PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)の抱えるリスクと対策

private equity fund

機関投資家や富裕層がLP投資家になることにより行われるプライベート・エクイティ投資は、大きな成長が見込まれる新会社や新興企業に投資されます。プライベート・エクイティ投資は最低投資金額が高いことが多く、利益が大きくなる一方で損失も大きくなる可能性があるというのがリスクの一つでしょう。

プライベート・エクイティ投資家は、平均して数年間その会社で資金を運用することが予想されるため、流動性リスクが存在します。投資先の企業の多くは実績がないため、市場リスクが広く存在し、誇大広告に見合わなければ損失につながる可能性があります。

そこで今回は、PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)業界にとって考えられる直近のリスクを解説していきます。それ以外にもプライベート・エクイティ・ファンド志望者にとっての転職後のリスクとその対策についても紹介していきます。

・PEファンド業界にとっての直近のリスク
・ファンド志望者が背負うことになるリスクと対策

安定したキャリアを築くためにも、上記を本記事で押さえた上で、転職活動に取り組んでいただければ幸いです。

【目次】

  1. プライベート・エクイティ・ファンドのリスクに関して(キーポイント)
  2. プライベート・エクイティ・ファンドにおけるキャリア上のリスク
  3. プライベート・エクイティ・ファンドの構造

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)のリスクに関して(キーポイント)

プライベート・エクイティ・リスクを理解するために、プライベート・エクイティ・ファームは、投資家の資金と他の借り入れ資金をプールし、高い成長が見込まれる小規模企業の株式所有ポジションを取得するという前提を理解する必要があります。投資家は通常、裕福な個人や機関投資家であり、顧客に代わって資金を投資することになります。LP投資家たる機関投資家には、年金、投資信託、保険会社などが含まれます。

流動性リスク

流動性リスクは、プライベート・エクイティの投資家にとって懸念事項でしょう。

流動性とは、投資家が投資対象から出入りしやすいかどうかを示す指標で、プライベート・エクイティ投資家は、平均4年から7年の間、プライベート・エクイティ会社に資金を預けることになります。

投資によっては、リターンを得るまでにさらに長い保有期間が必要なものもあるので株式、投資信託、上場投資信託(ETF)など他の資産クラスでは、投資家は必要に応じてその日のうちに投資を売却できます。それに比べると、プライベート・エクイティ投資には、そのような余裕はありませんので、長期間リスクに耐えなければなりません。

プライベート・エクイティ投資家にとってはイグジットの短期的な見通しについて意見が真っ二つに分かれます。しかし、インフレの緩和、金利の低下、IPO市場のセンチメントの上昇など、状況は着実に改善しており、企業は潜在的な買い手に自社のエクイティストーリーを明確に説明する準備が必要です。

市場リスク

プライベート・エクイティ投資家は、伝統的な投資と比較して、より大きな市場リスクにも直面している事も重要です。

プライベート・エクイティ・ファームが投資する小企業が成長する保証はどこにもないためで、こうした企業では失敗がはるかに多く、ファームと投資家に大きなリターンをもたらすのは、10社中1~2社に過ぎないという現実があります。

非効率な経営陣、新製品発売の失敗、有望な新技術が競合他社に押されて陳腐化した場合などは、プライベート・エクイティ投資家に大きな損失をもたらす可能性があるので、投資する際に常に大きなリスクがあります。

他の資産クラスは市場リスクを伴うのですが、より確立された企業であればデフォルトリスクは低いです。また、プライベート・エクイティ投資では、企業が多額の負債を抱える可能性があり、長期にわたる利払いで返済コストがかさむこともあります。

全体として、プライベート・エクイティ投資のリスク・プロファイルは、他の資産クラスよりも高いのですが、リターンは著しく高くなる可能性があります。

資金とリスク許容度に余裕のある投資家にとって、プライベート・エクイティはポートフォリオの一部で有利な投資になり得ます。

プライベート・エクイティ・ファンド業界にとって考えられる直近のリスク

プライベート・エクイティ・ファンドにおける最近のリスクは、投資期間の長期化が挙げられるでしょう。プライベート・エクイティ・ファンドのメンバーにとっては投資先が無事にエグジットしないとキャリーボーナスもないですし、経済的なメリットも少なくなります。

他にも資金調達リスクや損失のリスクなどもあります。

リスク対策:PEの取り組み、投資先のセクター

プライベート・エクイティ・ファームは、経営陣や取締役会を入れ替えることで、投資先企業の改善を図り、コスト削減、製品やサービスの追加、資金調達のためのスピンオフによる企業の一部売却にも取り組むことになります。プライベート・エクイティ・ファームの行動はすべて、プライベート・エクイティ投資家の投資収益率を高めるためのものです。投資先の業界に関しては、プライベート・エクイティ・ファームは以下のようないくつかの業界に関与しています。

・テレコミュニケーション
・ソフトウェアやハードウェアなどのテクノロジー業界
・製薬会社を含むヘルスケア
・バイオテクノロジー

投資家は、これらの業界以外にも、業界自体の長期的な持続的成長ストーリー、マクロ的な逆風に対する相対的な回復力、ヘルスケア、金融、工業、エネルギーなどのセクターにおけるテクノロジーの統合の進展に魅力を感じていると思われます。

