経営企画と事業企画の違い【キャリアパス~年収~必要なスキルと経験まで】

企画職として人気のある「事業企画」と「経営企画」。どちらも企業活動を方向付ける大切な業務ですが、この二つはどう違うのでしょうか。

事業企画は事業レベルでの成長戦略の策定、実施をリードする業務。これに対して、経営企画は会社全体のコーポレートレベルでのありかたに関わるものということができます。

どちらも企業活動の様々なファンクションを横につなげて、事業または経営の目標を達成するように総合的に計画を立てる役割ですが、実際の業務では企業の規模や組織によって両者がはっきり別れていないこともあります。

この記事では事業企画と経営企画の職務内容と必要なスキルや能力を中心に両者の違いを説明し、年収やキャリアプランの違いについてもお伝えします。

【目次】

  1. 「事業企画」「経営企画」の仕事内容・求められるスキル/経験とその違い
  2. 「事業企画」「経営企画」の年収の違い
  3. 「事業企画」「経営企画」のキャリアパスの違い
  4. 「事業企画」「経営企画」はいずれも全体的な視野が求められる

「事業企画」「経営企画」の仕事内容・求められるスキル/経験とその違い

事業企画の仕事内容

事業企画の仕事内容は、企業の一つの事業について、目指すべき目標と達成するための方法を具体的な計画として作成することです。
目標となる事業の業績は販売金額や利益率などが数値で設定されるのが普通。営業活動の目標とKPIの設定、予算と行動計画の項目立て、活動実績評価のモニタリングまで事業企画の一般的な業務内容となります。

対象となる事業活動は既存の商品の販売計画から、新規に投入する製品や新規市場への参入計画、そして複数の製品群をもつ事業部全体の事業計画にわたる場合までさまざまです。
事業部全体の事業企画の場合は、単純に製品ごとに活動計画を作るだけではなく、分野ごとの経営資源の配分や財務・人事部門との調整を行います。
複数の製品が複数の地域や市場で販売されている場合は、数値分析を繰り返し、ゴールとなる事業実績をそれぞれの製品、地域、市場に振り分けた上で、それぞれの分野について計画を策定します。

事業部制をとっている企業で事業部の中に製造・開発部門を持っている場合には、事業全体のB/Sの管理が必要です。
事業本部制など事業ごとの経営が独立している場合の事業企画は、事業の経営企画に近いものになります。

事業企画で求められるスキル・経験

事業計画策定には、事業活動のマネージャー及び担当者レベルとの情報交換が必要になります。一つの事業であっても、営業・製造・経理の部門ではそれぞれ異なる視点で実績を判断しているものです。
営業としては成功とされる結果でも製造としては未達成、といったことは少なくありません。様々な部署とのやりとりを通じて、最終的に合理的で説得力のある事業計画を策定するには、事業全体に対する理解と高いコミュニケーション能力が求められます。
事業が海外展開をしている場合にはビジネスレベルの英語力は必須です。

経理・財務の視点は特に重要です。策定した事業計画を公開するような場合は、その内容を予算化し、会計報告の形式で作成します。事業を会計形式で理解する上で金融系の知識、キャリアが有効になります。
事業企画の対象となる事業分野が一部の製品だったり、特定の市場への事業活動の場合は、該当する部分の会計レポートが社内に無いことがあります。このような場合でも、その事業計画の部分だけを取り出したB/S、P&Lを自分で作ることが出来ると企画の説得力が上がります。

一方で事業企画は事業の内容を実務レベルで理解する必要があります。コンサルティングやマーケティングのツールをそのまま当て嵌めて作った企画は、キーワードや数字を並べただけの空虚なものになりがちです。
特に事業企画が活動計画まで展開される場合には、事業計画書の記載が担当レベルで具体的にどのような作業になるのかという現場感覚が重要になります。

また、社内で事業を担当していた社員がそのまま事業企画を行う場合には問題ないでしょうが、他の部門からの異動や社外から採用されて事業企画を行う場合には、自分が詳しくない業界・マーケットについての事業計画を策定することがあります。
新しい分野を学ぶことの出来る知的柔軟性が必須です。逆に知的好奇心や向上心がない人は不向きである可能性が高いため、自分に適性があるか慎重に見極めましょう。

経営企画の仕事内容

経営企画の業務において到達目標となるのは、企業の全社的なゴールです。
中期計画が分かりやすい例でしょう。数年後に自社がどのような企業になっているかを記述し、それを実現するための課題や打ち手を考案していきます。
事業企画の仕事では、主に事業実績と言う「数字」の達成を目標とするのに対して、経営企画の仕事では、企業のビジョンや業界でのポジションを念頭において目標が描かれることが多いのが特徴です。

大手はもちろんベンチャーであっても、企業の経営者にとっては自分の企業が将来どのような形で存在するかということが重要な課題です。消費者の嗜好の変化や技術の進歩、社会・経済の動向などを読み取りながら、将来に向けて自社は何をするべきか、どの分野に力を入れるか。長期的なビジョンを実現するための中期的な経営計画を作り上げます。
このため経営企画では、B/SやP&Lに加えて非数値的な「経営」もプランに落とし込んでいく必要があります。

