PEファンドにおける「ソーシング」各フェーズの内容や注意点

今回はプライベートエクイティファンド(PEファンド)のソーシング業務について、フェーズごとの内容や、注意点等を解説します。

【目次】

    1. ソーシングとは「新規案件を創生する活動」
    2. ソーシングStep1:投資クライテリアを設定
    3. ソーシングStep2:投資クライテリアを示して案件を紹介してくれるところを回る
    4. ソーシングStep3-1:投資銀行等から配布されるティーザーを参照して検討する場合
    5. ソーシングStep3-2:会計事務所や銀行等のネットワークを駆使して案件紹介をお願いする場合
    6. ソーシングStep3-3:M&A仲介を利用してソーシングする場合
    7. ソーシングStep3-4:シニアメンバーの個人的なネットワークを利用してオリジネーションする場合
    8. まとめ

ソーシングとは「新規案件を創生する活動」

ソーシングとは、PEファンドのみならず、投資銀行等でも使用される言葉で、新規案件を創生する活動を指します。PEファンドでは、投資に使用できるLPからのエクイティ出資がありますが、これを業界用語でドライパウダーと言います。

ドライパウダーが余っている状況をずっと続かせると投資活動が停滞してしまいます。新規の投資実行をするために新たな投資対象を社内で投資検討できるように外部の投資銀行等のアドバイザーから紹介してもらう、実績が少ないファンドであれば自分から動いていろいろな伝手(会計事務所、証券会社、地銀、メガバンク)をたどって案件を探すことが重要です。

ソーシングStep1:投資クライテリアを設定

投資クライテリアは、ファンドが投資するにあたって設定している最低出資額、セクター、地域等の条件です。もちろんファンドによってはセクターによる好みはないということはありますが、コーポレートバイアウトを行うPEファンドの場合、不動産や金融業(FIG)が投資セクターから除かれることが多いです。
また1件当たり最低出資額はエクイティチェックもしくはチェックサイズと言い、ファンド総額の5分の1を上限とすることが一般的です。

アドバンテッジパートナーズやユニゾン・キャピタルのような日系で実績のあるPEファンド、外資系でKKR、カーライル、ベインのような大手であればこれまでの投資実績や日本における投資方針等を踏まえて投資クライテリアが明らかなところが多いですが、新興系のPEファンドであれば投資する業界、エクイティ出資額の最低額(おおむねAUMの5分の1位が目安)を決めていくことが重要です。

ソーシングStep2:投資クライテリアを示して案件を紹介してくれるところを回る

上記の投資クライテリアを決めたら、当該投資クライテリアにマッチする潜在的な企業の売却案件を持っていそうな財務アドバイザーを回り、案件紹介を依頼します。これらは業歴のしっかりしたPEファンドではあまりないですが、日本での投資実績が少ないファンドや、日系でも新規でファンドを組成したところで案件を早めに作らなければならないファンドでは積極的に行う必要があります。

この段階では、投資対象となりうる企業のリストアップを行い、該当企業の売却可能性や資本ニーズに探りを入れるような活動を行うこともあります。

ソーシングStep3-1:投資銀行等から配布されるティーザーを参照して検討する場合

さきほど示した、日本でそれなりに投資実績のあるPEファンド(日系であればユニゾンキャピタル、アドバンテッジパートナーズ、ポラリス・キャピタル等。外資系ではカーライル、KKR、ベインキャピタル等)では、自ら投資したい会社を定めてソーシングする場合もありますが、これらのファンドは投資銀行等と強固なネットワークを築いているものです。特に何もアクションを起こさなくても、投資銀行がセルサイドマンデートを持っている案件や、潜在的に売りに出る案件を紹介されることが多いです。
したがってディールフローは相当多くソーシングに力を割くことに加えて、個別の案件の検討に割く時間が多くなるのではないでしょうか。

PEファンドは投資銀行やコンサルティングファーム出身の人が採用されることがほとんどであり、非常に少人数の組織であることを踏まえると、シニアメンバーの過去の人脈や投資銀行時代の知り合いを通じて案件紹介されるケースも多く、また投資銀行のカバレッジチームとのリレーションも強固であり、日々案件紹介を受けていることが容易に想像できます。

特に投資銀行出身者には、M&Aアドバイザリー業務でのスキルに加えて投資銀行時代の人脈を駆使して潜在的なソーシングをするセンスや素養も求められるはずです。
バルジブラケットと言われるような大手投資銀行では比較的サイズの大きい案件を扱うことが多く、スモールからミッドキャップの案件であれば日系証券や外資系の一部のブティック投資銀行が扱っている可能性があるため、案件サイズとディールを扱う投資銀行の類型も理解しながらソーシングを行っています。

なお、最近では一部のMBBと呼ばれる戦略コンサルティングファームが作成したティーザーが配布されることもあり、これらの案件も投資銀行以外のルートから紹介されるものとして検討の俎上に載せられる可能性があります。

