【経験者に訊く】カントリーマネージャーへのキャリアに関する「よくある質問」と回答例

外資系企業でご活躍されるセールスマネージャーの方より、「将来的にカントリーマネージャー(CM/Country Manager)を目指しているが、公開されている情報も少なく、どのようなキャリアパスを歩めばいいのか分からない」等のご質問をよくいただきます。

そこで、今回の記事では、カントリーマネージャー経験者や本国やAPACのExecutive Recruiterにお聞きした情報をもとに、カントリーマネージャーを目指される方からよくいただく質問とその答えについてお伝えいたします。

【目次】

  1. 「カントリーマネージャーのなり方は?」「ヘッドハンティングの方法は?」「面接回数や内容は?」
  2. 「カントリーマネージャーの採用において重視されるスキル・実績は?」
  3. 「プロモーションでカントリーマネージャーになるケースが珍しいのはなぜか?」
  4. 「カントリーマネージャーとして成功するために必要なことは?」「就任前後の対策は?」
  5. 「カントリーマネージャーが数字面以外で気を付けるべきことは?」
  6. 「カントリーマネージャー経験後のキャリアパスはどのような選択肢があるのか?」
  7. (参考)カントリーマネージャーの年収について

「カントリーマネージャーのなり方は?」「ヘッドハンティングの方法は?」「面接回数や内容は?」

カントリーマネージャーは、企業の海外拠点で業務をリードする役割を担い、海外支社の経営戦略・事業展開を担う責任者です。実際のカントリーマネージャー案件は欧州よりも、本国やAPAC(シンガポール or シドニー)で動かしているケ-スが殆どです。日本拠点立ち上げなど新規にカントリーマネージャーを採用する場合、本国やAPACのExecutive Recruiterが直接LinkedInを経由してヘッドハンティングを行うケースが多いでしょうか。

一方で、日本拠点の規模拡大に成功している場合は、「カントリマネージャー交代案件」になるケースが多いですが、その場合は弊社のようなサーチ機能を持つエージェント(サーチファーム)との連携も確立されているため、採用を請け負ったサーチファームからのヘッドハンティングがメインとなるケースが多くなります。

候補を探す方法としては、サーチファームの場合、過去のご支援により積み重ねた「CM候補リスト」から選別するのがメインですが、最近の声掛けはLinkedInを経由するケースも増えています。
(一方で、Recruiter、サーチファームとも、FacebookやTwitterで声かけするケースはまだ少ない印象です。)

いずれにせよLinkedInが主戦場になるケースが増えているため、将来的にカントリーマネージャーを目指す方は、

・常日頃からLinkedInの英語のProfile記載
・適宜Up Date
・推薦コメントをお願いしておく

上記が必須となり、「常に見られている意識」が求められます。

LinkedInでの英文レジュメ(Profile)の書き方に関してですが、英語の文章表現にはばらつきが生まれやすいため、単語だけで職務内容を特定しにくく、最初はRecruiterもエージェントもシンプルに”ポジション名””役職名”を頼りにするのが定石です。CM経験者であれば”Country Manager” ”General Manager” ”President” ”CxO” ”Executive Officer”等と記載するのが良いでしょうか。

ただ判断が難しいのは、CM未経験で、現在2nd LineのManager、Director、Sr. Director等の方です。”Vice President” “Managing Director”等のタイトルで表記されていた場合は職務内容まで想像がつきますが、”Director”でも担当部長のこともあり、営業ではなく技術部門や管理部門の可能性もあるため、こちらの場合は、「企業名」×「タイトル」×「職務内容」で判断されるケースが多いです。
英文で職務内容を書く際は、“Management” ”Go To Market” ”Grow ●●” ”Expand ●●”といったワードや、”C-level”といったクライアントの規模感やレベル感を示す単語を記載すると目に留まりやすくなるでしょうか。

なお上記とは別軸で、MBAホルダーを条件に入れる場合もあり、MBA取得者もその旨を記載しておくことをおすすめします。

さらに、Recruiterやサーチファームはセミナーやイベント、Webメディアのインタビュー掲載なども常日頃チェックしているため、そこから情報を得ることも多く、セルフプロデュース力も求められます。

面接回数やパターン・内容についてですが、今まで弊社がご支援してきた方々の傾向としては、日本拠点のカントリーマネージャー選考の場合、

・APACのシニアVP(シンガポール)
・グローバルヘッド
・協業するマーケティングヘッド

と面接するケースが多く、平均的に5回ほど面接が設定されることが多いでしょうか。

内容は、ビジネスプランのディスカッションがメインで、英語をいきなり使用することが殆どのため、結果的にビジネスレベルの英語力が採用段階から必要となります。

また、今まではAPACもしくはヘッドクオーターに訪れ、本国の人と直接面談するケースが一般的でしたが、直近は新型コロナウイルスの影響によりリモートでの面談が設けられたケースが弊社でもありました。

