SIerのプロジェクトマネージャ(PM)として10年以上経験を積んできたものの、この先どういうキャリアを選ぶべきか、迷っているという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、プロジェクトマネージャからのキャリアパスとしてご相談の多い、
・CTO(Chief Technology Officer、最高技術責任者)
・CIO(Chief Information Officer、最高情報責任者)
・CDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者)
の3つについて、それぞれどのような求人があり、どのようなスキル・経験が求められているのか、またエンジニアから上記CxOの転職事例等をご紹介します。
【目次】
PMからCTOへのキャリアパス
まずはCTOへのキャリアパスからみていきましょう。
CTOに求められるスキル、経験
CTOに求められるのは、開発現場におけるマネジメント経験、社内におけるロールモデルとしての役割です。最新の技術動向に詳しいことや、社内外のエンジニアに認められるだけの技術力、影響力が要求されます。
SIerに就職後、起業して経営を経験したエンジニアや、ベンチャーでいちから組織作りを経験したエンジニア、コンサルティングファームに転職してコンサルタントの立場から経営の経験を積んだうえでCTOになるといったキャリアパスがあります。
会社の顔として知名度の高いCTOは、社外のCTOとして招聘されるケースも多く、人脈と、それを築くコミュニケーション能力があれば、仕事の幅をどんどん広げられます。
また、CIOやCDOにはあまり見られない、CTOの求人や転職後のキャリアパスの特徴として、コーディングや手を動かす場合があるというのが挙げられます。マネジメントもやりたいが、自分でも開発の第一線でものづくりをしたいというエンジニア嗜好の方は、CTOを目指すのがよいかもしれません。
社内でCTOに就任した事例(内部昇格の事例)
(例1)
・30代男性。大学卒業後、新卒で入社。Webサイトの構築、アプリ開発、API刷新AWS導入
⇒初のCTOに昇進。150名のエンジニアを率いて技術基盤の刷新を担当。
・30代男性。大学卒業後、情報・通信系の企業に入社。ECサイトや決済システムの構築に携わる。
⇒金融部門のテクニカルディレクターを経てCTOに就任。
転職でCTOに就任した事例
(例1)
・40代男性。大学卒業後、大手消費者金融に就職。システム部門に約10年従事した後、保険会社へ転職。
⇒IT統括本部の副部長を務めた後、コンサルタントを経て生命保険会社のCTOに就任
(例2)
・30代男性。大学院でプログラミングを経験し、修了後コンサルティングファームに入社。事業戦略立案、業務改革コンサルティングに従事。
⇒CIOとしてインターネット企業に転職。開発組織のマネジメント、開発体制の整備に取り組む一方で、自らも開発を行う。
(例3)
・30代男性。大学卒業後、SIerを経てコンサルティングファームで証券システム開発、EdTechの立ち上げに関わる。
⇒エージェントを通じて人材派遣業に転職しCTOに就任。
(例4)
・30代男性。大学でAIを研究し、大学院修了後SIerへ。会計システムのチームリーダーを担当。
⇒ベンチャーを共同創業しCTOに就任。
このように、CTOの求人は、経営刷新や組織・事業の改革がミッションであることから、業務としてはIT戦略の提案・実行、組織づくり、エンジニアの採用、技術選定などがあり、チームビルディング経験や、前職でのIT戦略に関わった経験、高い開発技術が求められる傾向にあります。
参考:<CTOの求人例1>物流業界CTO 年収800万円〜1200万円
<業務内容>
・エンジニアの採用~教育~マネジメント
・エンジニア評価制度の構築~運用
・技術選定・技術戦略の提案
・技術広報(技術ブログ運用、イベント登壇)
・その他、組織の成長戦略の企画・実施
※コーディングをすることもあります
<必須要件>
・エンジニア組織のマネジメント経験
