投資銀行におけるタイトル毎の「年収・スキル・働き方」

大抵の会社には役職が、主任・係長・課長・次長・部長といった具合についているのが一般的でしょう。

一方、投資銀行には役職にあたる概念として「タイトル」があるのが一般的です。タイトルによって期待される役割や待遇が定義されるので、まさに役職と同等の意味があるのですが、一般企業と異なる独特な名称が用いられる傾向にあり、投資銀行業界を知らない方ですと、一体どのタイトルが上なのかわからないという方も多いと思います。

今回は、投資銀行を目指される方向けに、投資銀行のタイトルそれぞれの特徴(年収・スキル・働き方など)について紹介します。尚、年収については日系の投資銀行部門はタイトルと給与水準がリンクしていない場合があるため、今回は主に外資系投資銀行を想定して解説します。
※年収についてはあくまで一例ですので、具体的なレンジなどを知りたい場合はぜひご相談ください。

【目次】

  1. 投資銀行のタイトル≒役職はオーソドックスには5段階
  2. 投資銀行の各タイトルの特徴①アナリスト(AN)
  3. 投資銀行の各タイトルの特徴②アソシエイト(AS)
  4. 投資銀行の各タイトルの特徴③ヴァイスプレジデント(VP)
  5. 投資銀行の各タイトルの特徴④ディレクター(D)
  6. 投資銀行の各タイトルの特徴⑤マネージングディレクター(MD)

投資銀行のタイトル≒役職はオーソドックスには5段階

ひとくくりに投資銀行といっても、ハウスによって細かいタイトルの定義は異なりますが、一般化すると概ね以下のような5つのタイトルで階層化されています。

●マネージングディレクター(MD)
●ディレクター(D)
●ヴァイスプレジデント(VP)
●アソシエイト(AS)
●アナリスト(AN)

日本企業と比較して実力主義ではありますが、それでも若手のアナリスト〜ヴァイスプレジデントあたりまではある程度の年数を耐え切れればプロモーション可能です。(若手が辞めていくのはクビになると言うより自分から転職先を見つけて辞めていくケースの方が多いです)

一方ヴァイスプレジデント以上はまさに実力主義で、下記でも一応の年数の目安には触れていますが、それぞれのパフォーマンスによってプロモーション時期は大きく異なります。

投資銀行の各タイトルの特徴①アナリスト(AN)

投資銀行において最も若手の役職にあたるのが「アナリスト」です。投資銀行では「役なし」ということはなく、新卒でも入社した途端にアナリストになります。だいたい新卒〜3年目くらいまでをアナリストとする傾向にあり、優秀かどうかで±1年程度の経験期間の差があるといった具合です。4年目になってもアソシエイトに上がれないと「クビ」という話を耳にするかもしれませんが、実際には強制的に辞めさせられるというより、自分から転職先を見つけてやめて行く場合が多い印象です。

尚、転職組で前職が投資銀行でない場合は、30歳以内くらいまではアナリストに配属される場合があります。この場合は生き残るためには速やかにキャッチアップして、同年代に追いついていく必要がありますので、より競争は過酷になります。

アナリストという名はついていますが、何かを深く分析してレポートを出すようなことをするわけではありません。アナリストは上層にあたるアソシエイトやヴァイスプレジデントの指示に基づいて、資料作成や提案内容の構築、ディール完遂などに必要なデータの収集や分析などを主に行うことになります。資料作成といっても、高度な判断が必要な場所はアソシエイトが行うので、より単純ながら時間のかかる部分ほどアナリストに回ってくる傾向があります。

投資銀行ではかなり短いリードタイムで資料作成やデータ収集を求められることが常なので、極端な残業が発生しやすい印象がありますが、この投資銀行的な働き方に最も近い働き方を強いられるのがアナリストという役職になります。ただし、近年は働き方改革なども背景に規制が厳しくなっているので、以前ほど極端ではないハウス・部門も増えてきているようです。たとえば、残業を繁忙期でも100時間以内に抑えようとする動きなどが見られます。(最大で100時間は投資銀行若手としてはマイルドな方です)

