コンサルタントやアセットマネジメントで活躍されており、投資銀行(IBD)へのキャリアをお考えの方に投資銀行のイメージをお聞きすると、「激務」という印象を持たれがちです。
そこで今回は、実際にコンサルやアセマネと投資銀行それぞれで働いたことのある方の声を参考に、コンサル・アセマネなど「激務」の部類に入る業種と比較しながら、投資銀行での働き方の実態を紹介していきます。また、その中で上手くプロモーションしている方の特徴についてもお伝えします。
【目次】
投資銀行はどの程度激務なのか:コンサル・アセマネと比較
まず投資銀行の激務さ加減を、コンサル・アセマネといった業種の残業時間・労働量の面で比較していきます。
実際、コンサルと投資銀行の両者を経験された方々からの声をまとめると、「プロジェクトにもよりますが、平均すると同程度」という意見が多い印象です。まずどちらの仕事もプロジェクトの内容や、フェーズによっては深夜残業・タクシー帰りも発生し、一定の睡眠時間も取りにくくなる点は一緒でしょうか。
コンサルの場合はプロジェクトが佳境の局面になったり、プロジェクト方針が急変し対応する資料や成果物の作成に追われる時など、やむを得ず深夜に帳尻を合わせる局面があります。
一方、投資銀行では部門によっても異なるものの、ディールを獲得するための重厚な提案資料の作成や、法制度に対応するための膨大な資料作成などが深夜残業の原因となりがちです。
尚、双方同程度の激務さであることを踏まえた上での差異として、「投資銀行の方が深夜残業が多い」一方で、「コンサルは家での持ち込み作業や休日作業が多い」傾向があります。
投資銀行は情報管理のルール上、仕事を一切家に持ち込めない場合が多く、オフィスで完結させなければならないため、平日のうちに完了させるための深夜残業が増えがちです。一方で、コンサルではノートPCが貸与されてどこでも仕事ができる環境となることも多いでしょうか。その場合はオフィスに深夜までいる必要はない一方、家で夜や土日に作業する機会が投資銀行と比較して増えるという声もよく聞きます。
ちなみに仕事の分量としては投資銀行の方が多い傾向があります。コンサルは資料それ自体が成果物の一部となることが多いため、量よりも正確性が高く要求されます。一方で投資銀行では、提案資料を作成することに多くの作業が割かれますが、提案資料はそれ自体にフィーが発生するわけではありません。そのため正確性に対する緊張感は落ちるという感覚を持たれる方が多く、代わりに量が膨大になりがちのようです。
続いて、投資銀行とアセマネの比較ですが、これは、単純な残業時間では明らかに投資銀行が多い傾向にあるでしょうか。「国内系アセマネとの比較ではアセマネの繁忙期が投資銀行の日常と比肩するかどうかという程度」とのことで、一年を通じてみると国内系アセマネの仕事で投資銀行並みの激務さになるのはかなりのレアケースのようです。
一方で「外資系アセマネの場合は、実労働時間は長くないが投資銀行のように深夜の作業を強いられることはある」ともよくお聞きします。
これは本国とコミュニケーションをとる業務の場合に、現地時間の日中=日本では深夜〜未明にかけて業務をしなければならない局面が想定されるためです。しかしその場合も「隙間の時間」がアセマネでは発生しがちであり、深夜まで働きづめになることも多い投資銀行とは勝手が異なるといえるでしょうか。
仕事内容についても、単純な量で言えばほぼ例外なく投資銀行の方が多くなります。アセマネは、資料のリードタイムが長い傾向にあり、その分チェックをかける余地ができることから、結果的に量より正確性が要求されることが多いです。
まとめると、投資銀行は業務時間としては概ねコンサル並み、アセマネよりは多いといえます。また仕事量に関しては、いずれの業種と比較しても投資銀行が多い傾向があります。
投資銀行で激務を避けてプロモーションしている人の特徴や秘訣
投資銀行は「基本的に激務」という声が多い一方で、中には上手に激務を避けながら、パフォーマンスもしっかりと上げてプロモーションしている方もいます。
その方法は様々ですが、大きく分けると下記の2点でしょうか。
投資銀行で激務を避けている人の特徴①業務負担は多くないが収益性や重要性の高い部門・業務についている
投資銀行が激務であると言っても、実情は部門や部署によって激務の度合いは様々です。重要なのは「激務な部署がハウスの収益源とは限らない」ということです。つまり、激務ではないがハウスの収益の観点から重要度が高い部門・セクター・チームで働くことで、激務を避けてうまくプロモーションする方は少なからずいます。
同じ投資銀行でも激務な部門、そうでもない部門については、次の章で細かく説明しますので、ここではより細かいセクター・チームの例を紹介します。当てはまる例はハウスによって様々なので、ここではあくまで一例として捉えてください。
よく投資銀行の経験者から「相対的に激務ではないチーム」としてお聞きするのが、株・債券のシンジケーションを行うチームです。株・債券のファイナンスの際に価格を決定する上で必要な市場の需要・希望価格を調査・分析したり、発行された株・債券を実際に投資家に配分する仕事を行います。これらの業務は多くの部分を投資家が活動しているビジネスタイムに行う必要があるため、深夜の作業は少なくなります。
