システム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャ(PM)は主に管理やコミュニケーション業務を担当します。SIerにおけるPMは、どのような項目で評価されるのが一般的なのでしょうか。
プログラマ(PG)やシステムエンジニア(SE)であれば、単位時間当たりの生産STEP数やプログラムSTEP数あたりの不具合件数などで、開発生産性や品質について定量的な評価が可能です。プロジェクトマネジメント業務では、スケジュールやWBS、課題管理表などの管理資料や報告資料などを除けば、PMが何かを生産することはありません。
そこで、今回の記事では、定量的な評価がしにくいPMはどのような項目で評価されているのか、また、キャリアアップできるPMはどのような特徴があるのかについてお伝えします。
【目次】
- 評価されるプロジェクトマネージャーの必須能力とは
- 評価されるプロジェクトマネージャーの実績とは
- 評価されるプロジェクトマネージャーが持っている知識とは
- キャリアアップできるプロジェクトマネージャの特徴
評価されるプロジェクトマネージャーの必須能力とは
PMとしての評価は、プロジェクトマネジメントを実行できる能力があるかどうかで決まります。では、何ができればプロジェクトマネジメントの能力があるということになるのでしょうか。
まず、担当したシステム開発プロジェクトがスケジュール通り、かつ予算内に完了することが一番大きな評価項目です。ただし、予定通りにプロジェクトを完了させるためには、下記のような項目が実行できている必要があります。
人員計画・調達
開発フェーズに合わせて、必要なスキル・経験を持つメンバを適切な人数配置するよう計画し、アサインできること。
スケジュール管理
スケジュールの規模に応じて、概要スケジュール、詳細スケジュールを使い分け、進捗の管理及び関係者への説明ができること。
予算・工数管理
決められた予算内でプロジェクトが完了できるよう、予定工数・実績工数の管理を行い、予算超過の予兆があった場合には早めに対策を打てること。
課題管理
プロジェクト進行中に発生した課題に対して、対応方法と対応期限を決定し、期限までに課題を解決できること。
リスク管理
まだ発生していないが、発生した際にプロジェクトの妨げになるリスクについて、発生した場合の対応方針を決定し、リスクの顕在化を監視できること。
これらの実行状況を評価することが、PMとしての能力を評価することになります。それらに加えて、下記もプロジェクトマネージャを評価するためには重要な項目です。
クライアントへの提案ができること
通常、クライアントからのRFP(提案依頼書)を受けて、営業部門とプレセールスエンジニアなどのSE部隊が連携して提案書を作成していきます。
しかし、クライアントの過去のプロジェクトに携わったPMが自社にいる場合は、クライアントの業務やシステムに精通している立場であることから、PMも提案書の作成に参画します。場合によっては、プレゼンテーションにも参加する場合もあります。
クライアントへの提案において適切に営業部門の支援を行い、無事プロジェクトを受注できた場合は、貢献度に応じてPMも評価される部分となるでしょう。
コミュニケーション能力があること
システム開発プロジェクトにおいて、PMがコミュニケーションを取るべきステークホルダは多岐に渡ります。クライアントはもちろんのこと、プロジェクトメンバや協力会社、自社の上層部などともコミュニケーションを取る必要があるかもしれません。
適切なステークホルダと適切なタイミングでコミュニケーションが取れているかどうかは、PMにとって重要な評価項目です。
また、PMはそれらのステークホルダと単に顔を合わせるだけでなく、進捗会議・報告会議などでコミュニケーションをとることになるため、その進行(作成資料の内容、会議の進行方法)などについても評価対象となるでしょう。
トラブル案件への対応が適切であること
何の問題もなく開発プロジェクトが進行していくということはまれで、残念ながら多かれ少なかれ何らかの問題が発生します。
文字通りシステムトラブルが発生する場合もあるでしょうし、費用面の問題やプロジェクトメンバの離脱など人員面での問題が発生する場合もあるでしょう。
それらトラブルが発生した場合に、適切な対応を行えたかどうかということは、PMにとって重要な評価項目です。
リーダシップを発揮していること
システム開発プロジェクトを完了まで導くことができるかどうかは、PMがリーダシップを発揮できるかどうかにかかっています。
