日本においても、導入する企業が増えているインサイドセールス職。新型コロナウィルスにより、営業の働き方改革の影響を受けて、その導入は加速されつつあります。
そこで今回は、インサイドセールスの形態、営業プロセスごとに、その手法や業務内容について詳しくご紹介します。
【目次】
- インサイドセールスとは「潜在顧客へのアプローチから契約含む全ての営業フローを訪問せずに社内で完結させること」
- 従来の営業手法との違いは、アプローチ数の安定的な担保により生まれる「リードの質と生産性の向上」
- 営業プロセス別の業務内容1:SDRとBDR
- 営業プロセス別の業務内容2:リードの獲得・アプローチ
- 営業プロセス別の業務内容3:リードの精査
- 営業プロセス別の業務内容4:提案 / 受注(クロージング)
- インサイドセールスに必須な業務&スキル:ステージ設計
- インサイドセールスに必須な業務&スキル:業務計画能力・業務処理能力
- まとめ
インサイドセールスとは「潜在顧客へのアプローチから契約含む全ての営業フローを訪問せずに社内で完結させること」
営業に特化したWeb会議「ベルフェイス」を運営するベルフェイス株式会社によれば、「潜在顧客へのアプローチから契約含む全ての営業フローを訪問せずに社内で完結させること」という定義になり、手段としては、「電話・メール・Web会議ツールを駆使する」となっています。
SaaS時代のマーケティングや営業のあり方を提言している書籍、ザ・モデルによれば、2001年の同時多発テロ事件以降、アメリカでは飛行機での移動が自粛され、Web会議を中心とした商談が増えました。元々アメリカは国土が広く、多大な移動費が費やされていたこともあり、インサイドセールスの導入が加速化したのです。
「2017 Sales Trend Research: Inside Sales vs. Outside Sales」によると、アメリカの大企業(売上高 5,000万ドル以上)においては、営業リソースの30.2%をインサイドセールスが担っているというデータもあり、今後さらなる飛躍が予想されます。
アメリカで先行したインサイドセールスは、SaaS企業の勃興とともに、日本においても導入が図られました。
前述のザ・モデルによれば、SFAでリードソース別にリードが管理されるようになったことや、MA(マーケティングオートメーション)ツールでリードのスコアリングがされ、優先順位づけができるようになったことが、インサイドセールスを高度なものに進化させているとのことです。
すなわち、システムやツールの進化が、インサイドセールスの仕事の進め方に大きく影響を及ぼしているのです。
従来の営業手法との違いは、アプローチ数の安定的な担保により生まれる「リードの質と生産性の向上」
インサイドセールスの導入・組成パターンはセールスを全てインサイドセールスに切り替えるパターンか、分業制パターンか、いずれかに大別されます。
1.営業にわたる全プロセスを担う(下記図1の①)
2.マーケティングからリードの創出やリードのナーチャリング等を担い、精度の高い商談をフィールドセールスに渡すまでが役割(下記図1の②)
いずれの場合も、営業の生産性向上が主たる導入目的になります。
営業の生産性向上について、商談数×成約率と定義します。商談数を増やす要素の中で、インサイドセールス導入と関連が強いのは、
・保有リードの数
・保有リードの質
・保有リードに対するアプローチの数
が要素として考えられます。インサイドセールスと関連が強いのは、「保有リードの質」と「保有リードに対するアプローチの数」です。
これは、インサイドセールスが例外をのぞき、移動を伴わないことで、アプローチ数を高位安定的に担保できることにより、アプローチ数が増加し、リードに対して複数回アプローチすることでリードを精査でき、リードの質が向上できる、という考え方になります。
リスト作成→リードへのアプローチ→移動→商談/提案→移動→報告を一人称で完結していた営業スタイルを従来型(図1 ③)とすると、その違いが際立ちます。
従来型の営業スタイルでは、総保有リード数に対するアプローチ率が低く、機会損失が発生します。また、顧客の検討状況により最適に商談を行う、ということは属人的になりやすく、いたずらに商談の数を重ねてしまうこともあります。
インサイドセールスにおいては、移動が省かれるため、保有総リード数に対するアプローチを増加、維持させることができ、時間を割くべき商談かどうかも見極めることができるので、生産性が向上する、というわけです。
