SaaS業界の市場拡大に伴い、カスタマーサクセス(CS)職のニーズが増加しています。
一方、日本においてカスタマーサクセス職が認知されているか、というと、まさにこれからになります。注目されつつあるカスタマーサクセス職ですが、将来的に、本当に有望なのでしょうか。
本記事では、いくつかの観点から、カスタマーサクセス職が必要とされる背景を確認したうえで、カスタマーサクセス職のキャリアの可能性について解説します。
【目次】
カスタマーサクセス職のニーズ増加の背景
何となく耳にする機会も多くなってきたカスタマーサクセス職ですが、特にSaaS企業では、なぜ必要だと言われているのでしょうか?いくつかの観点で、整理していきます。
事業モデル
下記、図1で説明していきます。
一時的に大きな売上が上がるSierやパッケージ型の課金モデルと大きく異なり、SaaS企業のサブスクリプションモデルは契約以降、利用し続けてもらうことで毎月決まった売上が発生します。
比較的、安定的継続的に収益確保できるモデルである一方、投資回収には一定の期間を要します。
そのようなモデルのため、営業コスト回収期間中(損益分岐点に達する前に)にサービスを利用停止されてしまうと、営業コストは回収できず、赤字となってしまいます。
この収益構造からしても、サービスを利用し続けてもらう働きかけを行うカスタマーサクセス職は非常に重要です。
また、成長軌道にのせるには契約社数の増加が重要です。
営業は、新たな顧客を開拓することに専念した方が効率的であるため、既存取引顧客に継続使用してもらう働きかけは、カスタマーサクセス職のミッションとなります(注:企業によって差はあります)。
先行している欧米のケース
次に、先行している欧米の企業で、カスタマーサクセス部門、あるいは職種が増えているかどうかをみていきます。
カスタマーサクセスプラットフォームを提供しているTotango社は6年にわたってカスタマーサクセス担当者を対象に調査を行っています。そのデータによると、2019年には回答企業の70%が専用のカスタマーサクセス組織をもっているとのことです。2016年から比較すると、約16%の増加となっています。
また、Linkedinの2020年の新興求人レポートによると、Customer Success Specialistは前年に比べ34%の求人数の伸長を見せており、ニーズの高さが伺えます。
また、既にカスタマーサクセス部門を設置し、その運営において長けている外資系SaaS企業(Salesforceやマルケト、SlackやZoom)が日本市場でオピニオンリーダー的存在となっており、存在感も強いことから、日本市場においてもカスタマーサクセス部門、カスタマーサクセス職が増加することが、予想されるのではないでしょうか。
顧客体験価値向上の観点から
SaaSに限らず、顧客体験価値の向上が重要視されています。「Coustmer Experience(CX)」とは、商品やサービス自体の価格、あるいは物質的/機能的な価値ではなく、それを使用する体験から得られる満足感や効果といった、心理的または感覚的な付加価値を指します。また、体験は使用前/使用後にも及びます。カスタマージャーニーという顧客の旅路の過程で、どのような体験から付加価値を得られるようにするのか、マーケティング上の重要なトピックとして語られているのです。
さらに重要なことは、B to Bビジネスにおいても、Customer Experienceが競争上の重要なissueになりつつあることです。
このようなCXというテーマが重視されているという観点からも、カスタマーサクセスという職は、これから大きく需要が伸びていくことが期待されます。
カスタマーサクセス職としてのキャリアの築き方
カスタマーサクセス職として成功し、市場価値を高めるにはどうすればいいでしょうか。
SaaS企業において、効率化のための分業化・定型化が盛んに行われています。効率を高める観点で否定すべき取り組みではありませんが、働く個人からすると、業務が限定的になったり、得られる経験の幅がせまくなりがちです。
結論としては、分業化・定型化の下で働くのではなく、分業化・定型化を主導できる立場を経験することが重要だと考えます。
分業化・定型化を主導する
分業化や定型化は、常にそれが適切であり、効果・効率的かどうかは検証する必要があります。
分業化については、どのような体制で、どのように分業するのかは、カスタマーサクセスの領域では、顧客が成功体験を得られているか、その結果として継続使用、クロスセル/アップセルにつながっているかを常に検証する必要があります。
例えば、細切れで分業し各工程のカスタマーサクセス業務の品質が上がった、という事実と、顧客の満足度が上がっているかどうかの事実を、しっかりつき合わせたうえで、その分業体制が適切だったかどうかを判断する、といって具合です。
定型化については、どのように顧客体験をデザインするか、によって変わる可能性もあります。
業務をただ単にしっかり遂行する、という定型化も必要ですが、体験してもらいたい価値に沿って業務を設計する、という観点が必要です。このような業務を経験できれば、SaaSに限らず、キャリアの可能性は広がっていくのではないでしょうか。
顧客体験価値向上につながるスキルを身に着ける
SaaS企業の主要なマーケットであるB to B企業において、顧客企業の事業やビジネスにインパクトのある貢献を行うことが、めざすべき提供価値といえるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスとは顧客の成功のために自社のシステムやツールのポテンシャルを最大限に発揮し、かつ適切な顧客事業の課題を見極め、ゴール設定し、伴走しながらゴールへと近づけることが役割になります。
顧客の経営者はもちろん、ツールを使用する現場とも良好に関係を築きながら、環境面/使用スキル面のボトルネックを見極め、適切に対策を講じていきます。コンサルタントのようなスキルといっていいでしょう。このようなスキルを獲得・向上させていくことが、キャリアの可能性を広げるのには重要です。
まとめ
これまで見てきたように、カスタマーサクセス職は、顧客体験価値を向上させる職として、将来ますますニーズが増えることは間違いないと思われます。
また、SaaS企業自体が最新のセールス理論やマーケティング理論に支えられている点も、働く個人としては魅力的だと思われます。
一方、その仕事の本質と、コンサルティング的業務内容から、難易度は低くありません。
また、業績好調な企業、拡大している企業ほど、効率的な運営に傾斜する傾向もあり、意識を高くもっておかなければ、あまりスキルが身につかない可能性もあります。
そして、まだまだビジネスモデルや企業規模が変化しやすいSaaS業界においては、普遍的で応用可能なスキル(コンサルティング能力、ファシリテーション能力、言語化定型化能力)を身に着けておくことが、今後のキャリアにとって重要だともいえます。
<カスタマーサクセスや企画職のキャリアに関する記事>
「今スタートアップに転職するなら、カスタマーサクセスが面白い」アペルザ取締役 田中大介様インタビュー
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/Aperza
【転職事例から見る】営業企画から「事業企画」へのキャリアパス
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/salesplanningcareer
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今回の記事では、今後のSaaS企業のCS職の需要(ニーズ)についてご紹介しました。
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