“CPO(最高製品責任者)”の役割・PdM/VPoP/事業部長・VPoE・CTOとの違い・キャリアパスについて

AmazonやNetflix 等のプラットフォーマーを中心に、インターネットによるデジタルコンテンツのサービスが普及し、オンラインコンテンツの消費が拡大している状況下、広告サービスやゲーム・Webトゥーン事業、IPコンテンツ事業などに進出する企業が増えつつある印象です。

参考:コンテンツIPを中心とした我が国のコンテンツ産業の競争力強化に向けた提言|経済産業省

デジタルコンテンツの生産が加速している状況下、アプリやゲーム関連の製品を手掛けるため、CPO(Chief Product Officer/最高製品責任者)という役職の重要性が増していると言えます。CPOは経営層であると同時に、製品の戦略策定や開発を担い、企業における製品ポートフォリオを成功させるために製品関連活動をリードする責任者です。

では、具体的にどのような役割を果たし、どのような企業で求められているのでしょうか。

今回はCPO(最高製品責任者)の、設置背景・求められるスキル・役割(PdM/VPoP/事業部長・VPoE・CTOとの違い)・キャリアパスについて解説します。

【目次】

  1. CPO(最高製品責任者)を設置・採用するに至った背景・設置事例
  2. CPO(最高製品責任者)の求人内容や求められるスキル
  3. CPO(最高製品責任者)とPdM/VPoP/事業部長・VPoE・CTOとの違い
  4. CPO(最高製品責任者)になるまで、なってからのキャリアパス
  5. <参考>CPO(最高製品責任者)になれる人・なれない人の違い

CPO(最高製品責任者)を設置・採用するに至った背景・設置事例

一口にCPOと言っても、企業規模や目標によって、その担うミッションは大きく異なります。極端な言い方をすれば、CPOを置く必要がない事業も存在するのが事実です。
ではCPOを設置する企業は、どのような事情を抱えているかと言うと、一つは複数のクライアントに対して、複数のプロダクト・サービスを提供する必要があるケースです。たとえばクライアントが投資家の場合のプロダクトと、未上場企業の場合のプロダクトでは、当然ですが異なる内容を提供しなければならず、プロダクトを提供するチーム・担当者もそれぞれ異なる強みを持ちます。このようにマルチプロダクトを生み出すためには、当然作業が分業化されるため、全体を統括・マネジメントするトップリーダーが必要となるわけです。

そこで設置されたCPOが、各プロダクトの強み・弱み、特徴を把握して、全プロダクトの構造や課題を見つけ出し、何を提供して何を提供しないかを判断します。時には、事業戦略の担当者との議論や現場のチェックを徹底的に行い、マルチプロダクトのポートフォリオを全体的に管理していくのが大きな役割でしょう。

またプロダクト担当のメンバーの要望を受け止め、個々が力を発揮して成果を出すため戦略を考え、実際に改善していく役割もCPOに求められる可能性があります。「現状の課題に加え、プロダクトのアイデアなどを思いついたら、いつでも私に投げてほしい」という寛大さで、人望を獲得していく器も求められるでしょうか。

またCPOが求められる背景には、開発チームだけではどうしても、短期的な目線に陥りやすいという事情があります。開発担当者はプロジェクトの都合上、KGIよりはKPI寄りの目線でリリースを目指します。そこでCPOを設置することで、客観的な目線で戦略を策定し、より中期的なマイルストンを設定し、ユーザーのニーズとプロダクト全体の品質にコミットしていく施策案を作成するのが有効でしょう。

そのためにCPOは「なんとなくこの方向でよさそう」という漠然とした認識ではなく、データ分析を徹底し、理論的に隙のない戦略を練ります。他のステークホルダーが「なんとなく順調そうではないか」と考えている状況下でも、感性を抜きにして「本当に問題ないのか」という観点から、CPOは中期的な戦略方針を練る必要があります。時にはCEOとも目線をそろえて、中期的に見ると生じていた目標とプロダクトのズレをなくしていくのが、CPOの大きな役割と言えるでしょう。

実際にCPOを設置しているのはテクノロジーやデジタルサービスを提供する法人がメインです。メルカリをはじめ、Rehab for JAPAN、UPWARD、Sansanといったベンチャー・スタートアップが導入しています。介護系サービスを提供する企業では、コロナ禍においてオンラインを活用した取り組みを実現するため、「プロダクトデザイン」の強化に向けてCPOを新設しました。さらにデジタル庁もCPOを設置しており、オンラインツールが仕事・生活に必須となっている現在、行政もその重要性を認識していることがうかがえるでしょう。