営業プロセス別の業務内容1:SDRとBDR
①、②の分業制のパターンで、インサイドセールスの業務内容を説明していきます。
SDR(sales development representative、以下SDR)は、「反響型」とも言われるインサイドセールスです。
図1の②の分業制に示されるリードへのアプローチ以降、本格的な商談に入る手前までを担うインサイドセールスです。既に獲得されたリード、マーケティング部門から引き継いだリードを商談化してフィールドセールスへ引き継ぐ役割を担っています。
BDR(business development representative、以下BDR)は、「新規開拓型」と言われるインサイドセールスで、アウトバウンド型のセールスです。
図1の②の分業制に示されるリードの獲得を担うインサイドセールスです。自社がターゲットとする顧客に対して、アプローチを行っていきます。
2つの違いは、既に用意されたリードに対してアプローチするのか、能動的にリードを獲得するか、の違いです。
マーケティング機能やツールの進化に伴い、PULL型のマーケティング施策も発達していますが、ターゲット顧客以外からリードを取得してしまうケースもあります。また、マーケティングからのリードの流入だけではリードの量・質ともに足らない場合、BDRが検討されます。
インサイドセールスが営業プロセスのどこまでをカバーするのかは、企業によって違いがあります。単価が低く、企業の購買頻度もそれほど高くない場合、商談提案以降もインサイドセールス(訪問せずに内勤で完結させる、という意味での)で実施するケースもあります(図1の①の分業制)。
営業プロセス別の業務内容2:リードの獲得・アプローチ
SDRは、マーケティングから引き継ぐリードから担当します。マーケティングオートメーションが導入されている場合、リードは属性(業種・企業規模・担当者役職等)行動(資料閲覧、ダウンロード等)でスコアリングされています。
スコアリングに基づいて、アプローチを行っていきます。アプローチは電話やメールが主たる内容です。
行動のスコアだけではなく、何に興味があるのか、事前に予測したうえで、個々のリードに対して、アプローチの準備を行うことが必要なのです。
BDRは、自らリードを獲得します。その際、ターゲット選定も含めて行う場合があるでしょう。
ターゲット選定から行う場合には、戦略的に優先順位の高いターゲット、すなわち自社のサービスと親和性の高いリストを作成することがポイントになります。また、リードを獲得する主たる手段の電話をかける際のトーク内容も、顧客ごとに用意するのではなく、ターゲットに対して準備することができ、アプローチ数を高めることにつなげていきます。
SDRもBDRも、アプローチの際は、できるだけキーマン(意思決定層)につないでもらい、顧客のニーズの有無や緊急性を把握することが重要ですが、多くのリードをつくる、フォローする、という数の意識も重要です。
営業プロセス別の業務内容3:リードの精査
リードの精査は、誰と何について会話し、どういう反応だったか、という内容に基づき、継続フォローするのか、商談としてフィールドセールスに引き継ぐのか、違う形でアプローチするのか、などの判断基準が必要です。
判断基準を明確にしておくことにより、最適な商談や提案内容を、最適なタイミングで行うことが必要です。
商談に移行するには、インサイドセールスのヒアリングスキルも重要です。いかにニーズを想起してもらい、緊急性を高めるかが肝になります。
ヒアリングはいくつかのパターンがありますが、典型的なパターンは下記です。
①自社サービスの提供できる顧客へのベネフィットをいくつか想定する
②各ベネフィットを享受したいと思う、顧客の状態や問題点を仮定する
③状態や問題点を相手に不快感なく、自然に答えてもらうような質問を用意する
④解決したいと思うか、もしくは解決できないと今後どのような悪影響がでるのか質問する
①~③は事前に準備します。SDRであれば個々のリードの状態から準備していきます。BDRであれば、ターゲットに対して、パターンを決めて準備していきます。
営業プロセス別の業務内容4:提案 / 受注(クロージング)
提案に入る際は、インサイドセールスであれ、フィールドセールスであれ、原則重要なポイントは変わりません。
明らかになったニーズに対して、こちらで解決できる点を改めて顧客へ伝えることになります。
①明らかになったニーズの確認(認識の違いがないかどうか)
②ニーズに対して提供できるベネフィットを改めてエビデンスとともに訴求
