今回は、データアナリストとデータサイエンティストの違いについてご紹介します。
ともにデータから価値を生み出す専門職であり似たイメージがありますが、両者が専門とする領域には違いもあります。
データアナリストとデータサイエンティストの違いが知りたい方、どちらを目指すべきかお悩みの方はぜひ本記事を参考にしてください。
【目次】
データアナリストとデータサイエンティストの位置づけ
データアナリストとデータサイエンティストは、ともにデータ分析の専門職です。どちらの職種にも、企業に蓄積されたビッグデータを活用して意思決定の精度向上に貢献するという使命は共通しています。
使命が共通している以上、業務の遂行に必要とされるスキルも多くの部分が共通しています。その一方で、データアナリストは分析のビジネスへの応用、データサイエンティストは分析モデルの構築に、それぞれ軸足を置いているという違いがあります。
データアナリストやデータサイエンティストなど、データ分析専門職に求められるスキルは、大きく分けてビジネススキル、統計スキル、ITスキルの3つとなります。
・ビジネススキル:ビジネス課題を踏まえ、効果的な分析を企画できるスキル。立ち上げた分析案件をマネジメントできるスキル。そして、分析結果を分かりやすくプレゼンテーションできるスキル
・統計スキル:統計学や機械学習の理論的知識をベースとして、分析モデルを構築できるスキル
・ITスキル:分析環境やデータベースの設計、構築ができるスキル。分析用プログラミング言語をコーディングできるスキル
どちらの職種でも、この3つのスキルを身につけることが前提として求められます。どれか1つや2つのスキルがあればよいということではなく、3つとも一通り習得してはじめて、データアナリストやデータサイエンティストとして自立した状態といえます。そのうえで、軸足を置くスキルがデータアナリストとデータサイエンティストでは少し異なるのです。
データアナリストはビジネススキル寄りの職種です。つまり、ビジネスサイドやクライアントのニーズに寄り添い、データ分析のビジネスへの応用に注力します。
一方で、データサイエンティストは統計スキル寄りの職種となります。統計学や機械学習への深い専門性を背景として、高精度な分析モデルを構築することに軸足が置かれます。
データアナリストとデータサイエンティストの違い:スキル
データアナリストとデータサイエンティストのスキルの違いを具体的に見ていきましょう。まずはデータアナリストとデータサイエンティストの両方に求められる「共通スキル」についてです。
データアナリストとデータサイエンティストの共通スキル
前提として、両職種に求められるスキルには共通部分が多くあります。例えば、データベースやSQL、分析用プログラミング言語を扱うスキル、統計学の基礎知識はどちらの職種でも求められるのが特徴です。
データアナリストとデータサイエンティストの共通スキル①データベース、SQL
データベースの設計や、SQLによるデータ抽出や集計のスキルは分析業務の基礎となります。
データアナリストとデータサイエンティストの共通スキル②分析用プログラミング言語
分析用によく使われるプログラミング言語としては、PythonやR、SASなどが挙げられます。データアナリストやデータサイエンティストであれば、少なくとも1つは自分の武器として使いこなせることが必要です。
最もよく使われるのは、PythonまたはRです。これらの言語は、データクレンジングやデータへの分析アルゴリズムの適用、可視化などの目的で多用されます。
データアナリストとデータサイエンティストの共通スキル③統計学の基礎知識
記述統計や推測統計の基礎は、分析業務の前提となるため必ず身につける必要があります。
記述統計は、データの傾向を理解するために必須となる知識です。平均値、中央値、最頻値、度数分布、標準偏差、相関係数などの意味や計算方法を学びます。
一方、推測統計は回帰分析や統計的検定などに関する理論的知識です。分析モデルの仕組みや評価、解釈の方法を学びます。
業務で必要とされるレベルとしては、統計検定2級レベルの知識(大学基礎課程レベル)が目安となります。
データアナリストのスキル
データアナリストは上記の共通スキルに加えて、データの可視化やレポーティングに関するスキルが高いレベルで求められます。以下にいくつか具体例を挙げます。
データアナリストのスキル①Excelスキル
数千~数万件程度のデータをアドホックに分析するときは、Excelを使うことも多いです。IFやVLOOKUPなど基礎的な関数や、ピボットテーブルを使いこなせることが必要となります。
データアナリストのスキル②BIツールを扱うスキル
ビジュアルに訴えるダッシュボードやレポートを作成するために、BIツールを駆使するスキルが求められます。
BIツールは、ドラッグ&ドロップベースの直感的な操作でデータのビジュアル化やレポート作成、シミュレーションができるツールです。代表的なBIツールとしては、TableauやPowerBIが挙げられます。
BIツールと各種データソースを連携させ、BIツール上で探索的な分析を行って示唆を得たり、ダッシュボードを作成したりといったスキルがデータアナリストには求められます。
データアナリストのスキル③資料作成、プレゼンスキル
データアナリストには、分析結果を分かりやすく資料にまとめ、プレゼンするスキルが必須となります。データサイエンティストにも求められるスキルですが、ビジネスサイドとのコミュニケーションはデータアナリストが担うことも多いため、データアナリストにとってより重要なスキルです。
分析結果はPowerPointを使って資料化することが多いです。コンサルタントのように、1スライドに1メッセージを込め、構造化されたチャートで内容を説明するスキルが必要となります。
またプレゼンの相手は分析の専門家ではないことが多いです。そのため、技術や分析の専門用語をそのまま使わず、業務やビジネスの言葉に置き換えて話すコミュニケーション力も必要です。
データサイエンティストのスキル
