【IT企画職向け】現場や幹部からのDXに関する依頼への対処方法

デジタルトランスフォーメーション(DX)、IoTやAIといったキーワードをよく耳にするようになりました。多くの企業では「DX推進」「IoT推進」といった名称の付いた組織を作り、それらの仕組みを社内に広めようという動きが定着しつつあります。
また政府も企業のDXを推進すべく、DXを進めている企業に対して税制優遇策を検討しているというニュースが先日発表され、企業のDX推進は益々加速していくことが予想されます。

今後益々ニーズが高まるであろうDXやIoTの推進を担うIT企画職。ところが、IT企画職の方から話を聞くと、現場や経営幹部からのDX、IoTやAIを導入したいという問い合わせが増えているものの、「DXとおっしゃっているが具体的にどのようなことをしていくのかというビジョンがない」や「具体的に○○のシステムを使ったデータ分析を行いたいという”手段”は明確にあるが、何のためにやるのかという目的がぼやけている」といった課題を耳にします。

そこで、今回の記事では、大手事業会社のIT企画職の方々からお聞きした声なども参考に、現場や経営幹部からのDXに関する依頼への対処方法を順序に沿ってご紹介いたします。

【目次】

  1. 現場・経営幹部からのDXに関する依頼を受ける
  2. DXを実現するための手段・目的の明確化
  3. DXを実現するための検証「PoC」
  4. DXの実現に向けた「PoC」後の対応

現場・経営幹部からのDXに関する依頼を受ける

多くの事業会社ではDXを推進するために「DX推進」「IoT推進」といった部門横断型の組織を作って、それらの仕組みを広める活動をしているのが一般的です。
まずは「DX推進」「IoT推進」の組織に所属するいわゆる「IT企画職」がどのような形で、現場や経営幹部からそのような問い合わせを受けるかについて紹介いたします。なお、依頼の受け方は入社される企業の体制によって大きくことなるため、今回ご紹介する内容はほんの一例という位置づけで理解してください。

入社されるもしくは既に所属されている企業が比較的DX化が進んでいる組織であれば、既に問合せ窓口が整備されていたり、社内のポータルサイト上に「DX導入のマニュアル」等が社内公開されたりと、業務プロセスが整備されていることが期待できます。そのような企業に在籍されるかたは、社内での役割分担がはっきりしている場合が多いですので、仮に問い合わせが来たとしても比較的仕事がしやすい環境だと思います。

一転、DX化が進んでいない企業だとそもそもそのような業務プロセスが固まっていないため、様々な問題が想定されます。
一つは現場が各々でITベンダーからの提案を受け、IT企画部門が把握していないうちに勝手に話を進めてしまっているケースです。このようなケースでは組織の規模が大きいほど発生しうる問題です。
例えば、ITベンダーがIT企画部門を通さずに直接工場の生産部門にアプローチをかけている場合、生産部門独自でDXの仕組みが構成されてしまい、社内システムの統制がとれないという事態に陥ることが考えられます。ようするに同じような仕組みが部署ごとに構成されてしまうため、結果的に多重投資になるケースがよくあります。
提案段階での問い合わせであれば、特に問題はないのですが、企業が採用している標準のクラウドサービスと全く異なる思想が提案されている場合は、その仕組みを採用しないようにするといった調整が必要になるでしょうか。

二つ目に現場や経営幹部がAIやIoTを使えば素晴らしい新事業が起こせるという幻想を頂いているケースです。よくある問合せとして、とあるITベンダーから提案を受け、「○○のデータ分析の仕組みを使いたい」というものがあると聞きます。
ここで気を付けないといけないのは、現場がその仕組みを導入して、どのような課題を解決していきたいのかという目的がはっきりしているのかについてです。
問い合わせの多くがこの目的や課題がはっきりしないまま手段に手を出そうとしている場合が散見されます。逆に経営幹部は「DXを社内に広め、業務革新を行い、更なる収益を拡大する」といったミッションは出されますが、具体的な手段についてはIT企画担当に委ねるケースがほとんどだと聞きます。
次にそのような状態から打破するための手段について簡単に解説します。

DXを実現するための手段・目的の明確化

DXを実現するためには、「適切な目標の設定」が必要だとされています。何のためにDXを実現したいのかがはっきりしないと、期待していた投資効果が得られないという事態に陥るためです。
仮に現場から「とりあえずIoTの仕組みを試してみたい」という要望を受けた場合、IT企画担当は現場担当者に対して理由を問いかけてみるとよいです。すると現場担当者自身が何のためにIoTやAIといった技術を取り入れたいのかという目的を把握していないことが分かる場合があります。
そのような事態に陥った場合、下記の2通りで目的・目標の設定を行うことが一般的でしょうか。