また、組織や体制の見直し、企業のコアとなる価値、業界や社会における自社の意義などを具体化する内容になるため、非常に多様な情報を扱うことになります。

経営企画は社長や経営会議に直属の部署として他から独立した組織になっていることが多く、計画策定はトップマネジメントとのやりとりが中心です。計画の実施に当たっても事業部や財務、人事などの上位マネジメント層とやりとりをしながら進捗を管理していきます。

経営企画で求められるスキル・経験

企業経営のビジョンは長期的な視点に立っています。経営実績としての数値はもちろんですが、それよりも企業が属する業界でのポジションや自社の存在意義といったことをベースに語られます。このため、経営企画では、企業をより大きな流れの中で理解する必要があります。業界全体の動向や技術変化の流れ、競合やパートナー企業の経営状況などにアンテナを張っておきます。

また、政策や法制度、マクロ経済や国際情勢が自社の経営に与える影響を理解し、必要な情報には随時アクセスして将来予測・分析に反映させることも求められます。
そのため、経済学や国際情勢について、基礎的な知識は備えている必要があります。産業がグローバル化している場合は主要な競合や市場が海外であることが多く、マーケットリーダーやメガコンペティターの戦略は業界構造を変えてしまう影響力を持ちます。情報収集、分析のためにも英語力は必須です。

さらに、包括的な課題に対して作業をすることが多いので、計画が資料の上の記述だけになってしまうことのないように、具体的な課題に落とし込めるような「通訳」が必要です。内容は広がりと奥行きのある企画になるのでより高い構想力を発揮することが求められます。
全体の統一感と達成に向かうモチベーションを喚起するような構成のある企画が出せると魅力的です。

現状の刷新のために社外の新鮮な目を入れたほうがよい場合は、外部コンサルティングの経験が活用できます。数年後の企業の姿を目標とするので、計画は現在未着手の分野への投資を含むものになります。新市場への参入や新技術の導入は企業の組織体制や価値観に変化をもたらすでしょう。

世の中の大きな流れや技術の不連続な変化で、設定した目標の意義が失われることもあります。想定していない事情が発生することを考慮し、戦略的なフレキシビリティを確保しておくことが必要です。

経営を見直す場合、社内の人材や仕事のやり方が障壁になることがあります。社内の人材リソースの中にはその仕事を出来る人がいない、現在の業務に合わせて組織が出来てしまっていて新しい業務ネットワークを入れることに反発がある、といったケースです。アドミニの仕事の価値観を理解し、企業経営のメンタルな部分と向き合う必要があります。

事業・経営を数字で語る能力は事業企画と経営企画の両方に必要です。グローバルビジネスの資料はほとんどが英語になりますので、特に大手企業の経営企画ではビジネスレベルの英語はあった方がよいでしょう。

「事業企画」「経営企画」の仕事内容・求められる経験の”違い”

事業企画は事業活動の前線に向かっていく作業です。事業実績は毎月報告され、常に状況は変化します。企画者には事業活動のダイナミズムに一体感を与えるリーダーシップが求められます。一方で経営企画は少し遠いところから全体の動きを構築していきます。高い構想力、戦略構成力が必要です。企画達成までのスパンが長く、途中でマネジメントが変わってしまうこともあります。ビジョンを様々な方法で伝える、応用力のあるコミュニケーションスキルが求められます。

「事業企画」「経営企画」の年収

事業企画の年収

事業企画職が募集されるのは、

・新しい事業分野で部署内に企画できる人材がいない場合
・既存の事業について高い立場で全体を見て欲しい場合

の2通りあります。

前者であれば20代から30代、後者であればすでに事業企画や事業戦略の経験がある40代以上の方が対象でしょう。
年収は前者の場合500万~650万、後者の場合は800万~1,000万程度です。どちらの場合も社内で異動して企画又は事業部長職に就く場合と、外部から採用する場合があります。

経営企画の年収

経営企画職はマネジメント層とやり取りをする必要があり、過去の企画経験もしくはコンサルティング経験を持った方が重宝されます。企業のいくつかの部署を経験した人材が望ましく、公認会計士や英語力があればプラスです。年収は600万~1,200万程度が一般的です。
同一企業内でも、事業会社よりも経営企画の方が、数百万ほどレンジが高いケースが多いです。

「事業企画」「経営企画」のキャリアパス

事業企画までのキャリアパス

事業企画職に就く以前に営業企画やマーケティングを経験していると有利です。事業企画の職務は「事業」を進めていくという役割と、進む方向を定めると言う「企画」の役割があり、その事業でチャネル開拓や商品企画に携わった経験がある人が、事業企画へと進むのが典型的なルートになります。

別のルートは営業統括部などの業務から事業企画へ進むもので、この場合は「企画」的な役割から事業企画へ展開します。現場営業に近い所での事業立上げの場合はプレセールスの立案業務を事業企画と呼ぶこともあります。未経験の希望者にとっては入りやすいエントリーキャリアでしょう。

