ハイクラスなビジネスパーソンに人気の転職先の一つであるコンサルティングファーム。ファームの中で働いている社員はもちろん、ライバルとなる転職志望者も高い能力を持っているため、転職を成功させ、またコンサルとして活躍していくのは容易ではありません。
今回の記事ではコンサルティングファームへの転職を成功させ、また転職後活躍していくために必要なスキルや、選考プロセス、気をつけるべきポイントについて解説していきます。コンサルティングファームへの転職をチャレンジする上での参考としてください。
【目次】
- コンサルティングファームで採用され、働く上で求められるスキルと経験
- コンサルティングファームの選考プロセス
- 書類選考や通常面接に向けて気をつけるべきポイント
- ケース面接を通過するためのポイント
- 綿密な事前準備がコンサル選考突破の鍵に
コンサルティングファームで採用され、働く上で求められるスキルと経験
まずはコンサルティングファームで採用され、そしてその後活躍するために求められるスキルや経験を紹介します。意外かもしれませんが、コンサルティングファームへの転職を目指す上で必要なスキルはさほど特別なものではありません。いずれもビジネスパーソンとして多かれ少なかれ備わっていた方が望ましいスキルです。ただし、これらのスキルを高いレベルで兼ね備えておく必要があります。
現状把握力と提案力
よくコンサルティングファームに必要な能力として「課題解決能力」が紹介されます。しかし、コンサルティングファームの実際の働き方を踏まえると、実は「課題」を「解決する」だけでは不充分です。むしろ大切なのは、現状を分析して「課題を見つけ出す」能力と、その課題に対する解決策をクライアントに説得力を持って伝える能力であると考えられます。
実際のプロジェクトは始まる時点で課題が明らかになっているとは限らず、コンサルタントがクライアントとのコミュニケーションや分析を通じて課題を洗い出すシーンがしばしばあります。また、実際に働く上では課題を洗い出し、解決策を見出しても、クライアントがその解決策にOKを出さなければプロジェクトは進みません。そのため分析内容や解決策を説得力のある資料にまとめて、プレゼンする能力が重要なのです。
コミュニケーション能力
案件にもよりますが、コンサルティングファームの仕事には、実は「高いコミュニケーション能力」が必要です。コンサルティングファームのプロジェクトはほとんどの場合クライアントとの折衝の中で進むため、クライアントとの円滑なコミュニケーションが大切になるためです。
以外にも営業経験者はファームに入社した後、スムーズに活躍するケースも少なくありません。彼らは営業員としてクライアントのニーズを拾い、またそれに対して的確な提案をするという活動を継続的に行ってきたため、コンサルファームでのビジネスもその延長線上でうまくオンボーディングできるためです。
クライアントとうまく付き合っていく全般的なコミュニケーション能力が求められますが、特に次のようなスキルがプロジェクトチーム内、対クライアントでのコミュニケーションにおいて重要になるでしょう。
・ 顧客と摩擦を起こさない的確かつ丁寧な説明能力
・ミーティングにおけるファシリテーション能力
・高品質な資料・議事録を素早く作成する能力
・ 自身の提案内容を相手にわかる言葉で説明する能力
・ 提案内容を抑揚を持って相手に印象的に伝える能力
どれもコミュニケーションの基本ではありますが、これらを高いレベルで兼ね備えているのがコンサル志望者の特徴なのです。
常に進化し続けるマインド
マインドセットとして、常に進化し続ける意欲を持つことは、コンサルにおいてとても重要です。コンサルティングファームではプロジェクトごとに案件のテーマが大きく変わります。場合によってはクライアントも業種も全く新しい先になることで、これまでとは異なる知見を吸収しながらプロジェクトに取り組んで行かなければなりません。
コンサルはそれぞれ特定の専門性を持つ一方で、このように新しい環境に柔軟に適応していく必要があります。そのため、常に自分が知らない領域の知見を積極的に吸収し、次の課題に対応していく意欲が求められるのです。
ライバルと差別化する「専門性」
人によって「強み」となる経験・スキルは千差万別ですが、転職者の場合はコンサルティングファーム入社後に活かせる何かしらの専門性が求められます。異業種からの転職の場合は、特にこの部分で差がつく場合も多いので侮れません。
大まかに分けると専門性は二つに分けられます。一つは業界の専門性です。これは努力次第で誰でも差別化要因にできます。通常業務と自己研鑽を通じて、現職で働いている企業が属する業界の深い専門知識を身につけておけば、コンサルに入社したのちも、その業界のプロジェクトに取り組む際に有効活用できるでしょう。
