DX(DigitalExchange)の流れで、例えば営業会社などでも、社内の作業効率を上げるためにITの活用を進める担当者が必要になっています。その中でも、CTOといった経営を理解する技術者の存在は、テクノロジーという枠を超え、業務効率を上げ、コストを最小化するといった企業全体への影響が大きく、特にニーズが高まっています。
しかし、優秀なエンジニアが必ずしもCTOを目指ざすわけではなく、自身のスキルの研鑽だけを目的に頑張るというタイプの人も多くいます。そういった中で、企業はどのようにして優秀なCTOを見つけ、採用にまでたどり着けるのでしょうか。
今回の記事では、採用担当者向けに、企業がCTOを採用する際のステップや入社前後の注意点を、現役CTOの生の声なども参考にご紹介します。
【目次】
- 現経営陣内でCTO候補者に対して今、何を期待しているのかというのを明確化しておく
- ベテランCTOほど「経営陣の技術リテラシー」が決め手になりやすいため、採用に関わるメンバー全員にテクノロジー知見を持たせる
- 未経験で採用する場合には、同時並行でCTO経験者を業務委託で招くなどの対策も
- スタートアップ・ベンチャーでは、組織の成長スピードとCTO候補の目指すキャリア像の合致が大切
- (参考)CTO入社後のよくある問題
現経営陣内でCTO候補者に対して今、何を期待しているのかというのを明確化しておく
まず、CTO採用にあたっては企業のステージによって求める経験・スキルが変化します。そのため、最初の段階では、今企業がどういったフェーズであるのか、課題は何か、経営陣がCTOに対して何を求めているのかを明確にすることが重要です。
実際に、過去複数のベンチャーでCTO経験を持つ方にお聞きしたところ、
「CTOという職種は、フェーズによって期待される働きや求められる能力が違うので、現経営陣内でCTO候補者に対して今、何を期待しているのかというのを明確化しておく必要があります。
自分たちの欲しい物が何なのかを分かっていない状態で、なんとなく開発が上手く回っていのでCTOというポジションを早急に埋める必要があるからと、前職CTOをやっていましたという人を採用すると、力を発揮するポイントが違う人を採用してしまう事があります。
現在他のCTOが存在していて、退職するので代わりの人材を探しているのか、あるいは今まで存在しなかったので採用したいのか。また、目的も新規事業を始めるためなのか、会社のDXを進めたいのか、エンジニアの組織を構築したいのかによっても最適な人材が変わります。」
とのことでした。例えば、新規事業やDXを新しく始める、エンジニアの組織構築のためにCTOを採用する場合、0から1を作れるプロダクトマネージャー的な素質・経験を持ったCTOが必要です。
経験・スキルのマッチングにおいて、最も最適な方法は、応募者が過去に類似する経験を持っているかを聞き出し、会社の状況を説明した上でどのように進めるのがいいのかを面接で話してもらうことでしょうか。
実際に、上記が徹底されておらず、「面接などコミュニケーションのタイミングで、ちゃんと候補者本人に会社には現在どういう課題があって、何をやってもらいたいかを伝えられておらず、候補者本人は前職と同じ事をやれば良いと考えていたら、実は必要なスキルセットが全然違ったという事もありました。」という声もよくお聞きします。
候補者の説明に具体性があり、再現性のある内容であれば、あとは応募者がその会社で何を成し遂げようとしているのか、個人としての目標はなにかという次のステップになります。
ベテランCTOほど「経営陣の技術リテラシー」が決め手になりやすいため、採用に関わるメンバー全員にテクノロジー知見を持たせる
経験豊富なCTOほど、オファーを慎重に検討して、どのような会社で自らが働くイメージを考えます。当然うまくいくパターンや、うまくいかないパターンも熟知しているので、報酬だけでは判断しないようです。特に、ベテランCTOほど、経営陣の技術リテラシーを気にする傾向あるでしょうか。
複数の企業でCTO経験のある現役CTOに、「行きたい企業」と「行きたくない企業」について伺いました。
「行きたい企業は
– CEOにテクノロジーやエンジニアリングの理解がある。
– 経営の意思として、エンジニアリングに投資をする覚悟がある。
– スケールの大きな事業を、テクノロジーを使って成し遂げようとしている。
逆に行きたくない企業は
– CEOが営業気質で、エンジニアリングについて理解がない。
– 経営の意思として、エンジニアリングに投資する気がなく、ただのコストだと考えている。
– 描いている事業のスケールが小さく、現状維持で問題ないと考えている。
みたいなところです。」
また、「社長など経営陣がコミュニケーションを取りやすいとか、カルチャーマッチするとか、経歴が良いといった部分で採用を進めてしまうと、自社のCTOとして本当に必要な技術力が備わっていない人を採用してしまう事があります」というお話も伺いました。ミスマッチを避けるためにも、できる限り採用に関わるメンバー全員が、技術力の見極めができるテクノロジー知見を持つことも重要だと言えそうです。
未経験で採用する場合には、同時並行でCTO経験者を業務委託で招くなどの対策も
特に、スタートアップやベンチャーでは、会社内にCTOとして適切な人材がおらず、企業としての魅力も打ち出しにくいため、CTO未経験者を抜擢するケースも少なくないでしょうか。
