投資銀行(IBD)の人事評価の特徴を解説【360°評価の注意点】

investment banking evaluation

今回は投資銀行での人事評価について記載していきます。日系と外資系で若干の違いはありますが、概要に関しても確認します。

特に外資系では360度評価が普通であり、その際に気を付けるべきことも解説していますので参考になれば幸いです。

360度評価は日系ではあまりなじみがないかもしれませんが、簡単に説明すると、自分以外の全員から評価を受ける(もちろん部下からも)システムです。

そのため、日ごろの仕事に対する取り組み方が如実に評価されることになります。

【目次】

  1. 投資銀行の人事評価:日系
  2. 投資銀行の人事評価:外資系
  3. 投資銀行の中間・期末評価
  4. 投資銀行の360度評価のポイント
  5. 投資銀行の人事評価まとめ

投資銀行の人事評価:日系

日系では、360度評価を実施しているところもありますが、基本的には一般的な日本企業のように年初に達成目標や前年度の実績をエクセルのシートに記載して人事部に提出することが一般的だと思います。

自己評価をして、できたところとできなかったところ、今後強化や改善をしたいところを記載します。日系は外資系と異なり給与水準が若干低い(日興のように外資系の報酬水準に寄せているところもありますが)ので、毎期360度評価を受けるようなシビアさはあまりないかもしれません。

よくいえば、安心感のある評価を受けるともいえ、一方ではそこまでシビアでない評価なのでボーナスへの影響額も若干少ないともいえます。

投資銀行の人事評価:外資系

外資系では人事評価は360度評価が基本です。会社によりますが、東京オフィスの全員(特に少人数の会社など)もしくは、チームや案件で一緒に働いた人からのみ評価を受けるスタイルが多いです。

日系のように、わかりにくいエクセルの評価シートに目標や、前期の自分のパフォーマンスを書かせるようなことはしません。社内で採用したシステムに従って自己評価や、他のメンバーの評価を記載することが中心です。
良くも悪くも、日々の業務での態度やパフォーマンスが如実に反映されるようになっています。

評価してくれる人を選ぶこともできますが、全員が全員を評価する際には、評価者を選ぶことはできません。全員が評価するスタイルをとるのは、東京オフィスの人数が少ないブティック系と思いますが、相性の良くない上司や先輩がいる場合にマイナスに働く可能性がある点に留意が必要です。

実際の360度評価はファームが採用しているウェブサイトやシステムを通じて、評価対象者のサイトに直接レーティングないし、コメントを記載していく形式です。なお、評価の際には匿名のため、誰がどのコメントを書いたかわからないようになっています。(ただし年末のフィードバック面談で、自分に対するコメントを閲覧でき、なんとなく誰が書いたか想像できてしまいます……)

投資銀行の中間・期末評価

大学のように投資銀行でも中間ないし期末評価が行われます。外資系は基本的には1月から12月の事業年度なので6月ないし7月終わりごろに中間の評価、12月末に年間の評価があります。
ボーナスは東京オフィスの実績と、それに加えて個人の360度評価を勘案して総合的に決定されます。

360度評価では、5段階で各分野に関して、peer reviewの結果がありますのでそれに応じて期待よりいいパフォーマンスだった、もしくは期待を下回っていたというように評価がなされます。

年次の評価で改善すべき点や、もっと良くしたほうがいい点を指摘された場合には、改善の状況や何をしているかなどを中間ないし期末での評価で言い渡されますのでその点は緊張感があります。
景気が悪化した際には、昨今のUBSやクレディ・スイスのようにリストラも行われることがありますので、その際には残念ながらパフォーマンスが悪かった人は整理対象になることもあります。

とはいえ、社内政治的な点で評価が決まることも多いので、この点は日系よりもウェットな環境であるかもしれません。チームの上司やMDとのコミュニケーションがストレスなく行えることが一番重要だと思います。(もちろん本人の適性や能力も大事ですが)

投資銀行の360度評価のポイント

1. 重要な成果をまとめておく

中間考査(mid-term performance review)の前に、上司との会話を円滑に進めるために、要約を書きましょう。その際、日付、重要な成果をあげたときの金額/detail、通常の業務とは異なる部門横断的なビジネスの立ち上げに貢献したことなどを必ず記載します。
顧客と接する仕事をしている場合は、顧客からの好意的なフィードバックの例をいくつか残しておきましょう。これは直感に反するようですが、失敗例も記録しておくことを推奨します。自己評価では、もっとうまくやれると思うところはないかと聞かれることがほとんどです。自分なりにWin / Loseを記録しておけば、上司との面談で横やりを入れられることはほとんどないはずです。

2.先輩との関係を築き、それを360度評価に生かす

多くの銀行では、年末の年次レビューの主要な要素として、360度フィードバックプロセスを使用しています。 昔は、自分の仲間をリストに入れ、オンラインで360度評価を提供することができましたが、最近では、上司が複数の人脈からソースのリストを提出するよう求め、上司がレビューを提出する人を選択することがほとんどです。

3.Bellカーブを管理する

絶望的に時代遅れだと思いますが、多くの投資銀行では、ベルカーブの分布に基づいて期待された成果を「超える」「満たす」「最も満たす」「満たさない」の順位を分配するようにしています。

ベルカーブの理論とは、ほとんどの人は平均的であり、上位のごく一部がトップパフォーマー、下位のごく一部が敗者・ローパフォーマーであるというものです。 一部の投資銀行では、今でも下位10%に低い評価を強制することで、グループ内に常に「負け組」が存在するようにしています。(そうすることで、リストラの時期に整理対象にしやすくする)