一方で、このシンジケーションという機能は株・債券の引受活動において、とても重要度が高いため、一般的に社内のステータスは低くありません。特に、株・債券のファイナンスによる収益が高いハウスでは、シンジケーションのチームを経由してプロモーションしていくことも多々あります。
その他、投資銀行で激務になるかどうかを分けやすいのが、対応する「業種」です。特に大きなハウスになると、各部門内のチーム分けはクライアントの業種で分かれていることが多くなります。株・債券・IPO・M&Aそれぞれが案件の多寡は業種により異なります。例えば債券などは如実で、公共系の独法やインフラ関連の企業で案件が多くなるため、その担当者は忙しくなります。
案件の多さも収益を増やす要因では確かにあるのですが、実際には1回の案件規模や資金調達方法などの方が重要であったりします。つまり細かい案件を沢山こなすより、大規模なディールを一本やった方が収益性が高かったということがしばしば起こります。また、細かい規模の案件を沢山やるよりも、大きな案件に一つ関わる方がトータルの業務量としては少なく済みます。
従って大口調達や手数料の高い資金調達を行う業種をクライアントとするチームに参画した方が、激務を避けながらプロモーションを有利に進められるようです。
尚、収益性の高いセクターやチームは、外資系・国内系によって、またハウスによって様々なので、激務を避けてプロモーションしたい場合は、まず、投資銀行の各ハウスの強みを理解した上で、転職先を考えることが重要です。
投資銀行で激務を避けている人の特徴②資料作成のセンスとマネジメントスキルを備えている
もう一点は端的に「プロモーションした人の能力がずば抜けて高い」ということに尽きるでしょうか。と言っても、これだけでは短絡的すぎますので、ここでは特に投資銀行において激務を避けながらプロモーションをする上で重要なスキルを2つ紹介します。
一つは資料作成のセンス・技術です。これは特に若手の投資銀行マンが中堅にかけて順調にプロモーションしていく上で重要です。投資銀行において資料作成を行う時、実際に資料を組み上げるのにも時間はかかりますが、実は資料をどのように構成して、どのような見せ方で図表などを配置するか考えることにも時間がかかります。
前者の単純な資料作成については差がつきにくいポイントではありますが、それでもやはり手が早く動かせるメンバーはそれだけ労働時間を削減することが可能です。
そして後者についてはより重要なようで、センスがある人の場合には、平凡な人と比較して二倍も三倍も早く、かつハイクオリティな資料構成を考えることができるようです。短時間で最適な資料の見せ方を考えることで、他のメンバーより労働時間を大きく削減しながら、資料の質は高いので高い評価を獲得することができると言えます。
このように、資料作成のスキル・センスの活かして、激務を避けながらうまくプロモーションしていくことは可能です。
もう一つはマネジメントスキルです。こちらは中堅〜シニアのプロモーションの鍵となります。中堅以上では実際に自分が手を動かして資料を作るといった作業は減ります。その代わり、質の高い提案資料を活用しながらプレゼンを行うことでディール獲得を実現する、もしくは、クライアントなど各関係者と交渉しながら、円滑にディールを進めることが付加価値になります。
従ってこのポジションで激務を回避しながらプロモーションを実現させる上で大事なことは、例えば、部下を適切に鼓舞しながら適材適所で作業を進めることで、より短時間でハイクオリティな資料を作成すること。あるいは、部下を上手にマネジメントすることで、クライアントとの交渉ごとを適切に進め、手早くディールを完結させるといったことになります。いずれにしても部下を適切に機能させながらビジネスを回していくことが重要になります。
これらは属人的な問題にはなりますが、若手でいえば資料作成スキル、中堅以上でいえばマネジメントスキルが突出している人は実際にいます。こうした人は周囲よりはるかに少ない残業時間で、他のメンバーより高いパフォーマンスを上げるため、順調にプロモーションしていく傾向があります。以下の記事は、コンサルティングファームのマネージャーの部下育成に関する内容ですが、業界を問わず効率的にパフォーマンスを上げるコツが書かれているため、ぜひ参考になさってください。
参考:コンサルのマネージャーで「育成」に成功/失敗している方々の共通点
投資銀行の中でも激務な部門、比較的激務でない部門
さて、イメージとしても、そして実態としても激務である投資銀行ですが、その度合いは部門によって異なります。相対的に労働量が少ない部門を選択できれば、ある程度は投資銀行特有の激務を回避できるかもしれません。ここでは部門ごとの激務度合いの違いを、激務な部門から順に紹介していきます。尚、部門ごとの激務度合いの実態は、個社や担当クライアントによって差が大きい部分ですので、あくまで一般的な傾向として捉えてください。
投資銀行で実は最も激務:IPO(公開引受)
