英語の知識は監査法人での業務に限らず様々な場面で必要とされます。監査法人で働く公認会計士にとっても英語は重要ですが、英語の習得は一朝一夕にできるものではありません。
そこでこの記事では、監査法人で働く公認会計士に必要な英語力について説明します。また監査や海外勤務において公認会計士が英語を習得する必要性についても解説します。
【目次】
- 監査法人に入所後、業務にすぐ英語力が必要か
- 公認会計士に英語力がある場合のメリット:クライアントが外資系企業
- 公認会計士に英語力がある場合のメリット:クライアントが日系企業
- BIG4監査法人における公認会計士の英語力
- USCPA(米国公認会計士)を取得した場合のメリット
監査法人に入所後、業務にすぐ英語力が必要か
監査法人で公認会計士がどの程度の英語力を必要とされるかは配属先の環境によります。原則として、日本で監査法人に就職した場合、通常はいきなり流暢な英語力を求められることはないため安心してください。
また仮にスタッフとして監査法人の国際部門に配属されても、いきなり海外に出向になることはありません。加えてクライアントは外資系企業の日本支社であるケースが想定されます。外資系企業であるとはいえ、結局日本人と一緒に仕事をすることが多いため、業務を英語だけで行う可能性は低いです。
就職活動においても必要以上に英語力を確認されることはなく、内定者でもTOEICのスコアが500~600点程度というケースもあります。ただし、エントリーシートにはTOEICのスコアを記載する場所があり、特に配属部署を決める上では英語のレベルも考慮されるため注意しましょう。
高い英語力がなくても、監査法人に入って公認会計士になること自体は可能です。しかし英語力を身につけた上で向上させれば、公認会計士としての仕事の幅が広がり、仕事で得をする機会が増えます。
公認会計士に英語力がある場合のメリット:クライアントが外資系企業
公認会計士に英語力がある場合、主に5つの場面で活躍できるというメリットがあります。
クライアントの社内文書の閲覧・理解
監査法人の外資系企業の担当者が英語を使う場面として1つ目は、クライアントの社内文書の閲覧・理解が挙げられます。ご存じの通り、監査では社内規程・請求書などの監査証拠を収集し、読み取ることが必要です。そして外資系企業の場合は、ご想像の通り、社内文書は英語で書かれています。そのため、社内文書を読んで理解するためには、英語力、特に読解力が重要なのです。
専門的なことが英語で書かれているため「かなり高度な読解力が必要なのではないか」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、実は専門用語を用いた文書の方が理解しやすいものです。社内文書は、大学受験の際によく目にする正式な英語を用いて書かれているためです。
逆に、専門用語が全くない文書の方が理解しにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ビジネス英語とはいえ専門文書よりは日常的な英語であるためです。
IFRS、USGAAPおよび最近の会計基準の読解と理解
監査法人の外資系企業の担当者が英語を使う場面の2つ目に挙げられるのは、IFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国会計基準)、最新の会計問題の読み解きです。外資系企業の場合、外国本社や海外拠点がある国で決算を行う必要があります。そのために、IFRSやUSGAAPなどの会計基準が用いられます。
つまり、日本基準で作成された財務諸表をIFRSやUSGAAPに変更することや、逆にIFRSやUSGAAPで作成された財務諸表を日本基準に変更することが求められます。この場合、IFRSやUSGAAPで作成された海外本社や海外拠点の財務諸表を読み、理解するためには英語力が必要です。また、IFRSやUSGAAPを理解するためには、英語の知識も求められます。さらに、最新の会計理論について学ぼうと考えた場合、英語で情報収集する方が、質の点で望ましいです。
クライアントとのコミュニケーション
監査法人の外資系企業の担当者が英語を使う場面として3つ目に挙げられるのは「クライアントとのコミュニケーション」です。クライアントの会計の担当者が外国人の場合、メールや電話などは英語で行われます。
もちろん、日本国内に拠点のある会社の場合、たとえ外資系企業であっても日本語を話せる外国人は多いです。しかし、担当者が日本語を話せても、メールのccに海外のマネージャーなどが入っているケースも少なくありません。その場合、コミュニケーションは英語で行われます。また、クライアントの経理担当者とのやりとりは英語で行われることが多く、そうしたメールを監査証拠として使うには、英語で読み、理解する能力が必要です。
海外の監査チームとの交流
監査法人の外資系企業の担当者が英語を使う場面として4つ目に挙げられるのは、外国人監査チームとのコミュニケーションです。外資系企業の場合、本国の監査チームに日本企業の監査結果や問題点を伝える必要があります。
また外資系企業の場合、連結の範囲に含まれる重要な海外拠点の監査結果や問題点を知るために、現地の監査チームとえいごコミュニケーションをとる必要があります。その場合、英語でのコミュニケーションは。近年、国際的な脱税が注目されており、監査の効果性・効率性を確保するために海外の監査チームとの協力がますます求められています。
海外赴任
監査法人の外資系企業の担当者が英語を使う場面として5つ目に挙げられるのは、海外赴任です。外資系企業の場合、日本から海外拠点の監査チームに派遣されるケースが少なくありません。またそもそも海外駐在目当てで、外資系企業の担当を希望する人もいます。
もちろん、海外で仕事をする際には英語が必須です。日本の監査チームとのコミュニケーションは日本語でも可能ですが、現地の監査チームの一員として活動するため、英語でのコミュニケーションは欠かせません。