「カントリーマネージャーの採用において重視されるスキル・実績は?」

外資系企業では”カントリーマネージャー+プリセールス+コンサルタント”の3人の最少人数で拠点を立ち上げることも多いです。
Sales Repを雇うことも一つの方法ですが、最終的には「自分で売る覚悟とスキル」がないと務まらないため、採用段階では「高い営業力」と「圧倒的な実績」のアピールが重要となるケースが多いです。

「営業力」「実績」と言えども様々ですが、今までの弊社が関わってきた採用の現場では、マネジメントした”組織の成長度合い”が評価の基準とされるケースが多く、
社内昇格、社外抜擢に関わらず、立案した戦略を実行した結果、成し遂げた成果と複数年の成長率が見られ、年次毎に任された組織の、

・目標数字
・達成数字
・達成率
・組織人数

などが毎年着実にパーセンテージにして2桁成長していることが一定の基準となるケースが多い印象です。

また、「直販で売るのか」「パートナー経由で売るのか」は戦略次第ですが、後者の方が効率が良いため、日本市場でのパートナーアライアンスの経験者、パートナーのC-Levelと強いリレーションを持っていることもカントリーマネージャーの採用においては重要です。

「プロモーションでカントリーマネージャーになるケースが珍しいのはなぜか?」

特に新規でカントリーマネージャーを募集する企業の殆どがベンチャー規模や日本法人立ち上げといったケースが多いため、「いきなりカントリーマネージャー案件が多い」と言えそうです。

また、日本法人立上げフェーズやベンチャーの場合、「短期でFireされた後のカントリーマネージャー候補」という採用も多く、リソース的にも外から招かざるを得ない(プロモーションしても一時的なつなぎ)という理由もよく見られます。

また、総じて、

・人材を育てる管理部門が法人の中にない
・規模感がないと現社長が次の候補を育成する物的・時間的リソースがない

といった理由から、日本法人では従業員規模が約300人以上になると後継者育成を行う傾向があります。

一方で、例えば1,600名近いSAPジャパンでは2代続けてプロモーション、さらに新卒組から大抜擢。マカフィーの日本法人は400人規模で、2019年には田中辰夫様が取締役副社長から昇格されました(執筆時点)。

(例)
・SAPジャパンの前社長 福田譲様:変革の時期に社内プロモーション
・Tableauジャパンの社長 佐藤豊様(執筆時点):さらなる事業拡大のため、営業力が求められたところ、営業部門トップだった佐藤様が着任

ただし、規模が大きくても本国から「今のカントリーマネージャーの方針を変えたい」「長くやりすぎて、誰もCEOにモノ申せない」「新しい顧客や勝ち筋を外から持ってくる」「後継者が育たなかった」等の背景により外部から抜擢した、という裏事情もよくRecruiterの方からお聞きします。

「カントリーマネージャーとして成功するために必要なことは?」「就任前後の対策は?」

外資系企業のヘッドクオーターにお聞きすると、「カントリーマネージャーに就任後の1~2年は、立てた目標に対してのAccuracy(精度)を求めている」という声をお聞きすることが多いです。
実際に、長年カントリーマネージャーとして活躍される方からは、「着任後1~2年は成長率以上に、Accuracyの方が重要」という意見もあります。

理由としては、海外にいる上司との信頼関係が強く結ばれる前にAccuracyでミソが付くと、短期間で解雇となってしまうことが背景にあるようです。そのため、外資系企業のTop Managementでは、マイクロマネジメント寄りの方が成功する可能性が高いとも言えそうです。

さらに、カントリーマネージャーを複数社経験されている方からは、「数字の精度はAPAC>アメリカ/欧州の傾向がある」という声も多く、APACの下に日本拠点がある場合はAccuracyに要注意です。

また、就任前の対策ですが、上記のようにコミットメントとそれに対する精度が重要なため、現職で常に意識して、仮想会社の経営を行うエクササイズを繰り返す方法が最適でしょうか。

ちなみに、弊社の実績上、カントリーマネージャーは製品営業やサービス営業からキャリアアップしてなる方が多く、業界に特化したアカウント営業側からの方は比較的少ない傾向にあります。これも製品やサービスについて全責任を負うことで、「ひとつの仮想会社のようなエクササイズができる/してきた」ことが理由だと考えられます。

その他、採用以降も英語でのコミュニケーションは上司との信頼関係構築に必須なため、ひたすら英語力を磨くことが大切です。TOEICも一つの指標となりますが、実際にはそれだけでは全く役に立たず、英語でのビジネス経験を積むことが重要です。

「カントリーマネージャーが数字面以外で気を付けるべきことは?」

APACのVPクラスやヘッドクオーターのマネジメントクラスの方にお聞きすると「就任当初は社内ルールを無視してでも結果を出そうと必死になる方が多い」ようですが、「日本人の場合、実はここに落とし穴がある」とのことです。弊社でも、今まで各社のカントリーマネージャー事例に触れてきた経験上「約3か月の短期でFireになる方」の共通点はハラスメント等のコンプライアンス違反であるケースが殆どです。