システム構築に必要な技術的な選択、問題があった場合のリスケジュール、要員の配置換えや予算の組み替えなど、様々な場面で判断を求められます。
技術的な選択については、PLやプロジェクトメンバのSEの判断に従うのでしょうが、判断の材料が揃っているか、判断の仕方が適切かどうかについては、PMもリーダシップを発揮して意見を述べていくことになるでしょう。
プロジェクトの重要な局面でリーダシップが発揮できるかどうかは、PMを評価するのに重要な項目です。
プロジェクトメンバの育成ができること
プロジェクト運営にあたり、プロジェクトメンバが成長できる環境を整えることも、PMの大事な仕事です。
プロジェクトに参加するメンバ全てが必要な業務知識や技術を持っているわけではありません。新たに参加したメンバがスムーズにプロジェクトに馴染むことができるよう、引き継ぎやスキルトランスファー、必要であれば研修の計画・実行を行う必要があります。
プロジェクトメンバがきちんと育成できれば、そのメンバはプロジェクト終了後も他のプロジェクトで活躍していくことができます。メンバを育成できるPMは、Slerにとって貴重な存在であるため、評価は高くなるでしょう。
評価されるプロジェクトマネージャーの実績とは
経験プロジェクトの規模
プロジェクトマネジメントの能力やスキル以外だけではなく、実績も重要な評価項目となります。
転職の際には、経験したプロジェクトの実績の方が重点的に評価されるかもしれません。一般的にプロジェクトは規模が大きくなれば大きくなるほど難易度は高くなります。
もちろん、業種やシステム特性によってもプロジェクトの難易度は変わりますが、プロジェクト規模は難易度や費用の推測がしやすいため、評価されやすいということは認識しておいた方が良いでしょう。
大体、プロジェクトの規模または金額は下記のような目安で判断されます。
■小規模プロジェクト:プロジェクトメンバ10人未満
■中規模プロジェクト:プロジェクトメンバ10人以上50人未満または1億円以上
■大規模プロジェクト:プロジェクトメンバ50人以上500人未満または5億円以上
■超大規模プロジェクト:プロジェクトメンバ500人以上または10億円以上
金額については、機器やライセンス費用だけではなく、プロジェクトに参加したメンバを人月換算で計算した費用を含みます。当然、参加メンバ数や費用が多いプロジェクトをマネジメントを評価した経験がある方が、PMとしての評価は高くなります。
成功プロジェクトのマネジメント経験
当たり前の話ですが、成功しているプロジェクト実績が多い方がPMとしての評価は高くなります。成功したプロジェクトは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の要素を満たすことができたかどうかで判断されます。
つまり、ユーザが業務を実施できるだけの品質を保ち、予算内のコストで、予定通りの納期でシステムを納品できたかどうかということです。
ただ成功したということだけではなく、どんなことに気をつけてプロジェクトを運営したか、トラブルの際にどのような対応を行なってプロジェクトを持ち直したのか、きちんと説明できる状態にしておくことが、高い評価を受けるために必要なことです。
失敗プロジェクトのマネジメント経験
PMとして、成功したプロジェクトが多い方が評価されるのは当然のことです。しかし、失敗プロジェクトの経験を語ることができるというのも、PMの経験値を判断するのに大事なことです。
プロジェクトが失敗した要因をどのように分析しているか、その経験を元にプロジェクト運営で心掛けていることは何か、ということに答えられるのであれば、むしろ経験豊富なPMとして評価されるでしょう。
評価されるプロジェクトマネージャーが持っている知識とは
PMが接するステークホルダは多岐に渡ります。それぞれ違う立場の関係者とコミュニケーションを取るためには、時にはプロジェクトマネジメント以外の知識も必要になるでしょう。具体的には、下記のような知識を持っているかどうかが評価のポイントとなります。
IT技術に関する知識
システム開発のプロジェクトを推進するのですから、PMにもIT技術に関する知識は必要です。
設計やプログラミングはSEやPGが担うものの、開発中に発生する技術的な問題や、開発の進捗状況を関係者に説明するためには技術的な知識が必須です。時には、製品選択などの技術的な判断に助言をしなければならないケースも考えられます。
マネジメントはできるけれども技術的なことは何も分からない、というようなPMが高い評価を受けることはあまりありません。
業務知識
