コンサルティングファームに在籍されている方から、プライベートエクイティファンド(PEファンド)・ベンチャーキャピタルへの転職のご相談をよくいただきます。人気が高い一方で、入社後すぐにドロップアウトされる方が多いのも実情です。
そこで今回は、PEファンドに中途入社して失敗する人のよくある原因(パターン別)について解説します。
【目次】
- PEファンドへ中途入社後に求められるスキルの概要
- PEファンドへの中途入社の失敗例①カルチャーになじめない
- PEファンドへの中途入社の失敗例②ファイナンススキルが足りない
- PEファンドへの中途入社の失敗例③バリューアップに慣れない
- PEファンドへの中途入社の失敗例④オリジネーションできない
- PEファンドへの中途入社の失敗例⑤年齢が高すぎた場合
- まとめ
PEファンドへ中途入社後に求められるスキルの概要
PEファンドは、簡単に言えばレバレッジをかけて企業を買収するファンドを指します。入社難易度と求められるレベルは極めて高く、採用されるのは投資銀行やコンサルティングファーム出身者がほとんどです。
若手のうちは、前職で培ったスキルも大事ですが、足りないところを入社後にキャッチアップできるかが重要です。
人気があるとはいえ、入社後になじめなくて転職をする人も多数います。ここでは実際にありえる失敗例を原因とともにご紹介します。
PEファンドへの中途入社の失敗例①カルチャーになじめない
PEファンドには基本的に、国内外のトップクラスの大学、大学院を出て、新卒で外資系投資銀行ないしは戦略コンサルティングファームに就職して数年間の経験を積んだのち転職するケースがほとんどです。
しかしながら、入社しても数年で辞める人もいますし、「PEファンドへの転職は失敗だった」と認めて結局は投資銀行やコンサルティングファームに戻る人もいます。
このような結果となる理由に「社風になじめない」という点が挙げられます。PEファンドは少数精鋭の組織ですが、言い換えればシニアやパートナー、既存のチームメンバーとの相性が悪いと働きにくくなります。これを防ぐために、PEファンドでは複数回面接を行い、自社へのフィット感を確かめる作業を行います。
したがって、カルチャーや社風は入社する前に、必ず転職エージェントや知り合いから入手して会社研究を済ませておきましょう。
PEファンドへの中途入社の失敗例②ファイナンススキルが足りない
ファイナンススキルは主にコンサルティング出身の人にとってクリティカルなポイントです。
コンサルティングファーム出身者は個別の企業についてインサイトを提供し、投資検討する企業がどれほど投資に値するかビジネスデューデリジェンスの経験も踏まえて定性的かつ定量的に分析できることが求められます。
一方でPEファンドは金融業であり、最終的にはファイナンシャルなスキルが重要です。LBOモデルの作成や財務3表モデリングなどのスキルのキャッチアップには必ず取り組んでおきましょう。
コンサルティングファームでは、ファイナンシャルアドバイザリー業務の経験があるFAS出身者はバックグラウンド的に投資銀行でのFA業務の経験者と似ています。バイサイド・セルサイドのM&Aアドバイザリー業務の経験を積んでいるため、ファイナンススキルで苦戦することは少ないでしょう。
FASにいるとしても、財務DDのみの経験ではPEファンドへの転職は難しいため、いずれかのタイミングでコーポレートファイナンス関連のキャリアを積む必要があります。少なくとも財務分析やDCF、類似上場会社比較法、類似取引比較法などの会計やファイナンスに関するスキルが重要であるため、自信がないのであれば強化することを考えましょう。
コンサルティングファーム出身者で、この辺りのモデリングやファイナンス、会計税務の知識のなさが露見してしまうと投資検討時から苦戦を強いられてしまうため強化は必須です。IBD・戦略コンサルタントの出身者別でなんとなくチームを分けている大手PEファンドもあると聞いたことがありますが、一般的なPEファンドは少人数で分業体制もできないため、抜け目なくスキルを身に付ける必要があります。
またPEファンドにおける投資銀行出身者は高い財務モデリングのスキルが必須であることが多いです。特にLBOモデルをしっかりと作れるかは重視されます。投資銀行出身者であるにもかかわらず、財務モデリングのスキルが期待していたレベルよりも低いとみなされた場合、社内での評価も厳しくなりやすいため常に自己研鑽に取り組みましょう。
カバレッジ業務ばかりでLBOモデルはおろか、財務3表モデルもあまり作っていない人の場合は、しっかりと準備をしておく必要があります。もっともエグゼキューションの経験がないと入社の可能性が低くなるため、カバレッジしか経験がない人は、しっかりとエグゼキューションの経験を積めるように普段から意識しましょう。
PEファンドへの中途入社の失敗例③バリューアップに慣れない
