DX(デジタルトランスフォーメーション)時代が到来し、多くのビジネスが新しいデジタル技術を使った事業の最適化を進めています。
結論から言えば、その流れは「ITアーキテクト」の需要を高める結果となり、あらゆる職場で重要なポジションを任せられることにつながるでしょう。しかし、具体的にどういった理由から、「DX時代の到来=ITアーキテクトの需要が高まる」と判断できるのでしょうか。
そこで、今回の記事では、ITアーキテクトの需要、ニーズの高いITアーキテクトの特徴、また当職種に求められるスキル・経験についてご紹介します。
【目次】
DX時代におけるアーキテクトの需要
ITアーキテクトの需要が高まると考えられる一つ目の理由は、ITに関する技術が複雑化していて、簡単には事業への導入および活用ができなくなっている点です。
2017年にCIOを対象としたKPMGとHarvey Nashによる共同調査が行われましたが、そこでは61%の回答者が「5年前よりもITプロジェクトが複雑になった」としています。
企業がDXに取り組むためには、これまでの事業を支えてきたIT基盤の刷新が必要ですが、その方法が複雑化しているために、一般のIT技術者では十分な対応が取れないこともあるのです。そういった基礎的な部分から手を加え、事業をDX化できる役割として、ITアーキテクトの需要が高まっていると考えられます。
他にも、「DX時代には企業がデジタルデータに依存した業務を展開する必要性も高まる」とされることも、ITアーキテクトの需要を高める背景のひとつです。
監査、税務、アドバイザリーなどを行うプロフェッショナル・サービスファームであるKPMGのグローバル責任者Lisa Heneghan氏は、これからの業務の要件を新しいテクノロジー仕様に変換していくITアーキテクトが必要と語っています。
アナログな媒体で行われていた事業も、テレワークをはじめとした変化によってデジタルデータを介した新しい体系に置き換えられています。
今後はそういった変化に伴って、ますます企業はデジタルへの依存度を高めていくでしょう。そういった事業のデジタル依存が正しい形で実現するように、ITアーキテクトのサポートが必要とされるのです。
また、今後の事業はAWSなどをはじめとしたオンデマンド形式が主流になると見込まれることも、ITアーキテクトの需要を押し上げることにつながります。
イギリスで輸血用血液や移植用臓器に関する事業を展開しているAaron Powell氏によれば、ITのプロフェッショナルがオンデマンド形式で活用するサービスのプロバイダに専門的な質問を投げかけて、必要な形での変更を要求できるレベルにまで企業の理解度を深めることが重要としています。
このプロフェッショナルの役割を担う職業として、ITアーキテクトが注目されることも考えられるのです。DX時代にはこういった事情や変化が見込まれるので、ITアーキテクトの需要は今後も伸びていくと予想されるでしょう。
一方で、DX時代においては全てのITアーキテクトに需要があるわけではありません。企業が求める能力を持った人材であることが、これからのDX時代の需要に応えるためには必要となるのです。
Tullow Oil(多国籍の石油・ガス探査会社)の元CIOであるAndrew Marks氏は、業務におけるニーズと技術的なイノベーションの間を取り持つITアーキテクトの需要が高まると発言しています。
多くのテーマをまとめて、最善の形でアイデアを提示できる専門家としてのITアーキテクトが、今後需要の伸ばしていくでしょう。
また、ITアーキテクトの役割として、以下の7つ階層に関する要素を理解している人材の需要も高まると考えられます。
1.チャネル層
2.UI/UX層
3.デジタルサービス層
4.サービス連携層
5.ビジネスサービス層
6.データサービス層
7.データプロバイダー層
それぞれの特徴を捉え、総合的な役割を担える人材こそ、企業からの高い需要に応えられるITアーキテクトになるでしょう。
人材マッチングプラットフォームを提供する「HackerRank」の調査でも、採用責任者の49%、が、中級レベルの経験(2〜5年の業界経験)を持つ人材を求めているという結果が出ています。
