営業と事業企画職の決定的な違いとは?【転職後に躓きやすいポイントとその乗り越え方】

事業企画職へのキャリアチェンジを希望する営業の方にとって、企画職で必要なスキル・能力をどうやって獲得するかは悩ましい問題です。営業担当者の場合はもちろん、営業マネージャー経験者であっても営業一筋の場合は企画業務の考え方との違いに気がつかずに、企画職への転職後に苦労をすることが少なくありません。

この記事では営業と企画の業務の違いを理解していただくために、両者の仕事が相互にどのようにつながっているのかを考えます。

合わせて、営業から企画へキャリアチェンジしたときに経験しやすいトラブルを挙げ、どのように対処して企画職への転身を成功させるかについても説明していきます。

【目次】

  1. 営業と事業企画の違い「何が重要で何をもって成功とするのかという価値観の基準が異なる」
  2. 「事業企画職の視点」と「営業の視点」の違い
  3. 営業から企画職へ異動・キャリアチェンジした際に躓きやすいポイント
  4. “営業経験をもつ企画職”の強み
  5. 転職後や異動後に”営業出身の事業企画職”としてのキャリアパスを成功させるコツ
  6. まとめ:営業視点のある事業企画の意義

営業と事業企画の違い「何が重要で何をもって成功とするのかという価値観の基準が異なる」

企業の機能のなかでも営業業務は最も重要で、そして特殊な業務と言えます。企業の実績とは、端的には営業実績に現され、売上、利益、マーケットシェアなどはすべて営業機能のアウトプットに対する測定値です。
企業の対外的な評価はすべてこれらの指標に対して与えられるもので、成功している企業とはこれらの実績が優れている企業を指します。

一方で営業は働きかける相手が社外の部署であると言う点で特殊な職務です。
営業以外の業務はほとんどが社内の他部門との作業であって、開発、生産、財務、人事、企画など、すべての業務は社内で完結しています。特に間接部門と呼ばれる本社機能やアドミニの部分はコストセンターと呼ばれるように、基本的には全ての作業が企業にとっては経費になる仕事です。

営業は業務上、お客様の視点と社内の視点が接触するため、両方の立場を併せ持った視点から業務の内容を見ています

一方、営業経験のない企画担当者にとっては、事業とは社内のそれぞれの部署で分担された、連携する作業手順として受け止められています営業という機能も基本的にこの社内業務の一環としてとらえられているのです。

この二つの視点の違いが、営業から企画へとキャリアチェンジした方にとって大きなギャップとなります。何が重要で何をもって成功とするのかという価値観の基準が異なるのです。この差は企画の内容を具体化していく時点で特に大きく現れます。立ち返ってみればそもそも「事業企画」とは何のために策定するのか、ということに繋がる大きな違いとなります。

「事業企画職の視点」と「営業の視点」の違い

プロフィットセンターである営業職は常に実績を上げ続けていなければならないため、仕事の進めた方や価値観が他の部署と大きく異なっています。このため経理や生産管理の担当者が社内で営業に異動した場合など、営業視点の業務がこれまでと全く異なる業務に感じられることがあります。逆に営業経験者が間接部門に移ると承認や報告の手順が厳格すぎて息苦しく感じることも。

例えば、営業職の業務効果測定の項目を考えましょう。売上額または受注額などの財務実績を除くと、営業実務に関するKPIは顧客訪問件数や見積提出件数などで構成されます。優先順位を加えてターゲットを絞った、新規顧客コンタクト件数やキーパーソンへのコンタクト件数なども良く用いられる指標です。営業計画はこれらのKPIを達成し、実績につなげることを考慮して活動計画が作られます。

一方、事業計画で用いられる事業の目標達成のためのKPIは、社内の業務に関する項目が多くなります。作業リードタイムの短縮、レポーティングの納期遵守、在庫削減や改善提案件数などが代表的なものです。
これに営業のKPIを加えて全事業のKPIとする場合、一つの問題が生じます。業務に対するKPIは測定値がそのまま活動結果となるのに対して、営業のKPI測定項目は営業実績の達成と異なっているということです。

営業から企画職へ異動・キャリアチェンジした際に躓きやすいポイント

営業から企画職へ異動することになった・もしくは念願のキャリアチェンジを果たした際、躓きやすいポイントがいくつかあります。これは営業と企画の違い・認識のずれによって生じるもののため、双方の視点を押さえておくことが大切です。

まず、ここまで解説してきた内容を踏まえると当然ですが、営業職が事業企画を行う場合、営業実績を達成するまでの流れと社内の業務プロセスとの関係がつかめずに押さえるべきポイントがずれてしまうことがあります。
短期的に実績を生まない開発案件や固定費と利益の関係などを近視眼的にコントロールしようとして事業価値を損なうような企画を出しやすいのです。

営業の人員を増員するために製造部門や管理部門の人員を削減したり、社外の販売代理店へのインセンティブを上げるために事業に按分されている本社費用を価値のないものと見なしたり。営業は短期的に結果を出そうと意気込むあまり、前のめりになって事業の全体感を見失ってしまいやすいと言えます。

一方で、事業企画職の視点から見ても、営業活動は最も測定しにくいと感じるかもしれない業務です。
営業経験のない企画職が、達成できなかった事業計画の内容についての問題点を分析すると、「営業がもっと売上をあげるべき」という結論を出すことがあります。全ての活動項目が達成されても、財務上の実績が未達成となったことが説明できないため、責任を外部に投げ出してしまうのです。