ソーシングStep3-2:会計事務所や銀行等のネットワークを駆使して案件紹介をお願いする場合

こちらは、外資系のラージキャップのファンドではあまりなじみにならないオリジネーションの方法ではありますが、スモールからミッドキャップの案件を検討するPEファンドは日系外資系を含めて多くいるため、これらのファンドでは会計事務所(EY、KPMG、PwC、デロイト等)やメガバンク、地方銀行のネットワークを利用した事業承継ニーズのある案件や、売りに出そうな案件を検討することが多いです。

会計事務所系ファームのFASでは、投資銀行や証券会社と同様にティーザーを作成して、各買い手候補に配布していることが多いですが、銀行ではまとまったアドバイザリーチームがいないことがあるため、潜在的なニーズ(営業支店が顧客のオーナー企業の社長とコンタクトがある等)をつかむ必要があります。

PEファンドは新規ファンドでは、そこまでオリジネーションやソーシングの方法が確立されていないこともあるため、まずは既存メンバーの知り合い等の伝手をたどって案件をソーシングすることが多くなります。

ソーシングStep3-3:M&A仲介を利用してソーシングする場合

こちらも同様に、外資系のラージキャップのファンドではなじみにならないオリジネーションの方法ではありますが、スモールからミッドキャップの案件を検討するPEファンドには有効なオリジネーション・ソーシング方法です。

M&A仲介は端的にいえば、売り手と買い手のマッチングを行うプラットフォームを提供していますが、最近では中小企業の「事業を売却したい」「後継者を探している」というニーズの増加に伴いシェアが広がっている領域です。新規の中小規模の案件に投資したいファンドとしては、このような潜在的な売却ニーズを持っているM&A仲介は非常に有用な情報源となります。

事実、日系外資系を問わず中小規模の案件に投資しているファンドの新規投資事例は仲介経由が多くなっており、ファンド各社がターゲットリストを作成して仲介の営業担当者にコールドコールをさせる事例もよく聞きます。

ソーシングStep3-4:シニアメンバーの個人的なネットワークを利用してオリジネーションする場合

こちらはより属人的な手法ですが、PEファンドのシニアメンバーの個人的なリレーションやネットワークを利用し、市場に出ていない案件をソーシングし投資実行する場合もあります。

こちらは一般化することは難しいですが、投資銀行のアドバイザリーチームでM&Aや資金調達で特定の日系企業をサポートしてきた経験がある、もしくはカバレッジバンカーとしてリレーションが濃い人が社内にいる場合は、ノンコアのカーブアウトや不採算事業の売却のうわさをいち早くかぎつけて、案件化することは可能です。

投資銀行がプロセスを仕切るオークションであれば、期限はタイトになり買収価格も高値掴みのリスクもあるため、可能であればエクスクルーシブ、相対で案件を行うことが望ましくなります。

まとめ

このように、PEファンドにおけるソーシング・オリジネーションはファンドの投資方針や注力セクター、ファンドサイズにより異なるものですが、案件の紹介のルートは上記に紹介したものが一般的です。

日本における投資実績が豊富なファンドであれば、ある程度のパッシブなスタンスで案件をたくさん紹介してもらうこともできますが、そうでなければ市場に出回っている案件を見逃さないようにアンテナを張って、投資銀行、証券会社、会計事務所、銀行等とのネットワークを利用してソーシングすることが重要となります。

中小規模のPEファンドで、紹介されるディールがなく投資経験が数年積めないというリスクを避けるためにもディールフローがどうなっているか、ファンドによってどのような違いがあるのかは、実際に中で働いている人の声を聞きましょう。
特に業界情報を多く持っている転職エージェントや、PEファンドに知り合いがいる場合には、内部情報を教えてもらう等、事前に調査できることは多くあります。

キャリアとしてPEファンドを選ぶ際には、投資実績のみならず、アソシエイトのようなメンバーでもソーシング活動に忙殺されるのかどうかを確認する必要があります。ファンドに入っても毎日提案書作成や、案件紹介の営業に追われるのは、不本意な結果になる可能性が高いためです。

=================

>PEファンドに関する記事

PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験【コンサルタントの方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulting_pe_investment

FASからPEファンドに転職して活かせるスキル・キャッチアップが必要なスキルとは
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/fas_pe

=================

今回はプライベートエクイティファンド(PEファンド)のソーシング業務について、フェーズごとの内容や、注意点等を解説しました。
PEファンドへのキャリアをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。

各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。

新規会員登録はこちら(無料)

カテゴリー、タグで似た記事を探す

こちらの記事も合わせてご覧下さい

アクシスコンサルティングは、
プライバシーマーク使用許諾事業者として認定されています。


SSL/TLSとは?

※非公開求人は約77%。求人のご紹介、キャリアのご相談、
企業の独自情報等をご希望の方はぜひご登録ください。

新規会員登録(無料)

※フリーランスのコンサルタント向けキャリア支援・
案件紹介サービス

フリーコンサルの方/目指す方。
×