PMはシステム開発の上流工程である要件定義フェースからプロジェクトに参加することが多いです。クライアントのニーズを汲み取り、適切な要件に落とし込むためには、クライアントの業務を把握していなければいけません。
もちろん、要件定義より前のフェーズとなる、システム提案や検討からPMが参加しているケースもありますが、そのような場合は既存システムの保守開発にPMが既に関わっており、クライアントの業務を理解していることも多いでしょう。クライアントにとって、IT技術の知識はもちろんのこと、自社の業務や業界の知識を持っているPMというのは、とても頼もしく思われます。
技術力や値段ももちろん大事ですが、「自社の業務を知っている」から○○社に開発を依頼する、というクライアントもいるぐらいですので、業務知識を持っているPMが所属しているということはSlerにとって大きな武器となります。
金融、物流、建設、教育など、今やIT技術が使われていない業界はありません。プロジェクトマネジメントの知識に加えて、何か特定の分野の業務知識に長けているPMは、高く評価され、システム開発プロジェクトで引っ張りだことなります。
経営知識
システム開発プロジェクトにおいて、クライアントからの要望・要件をそのままシステムに反映しても、経営的な効果が上がらなかったというケースも散見されます。システムの改善が、業務で利益を出す仕組みと直結していなかったり、業務を改善するような仕組みになっていなかったりするためです。
単にシステムを作る側の視点だけでシステム開発を請け負うだけではなく、クライアントの業績や業務を改善するような提案ができると、PMとしてのランクが上がります。
もちろん、PMのメインの仕事はプロジェクトマネジメントですので、開発プロジェクトを完遂させることが一番大切なことです。しかし、業界動向や業界のIT技術の利用例などからシステム改善の提案できるPMは非常に高い評価を得られるでしょう。
キャリアアップできるプロジェクトマネージャの特徴
クライアントとの信頼関係がある
PMがクライアントから評価されるということは、クライアントとの間に信頼関係があるということです。
いくらQCDを満たしてプロジェクトを完了したとしても、自社の上層部に気に入られていたとしても、クライアントから「もうあのPMにはプロジェクトを依頼したくない」と思われてしまえば、次の仕事は受注できません。
逆に「あのPMは次のプロジェクトに参加してくれるのか」というように、クライアントからの指名でプロジェクトの打診が来るようであれば、そのPMは自社でも高く評価されます。
Slerにとって、長く付き合えるクライアントが多く存在するということは非常に大切なことです。クライアントからの信頼を得ているPMが自社にいるのは会社にとって力強いことですし、決してそのPMを悪い待遇では扱いません。
プロジェクトメンバとの信頼関係がある
プロジェクトを円滑に運営するためには、プロジェクトメンバの協力は不可欠です。PMは様々なステークホルダとコミュニケーションを取りますが、毎日のように顔を合わせるプロジェクトメンバと良好な関係が築けていなければ、プロジェクトの成功はあり得ません。
プロジェクトの局面によっては、一時的にプロジェクトメンバの稼働が高くなってしまう場合もあるかもしれません。そのような場合は、プロジェクトの状況をきちんとメンバに説明し、納得してもらった上で協力してもらうことが必要です。
どれだけ外部のステークホルダから高い評価を得たとしても、PMに一番近い立場にいるプロジェクトメンバからの評判が悪ければ、上層部は次のプロジェクトをまかせることはできません。
外部・内部のステークホルダ両方と信頼関係を築けていることが、キャリアアップできるプロジェクトマネージャの条件です。
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>プロジェクトマネージャーのキャリアに関する記事
SE・PMのキャリア形成に人気の資格とその実情
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30代後半 SIer PMからCTO、CIO、CDOへのキャリアパス【必要なスキル~年収~転職事例まで】
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今回の記事では、定量的な評価がしにくいPMはどのような項目で評価されているのか、また、キャリアアップできるPMはどのような特徴があるのかについてご紹介しました。
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