このような過酷な労働環境にあるアナリストですが、年収水準は米系最大手クラスで1,000万円に達するかというところで、さすがの外資系でもこのタイトルで1000万円超の年収を獲得する方は少数派です。正確な統計があるわけではないですが、中央値は800万円程度になると思われます。世の中の新卒や最若手と比べれば高いですが、その分激務かつ、プロモーション競争も激しいため、この程度の年収では割に合わないと考える方も多いです。

投資銀行の各タイトルの特徴②アソシエイト(AS)

最速で新卒3年目、平均4年目にプロモーションするのがアソシエイトになります。投資銀行と聞くと成績を残せない場合すぐクビになってしまうイメージを持たれる方も多いですが、アソシエイトまでは「外資にしては」横並び感が強く、せいぜい2年前後の差はあれど、ほとんどの場合粘ればアソシエイトまではなれるでしょうか。(先にも書いた通り、粘らずに辞める人が多いのであって、クビになっているわけでは必ずしもありません)

アソシエイトなりたての頃は傍目から見る仕事ぶりはアナリストとそう変わらず、引き続きヴァイスプレジデントの指示のもと、提案資料やディールに関する資料作成に追われています。ただし、データの細かい整理はアナリストに指示しながら、自分はより高度なページ・内容を処理するといった形で、アナリストを使いながら仕事を進めていく点が特徴です。

また、アソシエイト2〜3年目の、ヴァイスプレジデントへのプロモーションが射程に入る立ち位置になると、提案時のプレゼンを行ったり、資料全体をマネジメントしたりといった役割を与えられる場合もあります。少額の社債発行、小規模のM&Aなどハウスへの業績インパクトの小さい案件ではディール全体のマネジメントを任されるケースも出てきます。このように仕事が急速に広がって行くのが、特に順調なアソシエイトにしばしば見られる特徴です。

残業時間についてはアナリスト同様に長い傾向があります。プレゼンの準備や、少人数でのディール運営などアナリストにはない役割が出てくることや、提案内容やディールについてのインプットを突き詰めてしまうあまり、アナリスト以上に長時間働いてしまう方も少なくありません。(この頃まで生き残る人は残業に耐性ができてしまっているため、長時間残業に抵抗がなくなっていると言う背景もあります)

給料については、アソシエイト初年度からは少なくとも1000万円は超えてくるケースが多いです。これによって外資系では20代から1000万円を超えるのが普通ということになります。米系大手では2000万円に近づくようなケースもあるようですが、欧州系も含めて中央値という意味では1000〜1500万円に収まると思います。次のヴァイスプレジデントに向けて、順調であれば年ごとでも年収が上がっていくのがアソシエイトの特徴です。一方で同レベル・同年数のアソシエイト間の年収の開きは小さい傾向にあります。

投資銀行の各タイトルの特徴③ヴァイスプレジデント(VP)

外資系投資銀行という過酷な環境でどこまでキャリアを突き詰めるかは人それぞれですが、一般的にはヴァイスプレジデントまで到達すると将来が明るくなる傾向になります。年収が日系企業では役員クラスでないと達成できない水準になってきますし、ネームバリューがつくことで転職もしやすくなるためです。一般的には7年目前後、年齢にして30歳前後で到達するのが最速ですが、到達年齢はパフォーマンス次第で大きく変わってきます。もちろんアソシエイトのまま投資銀行を離れていく方も多いです。

ヴァイスプレジデントの役割期待としては、アソシエイト・アナリストをうまく使いながら、ディールを獲得し、また一般的な難易度のディールを普通に運営できることでしょう。複数人のアソシエイト・アナリストを実質的に部下として使うため、日系ですとここからが管理職といったイメージになるかと思います。ただし、先に紹介した通り「副社長」でも「部長」でもなく、せいぜい中間管理職の入口といったところです。

仕事内容はアソシエイトの後半でやったことを、より大口のディールでも行うイメージです。提案内容を練り資料をアソシエイト・アナリスト作らせ、チェックしながらクオリティを高めていき、提案の際は基本的に自分がプレゼンします。また、ディールが始まると関係各者との交渉を進めながら、クライアントが求める内容で、また予定通りの時期にディールがクローズできるようにマネジメントしていきます。このように人材に関しても、ディールに関してもマネジメント性が出てくるのが、ヴァイスプレジデントの大きな特徴です。

