財務モデリングのよくある落とし穴と注意点

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ご存じの通り、財務モデリングとは、投資銀行やプライベートエクイティファンドが作成する財務3表を連動させて財務分析やシミュレーションを行うためのエクセルワークを指します。
今回は財務モデリングにおいて陥りやすいミスや落とし穴に関して記載していきます。
財務モデルを作成時にミスしやすかったり、細かい論点が気になったりした場合にどうすればいいのか、参考に見て頂ければと思います。

【目次】

  1. 財務モデリング作成時にありがちなミス
  2. PL編
  3. BS編

財務モデリング作成時にありがちなミス

基本的に会計処理に忠実に行えば完成しますが、会計上の処理を正確に行ったものが、理想的な財務モデルとは限りません。モデル作成の目的を明確にして、都度内容を考えながら作成することが重要です。

モデルがバランスしない

財務モデル作成時に最も陥りやすいのは、モデルがバランスしないという事態です。これには以下の要因が考えられます。

・CF計算書で減価償却費を足し戻していない

・参照先のセルが誤っている

・運転資本の変化の符号が逆になっている

・新たな勘定科目を追加し忘れている

・BS上にある科目を、過去の平均値や総資産%で計算しているにもかかわらず、CF計算書に反映させていない

・勘定科目の期首残高の参照ミスが生じている

参考資料:財務モデリング FAQs

財務モデリング初心者の方は会計知識よりもキャッシュフロー計算書の仕組みを理解することが肝要でしょう。

Cash残高がマイナスになる

これも財務モデリングでよくあるミスや落とし穴です。実際には当座借り越しにならない限り、キャッシュの残高はマイナスになりませんが、借入金のスケジュールを間違えると、将来期間のキャッシュ残高がマイナスになってしまうことがあります。

主な原因としては、ミニマムキャッシュの水準が実態を反映していない、Revolving credit lineのスケジュール・計算式が間違っている、等が挙げられます。FCF available for debt paydownにexcess cashを加算の上、借入金約定弁済額を差し引いてもミニマムキャッシュに足りていないときは、revolving credit lineを引いて不足分を借入します。借入金の水準と合わせて注意しましょう。

PL編

バックデータがあれば良いですが、持分法の投資損益は課税所得の計算に影響するため、なるべく織り込みましょう。また連結上は、関係会社株式の簿価も修正するため、忘れずに行う必要があります。

持分法適用会社が100の利益を計上した場合(持分20%)

関係会社株式 20/持分法投資利益 20

法人税等調整額は織り込むべきか」
引用:財務モデリング FAQs

他に、財務モデリング上、落とし穴になりやすい論点に税効果会計があります。

プロジェクション上必須な場合(対象会社に繰越欠損金=NOLがある、もしくはM&A model等で追加的にDTLが認識される)は、反映させることが重要です。
プラスとマイナスを間違えないように、DTA増加であれば法人税等調整額は貸方なので税金支払い額を減らします。

非支配株主に帰属する当期純利益(少数株主損益)の織り込み方

非支配株主に帰属する当期純利益は、親会社株主から見れば費用項目と実質的に同じです。
従って、PL のモデリングが終わりボトムの当期純利益が計算できたら、そこから非支配株主に帰属する当期純利益を減算することになります。逆に非支配株主に帰属する当期純損失であれば加算します。

非支配株主に帰属する当期純利益(少数株主損益)を財務モデリング上精緻に予測することはあまりないと思われますが、数字を前期の横置きにする場合でもBSの非支配株主持分の計算やCF計算書上での調整を忘れないようにしましょう。
BS非支配株主持ち分=期首残高+非支配株主に係る純利益(PL計上、CF計算書で調整) – 非支配株主に係る配当支払い (財務活動にかかるCF)という式になります。

減損損失が明らかに発生する期があるがどうしたらいいか

当該期にPLで特別損失として処理することになります。
その上で当該年度の課税所得の計算において、損金不算入項目として加算調整して法人税額を試算するのも忘れないようにしましょう。固定資産の簿価も同額減らすことを忘れずに処理します。

BS編

減損損失が明らかに発生する期があるがどうしたらいいか

未払法人税は個別にtax scheduleの中で計算することが望ましいです。
情報の粒度の問題で未払法人税等がその他流動資産に含まれてしまっているときは、運転資本の計算テーブルで行うのもやむなしではありますが、当期の法人税・住民税事業税等(PL)と、前期末未払法人税等の残高を参照し、中間納付があればそれも反映して計算すべきでしょう。

資産除去債務(ARO)の処理はどうすればいいか

面倒であれば横置きでも良いですが、詳細なバックデータがある場合には、時の経過より発生する利息相当額は取得額に加算します。
支払利息はPLの営業外費用の項目に含めて計上します。式で表すと以下のようになります。
期末ARO=期首ARO + 支払利息相当分(=期首ARO×利率)

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>PEファンド・投資に関する記事

財務三表の作り方をエクセルで解説【PEファンド採用テスト対策】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pefund_bspl_excelhowto

PEファンド入社1年目で身に付けておくべきスキル・経験【コンサル・投資銀行の方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/privateequityfundfirstyear

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このように最も基本的な財務3表モデル以外にも、応用版のM&AモデルやLBOモデルにおいても多くの論点や間違えやすい点がありますので、日々練習して実務で鍛えていくことが上達への近道です。
会計上の論点で分からないところがあれば、都度確認しましょう。

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