コンサルタントの業務やキャリアに関心を持った時に、コンサルが本当に現場やクライアントの役に立つのか、懸念を抱く方もいるのではないでしょうか?
外部コンサルタントと業務変革などを行った経験のある方は「コンサルなんて現場を知らずに、机上の空論を言うだけ」など、周囲がコンサル批判をするのを耳にしたこともあると思います。
「なぜ”コンサルは現場を知らない”と批判されるのか?」
「そもそもなぜコンサルタントにとって、クライアントの現場を知ることが必要なのか?」
「現場を知らないために、どのような失敗につながるのか? 回避方法は?」
といった疑問にお答えしていきます。
自らも未経験から大手総合コンサルティングファームへ転職し、コンサルティングファームとポストコンサルの転職を支援するエージェントで勤務した筆者が、コンサルタントが現場を知ることの重要性や現場を知るための方法を解説します。
【目次】
- コンサルタントが現場を知らないと批判される背景
- コンサルタントが現場を知ることが必要な理由とその重要性
- コンサルが現場を知らないために課題解決につながらなかった失敗例
- コンサルがどのように現場を知り課題解決につなげるか具体的に解説
コンサルタントが現場を知らないと批判される背景
コンサルはその業界・業務の実務経験がない場合がある
コンサルタントになると、実務経験がなく馴染みのない業界や業務についてのプロジェクトにアサインされることも多々あります。
特に、有名大学を卒業して新卒で大手のコンサルティングファームに就職をしたばかりのコンサルタントは、担当する業界・業務に関しての知識や、問題別の解決策の型(フレームワーク)を身に着け、きれいな資料や計画を作ることはできても、現場で実践したことがないため、型にはめた解決策の提案しかできず、「根無し草」に見えるのも事実です。
かつ、現場の状況や温度感を理解しようとせず、「計画通りにやってください」と現場に負担を強いようとするコンサルタントだった場合、「現場も分からないくせに」と言われるのは当然です。
現場担当者にクライアントが抱える課題・危機感やコンサルが入る背景が共有されていない
「クライアント企業の経営者が何を目指しており、その実現のボトルネックになっているのは何か、何を変える必要があり、そのためにどのようなアクションを取るのか」といった問いを解決するため、クライアント企業の経営者とコンサルタントは、時間をかけて対話していきます。
しかし、その文脈や経営者が感じている危機感、視点の多くは、現場で実務を行っている担当者に伝えられず、コンサルタントが介入する目的・背景・意義について理解されないまま、プロジェクトが始まることが頻繁にあります。
かつ、クライアント企業の現場担当者にとっては、自分たちの部門が課題として認識されていたり、経営層とコンサルタントが自部門の状況を分析していたりすること自体、そもそも気分が良いものではない、という心情面も影響しているかと思います。
コンサルが作る長期的・大局的な戦略が机上の空論に見える
現場の最前線で戦いながら最適解を判断している方々からすると、コンサルタント、特に戦略コンサルティングファームのコンサルタントが作成する「長期戦略が現実離れしている・現状を反映していない」と感じるものです。結果的にコンサルタントが「どうせ机上で考えた空論だろう」と言われることは想像できます。
戦略コンサルタントが作成する戦略が机上の空論なのか、気になる方・懸念している方も多いと思いますので、解説します。
戦略は机上の論ではあるが、空論ではない場合がほとんど
確かに、戦略は机上の論です。
真の戦略とは、限定された情報から競争や収益化の法則を分析し、言語化・モデル化することです。
本質的なビジネスのメカニズムを、シミュレーション・試行錯誤しながら深く考え、今後のビジネスの方向性という大局的な判断を行います。
最初は仮説という名の空論から始まったものが、深堀され、論理化され、検証されて、初めて戦略と呼ばれるものになり、空論と呼べる段階のものではなくなります。
残念ながら、仮説を戦略に昇華する過程や話された内容が現場に伝わることは少なく、資料化された長期戦略を説明なく見ただけでは、それがどのような前提・過程・論理で作成されたかを理解することが難しく、机上の空論に映るというわけです。
かつ上記の職人技のような戦略策定のプロセスを習得していない「偽物の戦略コンサルタント」も存在するため、戦略と呼べない段階の仮説を提案されてしまった場合は、当然机上の空論と呼ばれるでしょう。
戦術と戦略は異なるものである
戦術と戦略を混同して批判されることもあるため、それらの定義を補足します。
戦術は、現場の最前線において、予測不可能な変化やトラブルなどに対応し、その場で最適解を判断するレベルのものです。
これらの戦術を戦略と捉えてしまうと、戦略コンサルタントが提案する戦略は現場感がなく、机上の空論に見えてしまいます。
戦略とは、前述した競争・収益化の法則を分析しモデル化したものであり、個別の状況判断ではなく、最後に勝利するために大局的な判断を下すものです。
そのため、洗練する過程では、綿密な机上でのシミュレーション・分析が必要となります。では、課題解決に不可欠な「綿密な机上でのシミュレーション・分析」を、現場に「空論」と呼ばれないように行い、信頼を獲得するために、コンサルタントはどうすべきなのでしょうか。
