プロジェクト・マネージャー(PM)として数年働き一旦は年収が上がったものの、その後なかなか年収が伸びないという声をよくお聞きします。
そこで、今回の記事では、SIerで年収1,000万円以上など、比較的高い収入を得ているPMの方々の話なども参考に、PMとして年収を順調に上げている方に共通するスキル・マインドについてご紹介します。ぜひ一例としてご参考ください。
【目次】
- 責任者としての役割を担う
- 複数のプロジェクトやロールを兼任
- PMP資格の取得を推奨
- お金に関するスキルは必須
- ギブバック活動に積極的に参加する
- Tier1の大手SIerなど高利益のプロジェクトを扱えるフィールドに行く
- 実績の派手さよりも、なかなか皆がやりたがらない仕事も臆せずこなす責任感のある挙動
責任者としての役割を担う
ご存じの通り、一般的に、責任あるポジションは高収入と言われるため、プロジェクトの責任者であるPMはITSやITAなどの他の職種に比べて高収入と思われるかもしれません。しかし、実際は職種そのものが年収に直結している訳ではなく、あくまで本人が会社にどう責任を持っているか次第で年収が変わってくるというのが実情です。
PMは責任者と言っても、基本的にその責任範囲はあくまでプロジェクトに対するものです。
一方、お客様にプロジェクトとしてサービスを提供する際は、会社として責任を果たさなければなりません。例えば、プロジェクトを始める前には、自社やお客様の利益となるようなビジネス目標を立てた上でソリューションを提案し、契約をいただきます。そこでは幾らコストをかけ、幾ら収益を得られるか、といった判断やそれに対する数字的な責任が発生します。プロジェクトが始まった後も、場合によってはプロジェクト単体でハンドリングできない問題を会社として解決する必要があります。組織を超えた協力が必要な場合もあり、その際は組織的な責任を持った対応も必要です。
高収入のPMは、会社組織上これらの責任の一端を担っていることが多く、その場合は単なるプロジェクトの管理だけに留まらないのです。
例えば大手企業向けの運用アウトソーシングのような何年にも及ぶ大規模なプロジェクトであれば、プロジェクト全体を統括するPMというだけでもそれ相応の収入となることが多いのも事実です。プロジェクトの規模が大きければ契約金額もそれ相応となり、配下のメンバーも多くなります。PM自身に人事上や組織上の責任は無くても、ビジネスや組織へのインパクトが大きければそれだけ責任ある行動や結果が求められますし、お客様も責任者として期待を寄せる事になるためです。結局、責任範囲はプロジェクトに対するものですが、担当するお客様とのビジネスに対する責任の一旦を担うこともあるため、プロジェクトの遂行に加えて営業的な活動も行うケースがあります。
複数のプロジェクトやロールを兼任
大手SIerの感覚では、契約金額の規模で言うと、年間数千万円程度のプロジェクトであれば、コストを差し引いた最終的な利益は会社から見れば実はそれほど大きくはありません。予算で言えば一般的には中〜大規模なプロジェクトではあるため、PMは高収入を得ていると考えられがちですが、その程度の予算規模のプロジェクト管理を単体で続けていても、自社に大きな利益をもたらしていると言うには少し足りません。
数字的にどの程度自社のビジネスの利益に貢献しているか、という指標が大切です。そのため、高収入のPMは一つのプロジェクト管理をしているだけではなく、複数プロジェクトを並行して管理していたり、PM以外のロールを兼任していたりすることが多いです。
単純な掛け算の問題です。とはいえ、ベテランのPMであっても全く関係のないプロジェクトを幾つも兼任していてはさすがに手が回りませんので、例えば類似のプロジェクトを束ねるプログラム・マネージャーの様な立場であったり、特定のお客様のみを専任して担当したり、ある程度は纏まりのある単位で仕事をしています。あるいはPMとしてプロジェクト管理をしつつ組織的なマネージャーも兼任していることもあれば、時にはPMだけではなくITSやITAとしても活躍していることもあります。
決してPMの仕事一本で高収入を得ることが難しいとお伝えしたい訳ではありませんが、結局、収入は自身がどれほど会社の利益に貢献しているかで決まります。プロジェクトは予め予算が決まっており、後になって利益が増えていくことは殆どありません。従って、限られた予算で高収益を上げるということを考えれば、限られた工数で高いパフォーマンスを発揮するという発想が必須です。
