日系から外資系企業にマネージャーとして転職後、効果的に結果を出すための心得

日系企業でマネージャーとして活躍されていた方が、給与や待遇もアップした上で外資系企業のマネージャーとして転職されるケースがよくあります。一方、外資系企業と日系企業とのギャップに苦労する方もいます。

今回の記事では、短期間で外資系企業のマネージャーとしてドロップアウトしないためのノウハウについて、外資系企業で長く働かれているマネージャークラスの生の声なども参考にご紹介します。

【目次】

  1. 数字に対するコミットメント
  2. 転職先で求められる能力の把握
  3. 英語ができること
  4. スピーディーかつロジカルなコミュニケーション能力

数字に対するコミットメント

外資系企業の場合、数字へのコミットメントを強く求められます。日系企業でもその考え方は当然ありますが、外資系企業の場合との違いについて触れていきます。

数字を達成することが最大の貢献

数字を達成することに関し、外資系企業は非常にシビアです。理由として、外資系企業の給与体系が関係しています。メンバークラスの社員であれば基本給とインセンティブの2段階になっており、基本給の割合がそれほど高くはありません。一方で業績を上げたらその分インセンティブが発生する仕組みとなっており、好成績を挙げた人に対して十分すぎる対価が支払われます。

一方でマネージャー職となると、メンバークラスの社員に比べ基本給の割合が高くなる傾向があります。これはマネジメントしているメンバーが多く、責任範囲が広いため、最低限の保証という意味で十分な基本給が支払われるためです。

同時に、基本給の割合が高く、他の社員より給与が高いということは、当然責任も大きくなります。数字に対する責任も大きくなり、設定されたKPIを達成することへのプレッシャーが非常に大きく、数字を達成することでしか評価されません。

いかに数字を立てるかをストラテジックに求められ、必要であればリソースを要求したり、イベントに出てリードを獲得するなど、具体的なアクションを仕掛けていくことが重要です。その根底にあるのがなんとしても数字を達成するというマインドであり、そのためのアクションであれば惜しみなくリクエストする必要があります。

数字を達成しないことで待ち受ける処遇

数字を達成しないとどうなるのでしょうか。状況にもよりますが、いくつかパターンが考えられます。

①特に何もお咎めなし
②マネージャー職のポジションを外され、有無を言わさぬ部署移動
③自主退社の方向に持っていかれる
④突然の解雇

①の「特に何もお咎めなしの場合」ですが、これは四半期だけであればさすがに何もなく、もう少し我慢強く見守ってくれる可能性は高いです。通常マネージャーといえど、Ramp up期間と呼ばれる助走期間を設定され、その間は目標も通常より割り引いて設定されます。

次の四半期までには体制を整え、チームの業績を向上させるようあらゆる手を売っておく必要があるでしょう。

②「マネージャー職のポジションを外され、有無を言わさぬ部署移動」、③「自主退社の方向に持っていかれる」になると、リカバリーは非常に困難になります。一度貼られたレッテルは覆すことは困難を極めます。マネージャー職を外されて他の役職をあてがってくれるような会社ではない限り、②③になったら転職活動を始める人も出てくるでしょう。

しかし、外資系企業の場合、5年も10年も働く人は稀であり、それほど悲観的に考える必要はありません。外資系企業でのマネージャー職の実績を武器に、より良い条件で転職をしていくことは普通のことです。

外資系の場合、④「突然の解雇」のケースも実際にあります。

当時、人格者でもあり、社員の良き理解者であった上級職のマネージャーがいたのですが、四半期連続で数字を達成していませんでした。不穏な空気や噂が流れる中、いつものチームMTGに参加した際、上級職のマネージャーではなく、本国のCROと呼ばれる全世界の数字の責任を負っているマネージャーが参加していました。

そして、上級職のマネージャーは本日限りで退職すると告げられました。非常に驚きとショックで気持ちの整理がつきませんでしたが、数字を連続で達成していないから仕方がないなという納得感もありました。直接さよならも言えず、上級職のマネージャーと会うこともなくその人は会社を去っていきました。

