PEファンドにおける営業の仕事【他業界の営業から転職する際に活かせる経験やスキル、ポイント】

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多くのPEファンドはビジネスとして運営されているため、事業規模の拡大=ファンドの規模拡大のためには営業活動が必要です。PEファンドでは明示的に「営業職」「営業部」と呼ばれないケースも多いものの、営業にあたる仕事は存在します。

今回の記事では、PEファンドの営業職と他業界から転職する際に活かせるスキル、苦労しがちなポイントなどをまとめました。営業職からのPE転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【目次】

  1. PEファンドの二つの営業
  2. 営業職からPEファンドへ転職する際に活かせる経験・スキル
  3. PEファンドの営業への転職で苦労し得る業務と対策
  4. 営業職からPEファンドに転職するうえでのポイント
  5. 営業職からPEファンドに転職した事例
  6. 営業からのPEファンド転職を成功させるために対策を進めよう

PEファンドの二つの営業

典型的なPEファンドには、営業に近い仕事があり、方向性の観点で大きく二つに分けられます。

・投資先企業向けのアプローチ
・投資家向けの営業

それぞれについて、詳しく紹介していきます。

投資先企業へのアプローチ

PEファンドには、ファンドの投資先を開拓する「ソーシング」を担う機能が必要です。PEファンドは、未上場企業に出資をして、出資先のIPOやM&Aを経て利益を獲得して投資家に還元するのが基本的な役割です。投資先がなければPEファンドは成り立ちません。

そのため、既存の出資先やこれから出資候補先の企業とリレーションを構築する部署が必要になります。特に新興ファンドや規模拡大を目指すファンドでは、PEファンド側から積極的に出資先を見つけなければなりません。

将来有望な企業への出資を取り付けるためには、PEファンドの実績や投資家の多様性、バリューアップに向けたノウハウなどをアピールします。明示的に「営業」とは呼ばれなくとも、活動の実態としては営業職と似た役割が求められます。

一般の事業会社と密なコミュニケーションを取りながら、将来のビジョンや課題の整理、出資後の課題解決に道筋などを提案する仕事は、BtoBなどに見られるコンサルティング営業に近い性質を持ちます。

投資家向けの営業

PEを含むファンドビジネス一般に存在する機能として、投資家向けの営業活動があります。ファンドビジネスは、投資資金を獲得できなければ事業として成り立ちません。先に紹介した企業への出資も困難です。一方で、ただ待っていれば投資家から資金拠出を受けられるわけではなく、ファンド側からの積極的な営業活動が欠かせません。

こちらの方が、PEファンドでは「営業職」の位置付けとなりがちです。実際に転職エージェントなどでも「機関投資家営業」などのタイトルで求人紹介するケースが少なからず見られます。

ちなみに、相対する投資家はほとんどの場合法人ですが、銀行や保険会社などの金融機関、年金、共済や学校法人など、さまざまな機関投資家が該当します。個人でも富裕層であればPEファンドに投資する場合はあります。

新規の投資家を獲得するための営業活動のほか、既存投資家へのパフォーマンスのレポート、増減資対応なども必要です。新規と既存では求められる役割に違いがあるため、大きな組織では双方で別のチームが担当する場合もあります。

営業職からPEファンドへ転職する際に活かせる経験・スキル

PEファンドの営業には、通常の営業職と共通するスキルも必要になります。たとえば次のようなポイントでは、もともとの営業職の経験を活かせるでしょう。
・コミュニケーションスキル
・交渉スキル
・提案/プレゼンテーション能力
・課題解決能力

コミュニケーションスキル

営業職では、顧客との円滑なコミュニケーションによりリレーションを構築し、また深めていかなければなりません。事業会社でもPEファンドでもこの基本姿勢は変わらず、投資家にせよ出資先にせよ、営業先に信頼してもらい、自社の強みや特性を理解してもらわなければ、事業拡大は困難です。

営業職であれば、もともと日常的に顧客とコンタクトを取って関係を深め、売上や利益を拡大する工夫をしてきたはずです。そのため、他社の担当者との人脈形成やリレーションを深める能力を、強みとして持ち合わせています。

交渉スキル

PEファンドではときにシビアな交渉が必要になります。対出資先であれば、資産評価額をもとに出資額を決めるわけですが、企業側は評価額を高く見積もってもらって、少ない出資比率で多くの資金調達を実現したいと考えています。一方で、PEファンドとしては逆に投資額を抑えて出資比率を高め、バリューアップを実現するのが理想です。

投資家に対しても、投資額や配当・報酬の条件などでしばしば交渉が発生します。営業経験があれば、過去の経験のなかでも顧客と交渉して商談を成立させた経験があるはずです。そのような経験や実績は、PEファンドの営業でも生きてくるでしょう。

提案・プレゼンテーション能力

PEファンドでは、難解な内容を理路整然と説明して、相手に伝わるように提案・プレゼンテーションする能力が求められます。提案・プレゼンテーションについても、営業出身であればすでに一定のスキル・経験を有していると期待されます。

