“CRO(最高収益責任者)”の役割・CMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDevとの違い・キャリアパスについて

CRO(Chief Revenue Officer/最高収益責任者)は、幹部役員の一種であり、CEO直属のトップマネジメント層です。CEOが掲げた経営戦略に基づいて、部門を横断する形で社内をまとめながら、売上向上や収益獲得という目標達成を目指していく責任があります。

今回は、売上を増加させるための戦略を必要とする企業が増えた結果、直近で設置数が増加しつつあるCROについて解説します。よくご質問いただくCROと「CMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDevとの違い」とともに、設置背景~役割~キャリアパスについて、参考にしていただければ幸いです。

【目次】

  1. CRO(最高収益責任者)を設置・採用するに至った背景・設置されやすい企業のフェーズ
  2. CRO(最高収益責任者)の求人内容や求められるスキル
  3. CRO(最高収益責任者)とCMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDevとの違い
  4. CRO(最高収益責任者)になるまで/なってからのキャリアパス

CRO(最高収益責任者)を設置・採用するに至った背景・設置されやすい企業のフェーズ

CROは企業の売上に関する物事全体を俯瞰(ふかん)的に観察し、売上向上に向けた組織づくりを担うことで、戦略的に自社の製品やサービスの市場投入を目指します。

CROが設置されやすい企業は、上場前・新規市場進出前・事業拡大を計画中などのフェーズにあることが多いでしょうか。厳密に「シリーズAに設置すべき」といった指標はありませんが、上場や海外進出を見据えた事業拡大を視野に入れている段階では設置されやすいと思われます。セールス・マーケティング・プロダクト開発などを横断的にリードできる人材や、自社ツールのシェア拡大や事業成長を目指し、インサイドセールスやセールス部門をまとめる人材が必要になったケースなどが想定できるでしょう。

国内のみならず、特にアメリカのSaaS企業でも、近年はCROを採用する企業が増えているようです。事業の初期段階でCROを採用することで、売上と収益を創出できる組織を目指す会社が増えていることがうかがえます。CEO直下にCROを設置することで、CROがマーケティング担当・セールス担当の状況をまとめて把握し、CEOに状況を改善策とともにレポーティングさせるケースが想定できるでしょう。

中には、CROがマーケティングやセールス、カスタマーサクセスなど売上に関わる部門全体を統括し、売上増加に向けた戦略の立案と実行を一気通貫して担うケースもあります。

このような場合は、CEOがGo-To-Market戦略の実行から離脱することが多く、補佐役を必要としているケースが想定でき、シリーズB以降の企業が多いと思われます。

導入企業には、アイティクラウド・楽天・富士通・freee(呼称はCBO/Chief Business Officer)・マネーフォワードなどがあります。グループの経営体制を強化する段階で、CISOやCHOなどとともに設置されるケースが多いようです。実際、弊社でも、上場が現実味を帯びてきて事業拡大に向けた組織を強化するべく、戦略立案から開発までを担えるCROの採用活動を進めているという企業について、お話を伺ったことがありました。

ただし、CROの導入可否は企業の規模や業界の状況、経営戦略などによって総合的に判断されます。各企業の状況に応じて、設置状況は異なることを念頭に置いていただければ幸いです。

CRO(最高収益責任者)の求人内容や求められるスキル

DX推進やAI関連事業を担う企業の求人では、持っているスキルが必須スキルのうち1つだけだったとしても、CROの候補として採用活動の対象になるとのことでした。事業戦略企画を策定した経験・コンサルティングファームやVCなどで新規事業の立ち上げを主導して成果を残した経験・役員経験などから、1つでも経験したものがあれば対象になるといいます。加えて、機械学習やディープラーニングに関する知見の他、海外進出を目指す企業も多いことを踏まえると高度な英語力があるとさらに武器になるでしょう。

またITコンサル事業を行う企業では、CRO候補の必須条件として、SaaSプロダクトのセールス組織をマネジメントした経験と、大企業への営業経験を挙げています。さらにBtoBやSaaSビジネスでの経験、IT分野における事業開発の経験などもあると歓迎されるようです。特にベンチャー・スタートアップの場合、事業を軌道に乗せるべく全社が一丸となる上で、ミッション・ビジョンへの共感も求められるため、「他ではなく、この企業でCROとして成し遂げたいこと」を明確にしておくことも必要でしょう。

