PE(プライベートエクイティ)パートナーに聞く「投資先CxO」選考時に注視するポイント

創業社長の高齢化による企業の継承、成熟企業の事業再編ニーズなどを背景に、PE(プライベートエクイティ)の存在価値が高まっています。

それに伴い、PE本体だけでなく「投資先へのCxO候補や経営企画」といったポジションへの採用も活発になり、事業会社のCxOを目指す方にとってキャリアパスにおける選択肢の一つになりつつあります。今回は、日本最大手のPEや外資系のPEでご活躍されるパートナーからお聞きした、PEの投資先CxOの採用面接で注視しているポイントと注意点についてお伝えいたします。

【目次】

  1. 「確実に結果を出せる人」が求められ、「事業会社での経営実績」が問われる
  2. 「実績」はチームでの成果ではなく、個人の関与度合いや再現性を問われる
  3. 選考フローでは、実績に加えてPEとの目線合わせやソフトスキルの確認も
  4. 「実績が良くても、『頭の良さ』を面接で誇示する人は、投資先で上滑りする可能性が高い」

「確実に結果を出せる人」が求められ、「事業会社での経営実績」が問われる

一口にCxOと言っても求められるスキルは様々ですが、PEの投資先の場合には、

  • 経営の対象が成熟企業
  • CxO「候補」ではなく、いきなりCxOとしての活躍が求められる

という特徴があります。

そのため、経営目線での戦略策定やコンサルティング経験だけではなく、投資先と同規模程度の事業会社における経営レベルの経験(CxOや経営企画など)が求められるケースが多くなります。 VCはスタートアップやベンチャー企業への投資が多いため、30代前半の方が投資先CxO候補に就任することもありますが、PEの投資先では40代~50代クラスが就任するケースが多いでしょうか。コンサルファームで言えば、マネージャーからパートナークラスがボリュームゾーンにあたります。

【求人例】
・ファンドと協働しながら複数の企業の買収を推進し、マルチブランドのホールディング会社を立ち上げていくとともに、適性によって投資先のCEOまたはCFOに登用
・CFOとしてファイナンス業務の延長で経営企画寄りの業務も担う
・COOとして投資先企業の経営戦略企画・立案、場合によりプロジェクトマネジメントを並行して行う

採用ポジションやスキルはスライドが基本で、未経験の候補者をチャレンジさせることは稀のようです。

【採用事例】
・中堅/中小企業向けの官民ファンドにて投資責任者→PE投資先のCFO
・中堅食品メーカー企業の営業部長として前年比売上150%→PE投資先の中堅食品メーカー 営業本部長

そのため、実績を積むことを目的としてファームから事業会社のM&A買収先・スタートアップ・子会社や赤字部門などの環境に移り、プロジェクトの立ち上げや売上の向上・コストダウン・IPO対策など、CxOが本来果たすべき結果を先回りして経験する方もいらっしゃいます。

ただし、若くても人脈や実績によっては下記の例のようにCxOとして採用されるケースもあります。

【若手採用事例】
・ベンチャー企業で経営を経験した30代前半の戦略コンサルタントが、知人の誘いでPE投資先の老舗メーカーにおいてCOOを任された
・1社目の小売業で全社的なフロア管理を行い、転職したファームでもメーカー子会社のCOO的なポジションをハンズオンで担っていた30代のコンサルタントが、PE投資先のCOOとして採用された

「実績」はチームでの成果ではなく、個人の関与度合いや再現性を問われる

また、その「実績」についてですが、多くの方が「営業チームを支援、目標を120%達成し1カ月間で9000万円を売り上げました」などとチームや組織全体での成果を主張される傾向にあります。

しかし、PEのパートナー曰く「我々は実績を見る際、その成果の要因は候補者にあるのか?そうであればどのようにして結果を出したのか?という “成功できた原因や理由”を明確に知りたい」とのことでした。 「自らが責任を持った箇所」、「どのように結果にコミットしたか」、それにより「課題がどのように解決され、何が変化したのか」と前後の状況を踏まえ、個人が関与したことでどのようにその企業が伸びたのかというストーリーを客観的・正確に伝えることが重要となります。