・エンジニアの採用経験
<歓迎要件>
・Webサービス開発経験
参考:<CTOの求人例2>インターネット企業CTO 年収1000万円〜1500万円
<業務内容>
・技術部門の立ち上げ~体制構築
・プロダクトの方針策定~意思決定
・ツール開発のPM
<必須要件>
・Webサービス~プロダクト開発経験
・チーム開発経験
・プロダクトマネージャー/プロジェクトマネージャー経験
<歓迎要件>
・採用活動をリードした経験
・組織制度の策定経験
・チームビルディングが出来る方
・リードマネジメントができる方
・プロダクト視点で技術選定できる方
・高いコミュニケーション能力のある方
・論理的思考力のある方
PMからCIOへのキャリアパス
次にCIOへのキャリアパスを見ていきましょう。
CIOに求められるスキル・経験
CIOは、社内のインフラやセキュリティを支え、経営に貢献する役職です。技術広報的な役割を求められることもあるCTOと異なり、あまり表に出ない、縁の下の力持ち的な存在です。
また、プロジェクトマネジメントなどSIerで培ってきたスキルをそのまま必須条件として提示する企業も多く、SIerのキャリアパスとしては、一番ギャップが少ないといえるかもしれません。
また、転職事例を見ると、年齢層が比較的高めという特徴もあります。SIerやコンサルで経験を積んだ後、経験の少ない若い人材が多いベンチャーに移り、ITのスペシャリストとしてバックグラウンドを支えるというキャリアパスが考えられます。
また、企業でのセキュリティポリシー策定や内部統制の経験、高いセキュリティ技術を要求される金融系のシステムに携わった経験が歓迎されます。
最近の傾向としては、新型コロナウイルスの影響でテレワークを推進する企業も多く、CIOとして社内のテレワークをリードしてほしい、環境を構築してほしいというニーズが高く、テレワーク関連のツール導入経験なども採用において求められるケースが増加しています。
社内でCIOに就任した事例
(例1)
・30代男性。大学院在学中からマーケティング会社でデータ分析を担当。新卒入社。
⇒新部門の立ち上げを経験し、同社のCIOに就任。
(例2)
・30代男性。米国の大学を卒業後、大手SIerでミドルウェアの研究開発、金融システム開発に携わる
⇒CEOと一緒にベンチャーを創業。テックリードを経てCIOに就任。
転職でCIOに就任した事例
(例1)
・30代男性。大学卒業後、大手銀行で法人営業を経験。
⇒経営企画・研修企画を担当後、ベンチャー企業にCIOとしてジョイン
(例1)
・50代男性。コンピューター関連企業に入社後、コンサルティングビジネス立ち上げ、オペレーションセンター構築支援、社内システムの構築運用に携わる
⇒ソフト開発会社に転職、セキュリティアドバイザーとして活躍後、AIベンチャーのCIOに就任
(例3)
・50代女性。コンピュータ関連企業に入社後、銀行システム開発を担当。外資系企業に転職し、日本チームの社内システムを統括
⇒取締役を経験後、ヘルステックベンチャーのCIOに就任
このように、CIOの求人ではITによる経営戦略や事業計画の策定がミッションとして挙げられることから、業務としては、IT人材の育成や予算管理、セキュリティ対策などがあり、PMとしてプロジェクトを遂行した経験や、セキュリティに関する知識・経験、社内システムの運用・構築経験を求められるようです。
参考:<CIOの求人例1>物流会社CIO 年収1000万円〜1500万円
<業務内容>
・情報システム戦略の策定・推進・評価
・業務の見直し、投資管理
・IT人材育成、支援
・ITガバナンス、ITマネジメントについて関係部署と連携し、企画・推進
・情報セキュリティ調査、審議、経営トップへ報告
<必須要件>
・大手グローバル企業(事業会社)におけるCIO又はそれに準ずるポジションの経験者
・ビジネスレベルの英語力
参考:<CIOの求人例2>精密機器メーカーCIO 年収800万円〜1500万円
<業務内容>
・経営陣に対するIT教育、評価
・在宅ワークの推進
<必須要件>