もう一つはコンサルで課題解決プロセスを進める上で役に立つ専門スキルや経験です。例えば経営企画など、マネジメントに近い部署では、企業の経営課題へ取り組む経験が得られるでしょう。また、財務部では企業の財務戦略や資金調達・財務管理の手法などを培うことが可能です。これらはコンサルのプロジェクトテーマになりがちな分野のため、ファーム入社後にもこれらの部署での業務経験が役立つと考えられます。
自分の現職での経験を踏まえて、「他人より長けている」と自信を持ってアピールできる専門性を自分の中で明確にしておくことが大切です。
コンサルティングファームの選考プロセス
続いてはコンサルティングファームの選考プロセスを解説していきます。多くの部分は通常の転職の選考プロセスと大差ありませんが、それぞれの面接で高いコミュニケーション能力や説明能力が求められる傾向にあるのと、途中にケース面接が入る場合が多いのが特徴です。
書類選考
通常の転職選考と同様に書類選考から始まるのが一般的です。ハイクラスの転職の場合はコンサル以外でもあることですが、履歴書の他に職務経歴書(外資の場合は英文CVの場合も)を提出するのが通常。基本的に書類選考における重要度は職務経歴書の方が高いと言えます。
職務経歴書には次の点を留意して書いておくことが大切です。
・これまでの職務経験と業務内容(企業だけでなく、部署についても触れる)
・それぞれの部署での実績や培ったスキル。営業であれば貢献したビジネスサイズなど、定量的に書ける内容があれば最良
・自身の強みとなるスキルや経験をまとめておく
職務経歴書は書類選考に通過する上で大事というだけでなく、後続の面接においてもこの職務経歴書を踏まえて進められます。面接官に受けているファームとの親和性を感じてもらえるよう、また、面接で聞かれたときに的確に答えられるよう、まとめておくことが大切です。
もちろん、面接の際には職務経歴書の内容と回答内容に矛盾が生じないよう、職務経歴書の内容はしっかりと覚えておきましょう。
筆記テスト
書類選考が終わった段階でテストを行うケースがしばしばあります。便宜上筆記と呼びますが、テストセンターや自宅PCにて対応する場合がほとんどです。稀にオフィスにてペーパーテストを行う場合もあります。
ファームにより、そして場合によってはチームによりテスト内容は異なります。複数企業の選考を受けている場合は対策するのは容易ではありませんが、論理などは一つを勉強して慣れておくだけでも違うため、不安な方は対策本などで勉強しておくと良いでしょう。
例えば、次のようなテストが実施されるようです。
・GMAT Critical Reasoning:論点、論旨、論脈の理解力を問う
・GAB/CAB: GABは「言語」「計数」、CABは「暗算」「法則性」「命令表」「暗号」といったパートから構成。難易度が高く、戦略ファームで出されるオリジナルのテストもこれに近いケースも多い
・SPI:「性格検査」「能力検査」に分かれ、能力検査は「言語」「非言語」の2つ
・判断推理:「論理」「対応関係」「順序」「嘘つき問題」「平面図形」などの項目がある
・数的推理/計算問題:表やグラフを読み解き、正しい記述を選択したり数字を計算
なお、コンサル志望者はこれらのテストについてはさほど苦労せず対応できる方が多いため、一般的にはこの筆記テストよりも後続のケース面接の準備に時間をかける方が多いようです。
通常の面接
コンサルティングファームでは面接の回数はさほど多い方ではありません。少ないと人事面談を含めても3回程度、多くても5回以内で終わるのが一般的です。
面接ではほとんどの場合、最初は応募している部署・チームのスタッフの面接が数回あり、最後は人事面談になります。スタッフの面接についてはあまり面接順序と職域は関連性がなく、いきなりシニアとの面接から入る場合も、比較的若手との面接から入る場合もあります。(ファームやチームによる違いというものではなく、空いているメンバーから面接に入る印象が強いです。)
チームメンバーとの面接では、採用チームとのフィット感が重視されます。特にスキル・経験が転職後のプロジェクトで活かせるかどうかを厳しく見る傾向にあります。そのため、職務経歴書に記載されている経験やスキルの詳細や、それをどのようにコンサルプロジェクトで活かすのか、といったポイントにシビアな質問が飛ぶ傾向にあります。
