ITコーディネータ資格取得の価値【「役に立たない」は本当か?】

数々あるIT系資格の中では珍しく、「ITと経営の橋渡し」をキャッチフレーズにしている「ITコーディネータ」資格があります。IT系資格の中では知名度の高い情報処理技術者資格と比較すると、少々マイナーな印象を持つ方が多く、また資格が本当に役に立つのか不安に思われているケースもよくあります。

そこで、今回の記事では、ITコーディネータ資格にフォーカスし、資格の内容や資格を取得するメリット・デメリットなどについてお伝えします。

【目次】

  1. ITコーディネータ資格とは?ITと経営の橋渡しとなる民間資格
  2. ITコーディネータ資格が活かせる仕事とは
  3. ITコーディネータ資格がキャリア形成に与える価値:メリット・デメリット
  4. ITコーディネータ資格取得をおすすめする人
  5. ITコーディネータ資格は役に立つが実情を知ってから取得の検討を

ITコーディネータ資格とは?ITと経営の橋渡しとなる民間資格

ITコーディネータ資格は、情報処理技術者試験と同じく経済産業省の推進資格ですが、こちらは国家資格ではなく、ITコーディネータ協会が認定する民間資格となっています。

参考:ITコーディネータ協会(ITCA)公式サイト

ITの進化のスピードに対応するため、資格試験の形態や試験シラバスの変更に時間がかかる国家資格ではなく、民間資格の形をとったとされています。

ITコーディネータ資格も情報処理技術者試験と同じく、ITSS(ITスキル標準)に対応づけられており、プロジェクトマネージャやITストラテジストと同じレベル4が設定されています。

資格を取得したからといって特に独占できる業務はありませんが、「ITコーディネータ」という名称は商標登録されているため、ITコーディネータ資格を取得していない人が「ITコーディネータ」を名乗ると、商標権の侵害とされる可能性があります。

例えば、情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャ資格を取得していない人がシステム開発において「プロジェクトマネージャ」と名乗っても問題はありませんが、ITコーディネータにおいては、資格取得した人物のみが名乗ることを許されているということになります。

ITコーディネータ試験は、必須問題60問、選択問題40問の合計100問で構成されていますが、IT系の資格の中では珍しく、試験申し込み時に「経営系」か「情報系」かを選択します。

「経営系」と「情報系」が分けられているのは、選択問題40問の部分だけですので、経営とIT両方の勉強が必要になることには変わりありません。しかし、IT系の資格と言えば、技術系・情報系の問題を解くというのが普通ですので、経営系の問題が選択できるというのは少し異色です。

ITコーディネータ試験は「ITと経営の橋渡し」というキャッチフレーズの通り、技術者というよりITコンサルタントやシステム企画業務向けの知識を問う資格試験と言えます。

同じようなITコンサルタント・システム企画業務向けには、情報処理技術者試験のITストラテジスト資格があります。片や経済産業省が推進する民間資格、片や経済産業省が認定する国家資格という違いがあるものの、問われる分野は同じです。どちらかと言えば、ITストラテジスト資格の方がIT技術に重きを置いているかもしれません。

ITコーディネータ試験が120分で選択式問題100問を解くのに比べ、ITストラテジスト試験では選択式問題は午前Ⅰ・Ⅱのみで、午後Ⅰは記述式、午後Ⅱは論述式問題もあり、ほぼ丸一日かかる試験です。同じITSSレベル4の試験ではありますが、試験単体で考えた場合は、ボリューム・難易度共にITストラテジストの方が厳しい試験であると言えそうです。

ITコーディネータ資格が活かせる仕事とは

ITコーディネータ資格は、プロジェクトを推進するスキルを得るためのものでも、システムの構築に関わるスキルを得るための資格でもありません。具体的には、どのような業務と関連があり、相性が良い資格なのでしょうか。

事業会社の情報システム部門、IT企画部門

事業会社には様々な業種がありますが、金融、製造、物流など、ITが使われていない業界はありません。どのような企業でも何らかのシステムを自社で保有しています。

事業会社が自社システムの開発・保守を自前でまかなえるケースは少なく、状況に応じてSlerなどに発注するケースがほとんどです。

しかし、開発の前段階のシステム企画は、発注元である事業会社の情報システム部門やIT企画部門と呼ばれる部署が中心となって進められます。事業会社が自社の業務を改善するためのシステムを構築するのが目的ですので、技術的な知識も大事ですが、業務や経営に関する知識がより重要になってきます。

