DXを成功に導くPoCの「プロセス」と「ポイント」

先端デジタル技術の活用促進が広まり、多くの企業で組織・業務のデジタル化が謳われています。導入前の効果/実現性を検証するPoC(Proof of Concept)を実施する企業も増えてきています。その中で、PoCを実施してみたものの効果がいまひとつわからない、これから何をしていいかわからない、という声もよく耳にします。これまでとは違う新たな技術やデータに関する取り組みであることが多いため、戸惑ってしまうケースが多いようです。
では、PoCの成功に向けて、どのようなポイントを重視すべきなのでしょうか。
今回の記事では、DXを成功に導く前段階の「PoC成功」のためのプロセスとポイントをご紹介します。

【目次】

  1. ①PoC企画・計画の策定
  2. ②ベンダー選定
  3. ③PoC実行
  4. ④PoC結果評価

①PoC企画・計画の策定

<目的の定義>

まずはPoCを実行する目的を定めます。目的を定めてPoCを実施する意義と期待値を設定します。PoCの取り組みを社内で認知/協力してもらうためにも必要になります。
目的の例としては、想定しているユースケースの効果測定(当初想定効果とのギャップ・要因の可視化)と実現性の検証(当初想定していたデジタル技術のカバー可能範囲/要件実現度合)などが挙げられます。

<対象業務の現状分析>

デジタル技術活用の対象となる業務があり、その業務の効率化を目的とした際、PoCの効果測定に向けて現状どれ程の業務時間/工数がかかっているかを明確化しておきます。業務時間に関するデータ抽出や測定を通して必要な数値を取得します。そうすることで、PoC実行後、デジタル技術を活用することで〇時間/〇%の削減が可能と明示でき、実現に向けてステークホルダーの承認を得られやすくなります。

<ユースケースの具体化と対象技術の選定>

目的・対象業務を特定した次は、実際にどのようなケースでデジタル技術を用いるのか、その改善はどのような技術が適切なのかを検討します。
例えば、ユースケースとして金融機関等の与信審査業務へAIを適用し、初期診断業務を自動化することなどが挙げられます(ローン等に対する消費者からの申込に対して、AIが提供された情報を基に本申込へ通す/通さないを判断する等)。
それに対して、どのようなAIが適切なのかを深掘りします。恐らくブラックボックス/ホワイトボックスのどちらかでしたら、ホワイトボックスでなければならないでしょうし、精度は95%以上なければならないかもしれません。このように具体的なユースケースに照らして、どのような技術・どんな性質・度合いまで持ち合わせた技術を用いるかを検討する必要があります。

<評価方法の設計>

上記までの情報が揃ったら、PoCの評価方法を設計します。
PoCを実施する前に、評価方法を明確に定めておくことで、PoC実施方法の設計や実施後の評価測定がとてもスムーズになります。
下記は評価観点と評価方法の例です。

②ベンダー選定

PoC実施にあたって、前述の様にしっかりと企画しても、協業する技術ベンダーの選定を見誤ってしまうと成功させることは出来ません。
では、ベンダー選定にあたって気を付けるべきポイントはどこなのでしょうか。

<“出来る”を見抜く>

先程の様にAIの活用を例に取ると、AIで判断する精度、分析可能対象(カバー範囲)などについては、ベンダーは何でも“出来る”と答えて、まずは足元の受注を目指すケースがあります。本当に出来るのかを見抜くための仕組みを発注者側で用意する必要があり、ベンダー選定時、課題を提示してそれに答えてもらう等の方法があります。発注者側ではデータの準備等の手間がかかってしまいますが、大きなプロジェクトであればあるほど、しっかりしたベンダーと付き合うことが重要なので見極めプロセスも重要視する必要があります。

<体制を見抜く>

ベンダーの会社全体として、対象技術に対する知見・実績があるとアピールするケースがあります。しかし、重要なのは実際にプロジェクトにアサインされる担当者です。担当者がどんなバックグラウンドで、どんな知識・スキルを持っているのか、アサインされる前に面談等を通して把握する必要があります。会社全体として力はあっても、個人までいかに浸透しているかが重要なポイントです。

<価格を見抜く>

ベンダーからの見積価格が本当に妥当なものであるかも見極める必要があります。特にニッチなところですと高めの金額設定なケースがあります。そのため、合計金額に対する内訳(人月単価、サービス提供料 等)を明確に把握することが大切です。加えて、1社の決め打ちではなく、相見積を取得し、他社と比較・交渉することがおすすめです。