回答内容を踏まえた経験・スキルのコンサルとのフィット感に加えて、志望者の論理的な説明能力も見られています。職務経歴書と矛盾した内容を話さないようにするのはもちろんのこと、自身のスキルや経験がコンサルで活かせるということを理路整然と説明することが大切です。
最後は人事面談となりますが、現場がGoサインを出していう状況のため、どちらかというと意思確認に近く、ここで落選するケースは多くありません。
ただし、内定後の年収交渉などに影響を与える必要があるので、条件面での質問などには自分の意思を的確に答えられるように準備をしておきましょう。
ケース面接
ケース面接はコンサルティングファームで非常に多く実施される独特の面接です。大抵はスタッフレベルの面接の序盤〜途中に実施されます。
特定の課題を与えられ、それに対する分析や課題への解決策を一定時間のうちに検討したのちに、面接官にプレゼンをし、その後面接官から質疑応答を受けるというプロセスが一般的です。稀に、面接官とディスカッションしながら進めていくタイプのものもあります。
コンサルティングファームの選考において最も論理的思考力と課題解決能力、そして提案を面接官に説明する能力が求められるプロセスです。ケース面接に関する対策については後ほど詳しく紹介します。面接という名がついていますが、通常の面接とは対策方針が大きく異なります。通常の面接とは別に万全の準備を行なっておくのが大切です。
書類選考や通常面接に向けて気をつけるべきポイント
コンサルティングファームでは、ライバルとなる他の選考者のレベルも高いため、書類選考と面接ともにしっかりと事前に対策を練っておく必要があります。
ここでは書類選考、面接を通じて意識すべきポイントについて3点紹介します。
論理的な文章や話し方を心がける
ビジネスシーンにおいて冗長な文章、矛盾のある話し方などがNGなのはコンサルに限ったことではありませんが、社員、選考者とも論理的思考力の高いコンサルティングファームにおいては、より一層注意を払う必要があります。文章や面接の話し振りから論理的思考力の高さが見出されなければ、たちまち不利に陥ってしまうリスクがあるのです。
とはいえ、これはさほど高度なことを言っているのではなく、次のような基本的な論理性をきっちり守って書類作成や面接対応を行えば、少なくとも「減点される」ことは避けられるでしょう。
・徹底的に首尾一貫させ、矛盾のない説明を徹底する
・結論から先に述べ、理由(必要に応じて例示)という順序を守る
・可能であれば定量的な数値を示す
やや困難なのは定量データを示すところかもしれませんが、例えば前職が営業であれば、年間でどの程度の収益に貢献したか、経営企画であれば、利益率を何%改善するのに貢献したか、財務部で言えば資金調達コストをどの程度圧縮したかなど、自分の実績がわかる説明を心がけましょう。
コンサルティングファームでどのように役立つのかを明確にする
ハイクラスなビジネスパーソンであれば、自分の経験やスキルを端的にまとめること自体はスムーズにできる方も多いと思いますが、コンサルの選考を突破するためには、もう一段踏み込んだ説明内容を考えておくことが大切です。
それは、今の自分が持っているスキルや経験が、実際のコンサルプロジェクトにおいてどのように役立つのかという点です。コンサルの選考においては徹底的にこのポイントを重視します。
職務経歴書ではこの点を踏まえてスキル・経験をまとめることが大切。また、面接に際しては、コンサルティングファームのプロジェクトに如何にして貢献できるのか、というポイントについては厳しい追及がなされるケースも珍しくありません。
面接官に自分が「コンサルティングファームに適した人材」であることを納得させるべく、コンサルティングファームに入社した後のスキル・経験の活用方法については詳細にまとめておき、想定問答なども作成しておくことをおすすめします。
面接での発言がプロジェクトのアサインにつながることを覚えておく
最後はコンサルティングファームに入社後のオンボーディングをスムーズに進めていく上でのポイントです。コンサルティングファームの面接は多くの場合(最後の人事面談を除いて)入社するチームのメンバーが対応します。すなわち、入社したのちには同僚となったり、マネージャとなったりする人間と面接することになるのです。
特にシニアメンバーとの面接での会話内容は、晴れて入社が確定した後の最初のプロジェクトアサインに影響を与える必要があります。目先の面接通過や目の前の面接官を納得させることにばかり意識が行ってしまうと、自分の希望とは異なるプロジェクトにアサインされるリスクがあるのです。
