PEファンドのファンド・アドミニストレーターとは【日本と海外の違い】

今回はファンド・アドミニストレーター(ファンドアドミ)について紹介します。あまり表に立つことのない職種ですが専門性が高く、プライベートエクイティの運営には欠かせない存在です。

【目次】

  1. ファンドアドミとはファンドのバックオフィス業務を担う専門家
  2. 主な業務内容①ファンドの登録とライセンスの確認
  3. 主な業務内容②コンプライアンス、AML、デューディリジェンス
  4. 主な業務内容③ファンド・アドミニストレーターによる会社秘書業務
  5. ファンド・アドミニストレーターを適切なタイミングで導入しない場合のリスク
  6. 日本と海外の差異
  7. まとめ

ファンドアドミとはファンドのバックオフィス業務を担う専門家

ファンドアドミとは、Fund administrator の略称です。実際に投資やバリューアップを行うプロフェッショナルの担当者とは異なり、ファンドのバックオフィス業務を担う人達で、ミドルオフィスとバックオフィスの機能を提供するアウトソーシング・サービスです。ファンド・アドミニストレーターは、運用会社のポートフォリオのファンド資産と評価額を独自に検証します。
プライベートエクイティファンドの投資プロフェッショナルとは異なり裏方的な仕事ですが、LPとのコミュニケーションや投資のパフォーマンスの測定等重要な業務に取り組みます。
優れたファンドアドミを採用することで、ファンドマネージャーは主に投資先企業のバリューアップ、マネジメントに集中することができます。一方、プライベートエクイティのファンド・アドミニストレーターは独立した存在であり、LP投資家の利益を守るために尽力します。

主な業務内容①ファンドの登録とライセンスの確認

ファンドアドミの主な業務内容として、詳細な役割を説明します。ファンドアドミ業務が今日のプライベートエクイティ運用に果たす役割や関わり方について解説するとともに、アウトソーシングに関する議論、ファンドアドミに求められる資質等いろいろな課題に触れます。

例えば、プライベートエクイティファンドを設立したりライセンスを申請したりするには、関連する法規や自社のコンプライアンス要件に従って手続きを行う必要があります。これにはデューデリジェンス(DD)やKnow Your Client(KYC)手続きの適用、ファンドのビジネス、税務上メリットのあるような手続き、その他の規制情報についての事前協議が含まれます。
設立すべきファンド構造に関しては、ファンドの規約文書の起草、銀行口座開設、証券取引口座開設、税務登録、事業登録等といった業務を、法律の専門家のサポートも借りながら、業務に支障がないよう効率的に進めていく必要があります。

主な業務内容②コンプライアンス、AML、デューディリジェンス

プライベートエクイティのファンドアドミは、社内のコンプライアンス・オフィサーとマネーローンダリング報告オフィサー(MLRO、もしいる場合)を通じてファンドが法令に準拠していることも確認します。
ファンド管理者はまた、ファンドが登録・存在するエリア(例:ケイマンやモーリシャス等)の規制により、プライベートエクイティに対する投資を行うLP投資家から要求されるDDを実施します。

主な業務内容③ファンド・アドミニストレーターによる会社秘書業務

ファンド・アドミニストレーターは、上記のような専門的な業務も行いますが、プライベートエクイティファンドにおける秘書のような役目も務めます。
また、プライベートエクイティファンドにおける幹部のミーティングの開催や招集、その議事録の作成も仕事の一つです。投資委員会も同様にプライベートエクイティの幹部と連携して実施します。

書類関連の業務一覧

    • プライベートエクイティの法定帳簿および記録の保管と管理
    • 幹部会や投資委員会の議事録等、プライベートエクイティで実施される会議体の議事録の作成や関連する書類の管理
    • 財務諸表の作成
    • オフィシャルレター、例えばプライベートエクイティが設立されているエリア(例:ケイマン諸島やモーリシャス等)に対する会社登録局への法定書類提出
    • 関連する法規の下でのプライベートエクイティが必要な書類の作成と提出(法律で要求される認可の申請や関連機関への通知)
    • 取引および関連するトランザクションの処理
    • 出金、振込、スイッチの処理
    • 日々のコーポレートアクションの処理
    • 帳簿の作成と管理(外部記録の編集と検証、ポートフォリオの価格設定、純資産価値(NAV)の計算、費用の発生計算を含む)
    • 顧客(投資家)向け書類の作成
    • 投資家名簿等の書類作成・管理
    • トレードおよびポジションのレポート
    • アドホック取引およびポジションアクティビティレポート
    • 財務諸表の作成
    • 規制当局への報告書の作成
    • 利益と損失の報告
    • 税務報告
    • 投資実績の計算
    • パフォーマンス・フィー計算
    • 純資産価値の計算(日次、週次、月次)
    • 配当金の分配
    • 投資家向けステートメントおよびコミュニケーションの配布
    • 資本収益率および収益率の追跡
    • 株式登録機関および名義書換代理人の提供