その場合重要なのが、エンジニアリング・メンバーマネジメントとしてのスキルがあるか、また会社で新任CTOをバックアップする環境があるか、という2点です。
まず、新任CTOの最初のハードルはメンバーのハンドリングとなりますが、そもそもスキルの備わっていないエンジニアをいきなりCTOにすると元々いるメンバーからリスペクトされないことも多く、部下との関係構築が非常に難しくなります。
また、そういった事態を避けるために、業務委託等でCTO経験を持つ人をバックアップ要因として招き、組織が成長してきた段階で、完全に引き継ぐといった工夫も求められます。
スタートアップ・ベンチャーでは、組織の成長スピードとCTO候補の目指すキャリア像の合致が大切
また、スタートアップ・ベンチャークラスであれば、組織の成長スピードと、キャリアとして求めている成長スピードの合致がより重要となります。スタートアップ立ち上げ期にCTO未経験で就任し、現在も同社でご活躍される方にお話を伺いました。
「まだ、同社の社員が社長一人しかいなかったときに志願してCTOとしてジョインさせてもらいました。自分の経験上、WEBアプリ開発ができることと、周辺領域の仕事、リーダー経験もあって、あとは経営に携わる仕事がしたかったというのがあります。
自分で起業することも考えていたくらいなので、経営のことを考えつつも技術に専念していいという環境はありがたかったです。ただ、最初は他に仲間もいなかったのでほとんど一人でやったりしていたことが意外と大変だったです。
でもこれも現場経験を多く積むことに繋がりましたし、同じタイミングで他社の業務委託もやって経験を積んでいたので、周りの環境で成長させてもらったと思います。手前味噌ですが、小規模ベンチャーでもハングリー精神で頑張れる人なら素養はあるんじゃないかと思います。」
どんな苦境でも逃げない人材かどうかを見極めた上で(CTOとして任命するか)判断したほうが良さそうです。
また、40代男性の上場企業でCTOを務める方に、「経営陣にエンジニアがいなくて技術に理解がないところだとしてもスタートアップでCTOを引き受ける条件」についてお聞きしました。
「・事業やビジョンに共感できること
・経営陣にプロダクト/サービス開発への理解があること
・社員の働き方や報酬が一般的な水準であること(ベンチャーを理由に厳しい環境を強要していないこと)
このあたりは、個人的にはMUSTですね。事業やビジョンへの共感は、人によって価値観異なるかもしれませんが、自分は『ちゃんとスケールできる事業』にフォーカスできてるか、ですね。人海戦術で少しづつ伸ばしていく事業だと、ベンチャーである意味があんまりないかなと思ってます。」
すなわち、企業戦略として「人海戦術的」「労働集約」な方法しかないところでは、入社した後の消耗が多く、ドロップアウトや早期の退職に繋がってしまう可能性が高そうです。
たとえスタートアップでも無理なスケジュールや業務量を強要せず、戦略のプランニングにはCTOを巻き込んで決めていくようにしましょう。
(参考)CTO入社後のよくある問題
最後に、CTOが入社した後によく起こる問題についてご紹介します。特に、企業にエンジニア系幹部がいないことで起こりうる問題についてお伝えします。
まず、一つ目はエンジニアの「給与体系」に関してです。
ご存じの通り、一般に企業にはコストセンターとプロフィットセンターという概念が存在しますが、エンジニアはコストセンターに分類されます。給与に関して、業績連動のような形にしてしまうとエンジニアとしては頼まれたものを開発したのにも関わらず給料が上がらないという悲劇が起こります。
ここに不満が生まれる要素があります。エンジニアの給与評価に正解はなく、各社それぞれの制度によって判断されますが、一般職と同じ評価システムを用いているところは少なくないです。一方で、CTOが長く活躍される企業ほど、エンジニア同士で評価しあうことで、「納得性の高い評価システム」にしているところが多い印象です。
また、このような評価制度導入への理解があり、議題が出しやすい会社であることもCTOが入りやすい要件になるでしょうか。
2つ目は、「労働時間」に関してです。特に、昔ながらの営業会社では、「長時間働く=仕事をしている」という感覚をエンジニアにも押し付けるケースがあります。それに加え、よくある問題が、ベンチャーだからといって土日や夜も普通に仕事をさせてしまうケースです。これが常態化してしまっているとメンバーが疲弊して離反してしまいますが、CTOも例外ではありません。
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>エンジニアのキャリアに関する記事
【保存版】エンジニア(SE)からコンサルタントに転職・活躍するまでのAtoZ
https://www.axc.ne.jp/column/axis-column/2018/0227/se_cous.html
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https://www.axc.ne.jp/column/axis-column/se_cous/02.html
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今回の記事では、企業がCTOを採用する際のステップや入社前後の注意点を、現役CTOの生の声なども参考にご紹介しました。
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