マーケティングは日進月歩の世界です。その中でも古いようで新しい、CRMマーケティングの世界。
顧客中心主義は叫ばれて久しいですが、昨今では、セグメンテーション&ターゲティング、ポジショニングだけではなく、パーソナライズドマーケティングと言われるように、顧客一人ひとりとの関係性向上が求められています。
本記事では、CRMマーケターとして成功をおさめるために、全体的な設計のポイントや、回避すべき落とし穴、従来のWebマーケターとの違いまで解説していきます。
【目次】
- CRMという文脈の中に、現在は「CXM」という概念が含まれている
- CRMマーケティングの潮流
- CRMマーケティングの全体構想と実務
- CRMマーケターに必要なスキルは「顧客の線的理解」「ツール活用力」「統計的検証/予測」
- (参考)従来のWebマーケターがCRMマーケターへ転職した際に陥りがちな「落とし穴」
CRMという文脈の中に、現在は「CXM」という概念が含まれている
顧客ニーズが多様化していく中、企業のマーケティング戦略において、画一的な施策は効果が薄いと言われています。
そのような中、CRMという言葉が再び注目されつつあります。一般的には、CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係性管理と訳されます。
デジタルマーケティングのトッピクスを取り扱うことが多いAdobe Summitにおいて、2020年のテーマは、「Design Your CXM Playbook」というセンテンスが追加されました。
いまや、CRMという文脈の中に、CXM(Customer Experience Management)という概念が使われるようになりました。
この変化の意味合いは、一人ひとりの顧客に、優れた顧客体験(顧客経験)を提供することが、マーケティングの目的であり収益最大化につながる、という考え方に発展している、ということです。
また、それはパーソナライズドが可能なツールの進化に補完されていることは、言うまでもありません。
では、詳しくCXMの世界をみていきましょう。
CRMマーケティングの潮流
前章でお伝えしたように、CXM(Customer Experience Management)という概念が台頭しています。
マーケティング全体としては、2000年代のIT革命を機に、顧客情報管理が飛躍的に高まったため、勘や経験で行われることも多かったマーケティングを、事実やデータと、それらの分析をもとに行われるマーケティングに変革しました。
しかし、顧客の属性情報や購買データを蓄積・分析することはできましたが、顧客の声や気持ちを踏まえて、適切に判断・意思決定を促すには限界がありました。
全体のマーケット成長が鈍化し、既存顧客のロイヤルティを高め、顧客に長く支持されるブランドであることが重要になってきたは言うまでありません。
主にモバイル化によって顧客接点のが多様化したため、顧客との長期的な信頼関係を築くには、顧客接点をさらに強化して、全顧客接点における顧客の体験を、最適化する必要がでてきたのです。
合わせて、顧客体験を個別最適化する、「パーソナライズドマーケティング」という概念も登場しています。
このような変遷を経て、CXMが台頭するようになったのです。
CRMマーケティングの全体構想と実務
では、CRMマーケティングをCXM、さらにはパーソナライズドマーケティングに進化させる全体構想は、どのようにあるべきでしょうか。
カスタマージャーニーマップ
ここで登場するのが、カスタマージャーニーマップという考え方です。
カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買行動の流れに沿って、顧客の「行動」、「思考」、「感情」をプロットしたもの。マップ化することで顧客の行動の全体像が俯瞰できます。
顧客の思考や行動を見える化し、どうすればカスタマーエクスペリエンスが向上するか、ということに主眼を置いて作成されます。
法人顧客の場合は、購買に至る流れの過程において、事業課題や組織課題の形成を盛り込んでおくパターンがあります。
このように、顧客の購買・再購買に至る顧客の行動や思考を網羅的に見える化することにより、これをもとにマーケティングの全体像を構想していきます。
マーケティングの実務
カスタマージャーニーマップに沿って、顧客の体験を個別最適化していくことをこころみていくわけですが、実務としていくつかポイントがあります。
コンテンツ×チャネルの設計
カスタマージャーニーマップの各段階の顧客の感情、思考、行動に沿って、感情に寄り添い、思考を助け、行動を後押しする、コンテンツとチャネル(タッチポイント)を設計します。
例えばオウンドメディアにコンテンツをのせる、あるいはメルマガ会員に個別最適化されたキャンペーンメールを配信する、などです。
効果測定
顧客の購買段階に沿って、顧客体験が最適化しているか、すなわち顧客の購買段階が進んでいるかを効果測定する必要があります。
一般的に、デジタルマーケティングでは、
・ページビューなどのアクセス数
・実際に行動転化したかどうかのコンヴァージョンレート
などを測定していく行為です。
CRMマーケターに必要なスキルは「顧客の線的理解」「ツール活用力」「統計的検証/予測」
顧客体験を個別最適化していくという概念のもと、実際にCRMマーケターとして必要なスキルについて解説します。
顧客を線で捉え、連携することができる
