MECE(ミーシー)とは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略で、日本語でいうと「漏れなくダブりなく」という意味になります。要素を整理するときに、必要な要素を網羅させる一方で、重複はしない状態にするという考え方です。
コンサルで実際に働く際、課題や要件などを整理するためにMECEはとても重要な概念です。転職採用でもケース面接を乗り切るうえで欠かせないものなので、しっかり押さえておく必要があります。今回の記事では、MECEについて実例も交えながら詳しく解説していきます。これからコンサル転職を控えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
MECEとは「漏れなく・ダブりなく」という意味
MECEとは「漏れなく・ダブりなく」という意味で、物事を正しく整理し、構造化するときに欠かせない概念。もう少し詳しく見ていきましょう。
「漏れなく」とは?
とある集合をいくつかの要素に分けるときに「含まれていない要素を作らない」ようにすることが「漏れがない」状態になります。
漏れがある状態
✓日本→北海道・本州・九州・四国(沖縄や島しょ部が含まれていない)
✓企業→東証1部・2部・マザーズ・ジャスダック企業(非上場企業や地方取引所のみの上場企業が含まれていない)
漏れがない状態
✓日本→北海道、青森・・・鹿児島、沖縄の47都道府県
✓企業→大企業、中小企業
漏れがあると、課題について考えるときに、特定の要素の分析が無視されるため「漏れなく」は重要な概念です。例えば日本の「観光業」を分析するときに、日本→北海道・本州・九州・四国と分類すると、観光業が重要な位置を占める沖縄地方の分析を無視することになってしまい、的確な分析結果が導出されなくなるでしょう。
ダブりなくとは?
ついでダブりなくというのは、重複した要素がない状態を指します。ダブりがあると特定の要素を複数回分析するなどの無駄が発生したり、特定要素の分析が、結果に対して過剰に大きな影響を及ぼしてしまったりします。
ダブりがある状態
✓大学の学部→文系、理系、医学部
✓人間→男性、女性、子供、お年寄り
ダブりがない状態
✓大学の学部→文系、理系
✓人間→子供、大人
例えば大学の学部を文系、理系、医学部と分けて分析すると、医学部は理系に含まれますので、分析結果は理系が色濃く出てしまいます。実態とは異なる分析結果が導き出されてしまうのです。
MECEは課題解決のために必要とされる
MECEは元々コンサルファームのマッキンゼーが提唱した概念。ビジネスにおける課題を正しく把握し、解決策を導き出すうえで、現状を正しく切り分けるために必要な考え方として生み出されました。
顧客の課題解決がビジネスの本分であるコンサルにとってはとりわけ重要な考え方です。コンサルの転職採用においてしばしばおこなわれるケース面接などでも欠かせない概念に。明示的に「MECEに整理してください」といわれるわけではありませんが、基本的に面接官は与えられた課題をMECEに分解しているかを厳しくチェックしており、MECEになっていなければ質疑応答やフィードバックで指摘を受けるでしょう。
そのため、物事をMECEに切り分ける能力は、コンサルファームの選考を受ける時点で欠かせないものなのです。
MECEに考える方法
物事をMECEに分解するには、大きく分けて4つの方法があります。題材によって4つの方法から適切な手法を選ぶとよいでしょう。
要素分解
全体像をいくつかの要素に切り分ける方法。最もオーソドックスな方法といえるでしょう。要素を全て足し合わせると全体になっていなければならないので、分解したのちに抜け・もれがないか再確認することをおすすめします。
マーケティングでいう4P・3Cや経営戦略の「SWOT分析」などフレームワークを活用すると、自動的にMECEな要素分解が可能なので、積極的に応用するとよいでしょう。
因数分解
題材が数式化できるものである場合は、因数分解がより有効。単なる要因分解よりもMECEになっているかどうか確認しやすいため、積極的に活用しましょう。
例えば売り上げ高=顧客数×客単価といったように分解できます。顧客をさらに分解したい場合は売上高=(男性顧客+女性顧客)×客単価などの分解手法も。分析を進めるうえで有用になるよう工夫して分解することが大切です。
対照概念
やや応用的ではありますが、MECEは概念上の切り分けにも活用されます。例えば費用は固定費対変動費、特徴→メリット・デメリットといった形です。2つの相反する概念に分解したときは必ずMECEが成立するため、分析や説明にしばしば用いられます。
時系列による分解
バリューチェーンや作業工程といった題材の場合は「時系列で分解」するケースもあります。各時系列に重複している段階や繋がっていない段階がないか確認しながら分解することが大切です。またAIDMAやプロダクトライフサイクルなど、こちらもマーケティングや経営戦略におけるフレームワークにも見られます。
MECEの実例
ここまでMECEについて解説してきました。日本を都道府県に分けるように単純なものならわかりやすいですが、コンサルの題材となると、MECEに分けるのが難しいケースも。ここではMECEに分解する実例をいくつか紹介します。
こちらの実例を参考に、コンサルでの転職面接に臨む前に課題をMECEに分ける訓練をしておくとよいでしょう。
顧客ターゲットの絞り込みにおけるMECE
マーケティング戦略などを考えるときに顧客の属性を切り分けてターゲットを絞り込む作業をおこなうケースがあります。
この場合、ターゲットがうまく導き出せるようにMECEに顧客層を切り分けていく必要があります。とりあえずマーケットを「日本人」とするとします。
例えば「年齢」で切り分ける方法があります。
