システム開発業務において、プロジェクトマネージャー(PM)の仕事は多岐にわたります。IT技術やプロジェクトマネジメントに精通していることに加え、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトメンバなど、関係者とコミュニケーションをとりながらシステム開発プロジェクトを成功に導く必要があります。
PMは単に資格を持っている、会社に長く在籍しているからなれる、という職種では決してありません。当然ながら、PMの業務では、様々な知識やスキルが必要とされるからです。しかし、スキルや経験を抜きにしても、PMに向いている性格や特徴というのは存在します。
そこで、今回の記事では、SIerや事業会社のPMとしてご活躍される方々からお聞きした、PMに向いている人、向いていない人の特徴についてお伝えします。様々な意見がございますので、一例としてご参考ください。
【目次】
- PMに向いている人の特徴①:コミュニケーション能力に長けている人
- PMに向いている人の特徴②:ロジカルながらも楽天的でおおらかな人、鈍感になれる人
- PMに向いていない人の特徴①:人前で話すのが苦手な人
- PMに向いていない人の特徴②:上昇志向が強すぎる人
PMに向いている人の特徴①:コミュニケーション能力に長けている人
進捗管理や課題管理など管理能力の有無はPMにとって重要な要素のひとつです。しかし、それ以上に、PMにプロジェクト関係者と良好な関係を築けるコミュニケーション能力があるかどうかは、「PMの向き不向き」を判断するための大きな材料になるでしょう。
PMは、プロジェクトメンバだけではなく、クライアントや自社の経営層、協力会社など様々なステークホルダとコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていきます。
どんなに小さなプロジェクトであっても、プロジェクトの成果物を受け入れるユーザ(クライアント)が存在します。クライアントはプロジェクトメンバではありませんが、プロジェクトの成否を握る重要なステークホルダですので、良好な関係を築いていかなければなりません。
また、大きなプロジェクトになってくれば、自社のメンバだけで人員がまかなえないケースも出てくるため、協力会社がプロジェクトに参加することもあります。協力会社もプロジェクトメンバの一員ですが、自社のメンバとはまた違ったコミュニケーションの取り方が必要になるでしょう。
また、自社の上層部やクライアントの経営層にプロジェクトの状況を説明する機会があるかもしれません。プロジェクト関係者との交渉事も必要になってくる場合もあるでしょうか。
PMは自分もしくは自社だけの利害だけではなく、様々なステークホルダの立場を想像し、関係者が納得できるようにプロジェクトを進めなければならないのです。本当に色々な人間とコミュニケーションをとる機会がありますし、相手によってコミュニケーションの方法を変えなければならないこともあります。それは、一朝一夕で習得できるスキルではありませんので、日頃から意識的に培っていくことが大切です。
もちろん、PMとしてプロジェクトを推進していくためには、システム開発を行うプロジェクトメンバとのコミュニケーションも大切です。
プロジェクトが佳境に差し掛かかれば、残業や休日出勤が重なることもあるでしょうし、不満を持つメンバや、時には精神を病むメンバも出てくることもあります。プロジェクトメンバの異変を察知し、早めに手を打つことも、PMにとって大事な仕事のひとつです。
単にプロジェクトから脱落されると進捗に影響があるから気にかける、ということではなく、普段から純粋に人のことを気にかける姿勢がある人はPMとしてうまくやっていける可能性が高いでしょう。
日常的に顔を合わせるプロジェクトメンバとコミュニケーションをとるには、雑談力も重要です。何気ない会話の中から、調子の良し悪しに気がついたり、どういう人間かを理解したりできます。システムを作るのは人間であるため、どのような人間がどのような精神状態で作業をしているのかを知っておくことも、プロジェクトを円満に推進するのには大事なことです。
実際に、プロジェクトメンバが奥さんと喧嘩をした翌日にはコーディング作業をさせない、と言うPMも存在します。精神的に安定していない状態でプログラムに触ると、不要なバグを埋め込んでしまうから、というのが理由だそうです。