一般的に代表的な投資銀行ビジネスの中で最も激務であるのはIPOかM&Aというイメージが強いです。その中で実態としてはIPOの方が相対的には激務で、激務と言われる投資銀行の中でもトップであるという意見が多いです。IPOは未上場企業を上場させるためにさまざまなアドバイザリー業務を行うビジネスですが、基本的に上場審査を通過させるのは簡単ではなく、企業に財務面、将来性、ガバナンスなどさまざまな変革をもたらす必要があります。従って、投資銀行でありながら、コンサル的な働き方が必要とされるのがIPO部門です。
クライアント企業の現況と上場審査を通すための課題の量にもよるのですが、大抵の場合は上場準備が本格化すると激務な環境が続きます。例えば東証一部ですと、大体の一つの企業が上場するまで最低で約1年、企業に大幅な変革が必要な場合には数年に及びます。そしてその中で幾度となく深夜、時には明け方まで達するような激務も強いられるようです。企業側の課題はクライアントによって様々なので、いつどの程度激務になるのかばらつきが大きいという点も、IPOが最もハードであると言われる理由です。
投資銀行での激務度合い二番手:M&A
次いで激務だと言われるのはM&Aです。こちらもディールは半年〜1年程度に及ぶことも多く、また、企業価値の算出や、各種法制度対応などで激務を強いられることが多いです。明け方まで働く局面が少なからず有るのもIPOと同じです。それでもディールの長さはIPOと比較すれば短い傾向にあるため、ディールとディールの隙間には多少なり閑散期があります。
また、IPOと比較するとディールの流れが決まっているため、いつがハードになるのかもある程度予見性があるでしょうか。「覚悟ができている深夜残業」と「想定外の深夜残業」の負担度はいざ体験してみると驚くほど大きいという声もよくお聞きします。
投資銀行での激務度合い三番手:DCM(債券引受)
三番手はファイナンス部門の債券サイドです。先に「激務を避けられるチーム」として紹介したシンジケーションもここに含まれます。債券引受のディールは、いざ発行に向けたディールが始まってしまうとそこまでハードではないです。残業時間も国内市場向けの債券なら夜7時前後には完了するケースも多いです。一方で、提案活動においてはそれなりの長時間労働が発生する場合もあります。提案時には重厚な資料を作成するので、そこでどうしても深夜残業が発生してしまうでしょうか。
それでも、先の二部門と比較すればまだマイルドで、明け方まで働くことはあまりありないという声をよくお聞きします。また、長時間労働になるタイミングは提案締め切りの前日など、ある程度限定されています。但し、DCMはディールの数が多く、その分提案をしなければならない機会も相応に多くなります。
投資銀行での激務度合い四番手:ECM(株式引受)
四番手は株式引受です。株式発行のディールは債券と比較してディールの長さは債券より長く、負担もやや大きい一方で、ディールの頻度は債券より少ないという傾向にあります。労働量としても、ディール中の負担はDCMよりは少し大きくなりますが、それでもディール運営のせいで深夜残業になることはやはり稀です。従ってECMの場合もDCM同様に提案活動に向けた資料作成が最も残業を多くする原因となりがちです。
ディールの頻度がDCMより少ないことから、提案活動を行う頻度もDCMほどは多くありません。従って、ECMの深夜残業の頻度は、DCMよりもさらに少なくなるのが一般的です。深夜残業が年に何度も発生することから、尚も一般企業と比較すれば激務ではありますが、ECMは投資銀行の中ではハードワークの度合いが少ない部門と言えます。
投資銀行での激務度合い五番手:RM(事業法人向け営業部門)
おそらく投資銀行と呼ばれるセクターの中で最も残業が少ないのは直接クライアントである事業法人とコンタクトを行い営業活動をするRM・事業法人部門でしょうか。この部門は投資銀行といっても、実態はいわゆる一般的な営業部署とあまり変わりません。基本的にクライアントと円滑なコミュニケーションを行いながら、適切なビジネスチャンスを察知し、ディール実施にこぎつけるのが同部門のミッションです。
具体的なファイナンスの提案や重要な資料作成などは、基本的にプロダクトと呼ばれる先に紹介した4つの部門が行ないます。従って、RMについてはあまり激務になる要素がありません。もちろん全く深夜残業が発生しないとまでは言えませんが、激務の度合いは一般的な営業部門とそう変わらないという意見が多いです。
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>投資銀行へのキャリアに関する記事
投資銀行における部門毎の違い【業務内容~スキル~働き方まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankdepartmentdi
コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank
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今回の記事では、実際にコンサルやアセマネと投資銀行それぞれで働いたことのある方の声を参考に、コンサル・アセマネなど「激務」の部類に入る業種と比較しながら、投資銀行での働き方の実態を紹介しました。
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