投資銀行(IBD)転職で有利な「資格」と「その理由」【MBAから弁護士資格まで】

投資銀行(IBD)は、給与が高いことや、関わるディールも大規模～中規模、クロスボーダー案件が多いことから、日系証券会社やFAS等から転職したいというご相談をよくいただきます。ただし、中途や第二新卒で入社を狙う方は、それなりに予備知識や素養が求められるため、武器となる「資格」があるに越したことはありません。そこで今回は、投資銀行(IBD)転職で有利な資格(具体的な資格のレベル)とその理由について記載していきます。

【目次】

1. 1. 投資銀行(IBD)で用いるスキル
   2. 役立つ資格：MBA
   3. 役立つ資格：公認会計士
   4. 役立つ資格：弁護士、司法試験合格
   5. 役立つ資格：USCPA
   6. 役立つ資格：CFA
   7. まとめ

投資銀行(IBD)で用いるスキル

IBDにおける職務内容について、キャピタルマーケット業務（IPOや新株発行、引き受け業務）のほかに花形といわれるM&Aアドバイザリーやカバレッジチームがあります。いずれもプレゼンテーションの作成能力や、財務モデル作成、バリュエーションの実務等が高いレベルで求められます。

投資銀行では、同時に複数の案件にアサインされ、パラレルにたくさんの仕事を処理していく能力が重要となります。また、カルチャー的にも投資銀行ほどアグレッシブな人の多さや、パワポ資料のビジュアルに対するこだわりの強さがある人も多いので、そのような雰囲気に慣れることができるかも大事でしょう。エクセルでバリュエーションを行う際にはバリュエーションのメソッド、クライアントへのプレゼンテーション資料を作成する際にはパワポのフォーマットや、上司やチームでディスカッションした内容を上手く織り込むということが実務で非常に重要となります。

入社を狙うにしても、資格に加えてまずはハードスキルを鍛えることが重要なので、バリュエーションや財務モデリング、M&Aのプロセス、ストラクチャー等の素養がある人が望ましいです。ゆえにそれらに関連した資格を持っている人が書類も突破しやすいですし、面接でもうまく話せる可能性が高まります。
IBDに転職できるのは基本的に中途で経験のある方が中心ですが、アナリストのポテンシャル採用を狙うのであれば、下記に説明する資格を有している方であれば内定可能性が高まると考えられます。

役立つ資格：MBA

これは資格というよりは、学歴に近いですが、投資銀行への転職に最も役に立つ経歴です。MBAは経営学修士ですが、国内ではなく欧米のトップ校で取得するのが有利となります。外資系投資銀行で、出身者が多い学校は、ペンシルバニアのWharton,　コーネル、INSEAD,HEC Paris, ハーバード、スタンフォード、MITスローン、シカゴ（Booth）等の有名かつ難易度の高い大学が多いです。米国の若手でも、新卒は投資銀行と関係ない職歴で、上記のトップMBAに進学して、中堅ないし大手の投資銀行に転職する人は多くいます。

外資系投資銀行であれば、シニアバンカーは海外大のMBAを取得している人が相当数おり、日本人だけでなく海外オフィスのバンカーも海外の有名大学でMBAを取得している場合がほとんどです。
MBA取得後に未経験でアソシエイトとして入社する人も以前は多くいましたが、最近は経験者に絞った採用が多く、MBAそのものが即投資銀行への転職に役立つかというとそうでもありません。
安全策としてはFASや日系投資銀行でのM&Aアドバイザリーの経験を経て、海外の有名大学のMBAを取得して外資系大手投資銀行への転職を狙う等でしょうか。コストと時間がかかるので若いうちにMBAを取ることが重要です。30歳前後の場合、未経験で投資銀行のM&Aアドバイザリーへの転職は実質的に不可能なので、とにかく年齢が若いことが求められます。

役立つ資格：公認会計士

IBDで役に立つ資格の筆頭が公認会計士でしょう。これは日本の企業を相手にする投資銀行であれば、USCPAよりも日本の公認会計士試験に合格している、ないしはすでに登録済の方が望ましいです。

実際に投資銀行で働いている人には、公認会計士に合格ないしはすでに登録している方が多く、会計や税法、ファイナンスに関する総合的な知識をバランスよく身に付けているという点で評価されます。会計のみならず、M&Aのディールにおいて重要となりやすい、税務に関する知識や論点、TOBに関連する証券取引所の規制等について、受験勉強で金商法や証券取引所の基礎的な内容を学習していることが好まれます。

会計士かつ、FASでM&Aアドバイザリーの経験がある20代の方であれば、投資銀行への転職可能性は大手証券、バルジブラケット、外資ブティック系投資銀行を含めて可能性はいずれも高いと思われます。未経験で応募する場合には20代前半から中盤で、ポテンシャル採用を行っている企業で、投資銀行に行く道もあります。