選考フローでは、実績に加えてPEとの目線合わせやソフトスキルの確認も

PE側から見た投資先CxOの採用では、

書類選考(バックグラウンドとスキルセットのチェック) →アナリスト面接 →ディレクター面接(投資企業の責任者) →パートナー面接 →投資先のCEO面接

といったフローが一般的なようです。

選考では、

  • 投資先の企業で求められるハードスキルを備えているか
  • ご自身が関与され具体的に大きく伸ばした事業の実績、及びどのように伸ばしたのかに関する客観的な視点
  • 経営人材としてのスタンス、ソフトスキル(人柄、リーダーシップ、マネジメントスキル等々)
  • 転職動機、PEとのビジネス経験の有無

といった内容について聞かれることが多いようです。

事業会社が直接CxO候補を募集する際と大きく違う点として、

  • PEとの相性(同じ目線で投資先のバリューアップが出来る人材か)
  • PEとのビジネス経験の有無

など、PEとの目線合わせや、経験の有無について確認される点があります。

PEを通して投資先ポジションに採用された場合、自分を採用してくれたPEがそのまま株主となります。 不特定多数の株主へのコミュニケーションが不要な一方で、PEへの報告・相談といった綿密なコミュニケーションスキルが重要となります。 また、PEディレクター自らもその企業に出資していることも多いため、結果を出せるのかを証明する実績や、一緒に会社の価値を上げていけるのかといった信頼性などが細部まで吟味されます。

さらに、コミュニケーション力や人を巻き込むリーダーシップといった人間的な魅力も確認されます。 CxOは少なくとも数年間は常に企業の中で、多くの関係者を巻き込んで課題を解決することが求められるため、「人を巻き込む力」も重要視しているとお聞きしました。 「何をもってその力を判断できるのか」と伺ったところ、「一番重要なのは、『会社移ることになったが一緒に来るか?』と前社のメンバーに話した際に『行く』と言う人間が何人いるか」とのことでした。

「実績が良くても、『頭の良さ』を面接で誇示する人は、投資先で上滑りする可能性が高い」

上記のように、PEの採用では当事者としての実績を重んじる傾向にありますが、一方で「面接や選考上のディスカッションなどで “自分の頭の良さを見せつけ打ち負かそうとする方は避ける”」とのことでした。 理由としては、「経験上、ロジカルシンキングができることや頭の良さを周囲に示そうとするマインドセットだと投資先で上滑りする可能性が高いから」という答えでした。

PEの投資先には再生フェーズ、成長フェーズといった様々な段階に属する企業があり、社長やCxOとして入った際は、自分の実績や経験が活かせるフェーズもあれば、当然ながらそうでない状況もあり得ます。 その際に、自分の頭の良さを見せることで相手を従わせ納得させようとする方は、今までの実績と親和性が高いプロジェクトでは成功に導ける可能性が高いものの、反対に専門外や経験したところのないプロジェクトなどに関わる際には論理を振り回しがちで、反感を買うことにつながりやすいようです。

いきなりCxOとして入る際には、元々いるメンバーの警戒心や不信感も強い中で信頼を勝ち取る必要があります。 そのためには目に見える実績が有効であり、そういった点でも論理ばかりで結果が伴わないと批判の的になりやすく、信頼を得にくいそうです。

また、お聞きしたパートナー曰く、「特にコンサルティング会社を経験した方とお会いすると、論理で勝負しいかに自身が優秀であるかを誇示しようとするケースが多い」とのことでした。 特にPEにはコンサル出身者も多いため、時には面接官に頭脳で対抗しようとする「ロジカル勝負」が面接の場で始まってしまうこともあるそうです。

討議で偏差値や思考力の高さを見せることで「面接を乗り切ろうとする」のではなく、多少言葉は噛み合わなくても、「当事者として関わってきた問題解決の実績を理解してほしい」というマインドや、「その方法を次の投資先や職場で再現してみたい」というパッションを伝えた方が良い評価を受けやすいようです。

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今回の記事では、PE(プライベートエクイティ)パートナーに聞く「投資先CxO」選考時に注視するポイントについてお伝えしました。

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