デジタイゼーションとデジタライゼーション”定義・効果”の違い

デジタルトランスフォーメーション(DX)を実施していくうえで理解すべき言葉に、「デジタイゼーション」および「デジタライゼーション」というものがあります。デジタルトランスフォーメーションを実現していくためには、これらのステップを踏み、企業・組織の成熟度を向上させていくことが重要となります。
今回の記事では、デジタイゼーションおよびデジタライゼーションの概要や主な施策例などについて整理することで、両者にはどのような違いがあるのか解説します。

【目次】

  1. デジタルトランスフォーメーションのステップとは
  2. デジタイゼーションとは
  3. デジタライゼーションとは
  4. デジタルトランスフォーメーションへの発展へ向けて

デジタルトランスフォーメーションのステップとは

自社が十分にデジタル化されていない中で、一足飛びにデジタルトランスフォーメーションを実現することは困難です。デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、企業の成熟度に応じた取り組みが必要とされています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か

そもそも、デジタルトランスフォーメーションとは何なのでしょうか。政府のIT戦略である「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」※では、デジタルトランスフォーメーションを以下のように定義しています。

Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション、DX)は、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変すること。企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽けん引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。

※参考:世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画
https://cio.go.jp/data-basis

この定義におけるポイントは、「新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変すること」という部分にあります。デジタルトランスフォーメーションの取り組みは、新たなビジネスモデルの創出や既存ビジネスの柔軟な改変のために行うものです。
従来のIT化の考え方では、ITシステムは業務を効率化するために導入されるものであり、ビジネス自体を改変するようなものではありませんでした。一方で、デジタルトランスフォーメーションの考え方では、デジタル技術を活用してビジネス自体を変革していくことが目標となります。

デジタルトランスフォーメーションのステップ

しかしながら、多くの企業においては一足飛びにデジタルを用いたビジネスの新規創出や改変を行うことは困難といえるでしょう。このような取り組みを行うためには、まず自社の基盤がデジタル化されていることが前提となるためです。例えば、AIを用いて顧客の好みに合わせた柔軟な商品の提供を実現したいとしても、顧客の好みに関するデータがデータベース上に蓄積されていなければ実現は不可能です。
よって、経済産業省が公表している「DXレポート2」※では、企業・組織のデジタル成熟度を、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3ステップに分解することを推奨しています。
この考え方に沿うと、企業は自社の成熟度に従ってデジタイゼーションの取り組み、もしくはデジタライゼーションの取り組みを経たのち、最終目標としてデジタルトランスフォーメーションを目指すことになります。

※参考:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

デジタイゼーションとは

それでは、デジタイゼーションとはどのような段階であり、デジタイゼーションを実現するためにはどのような施策を行うとよいのでしょうか。以下で解説します。

デジタイゼーションの定義と概要

上述した「DXレポート2」によれば、デジタイゼーションとは「アナログ・物理データの単純なデジタルデータ化」を意味するとしています。
これまで人が手作業で行っていた業務をシステム化したり、紙ベースで管理していた資料をデータベースに登録したりすることがデジタイゼーションの例といえるでしょう。
デジタイゼーションは、従来の「システム化」に近い概念です。社内の特定の業務や作業にITを適用することで自動化・効率化するのがデジタイゼーションといえます。

デジタイゼーションにより得られる効果

それでは、デジタイゼーションを実施することで企業はどのような効果を得られるのでしょうか。従来、企業はシステム化を行うことで業務効率化を図り、人件費の削減や外注費の節約などを実現してきました。当然、デジタイゼーションにもこのような効果はありますが、デジタルトランスフォーメーションの文脈の中で重要なのが、「これまでアナログでしか管理されていなかったデータをデジタル化する」という観点です。
当然ながら、紙などにある情報をそのまま機械で可読することはできません。これらの情報を用いてデジタルトランスフォーメーションを実現するためには、デジタルデータ化が必要となります。しかし、企業の多くの業務がいまだアナログであり情報がデジタルデータ化されていないという現状があります。
例えば、コロナ禍により多くの企業がテレワークを導入しましたが、そこで障壁となったのが押印の文化でした。日本企業の多くは押印により承認フローを設定していたため、テレワークでの業務遂行が困難となりました。
このような業務に対してデジタイゼーションを進めていくことで、業務を通してデジタルデータが得られるようになります。例えば、ワークフローシステムにより押印業務を代替することで、ワークフローシステムに決済履歴データが蓄積されていきます。このデータを可視化したり、分析したりすることで、業務量の分析や改善策の検討などにつなげていくことも可能となるでしょう。