PMP資格の取得を推奨
まずは自社あるいは転職しようとしている会社の昇進の条件をチェックするのが先決ですが、大手企業ではPMPの取得がPMの昇進の前提条件の一つになっている場合も多いです。PMPを取得すれば昇進して年収が上がるという訳ではありませんが、逆にどれだけPMの経験が豊富でもPMPを取得していないため昇進できないこともあります。
昇進に関係なければ、年収を上げるという観点では必ずしも取得する必要はありませんが、PMPはPMとしてキャリアを歩む上での知識が問われる試験であり、出題元のPMBOKはPMの共通認識として理解しておくべき事項の塊であるため、本格的にPMを続けるのであれば完全に避けて通ることはお勧めしません。
PMは特に資格がなくてもなれますが、高収入を得ているPMの殆どがPMP取得者という声もあります。PMの登竜門と言うには少し大袈裟ですが、「きちんと勉強すればそれほど高難度でもない」という意見も多いため、今後のキャリア形成の一環として取得を目指すのがよいでしょうか。
また、PMP以外には、ITIL Foundationの取得も重要という声をよくお聞きします。プロジェクト管理と言うよりITSM全般の分野の資格ですが、実はこれもPMの昇進の前提条件の一つとなる場合があるためです。多くのプロジェクトは何らかのシステムを導入すれば完了ですが、ITシステムのライフサイクルは運用フェーズが最も長いため、うまく運用に乗せるためにはITSMの知識は必須と言えます。
プロジェクト解散後にトラブル無く運用できていれば、またPMとして次のプロジェクトのチャンスが巡ってくることもあり、システム運用を理解しておいて損はないでしょうか。
いずれにせよ資格は付随的なものと捉え、資格取得に躍起になる必要はありませんので、まずはあくまでPMとしての経験を積み重ねることを優先すべきでしょうか。
既に業務上の実績が充分で昇進間近になった際など、「本当に取得が必要なタイミングになった時に、上司がさりげなく教えてくれた」というケースもあるようです。
お金に関するスキルは必須
ご存じの通り、PMとして経験を積むにつれて、コスト管理やサプライヤー管理など、お金の管理をする場面に遭遇する機会が増えていきます。
契約時点で既に予算やコストが概ね決まっていることが殆どですが、それでもまずは何にどれほどのコストがかかっているかなどを把握し、金銭感覚を養っておくことも重要でしょうか。
営業や経理など会社組織でお金の勘定に関わる職種は他にありますが、実際の現場で何にどれほどコストが必要か、逆に必要でないか、肌で感じながら仕事をできるのはPMです。まずは複数プロジェクトを経験する中で自身のプロジェクトの現状を理解するところから始め、毎回予算通りにプロジェクト遂行できたか都度振り返ることが大切でしょうか。
コンティンジェンシー予備などを切り崩さずに予算通りにプロジェクトを遂行できたかどうかがPMの評価基準の一つであることもあり、今後、提案活動の一環として別のプロジェクトの見積もりを行うこともあります。
そのためには限られた予算をどこに充てれば最大限のリターンがあるか常に意識しておく必要があり、どこまでなら切り詰められるかの限度も知っておく必要があります。いずれ責任ある立場になれば金銭面で責任を負うこともありますし、何よりも会社の損益に直結するため、高収入を目指すのであれば会社組織の中のお金に関する知識は必ず身につけておくことが重要だと言えそうです。
ギブバック活動に積極的に参加する
PMは自身のプロジェクトを成功裏にクローズさせることが第一目標ですが、プロジェクトだけではなく、自社のPMコミュニティや他プロジェクトへの貢献も重要という声をよくお聞きします。
他のPMへ横展開することで同じ過ちを繰り返さないようにしたり、ベストプラクティス的な内容をシェアすることで組織全体の効率を上げたり、ということが目的のようです。
大手企業であれば全社的なコミュニティ活動が行われていることが多いため、積極的な参加をおすすめします。ビジネスへの直接的な貢献ではないですが、ギブバック活動は組織を超えて自身の存在感を高めるチャンスでもあり、この様な場でどう貢献したかということも評価基準の一つにあるケースも多いでしょうか。
難しいプロジェクトのどんな課題をどう解決したか、という内容をシェアできれば一番良いですが、そうでなくとも、まずは些細なことでもよいのでどんな工夫をして乗り越えたか、などを発信するのもプラスに働きます。
