今回は、投資銀行への転職、特に外資系投資銀行への転職に有利な資格(具体的な資格のレベル)とその理由について、実際に外資系投資銀行で働かれている方々からお聞きした情報なども参考に記載していきます。外資系投資銀行は給与が高いことや関わるディールが大規模~中規模、クロスボーダー案件が多い点で、日系証券会社やFAS等から人気があります。中途や第二新卒で入社を狙う方でも、それなりに予備知識や素養が必要なので資格があるに越したことはありません。
【目次】
- 外資系投資銀行で用いるスキル
- 投資銀行への転職で役立つ資格:MBA
- 投資銀行への転職で役立つ資格:公認会計士
- 会計士から投資銀行への転職のポイント:年齢
- 投資銀行への転職で役立つ資格:弁護士、司法試験合格
- 投資銀行への転職で役立つ資格:USCPA
- 投資銀行への転職で役立つ資格:CFA
- 投資銀行への転職では資格だけでなく一貫性ある経歴が重要
外資系投資銀行で用いるスキル
外資系投資銀行における職務内容について、キャピタルマーケット業務(IPOや新株発行、引き受け業務)のほかに花形と言われるM&Aアドバイザリーやカバレッジチームがあります。いずれもプレゼンテーションの作成能力や、財務モデル作成、バリュエーションの実務等が高いレベルで求められます。
投資銀行では、同時に複数の案件にアサインされ、パラレルにたくさんの仕事を処理していく能力も極めて重要です。カルチャー的にはアグレッシブさや、パワポ資料のビジュアルへのこだわりの強さがある人も多いため、そのような雰囲気に慣れることができるかも大事でしょう。エクセルでのバリュエーションのメソッドへの理解や、パワポでのクライアント向け資料用のフォーマットの作成スキル、上司やチームとともにディスカッションの末に出した内容を盛り込むスキルが実務ではかなり重視されるようです。
入社を狙うにしても、資格に加えてまずはハードスキルを鍛えることが重要なので、バリュエーションや財務モデリング、M&Aのプロセス、ストラクチャー等の素養がある人が望ましいとされています。
だからこそ、関連した資格を持っている人が書類も突破しやすく、面接でもうまく話せる可能性が高まると言えます。外資系投資銀行に転職する人材は基本的に中途で経験のある方が中心ですが、アナリストのポテンシャル採用を狙うのであれば、下記に説明する資格を有している方は、より内定の可能性が高まると考えられます。
投資銀行への転職で役立つ資格:MBA
これは資格というよりは、学歴に近いですが、投資銀行への転職に最も役に立つ経歴であることは間違いないでしょう。MBAは経営学修士ですが、多くの投資銀行では国内ではなく欧米のトップ校で取得することが望ましいでしょうか。外資系投資銀行で、出身者が多い学校は、例えばペンシルバニアのWharton・コーネル・INSEAD・HEC Paris・ハーバード・スタンフォード・MITスローン・シカゴ(Booth)等の有名かつ難易度の高い大学が多いと言われています。米国の若手でも、新卒は投資銀行と関係ない職歴で、上記のトップMBAに進学して、中堅ないし大手の投資銀行に転職する人は多くいます。
外資系投資銀行であれば、多くのシニアバンカーは海外大でMBAを取得しています。当然ですが海外オフィスのバンカーは、海外の有名大学でMBAを取得しているケースがほとんどです。MBA取得後に未経験でアソシエイトとして入社する人も以前は多くいましたが、最近は経験者に絞った採用が多く、MBAそのものが即投資銀行への転職に役立つかというとそうでもないこともあります。とはいえ、MBAではプライベートエクイティファンド関連の講義や、投資銀行で役立つコーポレートファイナンスの講義もあるので、時間と実力がある方は目指すといいでしょう。
最近ではすでに投資銀行やプライベートエクイティファンドで働いている人が、キャリアの中間で取得するケースも多いです。
MBAを持っていないが投資銀行に入りたい人は、安全策としてはFASや日系投資銀行でのM&Aアドバイザリーの経験を経て、海外の有名大学のMBAを取得して外資系大手投資銀行への転職を狙う等でしょうか。コストと時間がかかる分、若手社員と呼ばれるうちにMBAを取りに行くことが重要です。30歳前後の未経験者が、投資銀行のM&Aアドバイザリーへの転職は実質的に不可能なので、とにかく年齢が勝負との印象を受けます。
最近では昔と異なり、MBAを取れば投資銀行に入れるというよりは、新卒や第2新卒、日系投資銀行や外資ブティック系投資銀行でそれなりに経験を積んだ人を採用することが好まれています。MBAは外資系投資銀行転職のために取るというよりも、「今後のキャリア上必要だったので取得しました」と説明する方がいいでしょう。