CPO(最高製品責任者)の求人内容や求められるスキル

プロダクトにコミットする役職のため、よく誤解されやすいのですが、CPOは決してプロダクトオーナーではありません。プロダクトに関する最終決定権を持つのはその事業の責任者やCEOであり、CPOはあくまで決定者を支えながら、事業を推進していく役割を担います。事業責任者やCEOが求める成果・目的を理解して、本当に必要なプロダクトを提案するのがCPOと言えるでしょう。

CPOの必須スキルとしては、あるクラウドサービスを提供する企業では、3年以上のPM(ここではプロジェクトマネージャー)経験を挙げていました。グロースに携わっただけでなく、実際に成果を出したことも求められます。またPM組織のプロセス・フローを確立して組織をスケールさせた経験がある他、要件定義~リリース・トラッキングまでというプロダクトに関する一連の流れを把握していることも重要です。エンジニアやデザイナーとしての経験を武器に、自ら手を動かしてプロダクトに携わっていく泥臭さがある人材を求めていることがうかがえます。

AI技術による業務ソリューションサービスを展開する企業では、上場・規模拡大を見据えてCPOの採用を決断し、PAIの開発・プロダクトロードマップの立案・ワイヤフレーム構築・プロトタイプ開発などを担い、取り組むべきプロダクトの創出をリードできる人材を求めていました。必須スキルは、PdMとしてソフトウエアやWebサービスなどに3年以上携わった経験の他、新規プロダクトの豊富な開発経験、プロダクト開発組織のスケール経験などです。さらにAI領域で開発に携わった経験や、AIの知識などがあれば評価されるでしょう。

またいずれの企業も、エンジニア経験だけでなく、英語での業務経験やTOEFLのスコアも評価基準としています。海外展開や、世界の最新技術のリサーチなどの重要性が増す中、CPOにはエンジニアの段階から語学力が重視されているのは当然と言えるでしょう。

テクノロジーを駆使した法人向けサービスを展開する企業では、経営者との直接的な折衝経験も重視されています。プロダクトについて経営層を納得させる計画を立てて、プロダクトグロースを実現させた経験は必須とのことでした。toB向けの業務関連アプリの開発を実際にマネジメントした経験や、収益構造まで設計した経験も重要と言います。経験のみならず、機械学習やディープラーニングなど最先端技術に関する知識は、CEOのような経営トップ層が追いきれないケースも想定できるため、インプット領域が深ければ深いほどCPO候補として評価されるかもしれません。

知識および実際の使用経験としては、開発言語(Go, TypeScript)、フレームワーク(Chi, React)、データベース(CloudSQL, AlloyDB)、社内ツール(Slack, Zoom, GitHub, Docker, Google Apps)などをカバーしているとよいでしょう。開発経験は当然求められますが、大学院の博士以上を採用している企業もあることを踏まえると、知識へのあくなき探求心と、知識を土台とした戦略的な考察力も重要であることがうかがえます。

CPO(最高製品責任者)とPdM/VPoP/事業部長・VPoE・CTOとの違い

よく質問をいただく、CPOと周辺ポジションの違いについて解説します。前提として、CPOの役割は「プロダクトポートフォリオ」全体を統括するマネージャーに近く、業務はグロースにフォーカスするのが特徴です。グロースの実現を目指すにしても、自らグロースを目指すと限界が来てしまうため、実際にグロースに向けて動くのはPM(ここではプロジェクトマネージャー)になるでしょう。まとめると、グロースに向けた事業の推進者がPMであるのに対し、PMが力を発揮できる場・仕組みの整備を行う責任者が、CPOということになります。CPOにはプロダクトを作り上げるだけでなく、それによって事業成長の構造を整える義務がある点で、一般的な開発部門やPMよりも、事業責任者としてのスキルが求められると言えるでしょう。

PMおよびCPOと非常に紛らわしいポジションが、PdM(プロダクトマネージャー)です。製品・サービス=プロダクトの開発・販売に携わる責任者として、目的・ターゲットを明確にし、長期的なマーケティング戦略を立案します。PMはプロジェクト、つまりプロダクト開発の流れ全体をマネジメントするのに対し、プロダクトの成功そのものを目指すのがPdMです。またCPOとの違いとして、PdMが各プロジェクトで特定の目的にフォーカスすることもありますが、CPOは企業全体のプロダクト戦略に責任を持つ点が挙げられます。そのためCPOにはものづくりの知識・経験のみならず、企業のビジョン・ミッションへの共感と、そのビジョン・ミッションとプロダクトの目的を一致させる任務が課せられるでしょう。部分だけでなく全体を見通せるプロダクトの責任者が必要なタイミングで、CPOの採用活動が強化される可能性があります。

