システム開発プロジェクトには必ず登場するPM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)にはどのような違いがあるのでしょうか。どちらもプロジェクトの進行管理・監督を行うことに変わりはありませんが、担当範囲や役割、評価ポイントなど各側面から違いが見て取れます。
今回の記事では、職種や役割としてのPMとPLの業務内容や評価のポイント、思考の違いやスキル、キャリアパスや年収などについて比較します。
【目次】
- PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の「役割・業務内容」の違い
- PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の抱える「KPI」や「評価ポイント」の違い
- PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)が仕事に取り組む上での「思考法」の違い
- PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)に「必要なスキル」と「次のキャリアパス」の違い
- PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の「年収」の違い
PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の「役割・業務内容」の違い
PMの役割は「プロジェクトの管理項目を計画し、実行状況を監視」することで、PLの役割は「プロジェクトの管理項目を実行し、プロジェクトを進めること」です。PMが計画を立てて、PLがそれを実行。実行後の状況を、立案者であるPMがチェックするという役割があります。
それぞれの具体的な業務内容を解説するので、見ていきましょう。
PM(プロジェクトマネージャ)の役割は、プロジェクトの管理項目を計画し、その実行状況を監視していくこと
プロジェクトマネジメントといえば、かつてはQuality(品質)、Cost(原価)、Delivery(納期)の各目標に対してプロジェクトをゴールに導くことを指していました。もちろん、QCD管理もプロジェクトマネジメントの重要な要素ではありますが、PMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系)によると、そこに至るプロセスもコントロールするため、管理する対象は多くなっています。
QCDでは下記のようなことをゴールに設定しています。
・品質管理(Q)…品質を満たした成果物(設計書やプログラム)を納品すること
・コスト管理(C)…決められた予算内でプロジェクトを完遂すること
・スケジュール管理(D)…定められたスケジュール期間内でプロジェクトを完了させること
PMBOKでは、それらに加え、
・スコープ管理…プロジェクトの作業範囲と成果物を定めること
・要員管理…スキルや単価に応じた人員配置や育成を計画し、必要であれば外部から要員を調達すること
・コミュニケーション管理…会議体や連絡窓口、連絡方法を定め、実行状況を監視すること
・リスク管理…プロジェクトにおけるリスクを洗い出し、評価・監視を行いつつ、リスク顕在化の際に対策を講じること
・調達管理…プロジェクトに必要な製品やサービスの購入や調達を行うこと
・ステークホルダー管理…プロジェクトの関係者を洗い出し、定めたコミュニケーションを実行すること
・統合管理…プロジェクト憲章や計画書を作成し、プロジェクト全体を管理して終結まで導くこと
をコントロールする対象に加えています。
PMは上記のプロジェクトの管理項目を計画し、その実行状況を監視していくのが主な業務内容になりますので、プロジェクトが軌道に乗り始めると、プロジェクト推進の中心人物はPLに移ります。そのためでしょうか、PMについては、複数のプロジェクトを掛け持ちする、というのもよく見られる光景です。
PL(プロジェクトリーダー)の役割は、プロジェクトの管理項目を実行し、プロジェクトを進めていくこと
PLは、上記で述べたようなプロジェクトの管理項目を実行し、プロジェクトを進めていくのが役割になります。
PLが手を動かして設計書を作成したり、プログラミングやテストを行う、ということはあまりなく、プロジェクトメンバに指示を出し、各工程の進捗状況を取りまとめるのが主な業務内容です。
しかし、品質を満たすために設計やプログラムレビューに参加したり、各会議体の資料を取りまとめて会議を開催したり、プロジェクトに必要な製品の購入を手配したり、その業務内容は非常に多岐に渡ります。開発現場では、上級SEが担うことが多い役割となるでしょう。
技術的な責任者でもありますから、問題や不具合が発生すれば率先して解決方法を探る必要がありますし、若年層のプロジェクトメンバへの指導を行う立場でもあります。
大規模なプロジェクトでは、プロジェクトメンバ全ての状況に目が行き届かなくなるため、サブリーダがおかれ、各チームを束ねる役割はサブリーダが担うこともあります。その場合は、サブリーダからの報告をまとめPMに状況を伝える役目を負います。
なお、各管理項目を実行していくのがPLの役割ではありますが、経営層や社外のステークホルダーとのコミュニケーションはPMが中心となって行うことが多いようです。このあたりが、会社での役職に基づいてPM、PLが定められている理由かもしれません。
PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の抱える「KPI」や「評価ポイント」の違い