また、この役職から徐々に残業は減ってきます。時間のかかる作業は部下に振り、自分はマネジメントに集中するためです。ただしヴァイスプレジデントはディール運営に関わっているため、ディール中にトラブルが発生するなどした場合には、長時間対応を迫られるケースもあります。アソシエイト以下ほどではないとはいえ、まだまだ世間一般で言えば残業が多い部類に入るでしょう。

年収はヴァイスプレジデントになるとディールクローズの実績数が重要になってきます。実績が多いと年収が跳ね上がることから、個人差が大きくなる傾向にあります。概ね「VPの最低ライン」として1500万円〜というところ、最高値は計り知れないですが、少なくとも2000〜3000万円くらいまでは充分狙える水準です。

投資銀行の各タイトルの特徴④ディレクター(D)

ヴァイスプレジデントからディレクターへの昇進は、ヴァイスプレジデントを○年経験したら、といったように年数で示せるものではありません。ディレクターともなると一つのハウス内での人数も相応に減ってくるので「誰かが辞めるかプロモーションしないと上がれない」といったような局面もしばしば考えられるためです。ハウスによる差も大きくなってきますが、30代半ばごろまでにディレクターに上がれれば順調なペースと言えるでしょう。

ディレクターの役割は一般的には一つのチームやユニットのマネジメントになります。一つ一つのディール運営はヴァイスプレジデント以下に任せ、チーム全体の収益性やリーグテーブルの向上を目指しながら、メンバーマネジメントやクライアントの関係構築を行います。一部重要性の高いクライアントのディールや、何らかの難易度の事情があるディールでは積極的にディールマネジメントに介入する場合もあります。

この段階になるといわゆる「残業」ということはあまり発生しなくなります。資料作成は若手がやりますし、ディールでのちょっとしたトラブルも一義的にはヴァイスプレジデントまでで解決されるので、夜遅くまで残る必要があまりないためです。

一方で、年収水準についてはヴァイスプレデントよりさらに高く、また個人差が大きくなります。最低ラインは2500万円前後となるのが一般的です。最高値は1億円までといったケースが多いでしょうか。

投資銀行の各タイトルの特徴⑤マネージングディレクター(MD)

マネージングディレクターは、一般的な企業で言うと役員クラスにあたります。外資系投資銀行の場合は組織が小さい場合もあり、その場合は部長のような仕事ぶりになりますが、いずれにしてもシニアクラスの役職ということになります。

日本法人全体をマネジメントする重要なメンバーも、マネージングディレクターの中から選ばれるのが一般的です(別のタイトル名がつく場合もありますし、マネージングディレクターのままの場合もあります)。

マネージングディレクターは投資銀行の一部署〜部門全体のマネジメントを行うポジションとなります。ディールそれぞれに関わることはなく、ディレクターに指示を出しながら、ハウスの収益最大化を常に追求します。クライアントとの接触機会は低下し、関係構築のための節目の挨拶や、ディールの御礼など重要局面で会話する程度になります。日系企業で言えば役員クラスが出てくるようなものなので、安易に顔を出すことはハウスの品位を下げることにもつながりかねませんので、マネージングディレクターのクライアントとの交流はTPOを踏まえながら適切にセットされていきます(マネージングディレクターを活用したコンタクトを的確にセッティングするのはディレクター以下の重要な能力の一つとなります)。

年収の水準はまさに青天井で、下は3,000万円〜ですが、数億円に達する例もあります。一方でトップ層であることから経営責任が伴うため、収益性が思わしくない場合には、簡単にクビになるリスクもあります(人事としても予算を大きく割いているため、とりわけシビアに評価されるのが一般的です)。

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>投資銀行へのキャリアに関する記事

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

投資銀行における部門毎の違い【業務内容~スキル~働き方まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankdepartmentdi

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今回ご紹介したように、日本の「役職」と同様、投資銀行のタイトルは、それぞれで期待される役割がしっかりと分かれています。もちろん役割に応じて年収水準も大きく異なります。

投資銀行に転職する場合、転職先で想定されるタイトルも踏まえて転職を決定することになるのが一般的ですが、今回の記事を参考に、自身が期待される役割を果たせるかどうか慎重に判断した上で、投資銀行への転職にチャレンジすることが大切です。

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