・自社員へのITリテラシー向上に向けた教育の施策立案・実行経験
・Eコマースシステム推進経験
・基幹システム統合経験
・在宅ワーク推進における、環境整備経験
<歓迎要件>
・英語力
PMからCDOへのキャリアパス
最後にご紹介するのは、CDOへのキャリアパスです。
CDOに求められるスキル・経験
CDOは、求められる役割がDXの推進とはっきりしており、かつこれまでにない新しいものを求められるため、社内で昇進するケースよりも、既に社外でDXの推進にかかわった経験がある方を採用したいというニーズがあります。
求人は多くありませんが、専門領域ということもあり、提示される年収も高めです。技術力よりも、マーケティングや営業など、幅広い業務に関する知見を求められる傾向があり、SIerからコンサルに転職し、幅広い分野でDXの経験を積むというキャリアパスも考えられます。
また、デジタル推進のためには、社内ですべて完結するのではなく、社内外のデジタル技術を上手に取り入れていくための、高いコミュニケーション能力や柔軟性が求められる傾向にあります。希少価値が高い人材のため、CDOを経験後、別の会社でもCDOを打診されるなど、引く手あまた。今、注目の役職といえるでしょう。
転職でCDOに就任した事例
(例1)
・40代男性。大学卒業後、外資系企業の日本事業責任者を経て、美容系メーカーのCDOに就任。
⇒人材派遣会社に転職しCDOに就任。組織・事業全体のDXを推進。
(例2)
・50代男性。商社に新卒入社し米国に駐在後、現地のスタートアップに転職。事業開発や経営に関わる。
⇒金融系企業のCTOに就任。研究所を立ち上げてグループ全体のDXを推進。
(例3)
・40代男性。米国の大学卒業後、ソフト開発会社に入社し、マーケティングのマネジメントを担当。MBAを取得。
⇒大手外食企業のCDOとして同社のデジタルマーケティングを推進した後、別の食品メーカーでCDOに就任。営業、マーケティング、バックオフィスなどのDXを推進。
このように、CDOの求人はDXの推進がミッションかつ、業務内容でもあることから、前職ではCDO、あるいはデジタルアーキテクトとしての業務経験、そしてDXの推進を加速させるため、社内外における高いコミュニケーション能力や柔軟性を重視する傾向にあります。
なお、CDOについてはこちらの記事も御覧ください。
参考:デジタル専門の経営人材「CDO(Chief Digital/Data Officer)」の設置背景・役割(CIO/CTOとの違い)・年収・キャリアパスについて
参考:<CDOの求人例1>証券会社CDO 年収1300万円〜1600万円
<業務内容>
・従来になかったサービス、ビジネスモデルをDXで創出
・生産性向上、コスト削減、時間短縮をDXで実現
・業務の見直し、DXによる働き方改革の実践
<必須要件>
・デジタル/IT/業務改善関連機能におけるマネジメント経験
・デジタル領域の戦略立案、業務改善施策の設計
・先端テクノロジーを活用した導入プロジェクト推進経験
<歓迎要件>
・金融業界における業務経験
・証券業務の知識、経験
・高い戦略的思考能力を持つ方
・高い財務/係数感覚を持つ方
・チームプレーヤーとしての高い能力と絶えずポジティブで前向きな態度をとれる方
参考:<CDOの求人例2>専門商社CDO 年収:応相談
<業務内容>
・社内やグループ企業へのDX推進(提案含む)
・クライアント企業のデータ収集~分析
<必須要件>
・IT関連の企画立案経験
・DX、業務改善、生産性向上のいずれかの経験
<歓迎要件>
・プロジェクトマネジメント経験
・コミュニケーションスキル、明るい対応
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今回は、求人例や転職の事例を交え、30代後半からのCTO・CIO・CDOのキャリアパスをご紹介しました。
これらの職種は、そのほとんどが非公開の求人です。CTO・CIO・CDOへのキャリアパスをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。