最新のIT動向に関する知識をもとに、経営課題を解決するシステムを提案する企画業務は、まさにITコーディネータに求められる仕事と言えるでしょう。

例えば、大手商社のIT企画部門の求人では、歓迎要件として、資格の中で唯一ITコーディネータを入れています。

ITコンサルタント

事業会社にITを活用したビジネス改善を提言する、ITコンサルタントもITコーディネータ資格がマッチする職種です。

ITコンサルティングファームなどに所属し、クライアントである事業会社の業務分析を行い、システム構築による業務改善を提案したり、経営課題に対する解決案を提示するのは、ITコンサルタントの重要な業務ですが、それはそのままITコーディネータにも当てはまります。

情報システム部門やIT企画部門、ITコンサルタントに限らず、ITコーディネータが活躍できるのは、「どんなシステムを作るのが、自社またはクライアントにとって有用なのかを考え、提案する」場面です。そう考えると、ITコーディネータ資格が役に立つ職種や場面はイメージが沸くのではないでしょうか。

例えば、大手IT系ファームの情報システム再構築・調達支援業務、業務改善・効率化に関する調査などを手掛けるチームでは、歓迎要件として、システム監査技術者、公認情報システム監査人、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、PMP(プロジェクト・マネージャー・プロフェッショナル)、SAP・Oracle・Sun・Microsoft・IBMの各認定資格といった資格と並ぶ形で、ITコーディネータ資格を入れています。

ITコーディネータ資格がキャリア形成に与える価値:メリット・デメリット

ITコーディネータ資格の維持には、フォローアップ研修への参加や、ITコーディネータとしての活動や勉強会などの参加により、3年移動平均で30ポイントの資格更新ポイントを獲得しなければなりません。

試験に合格したらそれで終わりではなく、資格取得で得た知識をサビつかせないためにも、最新のIT動向を踏まえて勉強をし続けなければならない制度設計になっています。継続学習と実務経験の義務化により、高いスキルの維持を目的としています。

合格後も、資格の維持に時間とコストがかかるのはデメリットの1つと言えるでしょう。しかしITコーディネータ資格の取得を目指すということは、経営とITの両面に精通しサポートできるプロフェッショナルを目指すということですので、資格の取得後も、最新の色々な知識やノウハウを勉強し、吸収し続ける姿勢が求められます。

この「勉強し、吸収し続ける姿勢」というのは、ITコンサルタントには大事な資質です。

というのも、ITコンサルタントであれば、毎回同じクライアントや業界のコンサルティングをし続けるということはほぼありません。案件が終わればクライアントも変わりますし、クライアントが変われば、対象となる業界や業務内容は変わります。その都度コンサルティングの前提となる業務知識を吸収し直さなければなりません。

それには、新しいことを学ぶということに対して、面倒に感じたり臆したりすることなく、当たり前のように向き合い続けなければならないのです。ITコーディネータ資格は、資格の維持に手間がかかるという一面もありますが、知識やスキルをアップデートし続ける姿勢を磨いているとも言えます。

その姿勢は、資格取得後のキャリア形成にプラスに働きます。ITコンサルタントとして独立したり、システム企画業務へのスキルチェンジ・転職を行う際に、必ず役に立ちます。

また、ITコーディネータ試験に合格すると、ITコーディネータ協会のデータベース(Webサイト)に資格取得者情報が登録されます。

ITコーディネータ協会では、各地域のITコーディネータで組む「届出組織(コミュニティ)」が形成されており、各コミュニティにおいて、情報交換、勉強会、セミナーやカンファレンスの開催などが行われています。自社以外の人材や知識者との交流ができますので、人脈形成に大きなメリットがあるでしょう。

コミュニティの勉強会への参加は、ITコーディネータ資格の維持に必要な資格更新ポイントとして認められていますので、人脈形成だけではなく資格維持の面でも有効です。

コミュニティへの参加は、見聞を広めたり人脈を広げることができますので、資格取得者のキャリア形成に大いに役立つのではないでしょうか。

ITコーディネータ資格取得をおすすめする人

ITコーディネータ資格取得者に想定される人物像は、IT知識と経営知識の両方の習得を目指し、将来的にITコンサルタントや事業会社のCIOを目指す人です。ITの専門家でありながらも、経営者と渡り合えるような感性、つまり経営的な観点や発想を持ち合わせていることが必要です。

