今回は、「プライベートエクイティファンド(PEファンド)で必要とされる英語力とそのレベル、活用シーン」についてお伝えします。一般的には、クロスボーダー案件というよりは、国内企業を買収して出資するのがメインの業務ですが、英語をどの程度使うかわかっていない人も多いため、実際に働かれている方の声なども参考に解説します。
【目次】
- PEファンド転職時に求められる英語力(レベル)
- 英語の使用局面①:資料作成
- 英語の使用局面②:海外チームとの協働
- 英語の使用局面③:海外のLP投資家の対応
- 投資銀行出身者がPEファンドで英語力を活用できるシーン
- まとめ
PEファンド転職時に求められる英語力(レベル)
PEファンドは、一般的に知られているように入社難易度が高く、ハイレベルのスキルが要求されます。特に主な採用ターゲットは、投資銀行やコンサルティングファーム出身の人がほとんどです。
PEファンドでは、ファイナンススキル、投資仮説の作成では戦略コンサルティングファーム並みに事業に対する理解、仮説設定力が求められるため両スキルをバランスよく兼ね備える必要があります。同時に外資系や日系大手PEファンドでは英語力も重要です。海外MBAを取得している人は大多数がTOEFLで100以上のスコアを持っています。
アソシエイト、シニアアソシエイトといった若手のうちは、前職で培ったスキルも大事ですが、英語力を含め足りないところを入社後にキャッチアップできるかが重視されます。これらの職位には20代半ばから後半で転職する人が多く、最も若くても学部卒で外資系投資銀行ないしは戦略コンサルティングファームに入社し3年程度でアソシエイトに昇格した25~26歳が多い印象です。英語力は海外MBA経験者であれば、そこまで問題はありませんが、キャッチアップはある程度可能なものと思います。
英語の使用局面①:資料作成
PEファンドで英語の使用局面が多いのは、外資系の場合、投資委員会向けの資料作成時です。
特に投資委員会に海外のメンバーが含まれていると、それなりに英語での資料作成に慣れていないと厳しい状況となります。
外資系投資銀行のみならず日系投資銀行でも野村や日興といったところでも多くのディール経験を積んでいる方であればディスカッション資料やピッチ資料で英語を多く使用していることもあり、それなりに英語での資料作成には慣れている傾向があります。
戦略コンサルティングファームでも海外のプロジェクトにアサインされた経験のある人は、英語での資料作成に慣れている場合が多いです。PEファンドで働いているほとんどの人は戦略コンサルティングファーム出身者です。特にMBBと呼ばれるトップのファームの中のトップパフォーマーであれば、英語を使用するプロジェクトの経験はありますし、海外のMBAを卒業している人であれば、そこまでキャッチアップに時間はかかりません。
投資員会資料といっても、LBO分析、市場環境・会社分析など、戦略コンサルティングのビジネスDDの資料や、投資銀行で作成するディスカッション資料の組み合わせのようなものであり、基本的には外資系出身者の方が有利です。
英語の使用局面②:海外チームとの協働
基本的にPEファンドでの英語の使用局面といえば、海外チームと一緒に投資検討を行うような局面であり、その意味では外資系PEファンドでは英語の使用機会は多いでしょう。
具体的には日本の会社を買収したとしてもアドオン買収で、海外企業の買収を行いそのあとのPMIやバリューアップを進める際に、海外のチームとの協働が必要です。
コンサルティングファームでグローバルPMIプロジェクトにおいて英語を使用したことがあれば、そこまで違和感なく英語を使用したバリューアップ業務ができるでしょう。ただしPEファンドでも、スモールからミッドキャップ、つまり数十億円~百億円程度の日本国内の投資案件を中心に扱うファンドであれば、英語の使用頻度は低く、日本語での業務が多くなります。
なお、スモールやミッドキャップのPEファンドから直接大手のPEファンドや外資系のPEファンドに転職することはハードルが高いです。まず英語力を鍛え、海外の有名大学でMBAを取得してから転職することをおすすめします。
ほかにも海外からプロ経営者を招いて、投資先の企業をバリューアップするようなことがあれば、ファンドと投資先企業の経営者の日常的なコミュニケーションは英語で行われます。
英語の使用局面③:海外のLP投資家の対応
これはPEファンドでも比較的シニアになった後に重要となるスキルですが、PEファンドに出資しているLP投資家は日本だけでなく、海外の投資家も多いです。したがって、ファンドのパフォーマンスや、今後の投資戦略を説明する上で、英語力が必要とされる局面もあります。