コミュニケーション能力とは、面と向かって人と話をすることだけを指すのではありません。察知力や想像力、読解力なども含めての能力なのです。物事や人を色々な角度から見ることのできる、多面的な視点を持っている人は、PMに向いていると言えるでしょう。
PMに向いている人の特徴②:ロジカルながらも楽天的でおおらかな人、鈍感になれる人
PMというと、プロジェクトを管理したり、様々なステークホルダと交渉したりすることから、理路整然と話ができる切れ者がなるようなイメージがないでしょうか。ところが実際には、なんとなく雰囲気が柔らかい、おおらかな感じの人がPMになっていた方が、プロジェクトがうまくいくというケースをよく見かけます。
短期プロジェクトであれば緊張感を持って最初から最後まで走り切ることもできるかもしれませんが、開発プロジェクトは短期のものばかりではありません。ずっと張り詰めた空気のままでは、長期のプロジェクトでは息切れしてしまいます。
しかし、長期のプロジェクトほど先が見えない上に、プロジェクト費用も大きくなるため、PMへのプレッシャーも大きくなります。プレッシャーが大きくなればイライラしたり、誰かのミスに対して感情的になったりする人も多いのではないでしょうか。
PMの態度はプロジェクトの雰囲気を決定づけます。ピリピリとした空気ではなく、プロジェクトメンバが何でも話せる雰囲気を作り、チームの一体感を出すことはPMの大事な仕事のひとつです。
PMというと、管理者のイメージが強いからか、細やかな神経が求められそうな気もします。しかし、実は先がわからないプロジェクトであっても楽天的でいられる、おおらかな性格がPMには向いているのかもしれません。
また、大きなプロジェクトになればなるほど、いろんな人がいろんなことを言ってきます。もちろん、プロジェクトを推進する上で、様々な関係者に気を配るというのは、PMとして当然のことです。
ただ、関係者が増えると、残念ながら「とりあえず何か文句を言う」ような人が出てきてしまうのも事実です。プロジェクト関係者すべてが納得できる落とし所を見つけられればいいのですが、プロジェクトの推進に必要であれば、雑音には耳を塞げる、あえて鈍感になれるということも、PMとしての重要な資質だと言えるでしょう。
もちろん、常に先を見通してプロジェクトが頓挫する原因を排除していくことも求められるPMには、ロジカルな思考も必要不可欠です。ただし、理詰めにならず、物腰柔らかで話しやすい雰囲気を醸しながら、的確な判断ができる人材になれると理想的と言えます。
PMに向いていない人の特徴①:人前で話すのが苦手な人
先にも述べていますが、PMは様々なステークホルダとコミュニケーションをとる必要があります。また、クライアント、もしくは自社の上層部の人間にプロジェクトの状況を説明する機会も多いはずです。週次なのか月次なのか、それともプロジェクトマイルストーンなのかは、プロジェクトの規模によりますが、ほぼ日常的に報告・説明の機会がやってきます。ひょっとすると、毎日朝礼でプロジェクトメンバの前に立つ、というケースもあるかもしれません。
これだけ人前で話すということが業務の一環となっているPMのため「人前で話すのが苦手な人には厳しい」という意見をお聞きすることが多いです。
もちろん、自分の担当範囲について短時間で報告するとか、何かの発表で説明するという機会は、職種関係なく存在します。しかし、PMの場合にとって人前で話す機会はほぼ日常です。そして、人前で話している時以外は、人前で話すための準備(報告資料の準備や、プロジェクト状況のヒヤリングなど)に大部分の時間を費やしていると言っても過言ではありません。
一時的に人前に立つだけであれば、周到に準備を重ねれば何とかなるかもしれませんが、それが日常的となると、人前で話すことが苦手な人には苦痛でしかありません。
もちろん、人前で話すのも単に慣れの問題ですので、回数を重ねれば苦手意識がなくなる可能性はあります。しかし、苦痛に感じるほど苦手なのであれば、他の職種も検討した方が良さそうです。
人前で話すのが苦手な人でも、プログラミングなどで高い集中力・生産力を発揮するという光景はよく見ます。もともと、学生の頃から趣味でプログラミングをやっていたような人は、システム開発プロジェクトでもきっと高いパフォーマンスを発揮するでしょう。