公認会計士に英語力がある場合のメリット:クライアントが日系企業
公認会計士に英語力がある場合、主に以下の2つの場面でメリットがあります。
海外企業の買収
監査法人における日系企業の担当者が英語を使う場面としては、まず「海外企業の買収」が挙げられます。日系企業であっても外国企業を買収する際には、買収先の企業を調査し、現地の監査チームから情報を入手する必要があります。また、被買収企業の現地監査チームから情報を得るためには、英語が必要です。買収だけでなく、海外の未上場企業に投資する際にも、株式の評価額を計算するために英語が必要なのです。
昇進&転属
監査法人で日系企業の担当者が英語を使う2つ目の場面は、「昇進&転属」です。最近は、国内企業担当者でもTOEICなどの試験結果の提出を求められるようになりました。英語力が昇進の決め手になりつつあるのです。英語力が高いことを証明できれば、外資系企業への出向や海外赴任など、キャリアの可能性を広げられます。
「日系企業をクライアントとする人の英語力を評価してどうするのか」と考える人も多いかもしれません。しかし、いくら国内企業であっても、外国企業と取引を始める可能性は常にあります。その取引の監査には、契約書や相手方のビジネスの状況を英語で理解することが必要です。
そのため、日系企業をクライアントとする人物の英語力を見極めることは、監査法人にとって非常に重要なのです。
BIG4監査法人における公認会計士の英語力
4大監査法人(BIG4)の1つであるPwCでは特に英語力が評価される傾向があります。そして、4大監査法人の国際部門の公認会計士の方から「国際部門に配属されるにはTOEICのスコアが800点以上、海外に出向になるにはTOEICスコアが900点以上あると有利だ」との声もお聞きしました。
これらの監査法人は、世界中に事務所を持ち、様々な国境を越えて活動しています。海外法人との日々の業務メールや報告書などのコミュニケーションは英語で行われるケースが多いです。
また日々の業務によっては、管理職候補としてグローバルな研修プログラムに参加したり、海外拠点に赴任したりすることもあります。
実際の監査業務では、先述した通り、海外の監査法人とコミュニケーションを取らなければならないシーンもあります。年次が低いのであれば、英語圏のトップマネジメントやチームメンバーとのコミュニケーションは英語が流暢な上司や同僚の力を借りつつ行う場合もあります。
経験を積み、上級社員や管理職へとキャリアアップしていくと、日本人以外の同僚と接することも多くなり、高い英語力とコミュニケーション能力が必要とされます。特に、マネージャーやシニアマネージャー以上になると、パートナー(社員)と一緒にクライアントの経営陣や海外拠点に出向くことが多くなります。この場合、コミュニケーション言語は英語であるため、日々英語力を磨いておくことが大切です。
USCPA(米国公認会計士)を取得した場合のメリット
監査法人で勤めながらダブルライセンスとしてUSCPA(米国公認会計士)を取得する人もいます。USCPAを取得するとどういったメリットがあるのでしょうか。
リファラルワーク
リファラルワークとは、海外に本社を置く企業の子会社が日本法人である場合に、日本の監査法人が海外の監査法人に依頼され実施する手続きのことです。通常、英語での指示が含まれるため、仕事の遂行には英語力が必要です。リファラルワークはあくまで親会社の監査役の業務を補完するものであり、監査証明書を提出する必要はありません。
USCPAはUSGAAPやIFRSに関する知識を身につけていることが多いため、リファラルワークの要員として貢献できます。外資系監査の支援には、英語ができるUSCPAが大いに役立つのです。
海外で働く
USCPAを取得すれば、海外で働く際に有利です。公認会計士が海外で働く場合、日本の監査法人から出向で行く場合と、海外の監査法人に直接雇用されるケースが考えられます。資格を取得後に晴れて海外勤務が決まった場合は、現地ファームのホームページやSNSなどをチェックして、詳細を調べておきましょう。
=================
>監査法人へのキャリアに関する記事
コンサルファームから監査法人アドバイザリーへの転職時によくある質問と回答例
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/firmtoadvisoryqa
リスク領域における「コンサルティング」と「リスクアドバイザリー」の違いとは?/有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 オペレーショナルリスク・事業ユニット長 パートナー 仁木一彦さんインタビュー
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/tohmatsuriskintv
有限責任 あずさ監査法人/「会計士、コンサル経験者によるシナジー体制」互いの強みを生かしたサービスに定評を持つアカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部の魅力
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/azusapi
=================
今回は、監査法人の公認会計士が英語とどのように向き合っているのか、その状況についてお話ししました。クライアントの業種や環境に合わせて、実務で英語を使う公認会計士もいれば、使わない公認会計士もいます。
ただ今日のグローバル社会では、英語を学びスキルとして使えるようになれば、どのような仕事でも役立つ機会が多いものです。公認会計士の世界でも同じで、会計の知識とともに英語のスキルがあれば、活躍の場を広げられます。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。