CRMマーケターは、顧客を線で捉える必要があります。
例えば、検討段階の顧客から問い合わせがあり、何らしかの対応を行うことで顧客体験を最適化しようと思えば、下記のような情報を、顧客ごとにつなげておくことが重要になります。
・顧客の属性やペルソナ
・問い合わせの内容
・過去の取引・購買履歴
・営業が接触していれば、商談情報
などです。
実際には、マーケターが直接対応することは稀かもしれませんが、マーケターの立場としては、まず上記のような情報がコンタクト担当者に即座に情報が展開される状態をつくっておくべきです。
また、各情報内容に照らし合わせて、どのようなコンタクトを行うべきなのか、といったことも、コンタクト担当者が即座に理解できる状態もつくっておくべきです。
BtoBの場合は、インサイドセールスが後工程に入る場合があります。その際、マーケティング側で取得したリードの状態や、これまでの顧客行動をインサイドセールスに連携し、次のコンタクトを最適化します。
ツール活用力
顧客を線で捉え、顧客体験を最適化するためには、マーケターとしてのツール活用力が必要になります。
ここで、CRMマーケティングで必要な代表的なツールをご紹介します。
・MA(マーケティングオートメーション)
・SFA(営業活動管理)
・CRM(顧客管理)
MA(マーケティングオートメーション)は、主にリードをつくりだすところで活用します。カスタマージャーニーマップ上では、購買に至るかなり前段階の顧客行動であるといえます。顧客の思考や行動のタイミングに合わせ、適切なメッセージを発信して、興味や関心をかき立てることが重要になる段階です。
この段階の一連の作業をサポートするのがMAです。リードに対して自動配信、反応によるスコアリング等は実施してくれますが、配信するタイミングや対象、メッセージやコンテンツの内容などは、カスタマージャーニーマップを基に構築する必要があります。
SFA(営業活動管理)は、マーケターにとって一見関係のないようにも見えますが、BtoBの場合は、インサイドセールスがリードナーチャリングの機能を担う場合もあり、コンタクト情報はSFAに記録されることが多いはずです。
インサイドセールスがうまくリードナーチャリングできるようなコンテンツ作成なども、マーケターの業務のひとつになります。
システムとしてのCRM(顧客管理)は、顧客単位で、すべてのコンタクト情報、顧客の行動などを一元管理します。顧客を線で捉える肝となる機能です。カスタマージャーニーマップにおいて、顧客の購買行動が前に進んだかどうかも、CRMで検証することが多くなります。
マーケターは、個々の機能に習熟しておくことはもちろんですが、全体構想を行い、各システムや機能を連動させ、個々の顧客体験を適切に導くための構想力が不可欠です。
統計的に検証/予測する
効果検証を行い、抜本的に施策を見直す、入れ替える意思決定を行う場面がありますが、できるだけ、統計的にデータを分析する必要があります。
例えば、ABテストのようなに、どちらの施策が顧客の反応性が高いのか、という検証も、統計知識がないと適切に意思決定できません。マーケターとして最低限の統計的内容をいかに抜粋します。
・有意差(検定)
・相関
・重回帰分析
・ロジスティクス回帰分析
上記は、2つに有意な差があるのか、関係性があるのか、因果関係があるのか、という観点の基礎的な統計解析の手法です。
(参考)従来のWebマーケターがCRMマーケターへ転職した際に陥りがちな「落とし穴」
CRMマーケターに必要なスキルは、
・顧客情報管理・連携力
・ツール活用力
・統計解析
になります。
細分化されたマーケティングの仕事を担当していると、よほど意識しなければ、上記のようなスキルが身につかない可能性があります。
Webマーケティングという言葉がありますが、CRM全体からみると、ごく一部の要素になります。Googleで検索連動型広告、動画広告を運用し、数字を見ながら運用することも、マーケティング業務の一部です。
上記のような業務は、数字のとりまとめや可視化を行うことが、仕事として捉えがちですが、CRMマーケティングでは、常に前後の工程が存在し、顧客の全体像を俯瞰しつつ、顧客の購買に至る行動を前に進めていく必要があります。前後の工程との連携を行い、全体像でみたときに、どのような状態になっているかを顧客を主語にして確認する必要があります。
CRMマーケティングでは、顧客単位で情報を接続、より最適化された顧客体験に導くのが要諦となります。全体のデータ(数字)が仕事の前面に出てくるのではなく、個別の顧客ごとにデータや履歴をつなげ、よりよい価値を顧客に提供していくという意識を、前面にだすイメージでしょうか。
顧客中心主義というスローガンを掲げている企業は多いものの、顧客が何を考えているのか、顧客のニーズは何か、という問いに答えられるマーケターは少ないかもしれません。
顧客にすべての情報を接続し、顧客が何を考え、何を望んでいるのかを推測できれば、CRMマーケターとしての成功に向けて、一歩踏み出したと言えるでしょうか。
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今回の記事では、CRMマーケターとして成功をおさめるために、全体的な設計のポイントや、回避すべき落とし穴、従来のWebマーケターとの違いまでご紹介しました。
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