コンサルタントが現場を知ることが必要な理由とその重要性
現場を知っていると業務や課題を解像度高く理解でき、期待を上回る提案・デリバリーができる
コンサルタントにとって最も重要なことは、当然ですが、現場の様子を実際に知っていることです。コンサルタントが現場をよく理解していると、経営者が知らない現場の実態や本質的な課題を見いだし、現場の改善につながる提案ができます。
コンサルティングを行っている中で、現場の声を聞こう・理解しようとしない経営者が、現場にとって負担を強いる、場合によっては的はずれな方針・指示を打ち出し、現場のスタッフ・管理職たちは成果が出ないことを知りつつも、反論できない・本音を伝える手段がない、という状況に直面することが頻繁にあります。
このような現場を軽視する経営者からの依頼である場合、コンサルタントが現場の状況・課題をよく理解して代弁者となり、経営者に現場の本当の課題に向き合わせ、課題の認知や、戦略や方針の転換を促すことができます。
立場上経営者の耳に入りにくい現場の不満など耳が痛くなることも、外部のコンサルタントだからこそ議題として提示することができるのです。
かつ経営者が課題として受け止め、課題解決のメッセージを現場に落とすに至るまで、ディスカッションパートナーとして伴走できるため、一時的な意識変革にとどまらず、経営方針の軌道修正や組織変革につなげられる可能性もあります。
一方でこの際に、現場を知らない・知ろうとしないコンサルタントが対応してしまうと、経営者が話す経営課題のみを課題として捉え、耳あたりの良い提案を行い、本質的な企業変革につながらない提案・施策を実施してしまう可能性もあり得ます。
そして「現場を知らないコンサルは使えない」という評判を増長させることとなります。
現場を知っていると、提案内容を実行する際の難しさ・隠れたリスクを洗い出し、対処ができる
現場での実践を経験している、またはその経験をヒアリングして良く理解しているコンサルタントは、提案内容を実際に現場で実行する際に起こり得る困難・リスクを想像して洗い出し、事前に対処することができます。
例えば筆者の場合、事業会社で社長直下での新規事業開発を経験した後に、コンサルティングファームで新規事業開発支援のプロジェクトにアサインされたため、自分自身が体験したこと・そこでの学びを言語化し、示唆として改善提案につなげることができました。
例えば新規事業開発に携わるメンバーを、各事業部の事業責任者が指名。本業と兼任で実行することをクライアントから提案されましたが、自発性・新規事業に意志のないメンバーに掛け持ちで新規事業を任せても、本業に時間を取られ、事業が進まない・メンバーが途中で離脱する・評価の際に不満が吐露されるリスクを指摘。希望者が挙手制で参加し、選抜を経て期限を決めて専任にすることを提案し、実際に採択されました。
このように、クライアント・他コンサルタントメンバーがイメージできていない困難を、示唆として提案し、事前に対処することが可能になります。
現場を知らないと、現状に合わない施策を提案・実施し、クライアントの信頼・理解を得られない
現場を経験していない、またはよく理解していないコンサルタントにありがちな失敗例は、一般的な知識やフレームワーク、他のプロジェクトで提案した内容の受け売りであるテンプレートに基づいた提案を行ってしまうことです。
求められていないものを押し付ける、独りよがりな提案となってしまい、現場の人たちの信頼は得られないでしょう。
企業は現場で業務を行う管理職や社員たちで構成されているため、現場の信頼を得ることができなければ、本質的な改善は不可能と言えます。
コンサルが現場を知らないために課題解決につながらなかった失敗例
企業の実態に合わない無理な要求を現場に丸投げしてしまう失敗パターン
コンサルタントが批判される背景で書いた内容と重複しますが、実際に担当する業界での勤務・プロジェクトのデリバリーといった実践経験が浅いコンサルタントが、フレームワーク・他の企業で提案・実行した内容のテンプレートに沿った提案を行い、現場に無理な要求を押し付けてしまうというパターンが、最もよく起こる失敗と言えます。
きれいな資料や、一見素晴らしく見える提案も、実行する現場スタッフの状況を知る・配慮することが抜けていていれば機能しません。
また上流工程にばかり着目してしまい、現場への負担が大きい改善提案をしてしまった場合も同様です。
かつ「計画通りに実行してください」といったコミュニケーションをしてしまった場合は、現場への丸投げ・負担の押しつけと批判されますし、批判されて当然の結果になります。
企業規模に合わない計画を作成し失敗するパターン
大企業のクライアントに対するプロジェクトの経験・成功体験が豊富なコンサルタントにありがちなのは、会社の規模に合わない提案・計画を作成し、失敗するパターンです。
企業規模に応じて、予算や現実的に実施できる施策の内容、課題の質も違うため、コンサルタントにはクライアントの規模に応じた計画・提案をすることが求められます。
それにもかかわらず、大企業での成功体験をもとに、中小企業に対して同じ方法を適用しようとして失敗するコンサルタントが見られます。
また自分自身の実績・評価のために、短期的なプロジェクトの成功を目指すコンサルタントもいます。