ただ、プログラマから始まるキャリアは、プログラマ(PG)→システムエンジニア(SE)→プロジェクトマネージャ(PM)とステップアップしていくことが一般的です。SIerにおけるキャリアパスがそのように設定されていることが多いからです。
プログラマ一筋でやっていくのも良いかもしれませんが、ずっとステップアップを拒否していると同期の人間に置いて行かれるような状態になってしまうこともあるかもしれません。
内向的で人前で話すのが苦手、でもIT技術は得意というような人には、運用寄りのセキュリティエンジニアやネットワークエンジニアなどの選択肢もあります。
セキュリティエンジニアは、セキュリティレポートなどで報告の機会はあるにせよ、人前で話す機会よりも、圧倒的に調査やセキュリティ対策にかける時間が多い業務です。多忙な職種ではありますが、PMと同じくセキュリティエンジニアは慢性的な人手不足が続いているため、十分検討に値する職種です。
ネットワークエンジニアについても、専門的な知識が必要なため敷居は高いものの、人前で話すというよりもネットワーク機器を相手にすることの方が多い職種です。また、経験を重ねていくことで、ネットワークの専門家(ネットワークスペシャリスト)としてのキャリアも開けてきます。ある程度年齢を重ねても、マネージャ職以外に技術の専門家としての道もあることは知っておいた方が良いでしょうか。
PMに向いていない人の特徴②:上昇志向が強すぎる人
意外に思われるかもしれませんが、「上昇志向が強すぎる人」もよく挙げられます。PMにとって、開発プロジェクトを予定したスケジュール・品質・費用でゴールさせられるかどうかは、評価に関わる部分であり重要な関心事です。大規模なプロジェクトになればなるほど、かかる費用は多大なものとなるため、必ず完遂しなければならないというプレッシャーも大きくなります。
しかし、PMとしての自分の手腕をアピールしたいあまりに、必要以上に少ない人員で開発を行って、プロジェクト費用やスケジュールを圧縮する、というケースも残念ながら見られます。当初の見積もりが甘く、そもそも無理があるプロジェクトであっても、それを言い出せずに強行して続けてしまう、というケースも多いかもしれません。
開発プロジェクトは様々な関係者との協業で成り立っており、ひとりで完結できるものではありません。プロジェクトメンバに負荷をかけ、一時的に結果を出すことができたとしても、いずれPMとしての評判を落とす時期が来るはずです。メンバに上から目線で指示を出す、軍隊系のリーダシップはシステム開発プロジェクトではうまく機能しません。
もちろん、PM後のキャリアを考えた場合、関わったプロジェクトで利益を出すというのは重要なことであり、最大限追求すべきことです。しかし、あまり結果にこだわりすぎてスタンドプレーに走ってしまうと、長期的には自分の評価を落とし、「プロマネは向いていない……」とキャリアで挫折することにつながるでしょう。
なお、キャリアアップしていくことにこだわりがあるのであれば、ITコンサルタントが向いている職種と言えそうです。クライアントと直接コミュニケーションをとっていくという部分はPMと同じですが、大人数で協業していくだけでなく、一人もしくは少人数でクライアントの課題解決に当たりることも多いです。一人の持つ裁量が大きく、自分がコンサルティング業務の最初から最後まで責任を持つ、というのが基本スタンスになりますので、やればやっただけ自分の成果に返ってきます。結果を出してどんどん上を目指していきたい、という野心家の方には向いている職種でしょうか。
コンサルティングファームなどの企業で経験を積む、というキャリアもありますし、キャリアを積んでフリーコンサルとして独立される方もいらっしゃいます。SAPなどトレンドとなる領域のケイパビリティを積めば独立後の月単価400万円という方もいらっしゃいます。
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システム開発業務は様々な職種・役割から成り立っています。PG→SE→PMというキャリアパスは確かに多いものの、PMだけがIT業界の花形ではありません。IT業界には様々な職種があり、色々なタイプの人間が働いています。
IT業界にいる以上、どんな職種であってもIT技術に関するスキル・知識は必要です。しかし、自分の性格や向き・不向きによって、選べる選択肢は多岐に渡ります。
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