同じコンサルティングファームでも、Big4と呼ばれる外資系コンサルティングファームと日系コンサルティングファームでは、どのような違いが見られるのでしょうか。クライアント企業の課題解決を支援するコンサルタントとしての仕事内容に大きな差はありませんが、社風や労働環境には違いが見られます。以下では、それぞれの特徴や違いを紹介します。
尚、ここで示している日系コンサルティングファームの特徴は、日系ファームの中でも大企業を支援する大手ファームを想定して挙げています。
【目次】
日系コンサルティングファームとBig4の違い<社風>
・雰囲気
日系ファームもコンサルタントという職業の性質上、常に高いパフォーマンスを求められ多方面から評価を受けることには変わりません。国内の事業会社でよく見られる年功序列の制度はなく、競争は避けられないですし、実力主義の世界です。そのため、外資系ファームと日系ファームの雰囲気がまったく異なるというわけではなく、両者間での転職も珍しくありません。新卒入社の社員を大切に育成し、中途入社の社員に即戦力を期待するところも同じです。
また、どのような場面でもプロフェッショナルであることを求められる点は、外資系・日系ともに変わらず、ある種の緊張感が常にあるといって良いでしょう。そうとはいえ、日系ファームの方が育成に熱心であるといわれ、研修制度が充実している印象ですし、砕けた会話で互いを知り、チームワークを高めようという意識が強いようです。
一方、外資系ファームは個人主義の企業風土ゆえ、ビジネスライクな人間関係になりやすいといえます。
・コミュニケーション
コミュニケーションの取り方には、日系と外資系で違いが見られます。論理的かつ簡潔に分かりやすく伝えることを求められる点は変わりませんが、外資系ファームの場合、自己主張できることが重要です。他業界でも外資系企業で働く場合、望むキャリアを実現できるかどうかは、自己アピール力があるかどうかで左右されますが、コンサルティングファームも同様です。業務遂行能力に加え、普段から自分の考えを誰に対しても明確に述べられることが求められ、それが様々なチャンスにつながります。会社に求めることがあるなら、上司や部門長に一貫して言い続けることで、サポートしてもらえることもあるでしょう。あれこれ言うよりも行動することを重視する社員が多いため、上司に希望を伝えてすぐに、「できる範囲のお膳立てはしたから、結果を出せるかはあなた次第」と言われているような状況に置かれることも珍しくありません。反対に、実力があっても自分から行動しなければ何もしてもらえないのが特徴です。いわゆる「察する」とか「空気的に」というような配慮は期待しない方が良いでしょう。
一方、日系ファームの方が会社としての社員に対するフォローが細やかなことが多いようです。同僚や上司からの気遣いなど、一人ひとりがチームとしての雰囲気を良くするために声を掛け合う場面が多く見られます。
・人材育成
コンサルタントは業務を推進する上で様々な知識やスキルを要するため、日系、外資系ともに大手ファームは人材育成制度が整っています。プロジェクトの上司とは別に、各社員の育成や評価を担当する上司がおり、ファームや関係性によってメンター、コーチ、カウンセラーなどと呼ばれます。研修制度は入社後の研修の他、昇格時の必須研修や、習得したいスキルに関連するものを選択して受講する任意研修があります。社内の集合研修だけではなく、eLearningで多様な外部コンテンツを提供し、学習環境を充実させているファームも多いようです。学びたければ学べる環境は恵まれているといえますが、業務で多忙な時期がほとんどであるコンサルタントは、そのようなインプットの時間も工夫して捻出しなければなりません。
また、海外研修など、内容によっては人選が部門推薦や立候補からの選抜式の場合もあります。特に外資系ファームの場合、人材育成も投資であるとの考え方が浸透しており、全員が平等にチャンスを与えられるとは限りません。相対的に評価した結果、選抜された一部の人材のみが掴めるチャンスも、当然存在します。こうした考え方は、成果主義がより明確に打ち出されている外資系ファームの方がシビアであり、日系ファームの方がマイルドです。パフォーマンス評価に即した選抜はあっても、与えられる成長機会に目に見える形で差をつけられることは、日系ファームでは控えめな印象です。
・社員
外資系ファームと日系ファームは互いに人材の流入があるため、特徴がはっきりと分かれることはありませんが、企業風土に馴染んでいくうちにマインドが影響を受けることはあるでしょう。
コンサルタントは傾向として上昇志向があり、能力にある程度の自信がある人材が多いですが、特に外資系はその傾向が顕著です。また「会社に不満があるなら転職すれば良い」という考えが珍しくなく、コンサルタントとしてのキャリアや実績があれば他社ファームはもちろん、他業界への転職もしやすいため、所属ファームへのこだわりは薄い社員が多いです。しかし、人間関係が希薄というわけではありません。各々、自分のキャリアは自分でつくるという意識が強く、来るもの拒まず去るもの追わずという表現が当てはまるでしょう。日系ファームはもう少し親密な人間関係が築かれる傾向にあり、退職の意思を示した際も、引き留められる可能性が高いようです。転職に対する姿勢も、外資系ファームの社員よりも慎重さが見られます。
・評価制度
コンサルティングファームは総じて評価制度が整っており、毎年のように改善が加えられていきます。それほどファームにとっても社員にとっても人事評価は重要であり、実際に評価結果が転職などキャリアチェンジを考えるきっかけとなる社員も多いです。外資系ファームはよく「Up or Out(アップオアアウト)」といわれ、長くプロモーションできなければ、退職するのが自然な文化です。努力しても、何度もプロモーションできなければ、社員はモチベーションを保つことが難しいですし、周囲がサポートしても成果を出せないとなると、間接的に退職を勧められることもあります。