“事業企画”を経験して転職後のキャリアパス

事業マネージャーなど責任を持つポジションに就いた後のキャリアパスとしては、社内で役員(執行役員、COOなど)に昇格、もしくは子会社の社長になるというパスが一般的でしょうか。

(例)ENECHANGE株式会社 長谷川覚 様:

2008年に楽天トラベル株式会社(事業戦略部)よりエネチェンジ株式会社へカスタマーサービスマネージャー職で入社。その後、エネルギーマネジメント事業本部本部長などを経験し、2019年に執行役員に就任。

(例)クックパッド株式会社 福崎康平様:

2018年同社に入社し、新規事業である「クックパッドマート」を運営する買物事業部の責任者として立ち上げと拡大を牽引。その後、執行役に就任し、2020年9月1日付で日本事業の総責任者、Japan CEOへ昇格。

(例)ギークス株式会社 桜井敦様:

ベインキャリージャパン(現ギークス)のIT人材事業本部に入社、その後、同社のゲーム事業部長を務め、事業を拡大し2008年にG2 Studiosとして子会社化。代表取締役に就任する。

また、1~2割程度は独立・起業という選択肢を選ぶ傾向があり、このような例があります。

(例)株式会社リクシィ 安藤正樹様:

2009年、株式会社エスクリに入社し、結婚式場の責任者、マーケティング部門の責任者を経て、取締役事業本部長に就任し、東証一部指定替に貢献。その後、2016年5月、ウエディングプラットフォーム事業やウエディングコンサル事業を手掛ける株式会社リクシィを創業。

経営企画のキャリアパス

事業企画やコンサルティング経験者が経営企画へ進むケースが多く見られます。事業の立ち上げから事業化までの事業管理経験や、事業開発を主導するような事業の動き全体に関わった経験を生かすため、経営企画へと進むのが一般的です。
逆に経営企画職から事業企画へと進むことも多く、職能としては重なるところも多いのが実態です。

“経営企画”を経験して転職後のキャリアパス

経営企画の職務としてM&A、資金調達、管理会計などの経験を積むことも多いため、事業企画ポジションではあまり見ることのない「CFO」や「財務部長」といったポジションへキャリアチェンジされるケースも多いのが特徴です。

(例)株式会社エブリー 山本隆三様:

株式会社メタップス(経営企画部)に入社し、IPO準備に関わり、上場後はIR体制の構築、M&A、資金調達、管理会計等に従事。2017年に株式会社エブリーに入社し、2018年に執行役員CFOに就任。

一方で、事業企画と比較した際に、取締役やCEOといった経営の上流ポジションに就く傾向があります。実務寄りの経営企画経験を積んだ方の中かには、自ら起業するというケースもあります。

(例)株式会社TableCheck 谷口優様:

CyberSource日本法人にて経営企画等を経験後、ピクメディアにて事業開発マネージャーとして新規事業立ち上げに携わる。2011年にレストラン予約台帳システムなどを手掛ける株式会社TableCheckを設立。

「事業企画」「経営企画」はいずれも全体的な視野が求められる

今回の内容をまとめると、事業企画は一つの事業についての全ての機能を一体として進むべき方向をあきらかにするものです。事業として達成すべき実績を目標として掲げ、マーケットをフィールドとして事業活動をデザインしていきます。計画は半年ごとに修正され、企画実現までのプロセスは1~2年というのが一般的です。

一方で、経営企画では企業経営の方向性を、事業を含めて全体として構成していきます。産業構造や企業の歴史が背景になります。トップマネジメントのビジョンは10年くらい先を見ていることが多く、経営企画は3~5年の計画を1年ごとに確認して見直すという流れです。事業企画よりも組織体制や人事に関わる問題点を取り上げることが多くなります。

どちらも高いスキルと能力を求められる職務ですが、事業・経営を幅広く理解することができ、プロフェッショナルとしての成長を実感できるのが魅力です。どちらも実行計画まで含む場合には、多様な課題に取り組む必要があり、難易度の高い業務となります。

また、事業企画と経営企画は企業活動の中でも全体的な視野を求められる業務なので、他のポジションから同ポジションに就くには、必要なスキルと経験をどうやって身につけるかが課題になります。キャリアデザインとしては、企業内を水平に動きながら経験を積むことが大切です。

・マーケティング→営業企画→事業企画→経営企画

といったキャリアパスが分かりやすい例ですが、

・営業→カスタマーサクセス→商品企画→事業企画
・プロジェクトリーダー→事業戦略→コンサルティングファーム→経営企画

といった複合的なキャリアパスも想定できます。

次のキャリアとしては、転職や起業を通してさらに高い企画業務を経験する、またはコンサルティングファームへ進むケースも多いようです。

さらに、事業企画や経営企画は、他の職種よりも経営職や独立起業へキャリアを歩むケースが多く、将来「会社経営をしたい」「起業したい」という方のステップアップとしてもおすすめの職種でしょうか。

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>経営企画へのキャリア・適性・大変な業務に関する記事

経営企画部の仕事は本当に「花形」なのか?【生の声】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/corporateplanning_real

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今回の記事では、「事業企画」と「経営企画」の違い【必要なスキルと経験、年収からキャリアパスまで】をご紹介しました。

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