またCPOにかなり近い役割を担うVPoP(Vice President of Product)は、複数のプロダクトを統括するPMです。プロダクトポートフォリオの戦略策定から実行管理までを担うことで、各プロダクトのシナジー最大化に向けた戦略を立案したり、採用活動に携わったりします。CPOと非常に似たポジションですが、VPoPが製品チームの管理職としてプロダクト部門のパフォーマンス最大化に貢献するのに対し、CPOは企業全体のビジョン・ミッションを踏まえたプロダクト戦略を統括し、VPoPとも連携しながら開発を進めるポジションと言えます。

事業部長もCPOに近い役割と考えられやすいポジションですが、より売上獲得という目的にコミットした戦略を練るのが役割です。無駄な経費はないか、現状のプロダクトは本当に必要なものかなどを冷静に見極め、今後の具体的な目標を立てます。実際に、新規カテゴリーの発掘とその事業化による収益モデルの実現を目指し、開拓するカテゴリーを選定する人材を求め、事業部長の採用活動を実施するケースもあるため、高度な分析力と洞察力が必要なポジションです。

またVPoE(Vice President of Engineering)もよく混同されやすいポジションですが、エンジニアのマネジメント担当者であるため、プロダクト全体を統括するCPOとは根本的に役割が異なります。全プロジェクトの責任を負う点はCPOと同様ですが、あくまでエンジニアにフォーカスしているのが、VPoEの特徴です。エンジニアの採用から育成、評価までを担い、現場で力を発揮できるようパフォーマンスの管理を行います。

ここまで見てきた事業部長などのポジションと、CPOを含むいわゆるCxOを比較すると、全社は管理者、後者は経営者層と考えるとわかりやすいかもしれません。ただしCxOは設置が必須な役職ではなく、企業によって定義が異なるため、たとえばCPOが事業部長と同じような業務を担当するケースもあるでしょう。ただし実態としては、CPOの役割は経営者寄りですので、企業によってはジェネラリストとしてのスキルが重視される可能性があります。その場合、「プロダクトだけに向き合いたい」という気持ちでは、予想以上にマネジメント能力を求められたなどの理由で、業務をハードに感じてしまうかもしれません。
なお、CxOの役割が企業ごとに異なることを踏まえると、たとえCPOを経験していても、他企業でCPOないし他のCxOを担えるとは、必ずしも言い切れないという注意点は押さえておきたいところです。また、企業によっては「CPOと各開発担当者との役割がかぶりそう」と懸念する声が生じることもあります。希望する企業の募集要項や、現状の課題から、その企業のCPOが何を求められているのか把握できると、入社後のミスマッチ防止につながるのではないでしょうか。

なお、CxOの中で役割がCPOと類似しているのが、CTO(Chief Technical Officer・Chief Technology Officer/最高技術責任者)です。ご存じの通り、CTOは企業を技術面から支える責任者であり、テクノロジーに関する物事の検討や、戦略の立案、技術系スタッフの採用計画立案などに取り組むケースが多くあります。大手企業の場合、エンジニアを監督しつつ、コーディングの進捗といったリアルタイムの状況を把握して、結果を出すのが大きな役割です。一方、人員不足のスタートアップでは、自らコーディング・実装を担うケースもあるでしょう。プロダクト全体を管理するCPOよりも、一つひとつのプロダクトのさらに細かい状況を把握し、遅れが生じていれば巻き返す責任も担うことが想定できる役職です。

現状、全社を管理し、ビジネスとプロダクトマネジメントをいずれもできる人材がおらず、優秀なCPOでありつつ、CTOもできる人材を求める企業も存在します。CPOとCTOの両方を担える人材や、いずれも経験済みの人材は、現在のテクノロジー業界で重宝される可能性が高いでしょう。

また企業によっては、CPOとCTOをうまく連携させて、両輪としてプロダクトを生み出していくケースもあります。従来の開発体制では、CEOの配下のCTOがプロダクト開発全体を担うことが一般的でしたが、最近ではCPOへプロダクト領域を任せる体制も少なくありません。プロダクトやテクノロジー領域の複雑化、クラウドサービスやAIの進化・高難度化が加速する状況下、プロダクトとテクノロジーのそれぞれに強みがあるトップ層が連携することで、両方をもれなく的確に推進します。これからのCPOには、CTOと連携し、プロダクトとテクノロジーをうまく連動させていくことも求められそうです。