一方、日系ファームは「Up or Stay(アップオアステイ)」ともいわれ、プロモーションできなくても働き続けることは難しくないようです。居心地が良いかどうかは部門やプロジェクト次第ですが、必ずしもプロモーションを望む社員ばかりではないことに理解があり、ポジションはそのままで専門性を高めていく、という選択肢を提示してもらえることもあるようです。組織としての成長ばかりではなく、社員一人ひとりのキャリア形成を尊重してもらえる点は、日系ファームの長所といえます。
日系コンサルティングファームとBig4の違い<労働環境>
・労働時間
元来コンサルティングファームの働き方はハードで、残業時間も長時間であることが当たり前でしたが、近年は働き方改革やコンプライアンス厳格化などによって変化してきました。プロジェクトの納期前に忙しさが増すことはありますが、普段から毎日終電ギリギリまで働く、夜中にタクシーで帰宅する、といったことは減ってきているようです。
特にBig4は監査法人のグループ企業であるためか、勤怠の管理などが厳しくなってきています。そうしたことも追い風となり、ファームやプロジェクトによりますが、ワークライフバランスが整った働き方をしているコンサルタントも増えている印象です。特に外資系ファームはクライアント先に常駐の場合を除き、コロナ感染拡大前からテレワークやフレックスタイムなどを取り入れていたケースが多く、働き方における個々の社員の裁量が大きいといえます。スケジュール通りに品質の高い資料を作成する、クライアントとの議論をまとめるなど、やるべきことをやっていれば、時間の使い方における自由度は相当に高いです。
一方で、日系ファームは長期的関係を築いているクライアントの顧問や相談役のような立ち位置でのプロジェクトが多いこともあり、アサイン中のプロジェクト業務以外のことを業務時間に行うことは難しいようです。そのため、社内業務や他案件の提案準備などは定時以降に会議を設定されることが多いです。このあたりは、業務時間外に会議を設定されることを嫌う社員が多い、外資系ファームとは異なりますね。
・プロジェクト
受注するプロジェクトのテーマは、ファームの傾向に左右されますが、部門によるところが大きいです。新たに制定または改正される法令への対応や海外における成功事例の導入など、その時々のホットトピックにも影響されやすいため、ファームが違っても専門領域が同じコンサルタントであれば、類似テーマのプロジェクトに従事していることはよくあります。ただし外資系ファームは、日系ファームに比べると期間が短い案件が多い印象です。数ヶ月から半年くらいのプロジェクトにアサインされ、様々な業界やテーマのプロジェクトに対応できるスキルや経験を積んでいきます。何年も同じプロジェクトにアサインされている状態は稀なようです。ただ、アサイン方針はファームや部門の評価制度に準じて検討されることが多いため、評価制度が変わるとコンサルタント本人や評価担当者のアサイン希望が変わりやすいです。
日系ファームでは、長期プロジェクトが多く、年単位のアサインになることも頻繁にあります。特定の業界やテーマについて知見を深められる利点はありますが、関心がある他のプロジェクトに移りたいと希望しても、プロジェクトからリリースされるまで時間がかかる傾向があります。希望したリリースがいつになるのか見通しを持てず、退職を決断するコンサルタントは外資系ファームにもいますが、日系ファームの方が目立つ印象です。
・拠点
外資系ファームは本社が海外にあるため、やはりグローバルなネットワークが強みとなります。海外の最先端ソリューションやプロジェクト事例の導入など、国内に十分な知見や実績がない場合でも、海外オフィスのサポートを得てプロジェクトを推進することができます。海外展開するクライアントは、当然ながらその点を期待して支援を依頼しています。ただ、外資系だからといって、コンサルタントが希望すれば必ずしもグローバルプロジェクトに関われたり、海外出張や駐在を経験できたりするとは限りません。各国に拠点があるがゆえ、日本のコンサルタントをわざわざアサインする理由がなければ、ポジションは生まれません。例えば、クライアントが日本企業であり、日本語を話せて日本の商慣習や法令に詳しいコンサルタントを求めているとか、現地オフィスで人材を確保できないようなスキルを持っているといった場合に、コストをかけてでも日本のコンサルタントをアサインしようということになります。すなわち、個人の能力だけが問題ではなくコスト面などがネックになり、外部からのイメージほど海外で仕事をする機会を得られないことは往々にしてあり、海外での仕事を希望するなら留意した方が良いでしょう。
日系ファームの場合、各国オフィスよりも日本本社の意向が優先されることはあり得るため、人事権を持つ上司が推薦してくれれば、外資系ファームよりも海外派遣のプロセスは進みやすいかもしれません。しかし、コストが発生することには変わりないため、営業力が高くて海外でクライアントを獲得できる見込みがあるとか、プロジェクトで即戦力になれるスキルを持っているというようなアピールポイントが必要でしょう。コンサルティングファームは外資系、日系にかかわらずグローバルなイメージを強く打ち出しますが、実際は思ったほどではない、という声が聞かれますし、入社後のイメージギャップとしてよく挙げられます。そうとはいえ、能力やタイミング次第でグローバルプロジェクトにアサインされる可能性はあり、語学力は日系、外資系ともにプロモーションの要件にしているファームがほとんどです。
<最後に>
同じコンサルティングファームでも、日系ファームと外資系ファームにはそれぞれの良さや特徴があります。Big4の間でも雰囲気や制度に違いはあるため、自分に合った社風のファームを見つけることが大切です。コンサルティングファームへの就職・転職にご興味がありましたら、転職エージェントで理想のファームを見極めることをおすすめします。
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「Big4」各ファーム独自の「DX推進ポジション」特徴・転職年収事例・キャリアパスまとめ
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/big4dx2019
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