PMもPLも、評価されるポイントは「プロジェクトがうまくいったかどうか」ですが、何をもって「うまくいっている」「うまくいった」といえるのでしょうか。当たり前ですが、プロジェクトの成功は「計画した予算・工数通りにプロジェクトが完了すること」です。そうでなければ、システム開発プロジェクトで利益を出すことはできません。
「計画した予算・工数通りにプロジェクトが完了すること」をKGI(Key Goal Indicator)とするならば、KPI(Key Performance Indicator)にはどのようなものがあるのでしょうか。
プロジェクト管理における最重要項目はやはりQCD(Quality/Cost/Delivery)になりますので、それに対するKPIの例を見ていきましょう。
・品質管理(Quality)…問題指摘数や解決数
・コスト管理(Cost)…予算達成度やコストダウン達成率
・スケジュール管理(Delivery)…マイルストーンの遵守率
それらの値が目標設定をクリアしていることが、プロジェクトの状況を判断する指標になります。
プロジェクトにおいては、PMが作成した計画に基づき、PLが実行し、PMが実行状況を監視します。問題が発生すればPM、PL共に解決のために協力して対応します。PM、PL共にプロジェクトを成功に導くことがゴールですので、KPIなどの目標設定に関しては、PMにもPLにも違いはありません。
PM(プロジェクトマネージャ)は、「プロジェクト計画のスコープ精度」「リスク管理」なども重要
ただし、評価されるポイントとしては、PMとPLで若干違いがありそうです。
先にも述べた通り、PMは複数プロジェクトを掛け持ちすることもあるため、評価対象となるプロジェクトの数が多くなることはあり得ます。
また、プロジェクトスコープや計画はPMが作成しますが、スコープが頻繁に変更されてはプロジェクトはうまく推進できません。あまりに頻繁に変更があると、ステークホルダーとのコミュニケーションの取り方や計画の立て方に問題がある可能性があります。そのため、プロジェクト計画におけるスコープ精度などはPMの評価ポイントの範囲ということになりそうです。
他に、リスク管理についてもPMが中心となって管理すべき項目でしょう。リスクが顕在化すればPLも力を合わせて対応に当たりますが、リスクが顕在化していないかどうかを監視するのはPMの役目です。
リスクは顕在化しなければ特に対応が必要になることもないため、プロジェクト管理では後回しにされがちな項目ですが、早めにリスクを把握し対策を講じておくことは、PMの腕の見せどころであり、評価されるポイントであると言えるでしょう。
PL(プロジェクトリーダー)は、「若手メンバの育成」や「急な技術的問題への対応力」なども重要
PLに関しては、プロジェクトメンバと接することも多く、若手メンバの育成など、一見プロジェクトの成果と関係ない部分も評価対象に入ってきます。それらは、PLとしての評価項目というよりも、会社の人事評価項目になっているケースもあります。
また、PLは技術リーダとしての位置付けもありますので、プロジェクトチーム内での相談役としての役割も求められます。開発業務において直接成果物(設計書、プログラムなど)を作成する機会は少ないかもしれませんが、いざ手を動かせばチームメンバ以上のパフォーマンスを発揮できる、という人でなければ相談役にはなれません。
いざ問題が発生した場合に、問題解決能力を発揮し、プロジェクトを推進できる突破力があるかどうかが、PLの評価されるポイントとなるでしょう。
PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)が仕事に取り組む上での「思考法」の違い
PM(プロジェクトマネージャ)はプロジェクトの先を読んだり、リスクを想定したりする「想像力」が大切
PMの主な仕事はプロジェクトの管理項目を計画し、実行状況を監視していくことですが、どちらも先を読み、想像する力が大事になります。
各ステークホルダー(クライアントやユーザ、プロジェクトメンバ、協力会社など)が納得できる計画を立てるためには、それぞれが置かれた立場を想像し、どのような作業がどのような順序で進められるのかをシュミレーションできなければいけません。何となくテンプレートの通りに計画を作成するだけでは、プロジェクトはうまく進みません。
また、プロジェクトの特性や状況に応じて、どのようなリスクが潜んでいて、リスクが顕在化した際にはどのような対応を取るのかあらかじめ考えるのもPMの仕事です。
まだ発生していないにも関わらず、どのような問題が発生し得るかを考えるのですから、想像力を駆使できるかが非常に大事な要素になってきます。
PL(プロジェクトリーダー)はプロジェクトを計画通りに完了させるための「リーダーシップ」が大切
PMには想像力が必要ですが、PLにはプロジェクトメンバを率いるリーダーシップが必要です。「計画した予算・工数通りにプロジェクトを完了させる」という目標達成のために個人やチームの行動を促し、その方向へ導いていく牽引力が大事な要素です。
リーダーシップを発揮するためには、どのような思考が必要でしょうか。どんなにPLに能力があったとしても、ひとりでプロジェクトを完遂することはできないのです。いかにプロジェクトメンバを動かすか、やる気を持って自主的に動いてもらうかを考えていかなければなりません。
PLにはプロジェクトメンバに信頼してもらえる誠実さや、メンバを信頼して任せる胆力、メンバに動機付けを与える力があることが重要な資質になってきます。自分が力を発揮するよりも、チームメンバが力を付与される環境を整える、利他的な思考が必要でしょう。
PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)に「必要なスキル」と「次のキャリアパス」の違い
PM(プロジェクトマネージャ)はステークホルダーとの関わりが多く、企業の課題発見・解決スキルが磨かれ、ITコンサルなどのキャリアに繋がりやすい
当たり前ですが、PMに必要なのはプロジェクト管理のスキルです。PMを目指す人やPMになった人は、PMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系)を学ぶのがプロジェクト管理のスキルを手に入れる一番の近道になるでしょう。
PMBOK単体を学ぶのも良いですし、情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャ資格やPMP(Project Management Professional)などの試験勉強を通じて知識を得るようにすれば、資格取得と合わせて一石二鳥です。
日本企業においては、まずPLを数年経験し、その後PMになるというキャリアパスが一般的です。本来、PLやPMは役割を指しており、どちらも同等の職種であるはずなのですが、PLからPMに昇格するというようなキャリアパスを設定している企業が多いです。
PMになった後は、そのままPMとしてのキャリアを重ねるケースもありますが、経験を積みITコンサルタントへのキャリアパスを歩む場合も見られます。ステークホルダー等多くの関係者と接する機会が多いPMは、企業の課題発見や解決スキルが磨かれており、コンサルタントに近い位置にいるからでしょう。
開発プロジェクトにおいて、PMを自社ではなく外部から調達する、というケースも多少は存在します。PMを専門にアウトソーシングする企業に所属し、案件ごとに様々な企業でプロジェクトを管理するというキャリアもありそうです。様々なプロジェクトを経験できる半面、その都度新しい客先で結果を出さなければなりませんので、プロジェクト管理のプロフェッショナルとしての姿勢が求められます。
PL(プロジェクトリーダー)は幅広い技術的知識を求められるため、自分の得意分野を生かして特定分野のスペシャリストへのキャリアが広がりやすい
PLに必要なのは、技術的スキルが第一です。プロジェクトを牽引するPLには、技術リーダとしての側面もあるため、開発プロジェクトに必要な技術をまんべんなく身につけていなければなりません。
ただ、PLになるまでにプロジェクトメンバとして経験を積んできているはずですので、プログラミングや設計のスキルは既に持っていると思われます。そのため、もっと幅広くネットワークやサーバなど関するインフラストラクチャに関する知識、SLA等、非機能要件に関する知識、アーキテクチャに関する知識なども磨いていくべきでしょう。
各製品やコンポーネントの深い部分の知識は各担当やスペシャリストに任せるとしても、議論に参加でき、問題発生時には解決策を提案できる力が求められます。
その上でチームメンバをまとめるコミュニケーションスキルも大事になりますし、PMとの連携を考えるとプロジェクト管理に関する知識も必要です。プロジェクトを推進する実行役として、一番幅広いスキルが求められるのはPLかもしれません。
PLになるまでには、様々な開発プロジェクトで経験を積む必要があります。まずプロジェクトメンバとして業務に携わり、サブリーダーやチームリーダーとしての経験を積んだ後にPLになるというのが最も一般的なキャリアパスでしょう。
PLを経験した後は、会社のキャリアパスに準じてPMになるというのが定石ですが、DBやネットワーク、セキュリティなどのスペシャリストを目指すか、ITアーキテクトなどシステム開発のスペシャリストにキャリアチェンジする、というケースも考えられます。
幅広い分野の知識を求められるPLを経験することによって、自分の得意分野や、自分のやりたいことに気づいた時は、ある特定の技術に明るいスペシャリストを目指すのも十分あり得る選択肢です。
PM(プロジェクトマネージャ)とPL(プロジェクトリーダー)の「年収」の違い
PMとPLは役割であり、本来上下関係ではありませんが、会社では役職で決まっているのも実態です。一般的には、PMの方がPLよりも年収が高い傾向があります。
PM(プロジェクトマネージャ)は平均で年収800万円
実際の求人情報を確認すると、PMの年収は600万~1,000万円と、平均で年収800万円程度であることが分かります。1,000万円を超えるケースは、入社後に経験を積んだ後の他、専門職としてPMのアウトソーシング企業に所属した場合などが想定できるでしょう。
PL(プロジェクトリーダー)は平均で年収500万〜700万円
PL(プロジェクトリーダー)は平均で年収500万〜700万程度です。リスク管理を含め、プロジェクト全体を管理するPMの年収水準よりは低くなりやすいものの、決して低年収ではなく、キャリアアップしたい人におすすめの職種と言えます。
※年収は企業によって異なり、詳しくは非公開のケースも多いため、ぜひお問い合わせください。
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プロジェクトマネージャー(PM)に向いている人、向いてない人の特徴
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今回の記事では、PMとPLの違いについてご紹介しました。
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