日本人=(〜10代+20代+30代+・・・80代以上)
複数の切り分け方を併用することもできます。例えば、年齢×居住地域で分けます。
ちなみにここでは「その他」が登場します。日本列島や沖縄に含まれない島などが「その他」に含まれると考えられますが、このように分析するうえで支障がないのであれば「その他」を設けることでMECEを成立させることも間違いではありません。
ただし、いたずらに「その他」に頼ってしまうと、分析がうまく進められない場合もあります。例えば、次のように「その他」をおいてしまうと、四国・九州・沖縄など異なる地理的特徴を持つ地域の違いを考慮せずに分析してしまい、誤った結論が導かれる恐れがあります。
「その他」を使うのは間違いではないものの、基本的に必要最小限の範囲を含めるように気をつけることが大切です。
売上におけるMECE
ケース面接でしばしば題材となる売上。数値に関するものなので「因数分解」による切り分けが有効です。
まず、最も単純な切り分けの一つが先ほども紹介した通りで、
売上=顧客数×客単価
となりますが、これだけではなかなか分析を進められないでしょう。ここからは題材によって工夫した分解が必要ですが、例えば「飲食店の場合」は、
顧客数=席数×回転数
となるため、
売上=席数×回転数×客単価
となります。一方で、月額会員タイプのサービスの場合、
顧客数=既存顧客+新規顧客―解約顧客
客単価=基本料金+平均オプション使用料金
となり、
売上=(既存顧客+新規顧客―解約顧客)×(基本料金+平均オプション使用料金)
となります。
このように、MECEな切り分け方は一様ではないので、分析の方向性を踏まえて最適な分解を行うのが大切です。
二つの概念に切り分けるMECE
先にも紹介した二つの対照概念に切り分けるMECEについては、多様な実例があります。中でもコンサルの実務及びケース面接の場面で見られるのは次のような例でしょう。
✓メリットvsデメリット
✓賛成vs反対
✓固定vs変動
✓質(クオリティ)vs量(クオンティティ)
二つの概念への切り分けは、明確にMECEになるので使いやすい手法です。一方で二つの切り分けだけで説明できない場合には応用できません。二律背反で説明できそうにない場合には、諦めて他のパターンでMECEに切り分けていきましょう。
PDCAサイクルによるMECE
時系列のMECEを応用したフレームワークはたくさんありますが、PDCAサイクルもその一つです。
✓Plan(計画)
✓Do(実行)
✓Check(評価)
✓Action(行動=改善策の実行)
この順番に工程を踏むことで、業務プロセスを効率的に改善させられます。時系列におけるMECEではPDCAのように、行程全体が漏れなく切り分けられていることを、特に確認しながら進めることが大切です。
MECEの注意点
最後にMECEに分解するうえでの注意点をいくつか紹介します。以下に注意すれば、さまざまな題材をクリアに分析できるようになるでしょう。
「ダブり」よりは「漏れ」をなくすことが大切
課題によってはMECEになっているか自信が持てないケースもあるでしょう。特にケース面接などでは制限時間がある場合もあり、MECEになっているか詳しく検証している時間はない可能性もあります。
どうしても不安な時はせめて「漏れ」を無くすように努力しましょう。ダブりがあるだけなら、特定の要素を重複させて分析するので非効率ではありますが、要素を見落とすことはありませんので、ある程度精度を保って分析が可能です。
一方で「漏れ」があると特定の要素を分析に含めないことになるため、より分析結果に与える影響は大きくなります。MECEは「ダブり」より「漏れ」を無くすことの方が、より大切なのです。
要素数が多いと分析に活用できない場合も
例えば日本を47都道府県に分けるのは、確かにMECEです。しかしながら、もしケース面接の場でPCもなく分析する場合、47都道府県を全て確認することは現実的ではありません。
このように分析の条件や制限時間などを踏まえて、適切な要素数に収めることが大切です。分析に必要な最低限の要素でMECEに分けるのが理想的といえるでしょう。
「その他」をうまく使う
実用例にも出てきましたが、切り分けを進めたときに、どうやっても残りをうまく分類できない、というケースは少なからず発生します。その場合は「その他」を活用して、他のカテゴリに含まれないものをそこに集約させることは誤りではありません。
むしろ限られた時間の中では、分析結果が損なわれない範囲で「その他」を活用することが、分析に役立つMECEな切り分けを実現するコツでもあります。
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「ロジックツリー」例題を参考に作り方を完全理解する
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https://www.axc.ne.jp/media/careertips/howtoconsul_skillpoint
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コンサルでは実務でも転職選考においても、課題解決のために現状を構造化するシーンが多々あります。闇雲に現状を見るのではなく、MECEに情報を整理することで、効率的かつ的確に答えを導き出すことが可能になります。
MECEはコンサルファームで活躍するためには必須の概念の一つなので、知っておくだけでなく、さまざまな題材においてMECEな構造化ができるように、選考前に準備しておく必要があります。ケース面接の事例などを参考に、事前学習をしておくとよいでしょう。
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