投資銀行「欧州系(ヨーロッパ)」のビジネススタイルや年収を解説【他地域との比較】

外資系の投資銀行を検討される方より、「米国系(アメリカ)」「欧州系(ヨーロッパ)」の違いについてご質問いただく機会があります。
そこで、今回の記事では欧州系の投資銀行の特徴や年収、代表的な欧州系投資銀行について、実際に働かれた方の声も参考にご紹介します。

【目次】

  1. 欧州系の投資銀行とは?
  2. 欧州系投資銀行のビジネススタイル
  3. 欧州系投資銀行の労働環境
  4. 欧州系投資銀行の年収
  5. 欧州系投資銀行の代表企業とその特徴

欧州系の投資銀行とは?

欧州系の投資銀行とは、その名の通り「欧州に本拠地を構える投資銀行」を指します。米国は1つの国であるのに対して、欧州は主要国に絞っても複数の国の金融機関が日本に進出しているため、意外に欧州系の投資銀行は数が多かったりします。

米国系と比較して規模の小さい投資銀行も多いため、どこまでを「大手」とするかは人の感覚により異なりますが、概ね下記に並ぶ投資銀行は、比較的知名度が高いでしょうか。

・ドイツ銀行(ドイツ)
・ クレディ・スイス(スイス)
・ UBS(スイス)
・バークレイズ(英国)
・ BNPパリバ(フランス)

そもそも国が違うので、一口に欧州系といっても社風は異なるようです。その辺りは後半の企業別の特徴のところで触れていきます。

欧州系投資銀行のビジネススタイル

まずは欧州系投資銀行の全般的な特徴に触れていきますが、個社・チームによっても特徴はかなり異なりますので、あくまで平均的な傾向として捉えてください。

全般的に米国系の投資銀行と比較すると小規模で、特定のプロダクトやビジネスを強みとしている傾向にあります。従って、投資銀行の規模の大きさの指標とされるリーグテーブルで見ても、全く入っていなかったり、特定のビジネスでのみランクインしていたりします。

また、いわゆる一般的な投資銀行のプロダクトであるファイナンスやM&A、IPOと比較してニッチな市場関連のソリューション(ヘッジ・デリバティブなどカスタマイズされた金融商品の提供など)、ウェルスマネジメントなど、一般的には投資銀行ビジネスに含まれないビジネスを強みとしている企業もあります。いずれにしても自身がチャレンジしたいプロダクトによって適した投資銀行が異なってきますので、企業選びには注意が必要です。

欧州系投資銀行の労働環境

米国系と比較してまったりしている、解雇にもなりにくいといった特徴がよく噂される一方で「そんな傾向はない」と主張する経験者もいます。

やはり実際には緩やかながら一般的にイメージされるような傾向がある一方で、個社・チームごとの状況にも大きく左右されるため、人によって感じ方が異なるのだと思われます。

また、普段関わっているメンバーの中ではそれぞれ連携しながら成長していくカルチャーがある一方で、本国の意向によってチームごと撤退となるようなケースもあります。こういった場合は普段接している社員の考えと、実際の解雇のリスクがリンクしていないため、働いている社員ですら、どの程度リスクが高いのかよくわからない場合もあります(これは欧州系とか投資銀行とかに限らず、外資系では一般的に想定されることです)。

欧州系は全方位的に投資銀行ビジネスを提供せず、収益性の高いビジネスに特化する傾向が強いため、組織の変更もフレキシブルに行われる印象があります。統計などは存在しないので推測にはなりますが、比較的「部署ごとなくなる」リスクは米国系と比較して高いといえるかもしれません。一方で、現場のメンバーにおいてはチームでしっかり人を育成するカルチャーを持っている傾向にあります。

労働量については、外資系であるからには激務であることには変わりありませんが、日系でもかなり激務なので、投資銀行としては中程度か、チームによっては投資銀行としてはマイルドな部類に入る場合も珍しくありません。欧州本国は基本的に長時間労働を良しとはしないカルチャーである上、米国と違って日本の夕方〜夜間から欧州の人間とコミュニケーションが取れるため、時差による残業のリスクが少ない点も、米国系と比較した場合の残業量の抑制につながっています。

欧州系投資銀行の年収

報酬は米国系>欧州系>=日系といった羅列になるのが一般的です。日系でも高めな報酬体系を採用している企業や、転職での条件によっては欧州系に並ぶことも珍しくありません。部門別採用が日系の投資銀行でも多くなってきたことなどを背景に、両者の差は小さくなってきているように思えます。

欧州系については企業ごとの報酬水準の差が大きいため、詳細は、この後記載する個別企業の情報も参考にしてください。

以降は基本的に投資銀行のフロントの職種のイメージで紹介していきます。(具体的な年収の詳細について知りたい方は、ぜひご相談ください)