PEファンドに中途入社する人のバックグラウンドで多いのが、一般的な投資銀行のM&Aアドバイザリーサービスにおいて、カバレッジないし、エグゼキューションにおける財務分析、M&Aプロセスにおけるエグゼキューション全般、資料作成、株式譲渡契約書の交渉、財務モデリング、バリュエーションなどの総合的な業務を行った経験がある人です。
一方でこのような人は、コンサルタントよりもビジネスやセクターの知見が浅い、もしくはやや劣る場合があります。特にオペレーションレベルにバリューアップの戦略を落とし込むことを求められるため、入社後に多少の苦労はすることになります。
大手にはバリューアップのチームを分けているようなPEファンドもありますが、そうでなければ投資の実行も、モニタリングやバリューアップも自分でやる意識が重要です。
Day1で案件に入ったときに、
「問題点は何かをしっかりと語れるかどうか」
「問題点を解決するためには、どのようにしたらいいか」
「外部のコンサルタントや専門家をどう巻き込むか」
「対象会社のマネジメントや従業員のコミュニケーションの取り方をどうするか」
などを考えることが重要となります。
今まで投資銀行でアドバイザーをやっていた人が中小規模の投資でこのような問題に直面すると、なかなか慣れずに苦労します。それが自分の性に合わずにアドバイザーに戻る人もいます。
今一度、
「自分がどのようなサイズの案件をやりたいのか」
「投資先のかかわり方として、ハンズオンが嫌じゃないか」
「簡単なモニタリング程度でいいのか」
を考えるようにしましょう。
PEファンドへの中途入社の失敗例④オリジネーションできない
シニアポジションにいる人に関連するトピックですが、実際に案件をオリジネーションするのは投資銀行でもPEファンドでも同じです。この点でいえば、コンサルティング出身の人よりも、投資銀行でプライベートエクイティや法人をカバーしてきたような人の方が違和感なくなじめるでしょう。逆にこれがなかなかできないと評価されず、PEファンドを辞めざるを得ないという選択肢も出てきてしまいます。
転職した後も、自分で案件をオリジネーションして、アソシエイトを指揮しつつエグゼキューションをリードして、財務モデリングやSPAの交渉の経験などを多く積むのが、PEファンドで高評価を得るために求められます。
PEファンドへの中途入社の失敗例⑤年齢が高すぎた場合
PEファンドに転職した時点でそれなりに年齢が高い場合には特定のセクターやプロダクトでの経験、顧客をどれだけカバーできているかどうかがポイントですが、若い組織であれば、上司や先輩、経験のある同僚が年下になることもあります。
そのような場合でも謙虚にキャッチアップできる姿勢を見せなければ、人間関係がつらくなりやすいため、特に30代以降でPEファンドに転職する人は留意する必要があります。
まとめ
PEファンドに中途入社してから失敗しないためには、できる限り豊富な経験を積み、スキルセットを備えておく必要があります。組織とのフィット感も皆さんが想像している以上に重要。どんなに優秀でも「うちとは合わない」と判断されると落とされてしまう世界です。
ただしPEファンドを受ける際に20代かつ新卒でプロフェッショナルファームに入った人であれば、理想の採用ターゲットであるため、問題なく転職してなじむことができるでしょう。
Tierが高い、もしくは投資実績が豊富にあるPEファンドで働きたい場合、コンサルティングやM&Aアドバイザリー業務を積むことをおすすめします。そうしなければ、受けたいファンドの既存メンバーのレベルについて行けないなどの理由で、苦労するリスクがあるためです。
外資系の中でも上位のファンドであれば、トップティアと呼ばれるファームからしか採用しない点にも注意しましょう。
まずは現職でのポジションや経験値を高めることにフォーカスし、
「本当にアドバイザーやコンサルタントの立場から投資を行う立場に行きたいか」
「PEファンドではなくアクティビストファンドでも良いのではないか」
というように、常に思考をめぐらしてキャリアを考えることが望ましいです。
=================
>PEファンドへのキャリアに関する記事
PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験【コンサルタントの方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulting_pe_investment
FASからPEファンドに転職して活かせるスキル・キャッチアップが必要なスキルとは
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/fas_pe
=================
今回は、PEファンドに中途入社して失敗する人のよくある原因(パターン別)について解説しました。コンサルのキャリアでお悩みの方や、PEファンドへの転職をご検討の方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。