ヘルスケアコンサルタントの仕事を知って興味がわいたり、現在医療業界で働いているため経験を活かして転職したいと考えたりしているものの、どのような業務を行うのか、自分にもチャレンジが可能なのかなど、不安に思う方も多いと思います。
「ヘルスケアコンサルタントは具体的にどのような仕事をするのか?」
「代表的なヘルスケアコンサルティングファームやその待遇は?」
「どんな能力が必要とされるのか?未経験からヘルスケアコンサルタントになれるのか?」
といった疑問にお答えしていきます。
未経験から大手総合コンサルティングファームへ転職後、コンサル転職とポストコンサル転職を支援するエージェントで勤務した経験を持つ筆者が、医療・ヘルスケアコンサルタントの定義と種類、必要な能力、具体的なファームごとの待遇などについて解説します。
【目次】
- ヘルスケアコンサルタントとは?定義と種類別の業務内容
- 代表的なヘルスケアコンサルティングファームとその年収
- ヘルスケアコンサルタントの具体的なプロジェクト例
- ヘルスケアコンサルタントに求められる能力・スキル
ヘルスケアコンサルタントとは?定義と種類別の業務内容
ヘルスケアコンサルタントとは、医療分野に特化した課題解決を行う専門家
医療・ヘルスケアコンサルタントとは、医療分野に特化してコンサルティングを行う専門家で、病院のような医療機関と、製薬会社のようなヘルスケア関連企業の経営課題の解決がそのミッションです。
ヘルスケアコンサルティングの業務の種類
ヘルスケアコンサルティングの業務内容は、主に2つに分けられます。
まず、病院や介護施設などの医療機関に対してサービスを提供する、医療機関向けコンサルティングです。
次に、製薬会社や医療機器メーカーなどヘルスケア関連の企業に対してサービスを提供する、医療関連企業向けコンサルティングです。
それぞれ詳細を解説します。
◇医療機関向けコンサルティング
病院や介護施設などの医療機関向けコンサルティングでは、病院や介護施設といった法人経営に関する支援を行います。
医療機関では、経営について知見がある人材が多くはないため、経営課題に直面している医療機関からの要望を受けてコンサルティングを行い、経営課題の特定から資金調達・システム導入まで幅広く支援を行います。
具体的に説明すると、病院・クリニックの経営コンサルティングでは、経営コンサルティングとして、中長期戦略やビジョンの策定・業務改善・コスト削減・病院M&A・人事制度策定や組織開発・ITシステム導入と言った幅広いテーマに対応します。
また上記のような既存の病院ではなく、新しく開業を検討する医師・事業者に対する開業支援(立地調査・事業計画策定・資金調達など)や、開業後支援(マーケティングや財務・会計など)も行います。
介護施設に対しても、運営上の業務改善・ブランディング・マーケティング支援から、従業員の採用や育成と言った人事・組織面の支援など幅広く対応します。
働き方としては、1つのコンサル案件に専属で対応するわけではなく、複数のクライアントを同時並行で担当することが多く、全国の医療機関に出張するコンサルタントも多くいます。
◇医療関連企業向けコンサルティング
製薬会社など医療関連企業向けコンサルティングでは、一般的な企業へのコンサルティング同様に、収益改善のための経営戦略、マーケティング支援、M&A支援、組織改善などが実施されます。
しかしながら、製薬会社のクライアントは病院など公的機関が主で、他業界で一般的に行われているマーケティングとは異なる部分が多く、医療分野とそこでの商習慣に関する知識・経験が重要です。
近年では、ヘルスケア領域に新規参入を計画する企業への事業開発支援に関するニーズも高まっています。ヘルスケア領域への参入の障壁は高く、医療コンサルタントの支援が必要になる場合もあるでしょう。
代表的なヘルスケアコンサルティングファームとその年収
代表的なヘルスケアコンサルティングファーム①医療・ヘルスケア特化型ファーム
◇CDIメディカル
独立系経営戦略コンサルティングファームのコーポレートディレクションが設立した、医療・ヘルスケア特化型経営コンサルティングファームがCDIメディカルです。
ヘルスケア業界における高度かつ専門的な知見と、国内・海外での医療関係者とのネットワークを持ち、幅広いコンサルティングを提供しています。
大型案件の実績が豊富で、大規模病院や上場している医療関連企業へのコンサルティングも行っています。
コーポレートディレクション本体のヘルスケア部門と連携し、様々なコンサル案件を持っていることも特徴的です。
◇IQVIAソリューションズ ジャパン(旧:IMS Japan)
IQVIAソリューションズジャパンは、ヘルスケア企業向けにサービスを提供するアメリカ系の医療情報会社、IQVIAのメンバーファームで、世界70か国以上にオフィスを展開するグローバル企業です。