投資銀行への転職で役立つ資格:公認会計士
外資系投資銀行で役に立つ資格の筆頭が公認会計士でしょう。これは日本の企業を相手にする投資銀行であれば、USCPAよりも日本の公認会計士試験に合格している、ないしはすでに登録済の方が望ましいです。
実際に投資銀行で働いている多くの人は、合格ないしはすでに登録しています。
会計や法人税法、コーポレートファイナンスに関する総合的な知識をバランスよく身に着けているという点で評価されます。会計のみならず、M&Aの案件において重要になりやすい税務に関する知識や論点、TOBに関連する規制や非公開化に付随する論点について、網羅的に学習していることで好感されます。
投資銀行のジュニアバンカーであろうが、シニアバンカーであろうが数字の感覚を持っていることは最も重視されます。会計は基礎的なスキルと言語というイメージですので、合格していて損はないでしょう。税理士資格も組織再編税制に詳しいというエッジがあるならば評価される可能性もあります。
FASでM&Aアドバイザリーの経験がある若手の会計士であれば、投資銀行への転職可能性は大手証券会社、バルジブラケット、外資ブティック系投資銀行を含めて可能性はいずれも高いと思われます。未経験で応募する場合には20代前半から中盤で、ポテンシャル採用を行っている投資銀行に行くのが現実的でしょう。
会計基準に関する知識や、税務の知識を期待されて投資銀行に入る会計士の方が多いですが、実際には入社後にはコーポレートファイナンスの知識・教科書だけではないバリュエーションの知識の習得、エグゼキューションに慣れるための訓練等、入社してキャッチアップすべき事項も多いので、その点は頭に入れておきましょう。
会計士から投資銀行への転職のポイント:年齢
会計士としてある程度経験を積んで投資銀行へ転職する場合には年齢は新卒を含め若い方が有利です。監査業務に抵抗がないのであれば、早めに準備しましょう。
実際に、あるブティック系外資系トップの投資銀行では、学生時代に公認会計士試験を合格した人を新卒同然で採用しているところもあります。日系の投資銀行でも在学中に公認会計士に合格していれば、コース別でIBDのプロダクトチームに行きたいという志望動機は非常に評価、説得力がありますしキャリア的に望ましいでしょう。
バルジブラケットやブティック系、一般的な投資銀行のM&Aアドバイザリーサービス等で、カバレッジ・エグゼキューションにおける財務分析、M&Aプロセスでのエグゼキューション、資料作成等の業務経験があれば、採用される可能性はあるでしょう。会計士が生かせるスキルに関しては会計の知識、基礎的なバリュエーションの知識、地頭の良さがあり、クライアントがJGAAPを採用しているときには買収後の影響をJGAAPに即して分析したり、のれんのインパクトを理解したりということが求められる場合もあるため、会計の素養は非常に重要です。
IBDに転職する際には基本的には中途で経験のある方が中心になりますが、アナリストのポテンシャル採用を狙うのであれば、会計士を有している方であれば内定可能性が高まると考えられます。
投資銀行への転職で役立つ資格:弁護士、司法試験合格
次に注目すべき資格は弁護士です。投資銀行では、コーポレートファイナンスや会計、バリュエーションに関する知識や経験は必須ですが、M&Aアドバイザリーでは、買収、売却そのほかJVの案件でも契約書の交渉におけるサポートは、投資銀行のバンカーにとって重要なロールです。特に契約書の交渉においてバリューを発揮するのが、ファイナンシャルアドバイザーとしての投資銀行の価値ともいえ、弁護士やM&A、コーポレートファイナンスに関する法務の知識がある人は重用されます。
実際に大手法律事務所から、大手投資銀行に出向している人もいますし、弁護士でMBA取得後に投資銀行に転職する人もいます。法律に関する知識や、M&Aにおける契約書の交渉に関して、弁護士、特に法律事務所で法務DDや、M&Aの案件に関与していた人は非常に高いニーズがあります。
実際に投資銀行で活躍されている方でも、司法試験合格者や、弁護士の方もいるため、すでに合格されている方は法律事務所で経験を積むのもよし、いきなり投資銀行にてM&Aやキャピタルマーケットに関する業務に関与し、バンカーとして高い報酬を目指して頑張るのも魅力的と思います。
