本記事ではよくご人材よりご質問をいただく「デジタル戦略」と「IT戦略」の違いについて触れていきます。そもそもデジタル戦略とは何か?IT戦略とは何か?という基礎的な箇所から、その違いまでお伝えします。
【目次】
デジタル戦略とは何か
ここではデジタル戦略とは何か、について触れていきます。
昨今であればDX戦略(デジタルトランスフォーメーション戦略)といったワードで包含されることも多いですが、概ねDX戦略イコール、デジタル戦略と読み替えることができると言えます。
デジタル戦略の条件として「必ずしも”前もって”ビジネス戦略が存在する必要はない」という点が特徴
デジタル戦略イコール、デジタルビジネス戦略と読み替えることができるでしょうか。
後述するIT戦略と違い、デジタル戦略の条件として「必ずしも”前もって”ビジネス戦略が存在する必要はない」という点が特徴です。
また、デジタル戦略ではデジタル技術を活用して既存ビジネスをどのようにアップデートしていくのか、あるいはどのようなビジネスモデルを構築していくのかを策定しているため、言い換えれば企業における全ての部署が戦略を実行する主体となり得ます。
そのため、例えば既存ビジネスのアップデートと新規事業創出の両面を実現するために、デジタル新組織を設立するといった事例は多くありますが、その場合、既存の部署からそれぞれデジタル人材となり得る人材を登用し、データ分析や新規事業創出を担わせる組織を設立することで、他の事業部から人材を登用したり柔軟な人材リソース配置を実現する仕組みづくりが肝になってきます。
デジタル組織を独立させてデジタル人材を集約させたり、部署から人材を流動性高く登用する仕組みがあることによって、デジタルの取り組みを部署へ持ち帰って既存組織を強化することや、企業としての新しい取り組みを横展開しやすくなるというメリットを得られます。
一方で、個々の部署にデジタル人材を配置する場合、例えばある部署Aでデジタル技術を活用したビジネスモデルを新規構築した際に他部署へも同様の取り組みを展開しようとすると、部署間のガバナンスが障壁となってスムーズな横展開ができないという弊害が生じる可能性があります。
デジタル技術によるビジネスモデルの創造がデジタル戦略のゴール
上記の例でも挙げた通り、デジタル戦略では前もってビジネスモデルが必要ない一方で、既存ビジネスモデルの変革およびデジタル技術を用いた新規ビジネスモデルの構築がゴールとなります。
例えばデジタルプラットフォームの提供といったビジネスモデルの場合は、プラットフォームの運用による収益化・収益増加までのPDCAを回せて初めてゴールとなります。
IT戦略とは何か
次に、IT戦略とは何か、について触れていきます。
ビジネスモデル、ビジネス戦略がまず存在しているという前提の上に立っている
一口にIT戦略と言っても企業によって様々な捉え方がありますが、IT戦略とは「テクノロジー(ITサービス、ツール、ソリューション)を活用する方針のこと」を指すケースが多いでしょうか。
テクノロジーをビジネスモデルにどのように役立てるのか、効果を最大化するための投資はどのようなものか、というようにビジネスモデル、ビジネス戦略がまず存在しているという前提になります。そのため、まずはビジネス戦略やビジネルモデルありきとなる点が特徴です。
また、IT戦略も大別すると「攻めのIT」と「守りのIT」の2つに分類することができます。
攻めのITは企業価値向上や競争力強化に直接的に繋がるIT戦略のことを指し、守りのITは既存のビジネスモデルや社内業務効率化、利便性の向上に繋がるIT戦略のことを指します。
攻めのITは先に述べたデジタル戦略寄りの戦略になるため、実行主体が各部署になることもあります。ただし、各部署横断でこのようなITサービスやツール、ソリューションを活用していくべきだといったリードなどを取っていく部署が情報システム部等の一つの部署に集約されやすい点がデジタル戦略とは異なると言えます。
効率的なビジネスモデルの実現がIT戦略のゴール
基本的に既存ビジネスモデルの最適化・効率化がIT戦略のゴールとなります。そのため、テクノロジーを活用していかに業務を効率化できるか、という点がKPIになります。
もちろん新規ビジネスモデルを構築するに当たり、企業として似たような分野のテクノロジーをバラバラに活用するのではなく、既に使用しているテクノロジーがある場合は他部署でもそのテクノロジーを使うようにする、といったシステム観点でのガバナンスを利かせるという点はIT戦略で考慮すべき内容となります。
デジタル戦略とIT戦略の違い
「IT投資における方向性や最適化」が求められるIT戦略と、「ビジネスそのものの変革」が求められるデジタル戦略