クライアント向けに情報一括管理サービスを提供する企業では、CRO候補に求めるものとして、SaaSビジネスへの深い知見と、法人を相手にした営業・コンサルティング経験を挙げています。さらに、最低でも10名規模の人員をマネジメントした経験や、単にIT関連の知識があるだけでなく、経営トップ直下の執行役職にふさわしい管理能力・リーダーシップ・コミュニケーション能力も重視されると考えておく必要があります。

中には、戦略コンサルティングファーム出身者はプロジェクトの内容を問わず採用候補とする企業もありますが、大企業の役員層との提案経験や、マネジメント、AI関連業務など、高度な業務を担い実績を挙げた前提であることは言うまでもないでしょう。

CRO(最高収益責任者)とCMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDevとの違い

CROと混同されやすい周辺ポジションとして、CMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDevが挙げられます。CROと各ポジションとの違いが分かるよう、まとめました。

【各役割】 ◇CRO:売上・収益の増加を任務とする最高収益責任者 ◇CMO:事業拡大や売上増加に向けて、分析・戦略立案・実行を担う最高マーケティング責任者 ◇COO:事業に関わる業務の執行を統括する最高執行責任者 ◇CPO:製品(プロダクト)の開発や戦略立案を担う最高製品責任者 ◇CFO:財務戦略や経理に携わる最高財務責任者 ◇営業部長:営業部門を管理する責任者 ◇BizDev(ビズデブ):ビジネスモデルや事業を創る事業開発の担当者

1つずつ具体的に見ていくと、まずCMO(Chief Marketing Officer/最高マーケティング責任者)は、マーケティングに特化した業務を担います。対してCROは、CMOが立案した戦略を実行して、売上を獲得するための土壌を整えることが仕事であり、役割は大きく異なります。CMOの設置背景としては、インターネットの普及により顧客の購買行動や生活様式などが多様化し、タッチポイントの発見の難易度が上がっていることが挙げられます。企業の各部署が連携し、高度化するマーケティング活動を横断的に行う上で、全体をリードするCMOの需要が高まっていると言えるでしょう。

ただ、せっかくCMOが全体をまとめ上げ、的確な分析結果に基づいた戦略を立てても、多くの経営層がデジタルマーケティングに疎く、施策を実行できないケースがあります。その場合、CROが業務プロセスを最適化させ、売上目標達成に向けた戦略を実行できる環境を整えていくことになるでしょう。

なお、CROはCMOを兼任することもあるため、どちらも設置する必要があるのかという疑問が生じると思います。この点は、例えばCROが不在の場合、CMOがセールスやカスタマーサクセスの部署にも責任を持つことが想定可能です。その場合、CMOがマーケティングを専門的にやってきた人材であれば、セールスに対しては「取りあえず売れればいい」、カスタマーサクセスには「うまくクレームに対応しておいて」と、抽象的な指示に終始してしまうリスクがあります。つまり、売上に関わる部署を総合的にまとめ上げるCROが必要とされる背景には、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを団結・協調させることで、CMOにはマーケティングという本来の業務に専念してもらうという狙いもうかがえるのです。

次にCOO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)は、業務執行をリードする役員であり、CEOに次ぐナンバー2という重要な役割を担います。売上に関する業務を担うCROと異なり、COOは事業運営に関わる業務全体をリードし、実行していく責任者です。実際の求人では、戦略コンサルでマネージャー以上の立場を経験し、事業会社でもその事業をけん引した経験が求められることから、社内で最も大きな責任を持ち、事業推進を果敢に行っていける人材がCOOにふさわしいと言えるでしょう。

変化の激しい時代に生き残るためには、上場に向けた各種活動やDX推進など多くの業務が生じ、CEOだけでは手が足りない場合が想定できます。そこで自らも経営層の一員としてトップを走りながら、実際にCEOの決定事項を遂行することで、右腕としてCEOを補佐するのがCOOのミッションです。

CPO(Chief Product Officer/最高製品責任者)は、製品開発および製品戦略を策定し、製品関連の活動全般をリードするのが役割です。具体的には製品ビジョンや製品イノベーション、製品デザイン、製品開発などで、時にはマーケティングも担うことになるでしょう。CPOがメーカーやサービス提供を事業とする企業に属する場合、製品やサービスの企画を担当する部署を管掌する役割が想定できる一方、CROは各営業部やマーケティング部などを含む営業本部全体をリードすることになります。CPOもやはり上場や海外進出を目指すフェーズで設置されるケースがあり、新規プロダクトの創出に向け、アイデア出しだけでなく、プロダクト戦略やリサーチ、ワイヤーフレームの構築、プロトタイプの開発などをリードできる人材は採用候補となるでしょう。