つまり、たとえ高業績者ばかりのチームであっても、誰かが最下位に転落することになるのです。もしあなたが重要な営業やビジネス上の成果を収めたのなら、上司やチームにそのことを話すことを絶対に忘れないようにしてください。(ただし、あまり頻繁ではないでしょうが……)

4. 自分のキャリアパスについて考える

上司は複数のレビューを管理し、自分のレビューの準備も行っている可能性が高いので、もしあなたが多くの銀行員のようにキャリアアップを望んでいるのであれば、レビューでそれを明確に伝えることが重要です。自分のキャリアアップを念頭に置き、そこに至る具体的なステップを考えてレビューに臨みましょう。ある人事評価の専門家は「キャリアアップのための明確な提案と根拠が必要であり、必要なサポートも必要である」と述べています。必要なサポートは、具体的には追加トレーニングの実施・プログラムの提供や、資格取得のための資金援助、特別プロジェクトのスポンサーシップなどです。また、組織にとってのメリットも強調し、自信を持ってプレゼンテーションできるようにしておきましょう。

5. ネガティブなフィードバックを受け入れる

完璧な人間はいません。あなたの業績評価には、否定的なフィードバックが含まれる可能性も十分にありますが、その際、守りに入らず、動揺せず、素直に聞くことが大切です。結局のところ、否定的なフィードバックというのは、自分の能力を示すものなのです。どのように改善するかを意識して、上司に伝えていきましょう。

6.一般的なスクリプトを用意する

以下が一般的な(投資銀行に限らず)、360度評価面談におけるスクリプトとされています。

  • 今年1年を振り返っての一般的なポジティブな発言や自己評価
  • もっとこうすればよかったと思うこと
  • 今年1年の抱負を述べる一般的な文面
  • 自分の強みをアピールする

重要なのは、まず自分の長所を強調し、上司に指摘される前に改善点を特定することです。

失敗した箇所を知っていることをアピールすることは、あなたが単なる自信家ではなく、改善すべき点を知っている素直で謙虚なバンカーであることを意味します。

パフォーマンスマネジメントシステムに、上司との会話だけでなく、自己評価も含まれている場合、そのシステムを利用する方法がいくつかあります。多くの場合、自己評価書には、筋が通っていると思われるものなら何でも記入し、自分を寛大に評価することができます。

ほとんどのマネージャーは忙しくて、何かを変えることはできないので、ただサインオフして終わりとなります。(これはテクニックの1つです)

7.トーキングポイントを準備する

どのような場合でも、面接のようにレビューに臨み、事前に話すべきことを準備しておきましょう。なぜうまくいったのか、少なくとも1つは改善できること、そしてどのように改善するつもりなのか、例を挙げて説明できるように準備しておくことです。このようなことは形式的なものに過ぎませんので、貴方が話す際にストレスを感じないようにしてください。

超有名投資銀行の人事評価(例)

誰もが知る超有名投資銀行でも同様に360度評価を採用しています。
さきほどの説明と同様に同じ案件やチームで仕事をしたあらゆるレベルの人たちからフィードバックを集めています。

昔は、360度評価の結果をもとに、5つの四分位で強制的にランク付けするシステムを使って、パフォーマンス的に遅れをとっている人を特定したものです。各人が自分の長所と短所について主観的・客観的な質問に答え、それを集計して評価を与える。この評価によって、ボーナスや昇進の可能性が決定され、その後、上司から本人にフィードバックが伝えられます。(この点は一般的な外資系投資銀行と同じです)

その企業は2015年頃から2度評価制度を変更しており、直近の変更では、コーチング、エンパワーメント、リスペクト、会社の価値観の支持といった行動が重視されました。過去に行われたレイオフで、男性スタッフと女性スタッフがどのような割合で離職したかはまだ明らかになっていませんが、評価制度の変更は直近のレイオフに影響を与えたと思われます。

詳細は不明ですが、上記の人事評価は最近の企業で広く使われているものと非常に似ており、従業員を1~9の尺度でランク付けするものです。
従業員のパフォーマンスについて毎日フィードバックするなどの新しい人事評価制度の設立も求められたようですが、多くのスタッフが仕事のパフォーマンスを向上させるために、より継続的で建設的なフィードバックセッションを望んでいる事実が明らかになったとのことです。

さらに、フィードバックのプロセスは、マネージャーと従業員がお互いに何を期待しているかを明確に伝える、双方向の関係として設計する必要がありますので、効果的な人事評価システムの構築という点では苦労も見受けられます。

投資銀行の人事評価まとめ

このように日系と外資系では評価基準や手法に差異があります。日系は一般的な日系企業のような見にくいスプレッドシートに自己評価と上司の評価を日本語で記載することが多いですが、外資系のように360度評価で戦略的に良い評価を得ることを考える必要があるところもあります。

どちらが自分に向いているかはよく考えた方がいいですが、360度評価はやはりみんなに評価することもあってフェアな評価になりやすいと言われます。外資系投資銀行の方がチーム的には少人数になりがちですし、あまり頑張っていない従業員や効率よく仕事をしている従業員、ミスが多い従業員、案件獲得に貢献した従業員など誰でも手に取るようにわかります。

リモートワーク時代も終わりつつあり、コロナ前の状況に戻ってきているため、360度評価もオフィスでの頑張りようが反映されやすいでしょう。
もちろん360度評価では、部下からも評価されるのでパワハラに近いような言動や態度を取り続けていると、あとからマイナスの影響を及ぼすこともあるため、上司だからといって好き放題にやらないようにしましょう。

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今回は、投資銀行の人事評価についてお伝えしました。

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