求人検索サービスのIndeedがフルスタックエンジニア(複数の技術を持つ開発者)の求人が過去3年間で162%増えているという結果と合わせて考えると、最近の技術に触れつつ、多角的に業務を行える人材の需要が伸びていると考えられるでしょう。
参考:“今”求められる「ITアーキテクト」とは?【実例から”必要なスキル・経験”に迫る】
ITアーキテクトの職位と仕事内容、求められるスキルについて
ITアーキテクトにはいくつかの職位があり、その立場によって仕事内容や求められるスキルが変わってきます。ITアーキテクトの需要に応える人材になるためには、これらの違いを把握し、そのポジションごとに求められる対応を考える能力も重要となります。
アソシエイトITアーキテクト
<仕事内容>
若手の方や、プリセールス~要件定義等の経験がない方は、ポテンシャルを加味された”アソシエイトITアーキテクト”として採用される可能性があります。
こちらは、入社後の育成を前提としており、例えばAWSではクラウドやAWSが手掛けるソリューションの研修・OJTを通じて短期間に実践的なスキル習得を目指します。
<求められるスキル>
ポテンシャル採用とは言えども、約4年以上の開発~運用経験、さらに共通してインフラ領域の経験が求められる傾向にあります。
ITアーキテクト
<仕事内容>
ITアーキテクトは、企業の経営戦略を実現するために必要とされるWebシステムの考案、およびその導入方法を検討する役割を担います。つまりは企業に必要なITシステムの環境を設計&構築することが、ITアーキテクトの主な仕事となるでしょう。
クライアント(企業の上層部を含む)からヒアリングを行い、「何が足りないのか」「どういった結果が求められるのか」といったことを正確に把握します。
それに合わせて現状の技術や予算内で実現可能なシステムを提案し、具体的な構築に移行するのが基本的な流れになるでしょう。上流工程から事業に関わることが、ITアーキテクトのひとつの特徴だと言えます。
システムの設計や構築を実現するためには多くの人員を動かす必要があるため、一般的にプログラマやエンジニアよりも高い立ち位置で働くことになります。
チームや個人間でコミュニケーションを取り、想定している環境整備をスケジュール通りに実現することも仕事に含まれるのです。
多くの場合ITアーキテクトは、「アプリケーション・アーキテクチャ」「インテグレーション・アーキテクチャ」「インフラストラクチャ・アーキテクチャ」の3つの専門分野に分けられます。
アプリケーション・アーキテクチャでは、求められる案件を実現する実際の機能やUIを意識した設計を行います。
インテグレーション・アーキテクチャは、さまざまなサービスを連携した相互接続を意識した設計を行うのが仕事です。
そしてインフラストラクチャ・アーキテクチャは、セキュリティやシステムの保守、サーバーへの負荷などを考えるインフラを専門とする仕事になります。
こういった専門分野を任された際には、それぞれの仕事内容を理解した上で役割を考えることが必要となるでしょう。
上記を見てみると、ITアーキテクトの仕事内容はさまざまな方向に広がりを持つことがわかります。そのためあらゆる可能性を考慮してオプティマイズな設計を目指すことが、ITアーキテクトの仕事内容であり、求められる姿勢となるでしょう。
<求められるスキル>
ITアーキテクトの仕事を実施するためには、「アーキテクチャ設計」「コンサルティングスキル」「コミュニケーション能力」「新しいことを学ぶ意欲」といったスキルが求められます。
アーキテクチャ設計は、企業が実現したい機能を構成するために必須のスキルです。要件を理解して分析を行い、必要とされる要素を明確にするためにも、具体的な経験やノウハウの蓄積が求められます。
分析ツールやモデルを理解して活用する、コンサルティングスキルもITアーキテクトに必要です。コンサルティングファームなどへの転職の可能性にもつながることから、スキルの取得が今後の活躍の幅を広げることにもなります。
ITアーキテクトはチームとして動いたり、クライアントの意思を汲み取ったりといった仕事があるため、コミュニケーション能力も重要なスキルです。正確に情報を伝達し、必要な答えを返せる&引き出せるスキルが、仕事の成果につながるでしょう。