デジタイゼーションを実現するための施策例

以下では、デジタイゼーションを実現するための施策をいくつか紹介します。
例えば、電子契約システムの導入による契約手続きのデジタル化は一つのデジタイゼーションといえるでしょう。近年では多くの企業で電子契約を導入しつつあり、企業間の取引においても有効な手段となっています。
また、スキャナなどを利用して紙資料のデジタル化を進めていくことも一つです。折しも、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法では、これまで条件が厳しかった決算書類や会計帳簿、契約書や注文書などの書類などの電子保存要件が大幅に緩和されており、多くの企業で導入しやすいものとなりました。これらの書類を紙で保管していた企業も、今後はデータベースに保管していくことも検討できるかもしれません。

デジタライゼーションとは

デジタイゼーションの次のステップはデジタライゼーションです。デジタライゼーションとはどのような概念なのでしょうか。

デジタライゼーションの定義と概要

同様に、「DXレポート2」ではデジタライゼーションを「個別業務・プロセスのデジタル化」と定義しています。
デジタライゼーションの概念は、よりデジタルトランスフォーメーションに近しいものとなります。デジタルトランスフォーメーションとデジタライゼーションの違いは、自社のデジタル化の範囲です。デジタルトランスフォーメーションは「全社的な業務・プロセスのデジタル化」と定義されるものであり、例えば製造業であれば調達・製造プロセスから流通、販売まですべてがデジタル化されている状態です。一方でデジタイゼーションは、その前段階として個別の範囲でデジタル化が実現できている状態といえるでしょう。具体例を挙げると、デジタイゼーションにより収集できるようになった顧客情報を元に顧客分析を行い、顧客体験の改善を行うような活動がデジタイゼーションの取り組みといえます。

デジタライゼーションにより得られる効果

デジタライゼーションを実現することで、個別の範疇ではあるもののデジタル化による新たな価値創出や新ビジネスの提供などを実現することができます。
例えば、既存の製品・サービスについてその提供方法をデジタル技術の採用により見直すことで顧客体験を高め、より選ばれやすい商品・サービスとすることもできます。ここでは、一つの事例として、小売業におけるOMO(Online Merges with Offline)を紹介します。OMOとはECサイトなどのオンラインと店舗棟のオフラインを融合させることで新たな価値を提供する取り組みのことです。アパレル業界のある企業では、ECサイトでは顧客が試着することができないという悩みを解消するために、ECサイト上で気になった商品を店舗で試着できるサービスを提供しました。これは、店舗での体験とECサイトでの体験を融合することで、顧客の不満点を解消し、新たな顧客体験を生み出している例といえるでしょう。
このように、デジタイゼーションにより他社との差別化を実現し、より顧客から選ばれる企業となることができます。

デジタライゼーションを実現するための施策例

デジタライゼーションを実現するための施策例としては、上述した顧客体験設計の取り組みに加え、カメラやセンサーデータを利用したAIの活用や、業務プロセスのRPA化などが挙げられます。
例えば、製品の目視検査業務をAI化する取り組みでは、製造ライン上にカメラを設置し、画像を解析することで、その製品が正常か異常かを人手によらず判断することができます。
また、PCを利用した定型的かつ大量の作業であれば、RPAを通してプロセスを自動化することも可能となります。例えば、紙の申込書から必要な情報を読み取ってリスト化するような作業でも、スキャナとAI-OCR、RPAを組み合わせることで高い精度で自動化することができるでしょう。

デジタルトランスフォーメーションへの発展へ向けて

このように、デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、段階的な取り組みが有効です。「DXレポート2」でも、各企業の現状に応じて、自社がデジタイゼーションの段階なのか、デジタライゼーションの段階なのかを業務プロセス別に整理したうえで、デジタルトランスフォーメーションを目指すためのロードマップを検討するべきとしています。
デジタイゼーション・デジタライゼーションの違いについて理解することで、より実現性の高いデジタルトランスフォーメーションの取り組みを実現できるといえます。

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今回の記事では、デジタイゼーションおよびデジタライゼーションの概要や主な施策例などについて整理することで、両者にはどのような違いがあるのか解説しました。
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