逆に、他の経験豊富なPMから多くの知見を得ることもできます。特に高収入のPMの方々はこういった活動に積極的に参加していることが多い印象です、そのため本人から直接話を訊ける絶好のチャンスとも言えます。日頃の業務だけでなく、コミュニティをうまく活用して活動の場や人間関係を広げることも高収入への一歩でしょうか。
Tier1の大手SIerなど高利益のプロジェクトを扱えるフィールドに行く
ご存じの通り、PMは営業職の様に何かを売れば売るほど会社の利益になる訳ではなく、予め決められた契約金額や利益のもとで仕事をします。すなわち、数字だけで言えば、結局は担当するプロジェクトの利益以上の利益を上げることはできません。
したがって、単体にせよ複数を兼任するにせよ、それなりの利益のあるプロジェクトを担当できることが必要です。
年収1,000万円程度となると、年間で億単位の契約金額のプロジェクトのPMを継続してようやく手が届くかどうかどうか、といったところでしょうか。多少の前後はありますが、一つの目安として、この規模のプロジェクトをキャリーすることを目指すとよいかもしれません。
しかし、この様な大規模なプロジェクトはSIerでは大手企業のお客様が中心となるため、中小規模のSIerに所属しているとなかなか担当できないのが実情です。そのため、年収にこだわるのであれば、大規模なプロジェクトを担当しやすい大手SIerや大手企業で働くことをおすすめします。
ただし、大手外資系SIerでPMになれば30代で年収1,000万円を超えると想像する方も多いですが、必ずしもすべてのPMが高年収とも限りませんし、年収1,000万円ともなれば、それ相応にビジネス上の利益に貢献しているなど、ただPMを続けているだけではなかなか到達しないのが実情です。
また、大企業はライバルが多く、プロジェクトへのアサインが希望通りにならず、自身の努力だけではどうにもならないこともあります。
実績の派手さよりも、なかなか皆がやりたがらない仕事も臆せずこなす責任感のある挙動
例えば大手SIerでは、マネージャーなどの責任者となれば年収1,000万円は超えます。完全なライン・マネージャーではなくPMとマネージャーを兼任して活躍している人も多数いますので、そういったポジションを目指すのも一つの手でしょうか。
ただし、ラインマネージャーなどは手を挙げれば誰でもなれる訳では当然なく、会社が責任を負えると判断できるかどうかが重要です。その様な活躍をしている人はPMとしての経験が豊富ということもありますが、それだけではなく、随所で責任ある行動を積み重ねています。
特に、顕著な実績を上げたかどうかも大切ですが、それよりも、どれだけ多くの人に信頼されているか、という点が重視されるようです。
例えば、ただプロジェクトを成功裏にクローズするだけではなく、常にお客様や関係者への気遣いを忘れなかったり、トラブルが発生した際は諦めずに最後まで解決まで主導したり、他者や組織のために尽力している方が当てはまるでしょうか。
また、既にトラブルに見舞われてしまった他のプロジェクトの立て直しを成功させたり、若手の育成に積極的に参画したり、自身の普段の仕事の範疇を超えて、社内の育成や組織の成長に貢献してきた方も多い印象です。共通しているのは、なかなか皆がやりたがらない仕事も臆せずこなしてきているということでしょうか。
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<PMのキャリアに関する記事>
SE・PMのキャリア形成に人気の資格とその実情
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/qualification_sepm
「二次請けSIer・40代エンジニア」のコンサル転職事情について
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/40sier
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今回の記事では、SIerで年収1,000万円以上など、比較的高い収入を得ているPMの方々の話なども参考に、PMとして年収を順調に上げている方に共通するスキル・マインドについてご紹介しました。
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