またPEファンドがファンドレイズをする際に、プレースメントエージェントを使用してファンド出資額を募ることが多くなりますが、このようなプレースメントエージェントも香港や海外に拠点を有していることが多く、その意味では、PEファンドのIR担当者は、英語力も備えていることが必須となります。
投資銀行出身者がPEファンドで英語力を活用できるシーン
バルジブラケットでも、ブティック系でも、一般的な投資銀行のM&Aアドバイザリーサービスにおいて、カバレッジないし、エグゼキューションにおける財務分析、M&Aプロセスにおけるエグゼキューション全般、資料作成、株式譲渡契約書の交渉、財務モデリング、バリュエーションなどの総合的な業務を英語と日本語で行った経験があれば、PEファンドでの英語を使用する業務でも問題なく遂行できるでしょう。
日系ファンドを持っている外資系のPEファンドであれば、日本にコミットして投資を行うため投資先とのコミュニケーションやドキュメントは日本語ですが、バリューアップの一環で海外企業を買収する場合、もしくは投資先の企業を海外企業に売却する場合には、SPAの交渉やファイナンシャルアドバイザーである投資銀行とのやりとりも英語で行うことが多くなるため、その点では英語を使用する機会は外資系投資銀行でクロスボーダー案件をやっているときとそこまで変わらない可能性も多くあります。
ほかにも、拠点は東京オフィスでも外国人が在籍するPEファンドであれば、日常のコミュニケーションに加え、投資委員会の会議や案件の検討分析などの報告も英語で行うことが多くなります。そのため「日系投資銀行で国内案件をやってきただけ」という場合、やや英語力の面に不安があります。バルジブラケットないしは、外資ブティック系の投資銀行に行き、自分でエグゼキューションをリードして、財務モデリングやSPAの交渉の経験などを多く積むのが、このようなPEファンドに転職する際に高評価を得るために必要な行動です。
まとめ
このように、日系大手や外資系のPEファンドにいる人であれば英語の使用機会が多い傾向にあります。特にアドオン買収で海外企業を積極的に買収するような投資方針を持ったPEファンド、もしくはレポーティングが海外の本社や、東京にいる外国人である場合には、それなりに高い英語力がないとやっていくのが難しくなるでしょう。
外資系の中でも上位のファンドであれば、海外MBAを有している人や高い英語力を有している人が優先的に採用されるため、その点では割り切ることが大事です。まずは現職でのポジションや経験値、英語力を高めることにフォーカスすれば、それなりに高いポジションでの転職可能性もあります。
しかしここまで見てきた英語の使用例は、日系の中でもLP投資家のうち海外投資家が多い大手のPEファンドや、外資系のPEファンドのケースです。日本の金融機関系や、商社系、独立系でスモールからミッドキャップの投資を行うようなPEファンドでは、そこまで英語の使用機会は多くなく、むしろドメスティックなビジネスであることを意識するといいでしょう。
逆に海外志向の強い人がこのようなPEファンドに入ってしまうと、海外経験もなく、非常にドメスティックで地道なバリューアップが多く「思っていたのと違う」という感想を抱いてしまうというリスクもあります。
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>投資ファンドへのキャリアに関する記事
PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験【コンサルタントの方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulting_pe_investment
PEファンド未経験からの転職(コンサル・FAS・投資銀行の方向け)で採用時に求められるスキルと対策
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pefund_skillandpreparation
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今回は、「プライベートエクイティファンド(PEファンド)で必要とされる英語力とそのレベル、活用シーン」についてお伝えしました。
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