CPO(最高製品責任者)になるまで、なってからのキャリアパス

実際に日本企業においてCPOを担当されている方の具体的な経歴をご紹介します。

A氏:
新卒でベンチャーに入社し、トレーディングシステムの開発に従事
→HR・販促事業を提供する大手企業に転職し、プロジェクトマネジメントやプロダクトの企画開発を推進
→Fintechサービスを提供する企業からのオファーでPdMとなり、本格的にプロダクトマネジメントを経験
→ファイナンシャル・グループの子会社にジョインし、BizDevとプロダクトオーナーとなり、事業開発や営業、新規事業開発に従事する他、プログラム運営を支援
→投資家向けプラットホームを提供するベンチャーに副業のPdMとして参画
→同社への本格的なジョインを希望し、CPOに就任

B氏:
大学卒業後、SI企業に10年ほど勤務。その間、toB向けアプリの開発やプロジェクトマネジメントに従事
→アプリの開発・マーケティングなどを事業とする企業に参画し、PMとしてさまざまなアプリの開発に従事
→SaaS型アプリを活用したマーケティングプラットホームの提供会社でCPOに就任。開発にとどまらず人事にも携わり、手腕を発揮

C氏:
大学卒業後、DX関連企業に入社し、主にデジタル領域で豊富なコンサルティング経験を積む
→ソフト開発を手掛ける企業を設立して代表取締役に就任。デジタル領域の知識・経験を武器に、AIの研究・ツール開発を推進
→法人向けクラウドサービスを提供する企業に入社し、CPOに就任。プロダクト戦略の指揮を担う

D氏:
大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。システムコンサルタントとして、金融関連のシステムの開発を経験
→HR関連の事業会社に開発ディレクターとして入社。UXデザイナーとPdMを兼務し、プロダクトの新機能を開発。UI改善の実行を担い、事業成長へと導く
→シニアUXデザイナーとグループマネージャーとなり、人材の育成にも従事
→グループ会社の執行役員となり、全社横断的な人材育成を推進し、KPI達成に貢献
→ソフトウエア開発会社にCPOとして入社

F氏:
フリーランスのWebディレクターとして活動後、インターネット事業を提供する企業に入社。
→人材会社に入社してメディア立ち上げを経験後、アプリ開発会社に転職
→ディレクターを務めたのち、子会社に異動。アライアンスプロジェクト責任者を経験後、Eコマースプラットホームを提供する子会社を自ら設立。
→同社のHead of Productに就任後、執行役員不正対策日本統括に就任。その後、マーケットプレイスを成長させるべく、執行役員CPOに就任。

などの例があります。

このように、各個人によってCPOへのなり方は異なりますが、共通して主に下記のスキル・経験を積んだ方が就任されるケースが多いでしょう。

・エンジニア・デザイナー・ディレクターなどとして実際に手を動かした経験がある
・大手企業やコンサルティングファームを経験している他、多くの場合はベンチャーでゼロイチでの開発経験がある
・フリーランスや起業家としての経験、もしくは経営者目線を持った職業経験により、中長期的な戦略立案スキルを鍛えている
・プロダクトマネジメントやプロジェクトマネジメントの経験が豊富にあり、事業成長に直結するUXデザイン手法の確立や、自社・クライアントのプロダクト価値向上に実績がある

エンジニアからはじまり、PdMや事業開発など多種多様な経験を積まれた方もいらっしゃいます。プロジェクトマネジメントに限らず、事業開発や営業、エンジニアなどを一通りこなしたことで、各職種の思考回路が理解できることも、CPOとしての大きな強みになることがうかがえます。また大企業・スタートアップ・コンサルティングファームから複数を経験しており、組織の形態・コンディションごとにマネジメントスタイルを使い分けられることも、活躍の場を広げる上で大いに役立つでしょう。

コンサルティングファーム出身者の方は、システムコンサルタントとして、開発に携わった経験がある方が確認できるため、デジタル関連の案件を多くこなすことが求められるかもしれません。より現場に近い立場からプロダクトにコミットしたいという思いから、事業会社に転職し、デザイナーやPM経験を積むというのが一般的と思われます。

とはいえ多様な経験がなく、エンジニアに特化して研さんを積まれた方に、CPOへのキャリアのチャンスがないわけではありません。エンジニアからマーケターやPdM補佐、事業責任者を経て、PdMに就任し、そこでPdMのスキルを極めれば、VPoPやCPOへステップアップすることもあり得るでしょう。企業の中には、英語話者・ミッションに共感できる人・泥臭く手を動かせる人などの条件が見合えば、エンジニア・デザイナー出身者を歓迎するところもあるため、自身が企業の求める人物像とマッチしていることがPRできれば、チャンスはあるでしょう。