たとえば、出資候補先に対しては、PEファンドのこれまでの実績を投資規模やバリューアップの実績などからアピールします。そのほか、PEファンドが描く出資後の企業のビジョンなどを共有する場合もあるでしょう。

内容はしばしば金融やファイナンスが絡む専門的なものになるため、難しいことを端的かつ説得力あるかたちで説明する能力が求められます。

投資家に対しては、PEファンドの投資哲学や実績、投資先の特徴などを説明して、ファンドが投資するに値する魅力的なものであると理解してもらわなければなりません。いずれにしても、過去に顧客への提案・プレゼンテーションの経験がある方が強みを発揮できる部分です。

課題解決能力

出資先向けの営業活動においては、課題解決能力も求められます。PEファンドが出資するような成長途上にある企業は、たいてい何らかの課題を持っていて、さらなる成長の足かせ要因となっています。投資のプロフェッショナルたるPEファンドの出資を通じて課題を解決し、企業をさらなる成長軌道に乗せたいと考えているのです。

そのような企業の経営者を納得させて、出資を受け入れてもらうために、PEファンドのソーシング担当者は企業の課題を分析して、解決に向けた道筋を提案して理解を得る必要があります。

多くの営業職は、顧客(潜在顧客含む)の課題を理解して、その解決策の一環として自社の商品やサービスを提案します。そのため、営業経験があれば一定の課題解決能力が備わっているでしょう。PEファンドで働くときも、課題解決能力がファンドの規模拡大や将来有望な企業への出資に役立ちます。

PEファンドの営業への転職で苦労し得る業務と対策

他の営業職からPEファンドに転職する場合、金融やファイナンス関連の知識習得、業務遂行においてハードルを感じる可能性があります。早期にキャッチアップするためには、転職を見据えて自己研鑽を進めておくのが有効です。

ファイナンスや企業経営に関する知識の不足

ソーシング側に就く場合には、ファイナンスや企業経営に関する知見がないことが足かせ要因となる可能性があります。PEファンドが出資候補先に提案を行う場合、企業価値評価の算定や出資金額の試算、出資後のバリューアップの予測などを立てる必要があります。

高度なファイナンスの知識がなければ業務の遂行が難しいため、ほとんどの営業出身者はキャッチアップを求められるでしょう。

また、PEファンドが出資を行ったのちは、出資先企業に対してコンサルティングをしたり、実質的に経営に参加したりします。そのため、経営者やマネジメントとしての考え方や能力が必要です。

経験については、入社したのちに仕事をこなしながらキャッチアップするしかありません。一方で、知識については自己研鑽である程度習得可能です。本格的にPEファンドを目指す方のなかには、証券アナリストの取得やMBAへの留学などを通じて知見を深める方もいます。

金融や経済に関する知識の不足

PEファンドは金融業の一つであるため、金融および経済の流れを理解しておく必要があります。投資家や出資先との会話のなかでは当然のように経済環境や金融動向の話題が出ます。金利水準や景気見通しなどが、投資家の投資判断やPEファンドの出資判断に影響を与えるケースも少なくありません。

そのため、金融や経済に対して深い知識がなければ、投資家・出資先とのコミュニケーションに支障が出たり、誤った判断により思うように事業拡大に貢献できなかったりするおそれがあります。金融についてはファイナンス同様に専門性を磨く必要があります。

経済については日頃から日経新聞などを読みながら動向を掴むだけでも充分な効果が期待できます。営業活動においては、いまの経済動向が重要になるため、いわゆる大学で学ぶような高度かつ難解な経済理論を知る必要はありません。基本的な知識を習得し、さらに常に最新情報をアップデートする癖をつけておきましょう。

ファンドビジネスの仕組みを知らない

PEに限りませんが、ファンドビジネスはしばしば独特かつ複雑な構造になっていて、未経験者は理解するのに苦労するでしょう。たとえば、ファンドではしばしばSPCといわれる形式上の会社を立ち上げて、そのなかで資金管理を行っています。

投資家や投資先が複雑化すると、ファンド一つで多数のSPCが立ち上がって、複雑に資金が行き来している場合もあります。このようになると、お金の動きを追うだけでも一苦労になり、ファンドビジネスに対する理解が欠かせません。

特に機関投資家向けの営業を行う場合には、ファンドの構造を理解していなければ投資額に対するリターン、報酬計算、配当の説明などに支障が出ます。

転職を進める前にファンドビジネスの基本的な仕組みを学んでおくと良いでしょう。ただし、ファンドの構造はPEファンドにより異なるため、その独自性は入社後に積極的にキャッチアップしていくほかありません。

営業職からPEファンドに転職するうえでのポイント

営業職からPEファンドへの転職を成功させるうえで、次の3点に留意しましょう。
・転職したい背景と活かせる強みを明確にしておく
・キャッチアップが必要な領域は在籍中から対策を進める
・PEファンドと親和性の高い企業へ一度転職するのも一案