会計基準に関する知識や、税務の知識を期待されて投資銀行に入る会計士の方が多いですが、実際は入社後にコーポレートファイナンスの知識、教科書だけではないバリュエーションの知識、エグゼキューションに慣れる等、入社してキャッチアップすべき事項も多いので、その点は頭に入れておきましょう。

役立つ資格：弁護士、司法試験合格

次に重視される資格は弁護士です。投資銀行では、コーポレートファイナンスや会計、バリュエーションに関する知識や経験は必須ですが、M&Aアドバイザリーでは、買収、売却そのほかJVの案件においても契約書の交渉におけるサポートは投資銀行のバンカーにおける重要なロールであります。とくに契約書の交渉においてバリューを発揮するのが、ファイナンシャルアドバイザーとしての投資銀行の価値ともいえ、弁護士やM&A、コーポレートファイナンスに関する法務の知識がある人は重用されます。

実際に大手法律事務所から、大手投資銀行に出向している人もいますし、弁護士でMBA取得後に投資銀行に転職する人もいます。法律に関する知識や、M&Aにおける契約書の交渉に関して、弁護士、とくに法律事務所で法務DDや、M&Aの案件に関与していた人は非常に高いニーズがあります。
実際に投資銀行で活躍されている方でも、司法試験合格者や、弁護士の方もいるのですでに合格されている方は法律事務所で経験を積むのもよし、いきなり投資銀行にてM&Aやキャピタルマーケットに関する業務に関与し、バンカーとして高い報酬を目指して頑張るのもいいと思います。
とくに将来的にプライベートエクイティファンドへの転職を考えるような弁護士の方は、自身の強みを生かして、まずは外資系投資銀行等でM&Aアドバイザリーの経験を若くして多く積み、そののちにプライベートエクイティファンドへ転職することも一考です。実際に大手外資系プライベートエクイティファンドにいるシニアの方（マネージングディレクター）等で、弁護士資格を有している方はまれにいらっしゃいます。

役立つ資格：USCPA

次に役立つ資格はUSCPAです。これは日本の公認会計士ほどの高い評価が得られるかは不明ですが、英語で会計用語やUS-GAAPを理解しているという点では、それなりに評価に値するものとなっております。特に外資系投資銀行で、日米案件を扱う場合には、US-GAAPの知識が必要な局面もあるので重宝されるでしょう。
なお、日系、外資系問わず仕事をしながらUSCPAをとる人はそれなりにいるので、この資格に合格していることで大きく有利になるわけではありません。とはいえ、未経験で投資銀行への転職を希望される人には、あったほうが有利となりやすい資格です。

役立つ資格：CFA

次に評価される可能性があるのが、CFAです。これは証券アナリストとは違いますが、米国のCFA協会が行っているものです。Levelが1-3の3段階で合格率はそれなりに低く、価値のある資格です。外資系投資銀行では持っている人がいますが、M&Aアドバイザリーの業務に役立つというよりは、バイサイドで必要となります。
英語力や努力できる素質があることを示すにはいい資格だと思いますが、これが決め手になることは考え難いです。

まとめ

このように投資銀行（IBD）のキャピタルマーケットやM&Aアドバイザリーチームで求められるスキルセットは､会計やコーポレートファイナンスに関するものが多く、これらに関連する資格は未経験のポテンシャル採用でも有利に働くことがあります。またM&Aアドバイザリーでは、契約書の交渉等の専門性が高い内容をアドバイザーの観点から助言することもあるので、法律に明るい弁護士で、かつコーポレートファイナンスの素養のある人は非常に重宝されます。
今回は記載していませんが、証券アナリスト等の試験に合格しておけば、若手のポテンシャル採用によって証券会社で働く際に多少の好感を与えて働くことができます。

以上をまとめると、投資銀行への転職に役立つ資格は、公認会計士、弁護士、MBA等の総じて難易度やコストが高いものが中心です。
とはいえ、資格を有していることそのものが合否を決めるわけではないので、志望動機と一貫した専門性や学歴をアピールすることが重要です。
なお資格を持っていることで、入社後に役立つと期待される分野は、具体的には財務分析やDCF、類似上場会社比較法、類似取引比較法等となります。会計やファイナンスに関する実務に、すぐ生かせるかどうかがポイントです。
資格だけでなく、入社後にエグゼキューションやカバレッジの実務で、資料作成やプレゼンテーション、顧客とのやり取り等も重要になりますので、資格に依存せずにキャッチアップする意欲や素養の高い人は、入社後も違和感なく業務に邁進できるでしょう。

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今回の記事では、投資銀行(IBD)転職で有利な「資格」と「その理由」についてお伝えしました。投資銀行へのキャリアをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。