CTO候補の採用方法と注意点【企業フェーズ別】<人事・採用担当者向け>

直近では、多くの企業からCTO採用のご相談をいただくようになりました。今までは創業メンバーがそのままCTOになるパターンが多く、外部からCTOを採用する方法についてあまり内部にナレッジがなく、その手法もあまり世に出ていませんでした。
そこで、今回は、採用担当者向けに、CTOの採用を行う際に注意すべき点、事前に確認すべき点についてご説明いたします。

【目次】

  1. 既に組織が完成している場合、「CTO候補」として採用するのが望ましい
  2. 企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:創業期
  3. 企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:成長期
  4. 企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:安定期
  5. 見るべきポイント:キャリアステップ
  6. 見るべきポイント:経営の知識
  7. (おまけ)CTO採用で失敗するとどうなるか

既に組織が完成している場合、「CTO候補」として採用するのが望ましい

まず、CTO採用に当たり気をつけたほうがいい点として、既に組織が完成している企業ではあくまで「CTO候補」としておくのが望ましいでしょう。

CTO募集の背景としては元々のCTOの退職や、そもそもエンジニア組織が整備されてないことなどあるかと思われます。その中で外からCTOという肩書で人を入れることは社内にも不満分子を作る原因になったり、採用したCTO自体へのプレッシャーにもなります。

あくまで候補として採用して、実績を上げたうえで昇格させるのが候補者、企業側にとっても安全です。

企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:創業期

創業期はプロダクトの形を探り、そのプロダクトをどうマーケットに届けるのか。PMF(プロダクト・マーケットフィット)を模索するのが創業期です。CTOは、プロダクトを技術的に完成させることが最初の責務となります。プロダクトが形になった後は、施策・検証のPDCAサイクルを適切に回すこともCTOとしての役割になります。

テックリードとしてコードの品質を保ちつつ、時にはセールスに同行し、ユーザからフィードバックを受け、採用に参加することもあります。この時期はプロダクトの方向性を明確にし、世に送り出すために幅広く何でも行えることがCTOとして求められることで柔軟性や多様なスキルを持っていることは重要です。
簡単に言うとプロダクトを一人でも構築できるスキルを持ちつつ、営業やユーザサポートもこなす器用さがある人が望ましいです。

企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:成長期

事業・プロダクトが拡大していく成長期。PMFが一定達成された後は、創業期とは別種の業務負荷が高まってきます。プロダクト/サービスのスケーラビリティを見据えた戦略設計が求められ、規模感に合わせたデータストアの選定や、レガシーになった箇所をリファクタリングするのか、書き直すのかといった技術的負債に対処する判断も必要になってきます。

CTOの役割も純粋な技術的作業から、マネジメントやアーキテクチャ設計などに移り変わります。創業期はエンジニアとしての能力が高いものがCTOを務めることが多いが、成長期においてはより経営的な観点、豊富なドメイン知識が求められます。また、IPOなど市場からの注目度が高まるこのタイミングでは、データ管理を始め技術面でもガバナンスの強化が必要とされます。
多くのエンジニアを採用したり、全体的な開発保守の組織を維持するためのノウハウを持っている人が望ましいです。CSOやCISOのようなスキルも持ち合わせている必要があります。かつ経営視点でコストと売上へのバランスも勘案できる人材が求められます。

企業ステージごとのCTO候補採用チェックポイント:安定期

売上が安定することで事業が多軸に渡り、チームも細分化されるタイミング。事業・プロダクトにおいても完璧な制度設計は難しくなり、状況に応じて「何をやる・やらない」を明確にして開発効率を上げていかなければなりません。

CTOとしては技術的な視点は持ちつつも、様々なステークホルダーを抱える企業の経営者として役割を果たしていく必要があります。意思決定の連続に対応するため、情報処理スキル・ロジカルなスキルが必須となります。また、組織を率いるために明確なビジョン・戦略を持ち、そのストーリーを分かりやすく伝え実行していくリーダーシップ・胆力を持つことが不可欠となってきます。

見るべきポイント:キャリアステップ

開発経験の他にもどういったキャリアステップを歩んできたのかも採用時には重視すべきです。
そのキャリアから、主にテック系CTO、マネジメント系CTO、フルスタック系CTOなどに分けられます。
プログラマからリードエンジニアなどゴリゴリにコードを書いてきてCTOになった者。プログラマ経験も一定あるが、PL・PMなどマネジメント経験を多く積んでCTOになった者。インフラからフロントエンドまで幅広く経験し、ビジネスサイドも理解したうえでCTOになった者など様々です。