圧倒的な医療データ・専門性・技術を持ち、クライアントの経営戦略やポートフォリオの最適化、業務効率化などのソリューションを提供しています。
◇医療・ヘルスケア特化型ファームの年収
医療・ヘルスケア特化型ファームの目安となる年収は下記の通りです。
ファームによって差がありますが、特に外資系のファームでは高めの金額になることが多いようです。
アナリスト/アソシエイト:500〜800万円
コンサルタント/シニアコンサルタント:800〜1,300万円
マネージャー/シニアマネージャー:1,200〜2,000万円
ディレクター/パートナー:2,000〜3,000万円
代表的なヘルスケアコンサルティングファーム②医療・ヘルスケアインダストリーのある戦略・総合系ファーム
◇ボストン コンサルティング グループ合同会社
ボストン コンサルティング グループは、3大戦略コンサルティングファームの1つであり、世界50か国に拠点を持つ世界的ファームの日本法人です。
グローバル企業のトップ500社の内、6割以上がクライアントという実績を持つ大手企業です。
ヘルスケア領域で実績・知見を有するパートナーたちがリードを勤め、医療機関や医療関連企業に対し、経営戦略策定、イノベーション戦略、R&D戦略、M&A、デジタルマーケティング、組織変革、生産性向上など、様々なコンサルティングを提供しています。
◇アクセンチュア株式会社
あらゆる業界へのサービスを提供する総合系コンサルティングファーム大手の1つがアクセンチュアです。
世界50か国以上に拠点を持つグローバルファームであり、グローバルで2万人以上のライフサイエンスのエキスパートが在籍しています。
ボストン・コンサルティング・グループ同様、医療機関や医療関連企業のコンサルティングを行っていますが、最近ではライフサイエンス領域への新規参入を検討する企業への支援が増えています。
テクノロジーを用いて、デジタルヘルス、R&D・SCM、マーケティングなど幅広い領域への支援を行っています。
特に病院向けのコンサルティングにおいては、デジタル活用のニーズが高く、デジタル化による業務効率化や組織変革といったコンサル案件が多くあります。
◇医療・ヘルスケアインダストリーのある戦略・総合系ファームの年収
戦略系ファームと総合系ファームで平均年収に差があるため、それぞれ紹介します。
まず戦略系コンサルティングファームですが、業界の中で最も平均年収が高いといわれており、ヘルスケアチームもほかのチーム同様に高額です。
アナリスト/アソシエイト:500〜900万円
コンサルタント/シニアコンサルタント:900〜1,500万円
マネージャー/シニアマネージャー:1,500〜3,000万円
ディレクター/パートナー:3,000〜5,000万円
次に総合系ファームについては、戦略系コンサルティングファームほどではありませんが、比較的高額な報酬が期待できます。
アナリスト:450〜700万円
コンサルタント/シニアコンサルタント:700〜1,000万円
マネージャー/シニアマネージャー:1,000〜1,500万円
ディレクター/パートナー:1,500〜2,000万円
ヘルスケアコンサルタントの具体的なプロジェクト例
医療機関向けコンサルティングの事例①
◇医療・ヘルスケア特化型ファームによる病院の組織改革と収益改善
大規模病院における収益改善・組織変革の支援プロジェクトの事例を紹介します。
勤務していた看護師の離職が続き、サービス・業務の基準を維持することができず、売上が減少している状態でした。
かつ中間管理職への権限移譲ができず、経営層が全ての方向性を決定する風土のため、意思決定が遅い状態でした。
その改善のために3つの支援を実施しています。
まず、経営目標の数値化と共有です。
サービス・業務上で達成すべき経営目標を数値化し、従業員に共有し、その達成に向けてやるべきことを自発的に考えて行動することを促しました。
次に、人員の確保です。
そもそもの経営難を引き起こした看護師の人員確保のため、勤務の状況が伝わるようにホームページの内容を変更し、人材紹介会社とのコミュニケーションを積極的に行い、採用の活性化を行いました。
最後に、組織風土変革です。
組織を整理し、目的・内容ごとに会議体の整理・新設を行い、一定の期間会議のファシリテーションのサポートを実施しました。
その結果、病院の離職率とサービス・業務の基準が改善し、病床稼働率が80%台から95%に上昇しました。
また組織風土変革についても、組織体制の明確化と会議での問題共有が定着した結果、管理職だけでなく従業員が自主的に課題解決に向けた行動を取るような組織に変革できました。
医療関連企業向けコンサルティング②
◇製薬会社の新規市場参入支援
日本の抗がん剤市場に新規参入を検討しているクライアントに対し、市場参入支援を行った事例を紹介します。
