ともチャレンジして頂きたいですし、またそのような方であれば、採用後も大きなギャップなく業務に入れるのではないかと思います。

いずれにしてもプライベートエクイティファンドに転職する場合は常に学習・インプットして自分のものにしていく姿勢は極めて重要です。

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