転職したい背景と活かせる強みを明確にしておく

営業職からのPEファンドへの転職は、決してありふれたケースではありません。そのため、採用においては転職理由を深く問われる可能性が高いでしょう。たとえば「営業としては間接的にしか顧客と関われないので、もっと直接的に企業経営に参加したかった」など、PEファンドへ転職する必要性を明確にしましょう。

PEファンドではよほどの若手でない限り、即戦力としての入社を求められます。金融以外の営業職は、ファンドビジネスに対する知見などの面では他の選考者より不利になります。その分、営業スキルが高く、PEファンドの事業拡大にプラスになると納得してもらわなければなりません。自分がPEファンドですぐに活躍できる理由、強みを明確にしておきましょう。

キャッチアップが必要な領域は在籍中から対策を進める

営業職からPEファンドへの転職では、先ほど紹介したようなハードルが存在します。こうしたギャップは転職活動を始める前から埋める努力をしてください。

本などで自己研鑽できる領域であれば積極的に勉強し、また常に最新情報をアップデートするように心がけましょう。営業の延長線上で事業立ち上げや事業投資に関わる機会があれば、PEファンドに近い仕事の進め方を掴むまたとないチャンスなので、積極的にチャレンジしてください。

PEファンドへチャレンジする方のほとんどは、金融やファイナンスのプロフェッショナルです。早いうちから少しでもギャップを埋める対策を進めましょう。

PEファンドと親和性の高い企業へ一度転職するのも一案

営業職からいきなりPEファンドに転職するのは、やはりハードルが高いといえます。そこで、一度親和性の高い企業へ転職してから、PEファンドを目指すのも一つの方法です。たとえば、コンサルファームなら、PEファンドと比べると営業経験を活かせるプロジェクトがあります。

プロジェクトをうまく選べばマネジメントやファイナンスに関する知見も得られるでしょう。あとは、金融関連、特に投資銀行や事業法人営業などを一度経験するのも有効です。金融や財務といった領域でスキルを高められます。

営業職からPEファンドに転職した事例

実際に営業職からPEファンドに転職した事例を紹介します。商社や金融などで投資や金融関連のスキルを培って、転職を有利に進めた事例が多く見られます。自分のキャリアを思い描くうえで、ぜひ参考にしてください。

総合商社の営業職からPEファンドの転職

一つ目の事例の方は、総合商社で自動車セクターの営業職からPEファンドに転職しました。営業と言っても総合商社であったため、顧客と連携する形で新規事業の立ち上げや事業投資に近い業務も複数こなしていました。

そのなかで、自分自身が事業経営に参加していきたいとの考えから、PEファンドを目指すことに。ただし、スキルセットや経験値に不安があったため、商社在籍中に米国へMBA留学し、マネジメントやファイナンスなどの専門性を培いました。商社時代の事業開発の経験と、MBAで培った専門知識を組み合わせたところ、PEファンドでの出資先開拓や出資先企業のバリューアップにおいても高い力を発揮することに成功しています。

証券会社営業職からPEファンドの転職

金融系の営業職は、ほかの営業職にとってネックとなりがちな金融や経済に関する知識を持ち合わせているため、PEファンド転職がしやすい業種といえます。こちらの方は、もともとメガバンクの法人営業で、顧客の投資に関する意思決定をしていました。

企業と相対するなかで「もっと経営に直接関わりたい」と考えるようになったとのこと。やがて、経験が蓄積されるなかで、投資銀行に近いファイナンスや財務アドバイスなどを行う機会も増えました。

その後、投資先企業を出資者の立場としてマネジメントできるPEファンドを目指すことに。20代のうちから、一企業の意思決定に関われるのが、PEファンドの大きな魅力でした。

前職の時点で、エクセルによる財務モデリング・株式ファイナンスの仕組みや法務や税務などの知識を習得して、PEファンドで適応できるスキルセットを獲得。選考においてPEファンドへの転職意思やスキルセットが高く評価されて、転職が実現した事例と言えます。

営業からのPEファンド転職を成功させるために対策を進めよう

今回の記事で紹介したとおり、PEファンドにも営業に該当する役割があります。対出資先にせよ機関投資家営業にせよ、営業経験を活かす余地は充分にあるでしょう。

一方で、金融やファイナンス、ファンドビジネスに関する知見については、積極的にキャッチアップしておく必要があります。すぐに転職するのが難しいと感じたら、一度コンサルや金融、投資銀行などを経てチャレンジするのも一案です。今回の記事を参考にして、営業からのPEファンド転職で優位に立てるよう、準備を進めてください。

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>PEファンドへのキャリアに関する記事

PEファンドのマッピング|プライベート・エクイティ日本市場の最新業界実態を解説
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/private-equity-fund-mapping

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今回の記事では、PEファンドと営業のキャリアについてお伝えしました。

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