投資銀行のM&Aアドバイザリーの業務は財務や会計等の素養も大事ですが、ディールも後半にさしかかると、契約書の交渉が重要なポイントになるので、法律の素養のある弁護士や契約書のドラフトの経験がある方は活躍できます。実際の案件ではFAのみならず外部の法律事務所も協働してアドバイザリー業務を行いますが、契約書に対してコメントを行うのもFAに期待される役割(特に、価格調整等)なので、会計や価格交渉の論点をドキュメンテーションに落とし込めるようなスキルのある弁護士のバンカーは重要です。
特に将来的にプライベートエクイティファンドへの転職を考えるような弁護士の方は、自身の強みを生かして、まずは外資系投資銀行等でM&Aアドバイザリーの経験を若くして多く積み、そののちにプライベートエクイティファンドへ転職することも一考です。実際に大手の外資系プライベートエクイティファンドにいるシニアの方(マネージングディレクター)等で、弁護士資格を有している方はまれにいらっしゃいます。
投資銀行への転職で役立つ資格:USCPA
次に役立つ資格はUSCPA(米国公認会計士)です。これは日本の公認会計士ほどの高い評価が得られるかは不明ですが、英語で会計用語やUSCPAを理解しているという点では、それなりに評価に値するものとなっております。特に外資系投資銀行で、日米案件を扱う場合には、USCPAの知識が必要になる局面もあるので重宝されるでしょう。
なお、日系、外資系問わず仕事をしながらUSCPAを取る人はそれなりにいるので、この資格に合格していることで大きく有利になるわけではありません。とはいえ、ないよりもあったほうがマシですので、未経験で投資銀行への転職を希望される人はチャレンジする価値があります。
投資銀行への転職で役立つ資格:CFA
次に評価される可能性があるのは、CFAです。これは証券アナリストとは違いますが、米国のCFA協会が行っているものです。Levelが1-3の3段階で、すべて合格するため数年単位で学習計画を立てる必要があるほどの難易度で、価値のある資格になります。外資系投資銀行では持っている人がいますが、M&Aアドバイザリーの業務に役立つというよりは、バイサイドで必要な資格です。
英語力や努力できる素質があることを示すにはいい資格だと思いますが、これが決め手になることは考え難いです。もっとも海外のオフィスにいる投資銀行のバンカーはCFAを有していることも多いので、実務と並行しながら取得できる余裕のある方はCFAも見ておくといいでしょう。CFAは難易度もそこそこ高いので、USCPAよりは差別化要因になるかもしれません。
投資銀行への転職では資格だけでなく一貫性ある経歴が重要
以上をまとめると、投資銀行への転職に役立つ資格は、公認会計士、弁護士、MBA等の総じて難易度やコストが高いものが中心になると想定されます。
簿記や経理のスキルがあるだけでは、到底太刀打ちできません。
投資銀行(外資系投資銀行)のキャピタルマーケットやM&Aアドバイザリーチームで求められるスキルセットは、会計やコーポレートファイナンスに関するものが多く、これらに関連する資格(公認会計士やUSCPA等)は未経験のポテンシャル採用でも有利に働くことがあります。
またM&Aアドバイザリーでは、契約書の交渉といった専門性が必要な内容をアドバイザーの観点から助言する場合もあるため、法律に明るい弁護士で、かつコーポレートファイナンスの素養のある人は非常に重宝されます。ここには記載はしていませんが、証券アナリスト等の試験に合格しておけば、証券会社で働く際には、若手のポテンシャル採用では多少の好感を得て働くことができると考えられます。
ただ資格の有無が絶対的な合否の判断基準ではないため、志望動機と一貫した自分の学業や学歴をアピールすることが重要です。
なお、資格を持っていることで入社後に役立つことが期待される分野は会計やファイナンスに関する実務全般です。財務分析・DCF・類似上場会社比較法・類似取引比較法等が挙げられます。
繰り返しになりますが、資格だけでなく、入社後にエグゼキューションやカバレッジの実務で、資料作成やプレゼンテーション、顧客とのやり取り等も重要になりますので、資格に依存せずにキャッチアップする意欲や素養の高い人は、入社後もスムーズに業務に邁進できるでしょう。
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今回の記事では、外資系投資銀行への転職に有利な各資格について解説しました。
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