概ね新卒の初任給のベースが600〜800万円程度となり、ボーナスを含めても1000万円を超えるケースは稀のようです。順調にいけば20代で1000万円に到達するケースが多いものの、フロントでも市場環境や部署によっては30前後での到達となる場合もあります。(この辺りで日系の最大手クラスが追いついてくる場合があるということです)

好況時には株を扱っている部署(市場の株関連の部署、株式ファイナンスなど)では30代に3000万円に到達するタイミングがある、というケースもありますが、中央値を取ると30代にVPに上がったころで年収1500〜2000万円といったところです。いうまでもなくVPは業績によって年収水準が大きく異なるため、上記はあくまで中央値です。

それ以降は出世・会社の業績によって大きく左右されます。シニアクラスの報酬水準は逆に個社の契約条件やインセンティブの条件によって変わってくるので、かえって米国系・欧州系という意味での差は無くなってくると言えます。

欧州系投資銀行の代表企業とその特徴

先にも書きましたが、一口に欧州系の投資銀行といっても、本拠地とする国も様々であることから、個別企業の差異は米国系よりも大きいといえます。代表的な欧州系投資銀行について紹介していきます。
※2021年時点での情報ですので、現在の詳細について知りたい方は、ぜひご相談ください。

ドイツ証券(ドイツ)

ドイツ銀行グループはドイツ銀行・ドイツ証券・ドイツアセット・アセットマネジメントと複数のチャネルで日本に進出しており、そのうち投資銀行ビジネスはドイツ証券がおこないます。ドイツ証券の場合は、純粋な投資銀行ビジネスとしてはM&Aを強みとしています。また、日本では市場部門に含まれる場合もありますが、債券・為替のセールス・トレーディングなどにも強みがあります。

クレディ・スイス(スイス)

クレディ・スイスは、実はウェルス・マネジメントにおいて強みを持つ企業です。日本でもウエルス・マネジメントのビジネスもおこなっています。その為か投資銀行においても債券・株といったファイナンス関連のビジネスに強みを持っています。リーグテーブルを見るとIPOなどで近年上位に食い込む年もありました。

債券に関しては利率が固定されているSB債よりも、スワップやデリバティブを活用した個々にカスタマイズされた資金調達ソリューションを提供するビジネスに長けています。市場シェアは小さくとも、収益性の高いビジネスに特化していると言えます。

UBS(スイス)

UBSもまたウエルス・マネジメントを強みとする金融機関の一つ。こういった土台があるためか、債券・株については投資商品やソリューション提供の意味合いが強いです。このビジネスは日系企業の場合は市場部門が対応する傾向にあります。一方でいわゆる投資銀行ビジネスではM&Aを中心におこなっています。M&Aを通じてファイナンスニーズが発生する場合もあるため、債券・株のファイナンス提案もおこなわない訳ではありませんが、現代の日本における主軸はM&Aになっています。

バークレイズ(英国)

バークレイズ・グループは英国大手の総合金融グループで、バークレイズ銀行、バークレイズ投信投資顧問とともにバークレイズ証券が日本でビジネスを営んでいます。投資銀行ビジネスはバークレイズ証券がおこなっています。やはりM&Aに強みを持つ一方、債券では近年知名度が高まりつつあるESG債券や私募債などの分野でビジネスをおこなっています。

BNPパリバ(フランス)

BNPパリバはフランスに本拠地を置く金融グループで、日本には銀行機能を持つBNPパリバ銀行と投資銀行を含む証券サービスを行うBNPパリバ証券が進出しています。

かつてはM&Aにおいてはリーグテーブル上位に入る時期もありましたが、近年はやや他の投資銀行と比較してビジネス規模を縮小している印象です。また、ファイナンス関連については証券化商品の組成や外債(外貨建てで発行される債券)の引受などに特化しています。近年のパリバは、債券・株・為替などの取引や投資ソリューションの提供など、どちらかというと市場部門のビジネスの方に強みを持っています。

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>外資系投資銀行へのキャリアに関する記事

投資銀行(IBD)と資産運用会社(アセマネ)の違い【両セクターの経験者に訊く】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankassetmanagement

実際に投資銀行で求められる「英語力」と「日系・外資系での違い」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankenglish

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以上のように、欧州系投資銀行は企業により強みとしているプロダクトに差があるのが特徴です。注力していないプロダクトはそもそもチームが日本に置かれていなかったり、不景気時に撤退されてしまったりするので注意した方が良いでしょう。

また、狭い意味では投資銀行ビジネスに含まない場合もある、有価証券のトレーディングのような市場部門を内包し、むしろそちらの方を強みとしている企業もあります。このあたりは慣れていないと混乱しがちですが「投資銀行」という肩書きに囚われず、どのようなビジネスをやっているか見極めるのが大切です。

欧州系の報酬は米国系と比較すると少し下がる、とはいうものの、依然として日本のサラリーマンとしてはトップクラスの報酬水準であることは変わりません。自分の強みと企業の強みがマッチする先がある場合は、ぜひ欧州系投資銀行にもチャレンジしてみることをおすすめします。

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