市場規模と構造・参入の難易度・腫瘍の治療薬の認可のための条件とハードル・既存の抗がん剤に関する医師の見解を理解する必要性がありました。
そこで、市場の形態や薬の購買プロセスを把握した上で、治療できる腫瘍に優先順位をつけました。
マーケットのニーズや、どのようなものがニーズにマッチしているか、競合となる製品のマーケットからの評価などを言語化した上で、治療可能だと想定できる2つの腫瘍タイプを開発対象として提起します。
その結果、2つの腫瘍タイプを優先したことで、投資コストの回収を可能とする臨床開発の計画立案を早期に行うことができました。
また戦略・計画の内容について、日本独自の市場環境や商習慣を反映したものにすることができたのです。
ヘルスケアコンサルタントに求められる能力・スキル
全コンサルタントに必要な知識とスキル
①クリティカルシンキング力
領域を問わず、全コンサルタントは問題解決のプロであることが要求されます。
正解がない経営課題に対し、課題を明確にし、その課題の背景や解決策となり得る打ち手に関し、仮説を立て、クライアントが納得する方針を打ち出すことが必要です。
その全ての段階でクリティカルシンキング力が必須となるため、コンサルタントにとっては重要なスキルであり、重要視される力です。
②コミュニケーション力
次はコミュニケーション力です。
クライアントの課題や状況に配慮したコミュニケーションで信頼関係を作れると、より本質的な経営課題を会話の中で見出すことができ、結果クライアントが腹落ちする提案を作ることが可能となるためです。
またクライアントへの提案の際にも、コミュニケーション力は重要です。
クライアントへ提案する際には、クライアントが抱える課題や状況について、彼らが向き合いたくない・耳の痛いことを言わなければならないことがあります。
当然クライアントも感情を持っているため、立場や気持ちに配慮し、受け入れられる形・プロセスで提案できることが理想です。
かつプロジェクトによってはクライアントのオフィスに常駐することもあるため、常駐先のクライアントや関係者とうまくコミュニケーションを取ることも求められます。
③コミットメント
最後はコミットメントというマインドセットについてです。
コンサルタントの業務においては、クライアントへの提案に加え、提案した打ち手を実施し、課題を解決し成果につながるまで支援することも多くあります。
そのプロセスの中で、役員クラスから現場クラスのクライアントや、他社からのメンバーを含むプロジェクトメンバーとコミュニケーションを取り、プロジェクトを推進しなければいけません。
遅延や予想外のトラブルが発生しても、何とかタスクを完了させ、納期までに成果を出す業務スタイルはコンサルタント特有のものであり、相応のコミットメント力・気力が必要になります。
ヘルスケアコンサルタント特有の知識とスキル
◇医療業界における業務知識
ヘルスケアコンサルタント特有の求められる能力は、医療機関・医療関連企業における業務知識です。
医療機関・医療関連企業などの医療業界独特の事業・業務フロー・商習慣などを理解していることが、クライアント理解に直結します。
特に医療機関や医療関連企業における実行支援やオペレーション変革が業務の中心となる場合は、現場の業務プロセス・クライアントの置かれた状況の理解のために、クライアント側の業務経験があることが重要です。
未経験からヘルスケアコンサルタントへの転職は可能
◇ヘルスケアコンサルタント未経験者に求められる経験
最近ではコンサル未経験者を含む多様なバックグラウンドの人材を採用することで、医療機関から依頼される様々な相談に対して、幅広く、かつクオリティーの高い対応をすることで、期待に応えようとするコンサルティングファームが増えています。
具体的には、大学の研究機関などのアカデミア出身者や、バイオ・ヘルスケアベンチャー企業出身者などの採用も増えています。
一方で前述の通り、コンサル未経験でヘルスケアコンサルタントを志望する場合は、クライアント理解のため、医療関連業界での就業経験が求められることが多くあります。
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>ヘルスケアコンサルタントへのキャリアに関する記事
アーサー・ディ・リトル・ジャパン ヘルスケアチーム パートナー花村遼 様、プリンシパル山本洪太 様 インタビュー/10年後、100年後の新産業創出を追求する少数精鋭組織
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/adl_healthcare
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今回の記事では、ヘルスケアコンサルタントの仕事についてポイントを解説しました。
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