シニアメンバーとの面接においては、自身のスキルや経験を充分に活かせるであろうプロジェクトを踏まえて話を進めることが大切です。時には希望するプロジェクトについて聞かれるケースもありますので、自分の意向を的確に伝えるようにしましょう。
ケース面接を通過するためのポイント
続いては、ケース面接をする上で必要な対策について紹介します。ケース面接は、通常の面接とは対策すべきポイントが大きく異なります。特にコンサルの転職活動に慣れている志望者などの場合は、書類選考、筆記テスト、通常面接、ケース面接とある中で、ケース面接に最も時間を割くという方も珍しくありません。
ここではケース面接を通過するために必要な3つの対策について紹介します。
対策本での学習
ケース面接は、通常の面接以上に対策本による座学が有効です。現在では外資系の戦略コンサルティングファームなどを題材に、非常に多くの対策本が出版されています。自身のレベルにもよりますが、一からケース面接の対策を始める場合には、2〜3冊程度は手をつけることをおすすめします。
対策本には次のような種類があります。それぞれ1冊程度ずつ取り組むと良いでしょう。
・ケース面接に必要となる「フェルミ推定」「フレームワーク」などの基本を紹介した本
・過去のケース面接の課題などを題材とした練習問題集
・ロジカルシンキングなど思考力を高めるための本
以前別の記事にておすすめのケース面接の対策本も紹介していますので、そちらも参考にしながら取り組んでみてください。
選考を受けるコンサルティングファームのケース面接手順の情報収集
一口にケース面接といっても、ファームやチームにより面接の実施要領は様々。場合によっては同じチームでも面接官によって異なる場合すらあります。
そのため、100%詳細な情報を得ることは困難な部分はありますが、可能な限り選考を受けるファームの面接について情報収集を行い、可能であれば対策を進めておきましょう。
例えば次のようなポイントが要チェックです。
■課題の内容
多くは市場調査や売上などを題材としたビジネス課題が多いですが、社会問題に意見を述べたり、解決策を提示するなどのケースも見られます。また、ケースと言いながら短問を1分程度で断続的に解答していく、などといった面接の事例もあるようです。
■面接の実施要領
面接の実施要領も様々です。特に差が出やすいのは時間(特に考える時間)で20分程度時間をとってじっくり考えさせるケースもあれば、5分などあえて短時間で取り組ませて頭の回転の速さを見る場合もあります。そのほか、考える時間内における面接官への質問の可否、ホワイトボードやメモ用紙の使用可否などについても差が見られます。
コンサルティングファーム専門のエージェントなどにおいては、ケース面接に関する豊富な情報を持っている場合もあるので、積極的に情報収集しておきましょう。
練習問題をひたすら解く
ケース面接の課題は基本的に勉強しておけばしておくほど対応しやすくなります。対策本にも収録されているであろう問題集をたくさんこなしておくのがおすすめです。
問題に取り組む際には、紙を用意してその上にフレームワークや要因分解を行いながら、結論を書くところまでを、実際のケース面接の考察時間のつもりで進めておきましょう。つい本を読みながら頭の中で考えるだけで通り過ぎてしまう方も少なくありませんが、課題を隅々まで突き詰められるようになるためには、実際のケース面接で行うようにきちんと紙面に書き起こす訓練を行うことが大切です。
また、情報収集で与えられる時間がわかっている場合には、その時間内で解く練習を数多くこなしておくのも有効です。
綿密な事前準備がコンサル選考突破の鍵に
今回はコンサルティングファームに転職する上で必要となるスキルや選考の対策について紹介しました。ハイクラスの転職志望者が多い傾向にあるコンサルファームでは、充分な期間をとって万全の準備を進める必要があります。
書類や通常の面接に向けては、自分の経験・スキルを棚卸しして、コンサルティングファームにおいて自分の能力をどのように活かしていくか明確なイメージを持っておきましょう。ケース面接は初めのうちは難しく感じるかもしれませんが、実践的な練習問題を数多く解いていけば、ケース問題を突破する能力は着実に身に付いていきます。
コンサルティングファームの転職を絶対に成功させたいという方は、この記事を参考に、事前の準備を進めていくことをおすすめします。
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コンサルタントへ転職するための「志望動機書」の作り方【未経験~ファームtoファームまで】
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