CFO(Chief Financial Officer/最高財務責任者)は財務・経理に関わる責任者として、資金を管理する点で、売上獲得を担うCROとは根本的に異なります。とはいえCFOは、単に財務・経理に詳しいだけでなく、事業運営を支える重要なポジションであるため、運営そのものへの深い知見と先を見通す力が求められます。CRO同様にCEOを支えながら、将来的にはCEOをも狙えるほどの、経営層としての実力が必要でしょう。採用背景としては、加速するグローバル化とともに、連結会計やキャッシュフロー会計などの活動の透明性が求められる中、企業の財務パフォーマンス向上に貢献できる人材の存在が不可欠になったことが挙げられそうです。
繰り返しになりますが、財務・経理の知識があるだけでなく、CEOのパートナーとしての自覚を持ち、経営課題の特定~実行を担い、エクイティ・デットによる資金調達も成功させるといった、事業の一端をけん引できることが求められるでしょう。

以上で見てきたように、専門領域のトップを担えるCxOは複数存在しますが、個々の業務は非常に高度で幅広く、全CxOが常に企業の利益に直結する活動ができるかというと、なかなか難しいのが現実です。そこで全収益に責任を持つCROが、幅広い部署の活動をカバーしながら、各活動を収益にコミットさせていくことで、利益創出~増加をスムーズに進めやすくなると考えられます。分業化しやすい企業活動において、部門最適化を避け、徹底的に売上獲得を目指す人材として、企業活動を支えていくのがCROと言えるでしょう。

CxO以外で、CROとの違いをよく質問される役職が、営業部長です。営業部のトップを担う管理職であり、CROが営業部を含むあらゆる部門を統括する役員であることを踏まえると、ポジション的にはCROの方が上位となります。CROと営業部長は両者とも、企業の収益増加に直接的に貢献することが期待されていますが、営業部長は営業部門の管理と成果に、CROは営業にとどまらず、収益に関わる全部門の統括に責任を持つと言えるでしょう。特に営業部長は、CEO以下CxOが定めた経営戦略に基づいて、中長期の具体的な営業目標を設定する役割を担ったり、目標に向けた事業推進の進捗状況を管理・報告したりするのが特徴です。また、各課長に短期目標を達成させるため、状況を管理することもあるでしょう。

営業部長の採用背景として考えられるのは、社会情勢の急変などの事情により、営業戦略の転換期を迎えた結果、戦略を立て直し、営業部を導く人材が必要となるケースです。市場や競合、顧客の分析から需要を見いだし、新規開拓やルート営業の方針を定め、戦略立案や部下への指示を行うことが想定できます。

BizDevは“Business Development” を略した役職で、事業開発担当者です。事業開発と一口に言っても、ビジネスモデルや新規事業の創出だけでなく、既存事業に新たな戦略を加えて成長を支えるのも大切な役割と言えます。予算策定や法的な権利の獲得に向けた業務なども担うことがあり、幅広いスキルと経験が求められます。収益の最大化を担うCROと、事業開発を担うBizDevでは役割が異なりますが、BizDevが作り上げた新規事業を、CROが収益へと直結させるという連携が求められるでしょう。

BizDevの採用背景としては、DX推進による業務効率化や、管理業務全体をカバーできるSaaSの提供、スタートアップにおけるリソースが限られた状態で新たな価値創出などを目指す上でニーズが生じるケースがあります。サプライチェーン全体の改革を行う上で、要件定義へのフィードバックや、新規営業の戦略・戦術の立案~実行を担える人材が必要となるためです。セールスの経験やSaaS分野での業務経験などを武器にでき、ゼロイチでの価値創出に意欲的な人材であれば、CROに昇格させる前提でBizDevとして採用される可能性はあります。したがって、いきなりCROを目指すのではなく、BizDevから着実にキャリアを築くのも1つの手かもしれません。

CRO(最高収益責任者)になるまで/なってからのキャリアパス

A氏:
大学院修了後、グローバル系の証券会社に入社
→別のグローバル系証券会社に入社し、事業法人の営業部長を担当
→ITツールで飲食業界を支援する企業に入社し、CROに就任。ステークホルダーの収益を最大化させるため尽力

