今回は、投資銀行(IBD)の1日のスケジュールについて解説します。一般的に激務で知られる投資銀行ではありますが、「実際にどのような忙しさの中で働いているのかわかりにくい」という声をよくお聞きします。そこで、実際に働かれている方の声を踏まえて実態を紹介するので参考にしてみてください。
【目次】
投資銀行(IBD)の午前中
若手のバンカーの朝は案件の状況によりますが、遅くまで仕事をしている人が多い事情もあり、マーケットほどは早くないことが多いです(もちろん早朝からミーティングが入る場合もあります)。
筆者の過去の経験も踏まえてお伝えすると、チームで行う月次ないし週次の内部ミーティング以外は、出社時間は9時を大幅に過ぎない限りはフレキシブルになりやすいです。
多くのバンカーは前日に遅くまで仕事をしており、クライアントミーティングがあるとき以外は柔軟にスケジュールを管理できます(ただし1~2年目のアナリストは除きます。新卒や第2新卒の未経験アナリストの場合、基本的に忙殺されます)。
まずデスクに座ってすることはメールのチェックで、次にその日の優先度が高いタスクから着実にこなしていくことが一般的です。もちろんスマホが貸与されるためメールなどは適宜チェックできます。
Ongoingのプロジェクトで東京オフィスがリードしている案件であれば、クライアントからのメールやMD(Managing Director)やDirectorからの資料レビューコメントなど数多くのメールが飛び交うため、読み漏れや対応漏れがないように気を遣うことが多いです。
自分宛のコメントや依頼があれば速やかに対応します。もちろん自分の判断だけでは対応できないものは先輩(アソシエイトや状況によってはアナリスト3年目)やシニアバンカーに相談する必要があります。海外オフィスがリードしており、東京オフィスはサブ(いわゆるリエゾン案件)であれば、Ccに東京オフィスのメンバーが入っている場合が多いため内容やディールの状況を把握することが重要です。
投資銀行のクライアントは主に日系のブルーチップと呼ばれる大企業・優良企業が多く、大部分は本社が大手町や丸の内にあります。
最近はZoomなどでオンライン面談を実施することも多く、重要性が高いピッチやエグゼキューション中のミーティングはFace-to-Faceで行われることが多いです。プライベートエクイティが顧客の場合にはアジアチームがジョインすることもあるため、東京・香港(もしくはシンガポール)でカンファレンスコールが行われて忙しくなります。
アナリストのような若手バンカーであれば、Meetingでの任務はきっちりと議事録(Meeting Note)を取る必要があります。入社して間もないジュニアバンカーにとっては議事録のドラフトも重要ですが、クライアント間を交えたミーティングやエグゼキューションで重要な局面(DDやDA交渉など)における外部専門家を交えたミーティングは案件独特の緊張感も相まっていい経験になるはずです。
投資銀行(IBD)の昼過ぎ~電話会議
午後の電話会議は日本のクライアントと行う、夜以降は連携している海外チームと行うことが多いです。
最近は顔が見えない電話会議ではなく顔が見えるZoomなどを使用したミーティングが多いですが、このような対面以外でのミーティングでも議事録は作成する必要があるため、録音しておくのがベター。
若手バンカーの午前は、社内外のミーティングがある場合はあっという間に終わってしまうものです。そのためほとんどの場合、資料作成や他の作業には午後から深夜に取り組みます。午前中に社内外のミーティングがない場合には、資料作成に集中するための重要な時間ができます。特に資料作成や分析などがある場合には頭を使うことが多いため、夜の比較的落ち着いた時間に行うことが多いです。
投資銀行(IBD)の資料作成
ここで、気になる人が多いポイントであるため、投資銀行(主にM&A)においてはどのような資料を作成するのか見ていきます。
案件やアサインされたプロジェクトにより異なりますが、おおむね下記の流れで取り組みます。アソシエイト以上のタイトルになると、経験の浅いアナリストが作成した資料のレビューが必要なため、必然的に労働時間は長くなってしまうことが多いです。
ピッチブック:顧客に提出する提案資料(≒営業資料)。数十ページにおよび、内容はグラフィカルに「弊社が、いかに実績があって、貴社にとってベストなアドバイザーか」ということに注力して作成されます。Capital Market関係者やカバレッジチーム、ブティック系の投資銀行、プロダクトとカバレッジを分けていないファームでも作成します。
Company Profile:アナリスト1~2年目が作成を任されることが多い、会社概要の資料です(1ページ 超。場合によっては詳細に作成しページ数も増える)。
バリュエーションや財務モデル:よくバンカーが作成している、財務分析や企業価値分析、シミュレーションの資料です。Excelで作成し、アウトプットはパワポ資料。
簡単なDCFやコンプスモデルから、やや複雑な財務3表モデル、LBOモデル、案件によってはMerger Modelを作成して希薄化分析などを行うことがあります。