③顧客がベネフィットを享受する必要性に納得できたか確認
上記が基本パターンとなります。
エビデンスは、ベネフィットを定量的に示すことができるものが理想です。また、他社でこのような結果が出た、という情報も有効です。また、類似サービスを提供する自社の競合他社に比べても、有意にベネフィットが強い、ということを示すことができれば、受注の確率は飛躍的に高まります。
Web商談の場合、さらに丁寧に説明する必要があります。アジェンダを用意し、資料を共有しつつも、あくまで双方向で進めていくことが必要です。
セールス自身が使用ツールを問題なく活用できることはもちろん、顧客がなれていない場合は丁寧にガイドすることが求められます。
クロージングの際は、はっきりと顧客の発注意思を確認することが重要です。この時点で顧客から反論がある場合がありますが、反論の背景をきっちりと確認し、解決の手段を探ります。
インサイドセールスに必須な業務&スキル:ステージ設計
インサイドセールスを効果的に進めていくには、
・カバー率を高める(保有リードに対するアプローチの数)
・顧客ごとに最適な情報を、顧客ごとに最適な方法で届けていく(保有リードの質を高める)
ことが重要です。結果、最適な提案ができる顧客が増加し、営業組織の生産性が高まるのです。
そのためには、インサイドセールスのステージ設計が重要になります。
例えば、
ステージ1:新たにリードが割り当てられ、アプローチしていない状態
ステージ2:顧客キーマンにコンタクトがとれており、ヒアリングしている状態
ステージ3:ニーズがはっきりしたうえで、商談に進める状態
という具合です。
このステージごとにリードの数を管理していくことで、PDCAをまわすことができます。
また、ステージ2に至らない、ステージ3に至らないリードは、期日を決めて、担当を変えてやり直すか、違う形でリードを育成し直す必要があります。
新たにアプローチできるリードが常にあるとは限らず、リードを育成し直してアプローチすることも重要な取り組みです。
リードの育成を「ナーチャリング」といいます。再育成のことを「リサイクル」と言います。
インサイドセールスに必須な業務&スキル:業務計画能力・業務処理能力
システムやツールの進化が、インサイドセールスの仕事の進め方に大きく影響を及ぼしています。
ツールが活用できれば、業務を効率化できますが、使いこなせないと生産性に影響します。
例えば、MA(マーケティングオートメーション)ツールで、リードのスコアリングが成されてリードが引き継がれる場合、どこから優先順位をつけてアプローチを行うのか、という計画が必要です。
スコアリングにもよりますが、属性スコアと行動スコアをどのように解釈し、優先順位をつけるのかは、考えて実行しなければなりません。
SFAツールや、社内共有ツールにも習熟している必要があります。
なぜ、このような計画力や処理力が必要なのかというと、インサイドセールスは、一定のリズムでリードへのアプローチ数を高位安定化することが生産性の拡大につながるからです。
今後は、在宅でインサイドセールス業務を行うことも珍しくなくなります。そのような環境下において、ツールを使いこなし、きちんと計画をして一定のリズムで実行できることが重要なのです。
まとめ
冒頭、お伝えしたように、今後インサイドセールス職が増えていくことが予想されます。
また、システムやツールの発展に伴い、高度な職種になりつつあります。インサイドセールスとは、単なる内勤営業ではなく、最新のツールと考え方を駆使し、営業の生産性を高める役割を担っています。非対面であるため、確実なスキルや、リードを客観的にジャッジする判断力も求められます。
伝統的な電話による新規開拓営業と大きく異なる点は、ステージ設計による可視化をもとに、必要なステージ遷移数を目標にして確実に進めていく、ということです。
- アプローチ内容を効果検証しながら進める
- リズムを平準化して進める
インサイドセールスは、既にアメリカやヨーロッパでは「高度な営業職」としての位置づけが確立されつつあり、日本でも営業の生産性向上が課題になっていることから、益々その位置づけを高めていくことが予想されます。
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今回の記事では、インサイドセールスの手法をプロセス順にご紹介しました。
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