B氏:
大学院修了後、独立系SIerに入社し、システムエンジニアとして開発に従事。その後、金融系の部門で営業関連業務を担当
→外資系SaaS企業に入社し、営業・営業マネジメントを担当
→開発会社に執行役員CROとして参画。同年中に代表取締役社長兼CEOに就任

C氏:
大学卒業後、外資系戦略コンサルティングファームに入社し、プロジェクトリーダーとして従事
→通販アプリの開発会社に参画し、COOに就任。M&AとPMIを進めるためリーダーシップを発揮
→新規事業の開発会社で、成長戦略を担う責任者としてECアプリを担当
→地方の老舗酒屋に転じ、CROとして経営体制の強化に尽力

D氏:
大学卒業後、インターネット関連会社に入社
→電子契約サービスを提供する会社に入社し、カスタマーサクセス部門の立ち上げや責任者を担当
→豊富な顧客支援経験を生かし、コミュニティープラットホームを提供する企業において、カスタマーサクセス部門の責任者として従事。その後、シニアレベニューマネージャーに就任
→同社の執行役員CROに就任し、カスタマーサクセスの効率化による顧客LTVの最大化を目標に尽力

E氏:
人材紹介会社に入社し、スタートアップを含む複数社でのセールスや企画、事業立ち上げなどを経験
→人材採用向けのプラットホームを提供する企業に参画し、セールスや営業企画部長を担当
→同社の執行役員CROに就任。

F氏: 大学卒業後、コンピューター関連企業に入社し、通信業界での営業を経験
→フィンテック企業でカスタマーサクセス部の部長として従事
→物流業界向けのITツールを提供する企業でSaaSビジネス責任者を経験
→現場向けのSasS製品提供会社に参画し、カスタマーサクセス組織の立ち上げ~組織拡大まで経験
→同社の執行役員CROに就任

G氏:
大学卒業後、インターネット関連企業でサポートエンジニアやマネージャー、部長、本部長を経験
→独立系SIerでストックビジネスの立ち上げやプリセールス活動を担当
→ビジネスツールの開発会社に入社し、パートナー営業本部長としてビジネスの立ち上げに携わったのち、代表取締役社長に就任
→iPaaSを提供する企業でディレクターとして、売上の最大化に尽力
→企業の労務管理におけるDX化をサポートする企業に参画、CROに就任。

などの例があります。

このように、各企業によってCROへのなり方は異なりますが、共通して主に下記のスキル・経験を積んだ方が就任されるケースが多い印象です。

・IT業界でツールの導入やDX化に携わった経験が豊富にある
・新規事業の立ち上げに携わり、一から売上の創出を目指した経験がある
・自社とクライアントの利益を最大化するため、リーダーシップを発揮している

中には、コンサルティングファームの出身者の方もいらっしゃいます。戦略コンサルティングファームのプロジェクトリーダーとして、クライアントの中長期経営計画を策定したり、インターネット関連の事業の立ち上げをサポートしたりと、CROに必要な「リーダーとサポーターとしての両方のスキル」を培われました。ゼロイチの経験を生かして、事業のアセットがすでにある企業での10→100の仕事に転じられていることから、スタートアップでの新規事業創出の経験は活躍の土台になると言えそうです。

最後に、CRO後のパスとしては、同業他社/異業種でCROとして活躍される方や、COO/副社長やCEO/社長に昇格するというパスが想定できます。

実際に、プレイステーションやPCに対応したハンドルコントローラーを製造するドイツのメーカー・Fanatecでは、CROが兼業する形でCEOに就任しています。

参考:Fanatec statement

日系企業でも、CROと兼業、もしくはCRO就任から間もなくCEOに就任するケースが確認できるため、CROのキャリアはトップリーダーへのキャリアにつながっていると言っていいでしょう。

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マネジャー以上のコンサルのキャリアに関する記事

“CSO(最高戦略責任者)”の役割・CEO/COO/CFOとの違い・年収・キャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/CSO

“CFO(最高財務責任者)”の役割・CEO/COO/CAOや経理・財務部長との違い・求められるスキル・キャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cfo

“COO(最高執行責任者)”の役割・導入企業・CEO/CFO/CSO、代表執行役との違い・実際のキャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/coo

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今回の記事では、CEO直下で売上・収益という企業の生命線を確保するための重要な役職である「CRO(Chief Revenue Officer)」の設置背景・役割(CROとCMO/COO/CPO/CFO/営業部長/BizDev)の違い・年収・キャリアパスについてご紹介しました。

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