CTO採用にあたっては、会社の現時点の技術的な課題を精緻に把握し、それに対応できる経歴の持ち主を探すことが重要です。

見るべきポイント:経営の知識

CTOというのは、経営者として技術面の責任を持つメンバーであるので、技術のことだけを考えればよいわけではありません。技術の力を使ってどのように会社を経営すべきか、どのような課題をテクノロジーで解決していくべきかを考えるのがCTOです。

経営陣の一員であるため、役員会議にも出席して他の役員と議論します。つまり、技術の知識だけでなく、経営の知識も必要になります。

CTOも経営者であることを意識することが大切だと思います。「エンジニアをマネジメントしてもらいたい」という理由だけでCTOポジションとして採用してしまうと、経営と技術組織の間にギャップが生じてしまう可能性があります。エンジニアではなくCTOとして採用を考える場合には、日々議論する経営パートナーとして違和感がないかを考えるとよいかと思います。

そのためにも、CEOは経営のことだけ、CTOは技術だけを知っていれさえいればよいと考えるのではなく、両者が互いの領域のことを一定レベル理解していることが重要です。共通言語が多ければ多いほど、解像度の高い議論ができます。

また、CTOがテクニカルなスキルを持つというのは前提として、そのバックグラウンドは多岐に渡ります。

自社で扱っている技術や分野に詳しいということは重要です。AI、IoT、WEBメディア、スマホアプリ、ゲームなど近い分野で仕事をしてきたということは重視したほうがいいでしょう。なぜなら経営陣との会話の目線が合わないのはそれだけで経営陣のマネージメントコストに跳ね返るからです。

WEB系、オープン系、汎用系といった系統の違い、それに紐付いた開発言語の違い、開発手法としてもウォーターフォール開発かアジャイル開発かで得意不得意があります。一概に「この経歴を持つものがCTOに適している」ということはなく、経歴に応じて得意とする領域は異なります。言語やフレームワークにとらわれず経営という目的に応じた開発ができる人物を探すというのも選択肢の一つでしょう。

(おまけ)CTO採用で失敗するとどうなるか

CTO採用の失敗例は色々あります。ベンチャーCTOとして長くご活躍される方から聞いた話によれば、知人から「CTO採用に失敗して、開発組織が崩壊している」という相談があったそうです。その話を詳細に聞くと、両社とも立ち上げ数年のスタートアップなのですが、起きている共通の事象として、

・開発スピードが遅くなった。エンジニア組織が全然プロダクトの成長にコミットしてくれない。納期も決めてくれなくなった
・DevOpsやインフラの多重化など、すぐにプロダクトの数値にインパクトを与えない取り組みを優先的にやっている
・分業化がすすみ、何かをしようとすると「XXエンジニアの採用が必要です」となり、思ったようなスピード感で進められない

このように、経営サイドと目的意識を統一できていないようです。何度か対話の機会を持ったが「あなたはエンジニア組織のことを分かっていない」と一蹴されるとのことです。
さらにはメガベンチャーの事例を出されて「技術の会社を作るために、私は正しいことをやっている」と言われてしまいます。
CEOは「優秀なCTOを採用したい」と考えますが、その”優秀さ”が「今の組織フェーズや全社の方向性に合っている」という前提の元で採用しなければ、うまくやっていくことは難しいものです。

技術者出身でないCEOが採用時に「技術組織の方向性をきちんと認識合わせをする」こともなかなか難しいので、第三者のアドバイザーを付けたりするのは非常に有効です。ミスマッチが起こるのは、組織にとっても、採用したCTOにとっても、非常に残念なことです。

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>CTOのキャリアに関する記事

CTO採用の「方法・ステップ」と「入社前後の注意点」【現役CTOからの生の声】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cto_recruitment

“スタートアップCTO”の「よくある苦労」と「乗り越え方」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/startup_cto_case

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今回は、採用担当者向けに、CTOの採用を行う際に注意すべき点、事前に確認すべき点についてご説明しました。キャリアでお悩みの方や、CTO採用でお困りの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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