これは外資系企業でよく聞く、次の日に出社してみたらクビになっていたという例を自身が直接ではないですが関係者として体験した例です。こういう経験は当人でなくとも自分にもそのリスクが少なからずあるという戒めにもなり、戦慄が走ったのを覚えています。

長時間労働などの頑張っている姿勢は評価されない

外資系企業では、長時間労働や頑張っていますというアピールはそれほど重要視されません。逆に家庭を大事にする人が多いため、短時間でパフォーマンスを出し、家族との時間を優先するという考え方が浸透しています。

好きでそのようにしているなら別ですが、朝早く来て、夜遅く帰ることに意味はなく、短期間で集中して働き、最高のパフォーマンスを上げることを求められるため、日系企業のマネージャーとはその点が大きく異なると言えるでしょう。

転職先で求められる能力の把握

外資系企業のマネージャー職として結果を出すためにどんな能力が求められるか、その点について触れていきます。

アンラーニング(unlearning)の重要性

日系企業でのマネージャー職で得た経験も評価され、外資系企業のマネージャー職になったとしても、このアンラーニング(unlearning)という考え方が結果を出す上で重視されます。

会社は日系企業のマネージャー時代で得た経験を活かして欲しい一方で、一度以前学んだ経験や考え方をリセットすることも求められます。「前職ではXXだった」、「前の会社ではOKだった」という考えが外資系企業のマネージャー職では結果を残す上で障害となります。

現時点であなたは日系企業のマネージャーではないのです。郷にいれば郷に従えといいますが、外資系企業のカルチャーを理解し、社員の特性やソリューションも理解し、在籍している外資系企業のマネージャーとしてどうしたら結果を出せるのか、そのためのラーニングを開始する必要があります。

いつまでも偉そうに前の会社の武勇伝や、日系企業時代の成功体験に縛られ、やり方に固執していては結果を出そうと思っても出せません。一度前職の成功体験をアンラーニングし、外資系企業のマネージャーとして結果を出している人のやり方や、仕事の進め方をルーキーの気持ちで学ぶ謙虚さが重要です。

謙虚さを持ちながら、自身のスタンスを明確にすること

アンラーニングの話に触れましたが、謙虚に外資系企業のマネージャー職に邁進していれば、少しずつ結果を出せる糸口が見つかってくるはずです。周囲のメンバーからの信頼もどんどん溜まってくれば、ここに来て少しずつ、日系企業時代のマネージャー職の経験値を反映させていって良いかと思います。

これは客観的に考えたときに、日系企業時代のやり方の方が合理的と考えられれば、自身のスタンスとともに意見を表明し、行動に移して行くべきということです。

何も外資系企業の方が結果を出すことの難易度が高い、会社として優れているということを言っているのではありません。まずは、外資系企業のやり方に馴れてきたら、徐々に独自色を出していけば良いと言っているのです。

英語ができること

外資系企業の場合、日本だけで仕事が完結しません。価格承認や法務チェックなど、本社メンバーをはじめ、日本以外の国のメンバーとのやりとりも業務の一部です。したがって、自分の業務に関連する国々の方との関係を構築していくことも重要になるでしょう。

本社メンバーとの関係構築

日本企業の場合はマネージャーや役員の国内のみの承認でプロセスを完了させることができても、外資系の場合はそれで完了しません。外資系マネ−ジャーの場合、配下のメンバーからの承認申請などが上がってきて、マネージャー自身が承認メンバーの1人であっても、その後に本国メンバーの承認を必要とするケースがあります。

深い割引率の承認申請や、本国にしか機能を持っていない法務や経理に関することなどが例として挙げられます。その場合、顧客に返答を求められている内容についても、本国の承認を得ないとコンプライアンス違反となるため、営業や提案活動の中に本社からの承認取得をタスクとして組み込んでおく必要があります。

本国メンバーと仲が良ければ良い程、外資系企業のマネージャーとして結果を残すための障壁が減ります。仮に本国メンバーとのやり取りで労力を割くようであれば、重要なプロセスといえど本来の数字を作る業務への支障となってしまいます。その点を踏まえた上で、日頃からのコミュニケーションや関係構築も重要で、英語ができれば結果を出す上でプラスとなるでしょう。