財務モデリングやバリュエーションの基礎は、アナリストのトレーニングにおいて頻繁に行われるため、必須スキルとして身に付けることが重要です。
DDにおけるQA対応:バイサイドの案件、セルサイドの案件のいずれにおいても必要であり、QAの取りまとめを行います。QAシートはエクセルで管理され、回答内容や未回答のQAの確認が必要です。
ディスカッションマテリアルなど:実際に案件が開始した場合、クライアントの要望に応じて作成するテーラーメイドの資料です。ピッチ前のカジュアルなディスカッションの際に簡単な資料を作成することもありますが、エグゼキューションの最中にはバリュエーション分析、希薄化分析、ディール遂行上の戦略など、様々な論点が出てくるためDeal by Dealとなります。
最も頭を使う局面と言ってよいかもしれません。
インフォメーション・メモランダム (Information Memorandum:IM) :こちらも売却案件で作成される重要な資料です。ファームによってはConfidential Information Package or Presentation (CIP)と呼ぶこともあります。買手候補に配布する資料であるため、正確性や買い手の関心を高めるように洗練されたフォーマット、アウトラインで作成。ジュニアの作業負荷的には相当重くなります。
ティーザー (Teaser):インフォメーション・メモランダムの前に、買手候補にノンネームベースで配布する資料です。1枚から数枚で作成されます。
その他にも現在進行中の案件のエグゼキューションにかかわるバリュエーションモデルのアップデートをしたり、デューディリジェンスのQ&Aシートの消込を行ったりと、取り組むことが多くあります。
これらのタスクは午後にやることもあれば、Meetingや電話会議の波が一旦ひく夕方から深夜にかけて集中して進めることも多いです。エグゼキューションがないときは、次の案件を仕込むためにクライアントへのピッチ(提案活動)が重要となります。
たいていの場合、ジュニアバンカーはピッチ資料の作成に忙殺されます(もちろんシニアバンカーやMDのプレゼンテーションのスタイルによって、資料の構成やボリュームも変わってくるので、一概には言えませんが)。シニアバンカーがクライアントとのMeetingで話すポイントや、強調したい実績をアピールするために関連するセクターのCredentialや過去のディールのCase Studyを盛り込みつつ、綺麗な見映えになるようにパワポで資料を作成していきます。
ピッチは競合他社とのビューティーコンテストになることもあるため、気が抜けません。セクターに知見と実績があること・バリュエーションの見立て・業界の競争環境を緻密に美しく盛り込んでいきます。セルサイドのアドバイザリー業務であれば、Potential Buyerにどのような企業・ファンドがいて、自社がいかに幅広いリーチ・Buyerとのコネクションがあるかどうかが重要なポイントです。
投資銀行(IBD)のチームディスカッション・電話会議(夕方)
夕方の時間帯は、もちろん日によるものの、社内外で電話会議やチームメンバーとのディスカッションが入る場合があります。
電話会議は午前中と同様に、海外オフィスと行ったり、デューディリジェンスであれば外部の専門家などと行ったりします。チームメンバーとのディスカッションはピッチブックの構成や提案の方向性をシニアバンカーと話し、進行中のディールのバリュエーションモデルをレビューし、交渉上のポイントをチームで共有していくことが多いです。
このようなスモールチームでのミーティングはMDがプロアクティブに参加するというよりは、VPやディレクター、ジュニアバンカーが1~2名で議論を行い、迅速に仕事の方向性を決めていくというスタイルが一般的です。
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>投資銀行へのキャリアに関する記事
コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank
投資銀行におけるタイトル毎の「年収・スキル・働き方」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbank_title
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このように投資銀行のスケジュールは、非常にタイトです。求められるスキルセットも財務分析やDCF法によるバリュエーション、類似上場会社比較法、類似取引比較法などの会計やファイナンスに関するスキルがポイントであり、これらがしっかりと備わっていないと長い労働時間になりやすいもの。
気づいたときには朝もしくは夕方になっていることが多く、忙しい時期にはランチを食べる時間も確保しにくい点は覚悟しておきましょう。
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