    プライベートエクイティの世界では、「ファンドアドミ」という言葉は、ある意味で包括的な用語になっています。伝統的に、プライベートエクイティの管理業務には、会計、(投資家と規制当局の両方への)報告、その他ファンドの円滑な運営に必要な多くのバックオフィス業務が含まれます。

    実際に投資業務を行っているファンドマネージャーは、ファンドのライフサイクルの後半、つまりプライベートエクイティファンド投資の実行後、エグジット後に管理業務が必要になると考えるのが一般的でしょう。
    しかし、今日のプライベートエクイティは伝統的な投資スタイル以外にも、セクターにフォーカスしている、投資アングルが特徴的かつ専門的なファンドが多様化しているため、多くのマネージャーがファンドアドミにこれまでよりもはるかに多様なタスクの支援、しかもプロセスのかなり早い段階での支援を求めているのが現状です。したがってファンドアドミ自身も、常に知識のアップデートやインプットが求められます。

    ファンドの組成に関して、ファンド・アドミニストレーターの役割はどのように変化したのでしょうか。あるファンドマネージャーにとって大きく変わったことは、専門性とカスタマイズ性が高まったことです。
    プライベートエクイティ、ベンチャー・キャピタル、不動産等、得意とする分野、オポチュニティ・ゾーンやインパクト・ファンド/ESGファンドのような特殊なファンドも存在します。このようなファンドタイプは、既存のプライベートエクイティのマネージャーにとっては初めての試みかもしれませんが、ファンド・アドミニストレーターは、ファンドの設立から優秀な担当者を採用し、ファンドの成長に応じて拡大していく必要があります。

    あるプライベートエクイティのアドミ上の法的文書、特にファンドマネージャーがプライベートエクイティファンドの構造の初期段階を考えている場合に、ファンドがリスクプロファイルを最小化しつつ、運用効率を高めるために弁護士等の外部のプロフェッショナルと協働して効率的にファンドの設立手続きを進める必要があります。

    ファンドアドミの担当者はほとんどのプライベートエクイティにおいてファンドストラクチャーについて、ファンド組成の早い段階や、外部の監査人によるファンド監査で議論を重ねることが重要です。

    ファンド・アドミニストレーターを適切なタイミングで導入しない場合のリスク

    ファンド・アドミニストレーターを適切なタイミングで導入しないと、どのようなリスクや問題が発生するのでしょうか。
    例えばプライベートエクイティに関する法的文書が、運用の観点から実現可能なものとして作成されていない場合、コストが大幅にかかるのはもちろん、導入プロセスが長引き、遅延する可能性があります。また、監査プロセスがより複雑になる可能性もあります。ファンド管理の第三者にアウトソースするような移行も最近では見られます。ファンドアドミを外部に委託することで負担は減りますが機密情報の漏洩リスクも高まるので、プライベートエクイティのファンドマネージャー自身にプレッシャーを与えるリスクもあります。したがってファンドアドミはできるだけ内製化するほうが望ましいです。

    日本と海外の差異

    日本と海外でファンドアドミの業務が大きく異なることはないと思われます。違うとすれば言語や、対応するカウンターパーティが海外か日本が中心かどうかということになるでしょう。
    またファンドアドミといっても、プロフェッショナルな職務内容であることには変わりはないため、海外も日本も他社で経験のある人を優先して採用する傾向にあると思われます。
    ファンドの設立されているエリアによって準拠法も異なってくるので、日本法に準拠してプライベートエクイティが設立されている場合には金融商品取引法やファンドに関連する法規に詳しい担当者がいれば心強いでしょう。
    外資系のプライベートエクイティにおけるファンドアドミ担当者は前職を見ると、外資系金融機関の出身者かつ関連する業務も経験している人が多いです。また高い英語力は必須であり、投資チームのプライベートエクイティの幹部との人間的な相性の良さも非常に大事なポイントになります。

    まとめ

    このように、ファンドアドミの仕事は表立って有名になることは少ないものの、プライベートエクイティの投資プロフェッショナルの仕事を支える存在として非常に重要です。
    専門性が高い職種なので未経験を狙うよりも日系の金融機関で関連する業務を経験することが望ましいと思いますし、業務範囲もバックオフィスにしては非常に広く、法律が絡むことが多いため、例えば採用される人の例としては、大手監査法人でファンドの監査を担当してきた公認会計士がありえます。
    待遇面では、プライベートエクイティの投資プロフェッショナルほどは高くありませんが、激務度は繁忙期を除けば投資プロフェッショナルの人よりもワークライフバランスを取りやすい点でおすすめの職種かもしれません。

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    PEファンド入社1年目で身に付けておくべきスキル・経験【コンサル・投資銀行の方向け】
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