そして新しいことを学ぶ意欲も、ITアーキテクトには大切なスキルになります。たとえばAWSなど近年普及しつつあるサービスなどは、これまでの知識だけでは正しく導入することが難しいです。積極的に新しいことを取り入れ、自分の能力を高めていく力がなければ、ITアーキテクトとしての需要に応えることはできないでしょう。
ITアーキテクトの仕事の範囲を考えると、浅くても広い知識を得ていくことがポイントになります。
シニアITアーキテクト
<仕事内容>
比較的高い役職や立場を任されることになるシニアITアーキテクトは、計画の中心的なメンバーとして達成に必要なシステムの構築や移行を進めることが仕事になります。
企業の収益を考慮した具体的な販売戦略に携わることも仕事で、策定から実行までを担うことになるでしょう。
また現状に満足せず、顧客を満足させられるだけのソリューションを自社が提供できているかを確認したり、ITアーキテクトのコミュニティなどからよりベストプラクティスに当たる知識を得たりすることも仕事になります。
必要に応じてITアーキテクトの議論や1対1・1対多数によるトレーニングセッションを行い、顧客が自身の問題を理解することをサポートするのも仕事です。
他にも自社のIT技術が提供するソリューションに興味を持つ顧客へ、ホワイトペーパーなどの出版物などを使って知識提供を行うことも考えられます。
また、直接の顧客だけなく、顧客内に所属する上位エンジニアとのコミュニケーションから、ITアーキテクトやクラウド事業の重要性を広めることも仕事になり得るでしょう。
ITアーキテクトとしての現場仕事以外にも、多くの役割があるのがシニアITアーキテクトの特徴です。顧客、サービスエンジニアリングチーム、サポートなどをつなぐ技術的な連絡窓口として機能することが求められるでしょうか。
<求められるスキル>
シニアITアーキテクトはそのポジションの高さから、ある程度具体的な経験がスキルとして求められることが多いです。
基本的な部分では、たとえば以下のような経歴と経験年数が考えられます。
・インフラストラクチャ、ネットワークアーキテクチャ、DevOps、ソフトウェアエンジニアリングといった事業を5年以上経験している
・エンタープライズアプリケーションの設計や実装を3年以上経験している
・コンサルティングスキルが役立つことから、関連事業におけるコンサルティングの経験も必要
・コンピュータサイエンス、エンジニアリングの経験。もしくはそれらに関連する研究分野の学士号の取得や、関連する実務を12年以上経験している
こういったスキルを目安として考えることで、シニアITアーキテクトの需要に応えられるようになります。
その他にも、ディレクトリサービス、情報保証、仮想デスクトップなどの実務に携わった経験や、Oracle、SAPといった特定の製品の知識などもスキルに数えられます。
AWSに限って言えば、ソリューションの構築や運用など、専門的な要素を経験していることもプラスです。
多くの人たちと関わることになるその仕事形態から、経営幹部やIT管理者へのプレゼンテーション能力、組織をまとめるコミュニケーション能力も必要なスキルとなります。顧客とのつながりを意識するなら、文書によるコミュニケーションにも慣れておく必要があるでしょう。
そしてITアーキテクトとして最適なソリューションを提供するために、新しいテクノロジーに順応する能力も重要です。必要に応じて新たに勉強していけるだけのモチベーションとエネルギーは、シニアITアーキテクトに求められるスキルに含まれます。
※ITアーキテクトに関する参考記事:
「ITアーキテクト」と「ITコンサルタント」の違い【年収~スキル・経験~キャリアパスまで】
AWSソリューションアーキテクト資格を取得したエンジニアのキャリアパス【転職事例含む】
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今回は、ITアーキテクトの需要と職位毎の仕事内容・求められるスキルについてご紹介しました。
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