実際に、カントリーマネージャー経験者にお聞きしたところ、日本のようにパワハラ、セクハラ、モラハラを訴える窓口がそもそもない・機能していないというケースは殆どないため、もみ消すこともできず、一旦上記を受け付けた場合、グローバルやAPACの調査委員会から必ずヒアリングを受けるため、ある意味「投げられたら終わり」の世界だそうです。

また、海外の法律がコンプライアンスの基準となっているケースも多く、日本の感覚で仕事をしていたらいつの間にか規則を違反していたというケースもよくお聞きします。

例えば、
・使途不明金
・架空の売上計上
・接待でお金を使う

など、日本では「なあなあ」「慣例」で許されていたことも、目安箱に入れられるとすべて調査されるため、しっかりコンプライアンスを読み込み、準拠する必要があるでしょうか。

実際に、

(例)大手自動車メーカーと商談進め、見事に大口の顧客を受注。しかし、半年前から関係者と会食してはいけないというルールを破り、解雇。

上記のように、権限が許されていると思って、やってしまった結果解雇になるケースが多いようです。
結果を出すことも重要ですが、コンプライアンスで足を救われないように、本国のルールはしっかり学び守り、常に意識することも大切でしょうか。

「カントリーマネージャー経験後のキャリアパスはどのような選択肢があるのか?」

勿論別の会社にCMとしてヘッドハンティングされるという方も多いですが、弊社の実績上、その後のキャリアとしては、英語力・営業力を活かして外資系のセールスマネージャーに転身する方が多い印象です。

(転職事例)
・40代前半:新卒で日系電子部品メーカーへ入社。プロジェクトマネージャーとして海外大手メーカーへの開拓を担当
⇒外資系メーカーの立ち上げメンバーとして参画し、事業開発マネージャーから営業・マーケティングディレクター、日本法人支社長を歴任。
⇒外資系ベンチャーに入社し、セールスマネージャーを経験

一方で、特に外資系ベンチャー等のカントリーマネージャーを経験された方のキャリアパスとして、自ら経営者になるという選択肢も多い印象です。

日本に進出する立ち上げ期のカントリーマネージャーは、

・事務所の立ち上げ
・メンバーの採用活動
・事業企画
・営業戦略

時には「在庫管理」まで自ら行うケースもあります。0⇒1での事業立ち上げができるポジションであり、営業活動によりアカウントとの繋がりも得られるため、数年経験を積んで起業される方も多数いらっしゃいます。

(転職事例)
・40代前半:新卒で外資系商社に入社、営業グループリーダーとして新規開拓のみならず、新規商品のマーケット拡大にも貢献
⇒外資IT系ベンチャー企業にカントリーマネージャーとしてヘッドハンティングされ、事業所の設立、人員材用、営業戦略・実行を7年ほど経験。
⇒外資系ベンチャーの日本進出支援コンサル会社を設立

(転職事例)
・30代後半:クラウド系スタートアップにて、マーケティング・事業開発を経験。大手企業とのインキュベーションにより事業拡大に貢献。
⇒クラウド事業を手掛ける外資系ベンチャーの日本支社立ち上げに伴いカントリーマネージャーとして参画し、事業開発~経理~資金調達~エンジニアチームのマネジメントまで一気通貫で担当。グローバル拠点の収益トップを達成。
⇒退職後、Eコマース系の事業にて起業

「CMとしてキャリアアップし続けたい」という志向の方もいらっしゃいますが、実情としては、まず現在はデジタル化などビジネスの抜本的な変革が求められるケースが多く、カントリーマネージャーの平均年齢も下がってきており、50歳を超えるとポジションが少なくなる印象です。
さらに、カントリーマネージャーは一度でも失敗すると、その経歴がサーチファームやリクルーターに記録されるため、再度チャレンジしにくいのが実情です。難易度が高く、「カントリーマネージャーを続けられる人」は「数少ない成功者」だとも言えます。
長年カントリーマネージャーを経験されている方々からお聞きした成功のポイントとしては、「何かを目指すためにカントリーマネージャーを経る」という心持ではなく、「今の職務に徹底した結果、自然と次のステップに繋がった」という意見をお聞きすることが多いです。

(参考)カントリーマネージャーの年収について

「カントリーマネージャーの年収」に関してもよくご質問をいただきます。
今までの傾向としては、

・100人未満:3,000万円程度
・それ以上の規模:5,000万円~8,000万円程度

が一般的でしょうか。

※コンフィデンシャルでの募集が殆どで、詳しくは非公開のケースも多いため、ぜひお問い合わせください

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今回の記事では、カントリーマネージャーへのキャリアに関する「よくある質問」と回答例ついてご紹介しました。

カントリーマネージャーの案件紹介や、カントリーマネージャーへのキャリアについてさらに詳細を知りたい方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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