データサイエンティストは、アルゴリズムの実装や分析モデルの構築に高い専門性を持つ職種です。統計学や機械学習の理論や、分散処理などのテクノロジーに関しては、データアナリストよりも深い知見が求められます。
データサイエンティストのスキル①機械学習のフレームワークを扱う能力
適切なフレームワークを選び、分析モデルの構築に活用することが求められます。例えば、ディープラーニングでよく使われるTensorFlowやKeras、PyTorch、Chainerといったフレームワークを理解し、扱うスキルが必要です。
ディープラーニングは、自然言語処理や音声、画像認識で使われることが多い技術です。これらは例えばチャットボットや顔認証などのサービスに応用されます。このようなサービスの精度は、データサイエンティストのスキルに大きくかかっているのです。
データサイエンティストのスキル②大量のデータを高速に処理する能力
高精度な分析モデルは、試行錯誤の結果として構築されます。1回の処理に長い時間がかかっていたら、十分な回数の試行錯誤ができず、モデルの精度を最大限に高める前にタイムアップとなってしまいます。
そこで、大量のデータを高速に処理するための知識やスキルが必要なります。そのための仕組みが、分散処理フレームワークです。例えば、HadoopやSparkといったテクノロジーが挙げられます。このような技術の仕組みを理解し、適切に使いこなせることもデータサイエンティストにとって重要なスキルの1つとなります。
データアナリストとデータサイエンティストの違い:役割と仕事内容
続いて、データアナリストとデータサイエンティストの役割や仕事内容の違いをご紹介します。
データアナリストの役割・仕事内容:ビジネススキル寄りの職種として事業課題の整理や分析結果の活用、コミュニケーションなど
データアナリストはデータサイエンティストよりもビジネススキル寄りの職種であり、事業課題の整理や、分析結果の活用、コミュニケーションに重きを置く役割です。
まずは、課題についてビジネスサイドとディスカッションを重ねて、分析案件を企画することから仕事を始めます。企画フェーズでするべきことは、分析目的や分析手法・環境の概要、利用データやスケジュール、チーム体制などの取りまとめです。企画が実行に移されたら、分析プロジェクトのマネジメントを実施します。
分析実務としては、データベースからのデータの抽出や、集計・可視化、シンプルなシミュレーションであればアナリスト自ら行うことが多いでしょう。一方で、アルゴリズム実装や分析モデル構築など、専門性の高い領域はデータサイエンティストに、また分析環境の構築やデータ加工はデータエンジニアに任せることもあります。
得られた分析結果やモデルを、分析の専門性がないビジネスサイドのメンバーに分かりやすく伝えることもデータアナリストの役割です。言うなれば、分析や技術の世界の言葉を、ビジネスや業務の世界の言葉に翻訳して話す必要があります。
そして、分析結果を踏まえた施策の提言も行います。報告の受け手は、データから分かる現状の説明だけではなく、結局何をすればよいのかというところまで、提案が欲しいと考えていることが多いからです。最終的には、分析結果や提言をPowerPointなどで資料化し、意思決定者にプレゼンします。
データサイエンティストの役割・仕事内容:分析モデルの構築をメインとするデータクレンジングやチューニング
データサイエンティストは、統計学や機械学習に関する高い専門性を活かし、分析モデルの構築に重きを置く役割です。
データクレンジングや適切な分析アルゴリズムの選定、精度向上のためのチューニングなどが主な仕事内容となります。
データクレンジングとは、ノイズの除去を意味します。データは生の状態ではそのまま分析に使えないことがほとんどであるため、欠損値の補完や異常値の除去などを繰り返し、きれいな状態にしていくのです。データクレンジングは手法も多岐にわたり、分析モデルの精度に与える影響も大きいため、データサイエンティストの腕が問われる部分となります。
データクレンジングができたら、データに最も適した分析アルゴリズムを選定していきます。分析アルゴリズムには、例えば以下のようなものがあります。
・教師ありモデル:重回帰、ロジスティック回帰、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストなど
・教師なしモデル:クラスタリング、アソシエーション分析など
分析アルゴリズムを適用したら、パラメータのチューニングを行います。分析モデルの価値とは、予測や分類の精度の高さです。時間の許す限り、データクレンジングやパラメータのチューニングを繰り返し、高精度なモデルを構築することがデータサイエンティストの仕事となります。
その一方で、分析の企画フェーズやビジネスサイドとのコミュニケーションは、データアナリストに主担当を任せることもあります。
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>データアナリスト・データサイエンティストへのキャリアに関する記事
データアナリストに必要な「資格」とは?【統計スキル、ITスキル別】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/dataanalyst_statisticsandit
データアナリストの仕事は、コンサルと事業会社でどう違うのか?
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/dataanalyst_consuldifference
コンサルファームの「データサイエンティスト職」へのよくある質問・不安と回答例
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/DS
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今回は、データアナリストとデータサイエンティストの違いついて、スキルや役割、仕事内容の面からご紹介しました。
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