休日を確認し、連絡の取れる時間帯を把握

日本と外資では休日が異なります。クリスマスやお正月、お盆、夏休みの期間や祝日など、休日のタイミングがずれています。そして時差もあるため、自分のタイミングで連絡をしても思い通りに返事が帰ってこない場合があるのです。

しかしながら日本でのビジネスを進める必要があります。いざというときに「時差の関係で」、「本国は祝日のため」とそのままの理由を聞いてくれない場合があります。そのような状況に陥らないよう、本国や関連業務の国のメンバーの動ける時間帯を把握しておくことも重要です。

お作法の把握

外資系企業の場合、言語も違えば文化も違うメンバーとのやりとりが日常的に発生します。相手に何かリクエストするときやされるときも異文化コミュニケーションとなります。したがって、最低限、相手に何かを依頼するときやコミュニケーションをとるときは失礼のないよう、お作法を理解しておく必要があります。

ビジネスのメインは日本で行われるのですが、一部といえど本国メンバーとの業務上のやりとりが発生するため、その国の文化やビジネス上の作法を理解しておくことが、外資系企業のマネージャーとして結果を出すことの助けになるでしょう。

スピーディーかつロジカルなコミュニケーション能力

昨今は減ってはきていますが、日系企業の場合、朝令暮改や理由なき変更など少なからずあります。しかし外資系企業の場合、そのようなことはほとんどありません。なぜならば、理不尽なことがあった場合、たとえメンバークラスの社員でも上級職のマネージャーへ当たり前のように理不尽さについて意見をするからです。

理不尽、非合理、非効率なメッセージは送らない

外資系企業においては、気合や根性といった理不尽や非合理なことをいう人はほとんどいません。極めて戦略的な観点からアプローチを行い、良かったとき、ダメだったときの理由を分析します。そして成功を継続できるよう、再現性のあるアプローチを追求します。

外資系企業のマネージャーであれば、自身のメッセージや考え方に一貫性や合理性が特に求められます。外資系企業の他の日本人もその考え方は当たり前であり、一部の日系企業のように意味のわからない行動ややりとりは忌み嫌われます。

そして、外資系企業のマネージャーは様々な業務やタスクをこなす以上、ロジカルでなければ多くの決断を捌いていくことができません。それは配下のメンバーやマネージャーの上司とのやり取りの中でも同じです。

例えば週に1度30分しか話せない本国の役員との1on1があったと仮定します。

その際にある案件で本社からの例外承認をマネージャーとして勝ち取らねばならないとします。1on1に臨む前に例外承認に関連する事柄の裏を取り、情報を揃えておき、必要な情報や数字の見込みや、承認を取れた後の成約確度、契約後に得られる長期的なベネフィットなどを完結に無駄なく伝える必要があるのです。

それは1on1の中でやり取りされる数あるタスクや確認事項の1つとして、数分で一撃で承認を取る必要があるのです。その上で承認が取れればエビデンスを元に、次のプロセスに進めていくのです。外資系企業のマネージャーとして結果を出すためには、このようにロジカルかつスピーディーなコミュニケーション能力を備えておくべきと言えるでしょう。

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>マネージャーのキャリアに関する記事

シニアコンサルタントからマネージャーになると何が変わるのか?【業務比率イメージ付き】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/SeniConmanager-difference

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今回の記事では、外資系企業のマネージャーとして結果を出すための心得についてお伝えしました。日系企業であれば必要がなくとも、外資系企業のマネージャーとして成功するためには、語学や数字のへのコミットメント、文化的な理解、スピーディーかつロジカルなコミュニケーション能力が求められます。

これらの能力を磨いていくと、外資系企業のマネージャー職としても生き残れる可能性があります。外資系企業は業績を残せばロックスターやスーパーヒーローのように祭り上げられる一方、業績を残せないと非常に辛い立場に追い込まれます。

ただし、求められるスキルや経験も高く、柔軟性も求められますので、外資系企業のマネージャーとしての経験は今後のキャリアを考える上でポジティブな経験となるでしょう。

外資系企業のマネージャー職として、自分のポジションを確立し、数字を上げ続けられるよう普段から上記を意識しながら仕事へのアプローチ方法を改善しておくと良いでしょう。


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