他にも、経営戦略策定から情報化企画や資源調達、情報システムの開発から運用に至るまでのプロセスを一貫して監視することができる能力や、システム企画や調達の場面で一時的にプロジェクトマネージャ的な役割を担う必要が出てくる可能性もあります。

つまり、分類上は経営寄りの知識を問う試験ではあるものの、その土台にはITやシステム開発に関する知識が必要あり、技術者として経験を積んだ人材の将来像として、ITコーディネータは位置付けられています。

IT業界で働く場合、最初はどうしても技術寄りの知識や資格、スキルを手に入れようとするものです。システム開発業務を行うのであれば、技術者としての経験や知識がまず第一に必要になりますので、それは当然でしょうか。

もちろん、技術を突き詰めて、その道のスペシャリストを目指すのも良いでしょう。しかし、IT業界であっても技術一辺倒ではない道もあります。

ITコーディネータは、ある程度システム開発業務においてSEやPMとしての経験を積み、技術以外の道にも幅を広げたい人におすすめできます。経験を積んだITエンジニアということは、ある程度年齢を重ねている人ということになります。

広く浅く高所から情報システムやシステム開発業務を俯瞰するべきITコーディネータは、そうした熟練エンジニアにおすすめの資格でしょうか。

ITコーディネータ資格は役に立つが実情を知ってから取得の検討を

上記のように、ITと経営の幅広い知識を得るために役立つITコーディネータ資格ですが、ITエンジニアの間ではあまりメジャーな資格ではありません。ITストラテジスト試験が毎年5000人程度の受験者数がいるのに対し、ITコーディネータ試験は毎年200〜250人程度の受験者であり、その差は歴然としています。

ちなみに、受験者数が増えないのには、いくつか理由が考えられます。

ITコーディネータ試験は、受験資格を得るためのケース研修に20万円の費用、試験を受けるのにも2万円程度の費用がかかります。さらに、試験合格後ITコーディネータとして登録を行うのにも2万円ほどの費用が必要です。そして、合格後の資格維持のために研修などを受講する必要がありますので、また費用がかかります。

会社の補助があるならまだしも、個人で受験・登録するには費用負担が大きすぎるのです。しかも、無事合格したとしても、独占業務があるわけではありません。資格取得で得られるメリットよりも、投資額が大きいことによるデメリットが上回ってしまっているというのが実情です。

もちろん、近年では技術進歩のスピードはめざましく、技術や経営に関する知識も日々新しいものにアップデートしていく必要があります。資格維持のために定期的に研修を受講することは、知識や技術を維持するのに効果的でしょう。

しかし、受験者に対してかなりの投資をする必要があるため、ITコーディネータとなり得る人材は、大企業のSIベンダなどの輩出に限られてしまっています。

個人で取得・維持するには負担が大きい資格であるというのを踏まえた上でも、ITコンサルタント・システム企画業務には効果的な資格です。所属する企業にて金銭的な補助が期待できる場合、取得を検討しても良いのではないでしょうか。

ITコーディネータ資格は将来性のある重要な資格

元々、ITコーディネータ資格は

・デジタル化について社内の情報システム部門任せで経営的な観点からの検討が不足していること
・従来のシステム構造や経営課題などに縛られ、企業の柔軟性が欠如していること
・デジタル化への投資から、ビジネスモデルの革新や新たな利益構造を創出するための社会的なインフラが不足していること

という問題に対応するため、経営的観点から戦略的情報化を推進する人材を育成する目的で作られました。

それらの問題点は、IT業界の抱える構造的な問題でもありますし、その分ITコーディネータに求められる役割は重要なものとなっています。

ITの専門家でありながらも、経営に役立つIT活用を実現できる立場であるITコーディネータは、今後広まっていく可能性を秘めている資格です。

資格取得や維持に多くの費用が必要になるというデメリットがありますが、技術力を高めるという目的とは違った一面を持つ資格として、取得を検討してみても良いのではないでしょうか。

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【SIer SE・PM向け】情シスやDX推進部へ転職後、実際に求められる『スキル・知識』とは
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今回の記事では、ITコーディネータ資格にフォーカスし、資格の内容や資格を取得するメリット・デメリットなどについてお伝えしました。

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