またPMからCPOを目指せるのか、質問をいただくこともありますが、可能性はあります。先述した通り、CPO(CxO)に求められる役割は企業により異なるケースが多く、PM/PdMとしての経験があれば、よりプロダクト開発の要素が強いCPOのキャリアなどが考えられるでしょうか。コーディングやデザインのスキルを生かし、仮説検証をスピーディーに回せれば、プロジェクトの速度を上げ、上流設計まで担える点がアピールポイントにできるかもしれません。

<参考>CPO(最高製品責任者)になれる人・なれない人の違い

CPOの実際のキャリアを踏まえ、なれる人・なれない人の差がどこにあるのか見ていきましょう。前提として、CPOやCTO、VPoEといったハイレイヤー層の方々の多くが、ミドル~シニアのエンジニアポジションから上位を目指せると感じているようです。一方でミドル~シニア層の方々からすると、「具体的ななり方がわからない」というのが実情でしょうか。

そこで意識しておきたいのが、エンジニアにせよデザイナーにせよPMにせよ、まずは利益にコミットし、成果を出すことです。事業のP/Lに対する責任があることを自覚し、数字を出せることが重要でしょう。別の言い方をすると、どれだけアウトプットを頑張っても、アウトカムにコミットできない人は、CPOになれない可能性があります。成果を出した上で、その成果を企業が求める要素とひもづけ、数値を踏まえて明確に説明できるようにしておくとよいでしょう。

またマネジメントスキルについて、単に「同じ方向を見ている社内メンバーをまとめるだけでいい」と考えている人は要注意です。実際のCPOは利害関係が異なり、ビジョンも理解しきっていない人を含むチームメンバーを、うまくマネジメントして成果を出さなければなりません。ソロプレーヤー気質の人も多いと思われる開発チームにおいて、チームがソロよりも高い成果を出せなければ意味がないわけです。しかし個々のメンバーはそれぞれ、理想・スキル・経験のいずれもバラバラであり、一丸となった状態は並大抵の努力では作れないでしょう。正社員だけでなく、業務委託やパート・アルバイトなど、雇用形態ごとに派閥ができてしまうケースも想定でき、メンバー全員が快適に働き、力を発揮できる環境を作る覚悟がなければ、CPOとしては役割を全うできない可能性があります。

同時にメンバーだけでなく、必ずしもデジタル領域に詳しいわけではない経営陣に納得していただけるよう、説得力あるプレゼンテーションや、同じ目線での議論・対話ができることも求められます。これに関しては、コンサルティングファームのマネージャー以上や、事業会社のVPポジションを経験していれば、鍛えられるスキルではあります。しかしエンジニア経験しかない・デザイナー経験しかないという場合は、ITに疎く、数字にシビアな経営層とのやり取りには注意を払わなければなりません。専門用語を避けてわかりやすく状況を説明したり、より詳細な数値を踏まえて売上獲得にプロダクトがどれほど重要かプレゼンテーションしたりするスキルが求められるでしょう。

以上のような高いスキルは、エンジニア・デザイナーなど現場出身の方の場合、なかなか身に付ける機会が少ないかもしれません。大規模開発チームの飲み会や、専門分野を抜きにしたオフ会を企画し、自ら運営することで、立場を超えたメンバー同士の団結を実現するスキルが鍛えられる可能性があります。

プロダクト戦略の責任者として、開発チームとエグゼクティブチームのいずれとも連携しながら、中長期的なビジョンを実行へと移していくCPO。一つひとつのプロダクトはもちろん、企業全体のプロダクトマネジメントが担えるかどうかで、差が生じると言えるかもしれません。

最後に、CPO後のパスとしては異業種や他社のCPOが考えられる他、開発・総務・人事なども担当された経験がある方もいらっしゃることを踏まえると、CTOやCHROなどのキャリアを積むケースもあるかもしれません。その業務の幅広さを考えると、非常に多様なキャリアの可能性を含む役職と言えるでしょう。

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マネージャー以上のコンサルのキャリアに関する記事

“CSO(最高戦略責任者)”の役割・CEO/COO/CFOとの違い・年収・キャリアパスについて
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“CFO(最高財務責任者)”の役割・CEO/COO/CAOや経理・財務部長との違い・求められるスキル・キャリアパスについて
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“CIO(最高情報責任者)”の役割・導入企業・CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い・実際のキャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cio

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今回の記事では、「“CPO(Chief Product Officer/最高製品責任者)CPO”の設置背景・求められるスキル・役割(PdM/VPoP/事業部長・VPoE・CTOとの違い)・キャリアパス」についてご紹介しました。

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