・現場にヒアリングを行い、机上で検討する
・「PoC」で目的・目標の精度を高める

1点目については、IT企画担当が現場にヒアリングを行い、現状を把握し課題を見つけ、それらの課題を解決するためにはどのような仕組みを入れると効果的なのかについて仮説を作っていくような工程になります。一般的にITコンサルが行うような業務のイメージです。
この手法を用いた場合に陥る典型的なパターンとしては、机上でのやり取りに終始し、結果的に取り組みが何も進まないことです。「数年前にも同様のことを検討して、未だにステータスが変わらないような検討項目があった」という声もありました。
2点目は「PoC」です。DXが新たな分野であり、机上では効果判定が難しい面があるためか、近年では「PoC」による効果測定が主流になりつつあります。これ以降は「PoC」を採用した際の手順やそもそも「PoC」とは何かについて、詳しくご説明いたします。

DXを実現するための検証「PoC」

ご存じの通り、PoCとはProof of Conceptの略で直訳すると「概念検証」です。「概念検証」という言葉ではピンと来ない場合は、「実証実験」という言葉の方がイメージつきやすいかもしれません。役割としては、新たなアイデアや企画、構想に対し、目的とする効果や効能が得られるのかといったことを、プロジェクト開始前に検証することです。1点目の「机上での検討」と違い、PoCは実物で実験できるということが強みです。
アイデアや企画がぼんやりしている場合でも、PoCを行うことで明確にするということも可能です。実際のユーザにシステムを使わせることにより、課題を抽出することでアイデアをより具体化する効果が期待できます。

PoCのステップは下記の3段階で実施することが一般的です。

①試作、実装
②検証
③実現可否の判断

第1ステップの「①試作、実装」は構想を検証するための仕組みを作ることです。このフェーズでは可能な限り小規模の投資に留めることが望ましいです。また構築期間も可能な限り短期間で作り上げることが重要です。
第2ステップの「②検証」は構築したシステムを実際に関係者に利用して頂き、フィードバックを収集します。これにより机上での検証で抽出できないような問題や、思いもよらない新たな方向性などを発見することが可能です。
第3ステップの「③実現可否の判断」は、構想を実現すべきか否かの判断になります。投資に対して十分な効果が見込まれる場合は、実用化や本格導入に向けたプロジェクトを開始します。そうでない場合は「PoC」で終了となります。

この「PoC」、IoTやAIなどDXの領域ではよく採用されている方式ですが、成功率は決して高くないのが現実です。PoCに関する調査などでは、IoTプロジェクトにかかわったITリーダーや経営層の全体の60%がPoCの段階で行き詰っているといったことをよく目にします。
そのような事態に陥る要因としては、
・IoTやAIに関する社内のノウハウ不足
・企業内に必要なデータが溜まっていない
・他部門との連携が不足していた
・予算が膨れ上がった
などが挙げられます。

IT企画担当は、これらの要因を可能な限りつぶしこむような働きが求められます。例えば、想定利用者のケースが不足しているという事態に陥った場合は、関係部門に対して協力の要請する、といった調整を行う必要があります。
それらの要因をつぶしこんで、可能な限りPoCの成功に導くことが望ましいようです。

DXの実現に向けた「PoC」後の対応

PoC後にそのまま本格プロジェクトに移行出来ればよいですが、仮にPoCで行き詰り、本格プロジェクトに移行できなかった場合、必ずしもそれは「失敗」だと決めつける必要はありません。
仮に「企業内に必要なデータが足りていない」という結果であれば、その問題が表面化しただけでもそれはプラスだと考えるべきでしょうか。
データが足りないのであれば、今後はデータを蓄積するための取り組みを進めるなどと言ったネクストアクションが明確になります。
ネクストアクションが明確になっただけでもPoCを実施したメリットはあるかと思います。そのため「PoCの失敗=会社の損失」と決めつける必要はありません。
現場や経営層に取り組み結果を報告する際は、事実を伝え、ネクストアクションをポジティブな表現でご説明すれば納得は得られやすいのかもしれません。机上の空論で結局なにも進まない、何の情報も引き出せなかったという事態に陥るよりは、何倍も価値のある活動だったといえるのではないでしょうか。

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今回は、IT企画職の方向けに、現場や幹部からのDXに関する依頼への対処方法についてお伝えしました。

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