守りのITという考え方のもと、既存ビジネスモデルに対して最適化をすることはあっても大きな方向性の変化を求めないIT戦略に対し、方向性の変化も選択肢に含んでいるのがデジタル戦略と言えます。
たとえばあるビジネスモデルにおいてITソリューションを活用していて、ソリューションの保守期限が切れそうだという前提である場合、「よりよいソリューションがあるかどうかを調査し、別ソリューションに代替させる」「ソリューションの保守契約を更新して継続して活用していく」といった判断をするのが守りのITとなります。
一方で「ソリューションの保守期限切れに伴い、そもそもソリューションを活用しないようなビジネスモデルとする」「変革したビジネスモデルでは全く別分野のソリューションを活用する」といった判断をするのがデジタル戦略と言えるでしょうか。
全体最適化が求められるIT戦略と、必ずしもそうではないデジタル戦略
デジタル戦略はあくまでも、1ビジネスモデルが最適化されているかどうかが求められるでしょうか。そのため、複数のビジネスモデルにおいて活用するデジタルテクノロジーの最適化は担当部署には求められないことが多いです。1部署内で複数のビジネスモデルを策定している場合はモデル間で利用するテクノロジーを共通化するという動きが取られることはありますが、部署ごとのビジネスモデルである場合はテクノロジーの共通化といった動きは取られないことがほとんどです。
一方で、情報システム部門が担う責務として、全社システムの最適化やガバナンスがあります。特に部署ごとにデジタル技術を活用したビジネスモデルが乱立することが予想される中、情報システム部門として企業におけるシステム利用方針のガバナンスを利かせることは今後より求められることが予想されます。
企業全体としてのデジタル戦略とIT戦略は異なるものの、ガバナンスの観点でデジタル戦略をスムーズに推進させることをIT戦略を担う部署・メンバーとしては必ず意識する必要があると言えます。
主にコンテンツが対象となるデジタル戦略、コンテンツ以外が対象となるIT戦略
デジタル技術を活用して生成したコンテンツ・データそのものが戦略上の重要要素となることが多いのがデジタル戦略であり、システム基盤やソリューションといったソフトウェア・ハードウェアが戦略上の重要要素となることが多いのがIT戦略と言えるでしょうか。
もちろん例外もあります。例えばあるデジタル戦略において上記のコンテンツ・データを配信するプラットフォームを提供するビジネスモデルを考える場合であれば、コンテンツ、コンテンツ以外のシステム基盤・ソリューション・APIといった要素の全てが重要要素となると言えます。
ただし、この場合でも「システム基盤・ソリューションの提供行為そのものが価値に繋がる」「システム基盤・ソリューションの構築・利用行為が価値に繋がる」かどうかがデジタル戦略とIT戦略の違いになってきます。
まとめ
これまで述べてきたデジタル戦略とIT戦略の違いを要約すると以下のとおりとなります。
・企業で活用しているテクノロジーに特化した戦略がIT戦略。テクノロジーを含めたビジネスモデルに対する戦略がデジタル戦略。
・ビジネス戦略を前提とするのがIT戦略。必ずしもビジネス戦略を前提としないのがデジタル戦略。
・これまではテクノロジーに関連する戦略を実行する部署は情報システム部がほとんどだったが、デジタル戦略を実行する部署は全ての部署となるため、テクノロジーと無関係ではいられなくなる。
・テクノロジーは効率の観点でビジネス上必要である、という考え方から、テクノロジーはビジネス構造上必要不可欠な要素である、という考え方への変化がデジタル戦略のポイント
参考:
「Big4」各ファーム独自の「DX推進ポジション」特徴・転職年収事例・キャリアパスまとめ
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/big4dx2019
「DX推進」人材とは?【フェーズ毎に求められるスキル・経験】
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/dx-capability
厳選20社【日本発 AIベンチャー企業一覧】<2020年版>
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/aistartup
=================
今回の記事では、「デジタル戦略」と「IT戦略」の違いについてご紹介しました。
キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。