プライベート・エクイティ・ファンドにおける最低投資額

プライベート・エクイティ投資は参入障壁が高く、最低投資額として数億円という莫大な資金が必要となります。個人がプライベート・エクイティ・ファンドに投資するとしても最低投資金額が数億円未満という、より低い敷居に対応するプライベート・エクイティ会社もありますが、それでも従来のほとんどの最低投資金額よりは高いです。

投資額が大きいため、プライベート・エクイティ投資家は、投資額からわずかなIRRを得るだけでも大きな利益を得ることができます。

しかし、投資は諸刃の剣であり、多額の資金を投入することは、投資収益がマイナスになることによる大きな損失にも等しくつながることを意味するのです。

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)におけるキャリア上のリスク

ファンド志望者にとっては、キャリア上のリスクについてもゼロではありません。

前提として、プライベート・エクイティ・ファームは通常、少なくとも2年間の投資銀行業界での経験を持つエントリー・レベルのアソシエイトを求めています。
多くのインベストメント・バンカーは、プライベート・エクイティ・ファームでのキャリアを次の仕事として想定して進み、金融、会計、経済学、その他関連分野の学士号を取得するのが一般的です。

プライベート・エクイティに就職するのは非常に困難です。というのも、プライベート・エクイティ業界の求人は少なく、応募者間の競争が激しいからです。未経験からプライベート・エクイティに参入することは不可能であるため、インターンシップを見つけるか、関連分野で経験を積むことを強くお勧めします。通常はジュニア・アソシエイトまたはアナリストからスタートするのが一般的ですが、基本的にプライベート・エクイティのプロフェッショナルは社内での昇進が早いのがメリットです。人材がいない場合は、外部人材を選定して採用することもあります。

プライベート・エクイティ・ファンド志望者にとっての転職後のリスクとその対策

プライベート・エクイティ・ファンドでは、転職するとそれ以外のキャリアパスがCXOやほかのファンドに行く以外があまりなくなります。起業する人も割と多いです。

プライベート・エクイティ・ファンドからアドバイザリーに再度に戻る人は一定数いますが、多くはありません。

プライベート・エクイティ・ファンドのキャリアはより中長期的なものになるので、単に案件のオリジネーションをするだけでなく、投資からモニタリング、エグジットまで担当すると高い評価になりますし、キャリア上もかなり付加価値が付きます。ただしそれなりの高い時間をささげないといけないのがデメリットです。また、社内政治もゼロではないので、あらかじめファンドの内情を転職エージェントで探っておくことをおすすめします。

今日のプライベート・エクイティ市場環境における主な課題

流動性と運転資本: プライベート・エクイティ・プロフェッショナルの80%は、企業が現金と流動性のニーズを把握できるよう支援することに、通常以上に注意を払っています。これは非常に重要な取り組みです。今日の市場において、より多くのキャッシュを創出できる投資先企業は、弾力性の観点から有利な立場にあるだけでなく、競合他社の多くが後手に回っている時に、余剰キャッシュを買収資金や借入返済、人材への投資、事業変革の資金に充てることができるという点で、攻めの観点からも有利な立場にあるのです。

コスト削減: コスト削減はもう一つの重点分野であり、多くのプライベート・エクイティ・ファンドがコスト削減にいつも以上に注意を払っていると回答しているそうです。そのようなプライベート・エクイティ・ファンドにとって、成長ドライバーを維持しながらコストを抑制する思慮深いアプローチは不可欠です。

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)の構造

PEにはプライマリー・ファンド・オブ・ファンズというものがあります。プライマリー・ファンド・オブ・ファンズは、プライマリー・キャピタル・コミットメントを通じて個々のプライベート・エクイティ・ファンドに投資しています。戦略にもよりますが、典型的なプライマリー・ファンド・オブ・ファンズは、数年かけて20~50のプライベート・エクイティ・ファンドに投資するポートフォリオを構築します。

富裕層の投資家は、株式ポジションの一部を、プライベート・エクイティ投資を含むオルタナティブ資産クラスに投資する戦略を採用しており、プライベート・エクイティ・ファンドは、大きな成長が期待できる新規企業や新興企業に投資されます。経営陣の交代や事業運営の合理化によって、投資先企業の立て直しや改善を図ろうとするのが一般的です。

プライベート・エクイティ投資の魅力は、従来の投資方法ではなかなか達成できない高いリターンが期待できることですが、投資対象の性質上、他の資産クラスとは異なるリスクを伴う点は重要な事実です。

プライベート・エクイティのその他の要素

プライベート・エクイティ・ファンドの管理・運用報酬は、一般的にパブリック・ファンドよりも高いです。加えて、プライベート・エクイティ・ファンドのマネジャーは、投資家の目標に沿うために、一般的にファンドの利益の分配も得ています。

したがって、プライベート・エクイティ・ファンドを評価する際には、投資家へのリターンを示す最も適切な尺度として、手数料控除後のネットリターンを考慮することが重要です。

ほかにも高い最低投資設定額があります。プライベート・エクイティ・ファンドの最低投資金額は、数億円を超えることも少なくありません。そのため最低投資額を引き下げることで、個人投資家にプライベート・エクイティへのアクセスを開放する取り組みが増えてきています。

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>PEファンドへのキャリアに関する記事

PEファンドへの投資によるメリット&コンサル転職のメリットとリスク
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/private-equity-fund-merit

PEファンドにおける激務度・残業時間・働き方の実情【コンサル、投資銀行との比較】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/privateequityfundworklifebalance

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今回の記事では、PEファンド業界と転職志望者にとってのリスクについて対策とポイントをお伝えしました。

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