本来、クライアント企業の中長期の成長・成功を目指すことを前提に、短期的な計画を策定すべきであり、過度に短期的な成果にこだわると、理想的な成果やクライアントからの信頼を得ることはできません。
経営課題の解決において、速やかに対応すべき短期的な課題と、時間と労力をかけて解決すべき中長期的かつ本質的な課題の両方が存在し、それぞれに対応策が必要になることが頻繁にあります。
クライアントの状況・事業規模に応じ、それぞれに対して明確な対応を提案しながら伴走支援する必要があります。
実行フェーズから現場が分からないコンサル・担当者に担当が代わり、抜け・漏れ・ズレが多発して失敗するパターン
ITコンサルタントにありがちな失敗パターンは、要件定義などの実行フェーズから現場が分かっていないコンサルタントや担当者に代わり、抜け・漏れ・ズレが起こり、失敗することです。
上流の構想段階では、きれいな資料でクライアントも満足するものが作れます。
しかし要件定義・デリバリーの段階から、担当コンサルタントが現場や構想について理解が不足している若手に代わり、委託企業や過程を理解していないクライアント企業担当者などの関係者が増え、プロジェクトの方向性が当初と異なる方向に進んだり、設計や実行の段階で抜け・漏れ・ズレが発生し、修正のための資料作りや作業に追われたり、追加費用がかかったりして、失敗するというものです。
要件定義やデリバリーの際に、提案に携わったコンサルタントが継続して関わることが望ましいですが、変更があった場合でも、現場の状況・提案の経緯を理解し、上記のような失敗を防ぐ必要があります。
コンサルがどのように現場を知り課題解決につなげるか具体的に解説
現場に出て、行動・感情を共有する
クライアントの現場を知るために、最初にするべきことは、クライアントの現場に行き、多くの時間を一緒に過ごし、行動や感情を共有することです。
できれば常駐して近くの席に座り、ミーティングを一緒に行い、同じタイムスケジュールで業務を行うことができると、課題を含む多くのことが見えてきます。
またクライアントが現場でどのようなことに直面し、どのようなことに苦労し、充実感を得ているのか、マネジメントに対してどのような期待・思いを持っているか、といったソフト面での発見も多いでしょう。
このようなリアルな現場での発見の多くは、クライアント企業の経営層からは見えにくいものであり、かつ客観的な視点を持つクライアントから見えた課題感や発見は、クライアントへのインサイトにつなげることができます。
手間を惜しまずに、現場の管理職・従業員へのヒアリングを行い、仮説立案をする
現場での何が起きているのかという現象面の課題と、それらが発生する背景や本質的な課題の両方を把握するためには、管理職を含む現場の従業員へのヒアリングを、心理的安全性を担保した上で、丁寧に行うことが有効です。
また多くの人にヒアリングが必要で、対面のヒアリングが難しい場合は、一部匿名性のアンケートを活用すると、課題を感じている人の規模感も把握することができます。
現場が抱えている課題について、社内で解決をしようとした場合、本質的な課題は「仕方のないこと」と捉えられたり、無意識に「発生して当たり前」と考えられ、スコープから外されてしまったり、部門間の連携や調整が必要なものについて避けられてしまったり、ということがよくあります。
そのような、中からでは発見・改善が難しい課題を客観的に見抜き、現場の状況や声を反映し、本質的な課題の解決や、クライアント企業のあるべき姿の実現に結びつく解決策を提案することが、コンサルタントの価値になるはずです。
健全な懐疑心・クリティカルシンキングを持ち、現場課題を分析する
コンサルは現場に入り込んだり、多くの従業員にヒアリングをしたりという現場を理解する過程において、健全な懐疑心・クリティカルシンキングを持って課題を分析することが必要です。
注意すべきは、「これは仕方のないことですが」「どこでもそうだと思いますけど」と言ったクライアントの発した言葉を真に受けず、「これは本当に仕方のないことなのか? これこそが課題ではないのか?」と、外部の人間であることを活かし、健全に疑うことが必要です。
現場のメンバーの諦め・疲弊感の中に、現場における本質的な課題が隠れていることも多くあります。
それらの課題が発生している背景や原因を分解・分析した上で仮説を構築すると、現場の解像度が上がり、かつコンサルタントが課題解決に入る意義をクライアントも感じることができるでしょう。
=================
>コンサルに求められるスキルに関する記事
コンサルタントになるには【転職前に押さえておきたい「スキル・選考」のポイントを解説】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/howtoconsul_skillpoint
「18時退社」でコンサルファームへ転職。限られた時間内でもパフォーマンスする女性のキャリア事例
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/womenscareerasconsultants
=================
今回の記事では、コンサルタントが現場を知る重要性についてお伝えしました。
キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。