③PoC実行

企画・計画~ベンダー選定まで済んだら、いよいよPoCの実行に移ります。
PoC実行の観点では、どのようなポイントに注意すると成功確率が高まるのかをご紹介します。

<綿密な計画立案とコミットメント>

日単位でのタスク・成果物が定義され、いつまでに、何を、誰がするのかを明確にし、それぞれのコミットメントを得る必要があります。特にクリティカルパスを意識します。例えば、誰がPoC実行に必要なデータを準備するのか(そのデータはクレンジング等まで実施する必要があるのか、どれだけの量を用意する必要があるのか 等)、ベンダー側ではデータ受領後、何をいつまでに仕上げてくるのか、ユーザーに試してもらう期間や実施内容は何か等、欠かせない要素のスケジューリングは特に大切です。
先端デジタル技術を保有するベンダーとの協業が必要となるケースが多いですが、ベンダー側に任せっきりになるのではなく、進捗管理・開発内容に関する議論などは綿密に行う段取りにすることも成功確率を上げるためにはポイントとなります。

<体制のコミットメント>

前述の通り、スケジューリングしたところで、それをこなせる人をアサインできなければ実現できません。データの準備1つ取っても、そこでつまずいてしまう企業は多々あります。そのため、例えば、社内でPoCに関連するタスク・データ等に対して知見・経験を保有している人は現業との調整をつけてコミットしてもらうことが重要です。
社内で補えない場合には、コンサルティング会社等の外部の有識者をアサインしてでも補完する必要があります。そこでは、開発ベンダーに上流の検討部分も含めてすべて任せようとするケースも見られますが、そこは要確認ポイントです。もちろん上流~下流まで一手に担えるベンダーもいますが、設計されたものに沿った開発が得意でも、検討・設計部分からは出来ないベンダーも存在しますので、会社・アサインされる人のスキルセットをしっかり見極める必要があります。
また、プロジェクトサイドの体制のみならず、ユーザーサイドの体制も整える必要があります。PoCの評価で一番参考にすべきなのはユーザーの声です。そのため、業務にとても詳しく、実績を挙げている、現場のキーマンに協力を仰ぐことが大切です。そうすることで後々、本格導入となった際にも協力が得られやすくなり、浸透スピードも上げられます。

④PoC結果評価

最後に、①にて作成したクライテリアに沿ってPoCの評価を行います。①の設計時にも気を付けておきたいポイントではありますが、出来る限り定量的に評価することが大切です。よくあるのが、アンケート形式で「大変よくできた」「よくできた」「ふつう」など、アンケート回答者に結果に対する解釈を委ねてしまうケースです。これだとどこからが「よくできた」範囲で、どこからが「ふつう」の範囲なのかが実際にはよくわかりません。そのため、Yes/Noの2択で聞く、もしくは、〇〇%~〇〇%などできた範囲を定量的に示すような評価を行うことが大切です。
また、結果を踏まえて、今後どうするのかのプランニングまで行うことがプロジェクトを頓挫させないためには必要です。その結果を受けて、次はこうする(もしくは終了する)というコンセプトから実際のアクション計画まで練ることで実現性を大きく高めることができます。
そして、PoCの評価結果はステークホルダーにしっかりと理解してもらい、次フェーズ以降の協力も得られるようにしておく必要があります。やはり大きな組織であればあるほど、社員の協力を得るためにはステークホルダーの存在は大切です。導入時の協力・導入後の浸透にはユーザーのコミットメントが必ず必要になりますので、ユーザーに対して影響力がある人への報連相は非常に重要です。

新たに導入する先端デジタル技術であるため不慣れなことが多く、様々なチャレンジが発生することが予測されます。それを予防するための綿密な設計が成功のポイントとなります。PoCの成功には事前の企画を綿密に行い、協業するベンダーの見極め・適切な人のアサイン、PoC実施後の評価・次フェーズのプランニングが非常に重要になります。本稿でご紹介したポイントが何かしらの参考になり、PoCの成功へのお手伝いとなれば大変幸いです。

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今回の記事では、DXを成功に導く前段階の「PoC成功」のためのプロセスとポイントをご紹介しました。
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