事業企画と営業実績の関係に関するこの食い違いは、「営業」という機能のとらえ方から生じています。
営業職にとっては自身がお客様とやり取りをして受注に達する過程が「営業」という業務であり、お客様への訪問、打ち合わせ、仕様の決定、見積の提出、値引きへの対応などのステップが「売上」を作る手順なのです。

逆に、事業経営の視点から見ると、「営業」はある期間にわたって製品・サービスが提供され続けている状態を指します。事業は継続することが前提であり、一件だけの大型受注よりも継続して購入される安定した案件が核になります。
このため、固定費の管理は経営に関わる重要な問題となります。事業における「営業」とは「売上を上げること」よりも「売れるようなしくみ」を作ることなのです。

“営業経験をもつ企画職”の強み

このような視点に立って事業企画を考えるとき、自身が営業経験を有することは非常な強みになります。

自社の製品がどうして買われているのか、実際にお客様の反応を経験的に共有することができるのです。
マーケティングの基礎としてよく言われることですが、お客様がなぜ自社製品を購入しているのかという本当の理由は、社内で思われている理由とはまったく違うことが往々にしてあります。

営業経験のない方の立てる企画は社内の意見や思いを中心に考えた、身内の理屈の集大成となりやすいのに対し、営業経験のある企画者は社外の意見を取り入れることを重要視します。お客様は何を求めているのかということを考えて自社は何をするべきかということを考えることができるかどうかが、事業企画を有意義なものにし、その実現性を高めてくれるのです。

アメリカの例ですが、事業実績に責任を持つ立場のマネージャーを営業の現場に配置してお客様を訪問させることがあります。営業担当レベルの仕事を上位マネジメントにしてもらうわけです。すると面白いことが起こります。普通の営業担当者は見積の内容や納期などオーダーを頂くための情報を聞こうとするのに対し、マネージャー達は自社の製品以外にどこから購入しているのか、なぜ自社の製品を使わないのか、という質問に集中するのです。

このWhy Us / Why Not Us の視点は事業を常に競合や産業全体の中に位置づけているから出てくる質問です。事業とは経営から内部プロセスを通って顧客への販売までの一連の流れであり、このプロセス全体が「営業」なのです。
この理解に立って事業企画を行うには、社外の「現実」を社内の言葉に変換して戦略に反映させる必要があります。この実践的なコミュニケーションスキルは営業実務を通して体得されるものです。

転職後や異動後に”営業出身の事業企画職”としてのキャリアパスを成功させるコツ

事業企画一筋の方の策定する企画は目標達成に必要な業務を管理可能な項目に分解し、その項目を測定することによって目標の達成を裏付けようとします。しかし実際には事業は社内業務で完結するものではなく外部に開かれたプロセスであって、この開かれた部分は社内の論理では動いていません。

この外部との価値のやり取りをするのが営業職の役割です。従って、事業計画の目標を営業実績の達成に置くのであれば、事業企画の考える方向としては営業活動が営業実績に繋がるように内部の業務を設計するべき、ということになります。ここに営業経験のある企画担当者が提供できる本質的な価値があります。

行うべきことは営業の現場で入手されている「自社に対する社外からの価値観」に関する情報を、社内の業務プロセスに変換できる形にして伝えることです。営業は実践的な職務で、その職能は体得されるスキルベースで属人的なところがあります。一方で、社内業務はむしろ蓄積された知識と判断基準がベースになっています。ほとんどの部署で知識は標準化され、プロセスはマニュアル化されています。

そのためこれまで経験がない分野であっても、かなり効率的に学ぶことができます。税務や会計の知識であれば公認会計士の勉強を、生産管理や原価計算であれば管理会計を学ぶことでその業務の中身を理解することが出来ます。資格を取る必要はないのであれば、理解するのはさほど難しいことではありません。

売上を上げるということが企業の業務全体の中でどうやって達成されているのかを理解し、同時に自社の営業が業界や社会の中でどんな位置に立っているのかを把握すると、事業のあり方を立体的にとらえることができます。特にこと後者の視点は、営業職が最も入手しやすいバイタルな情報です。

新市場開発の営業企画で事業開発オルガナイザーのような役割を担ったり、事業内で機能に横串を刺すようなプロダクトマネジャー業務の経験があると、総合的な視点から事業のあり方を考察することができるようになります。社内にそういったポジションがあるならば、一度引受けてみるとよいでしょう。

まとめ:営業視点のある事業企画の意義

事業企画はほとんどの場合、事業の成長・拡大をその目標としています。
売上増加、利益増加、マーケットシェアの拡大をどうやって実現するのか、という課題に対するソリューションのセットです。
しかし、社内の業務をいかに上手に運営してもお客様が購入してくださらない限り、事業目標は達成されることはありません。

営業の視点から提出される言葉は社内の論理を度外視したものになりやすく、そのために時に反発されたり軽んじられたりすることがあります。
この障壁を解いてやることができると、社内業務が企業の外まで繋がった事業企画を書くことが出来るのです。そのためには営業経験がある企画担当者が事業企画策定に携わることが最も望ましいのです。

営業職から企画職へのキャリアチェンジをする場合、企業の内部作業に関わる部署のものの考え方を最初に理解する必要が有ります。関連する多くのことを学ばなければならないでしょう。

しかし事業企画において最も大切なのは、お客様が何を考えているのかということです。全ての企画の目的はそのお客様の考えを実現することによって達成されます。営業経験のある企画担当者は、その最も大切な問いかけへの鍵を持っているのです。

<事業企画職への転職に関するコラム>

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今回の記事では、営業と事業企画職の決定的な違い、転職後に躓きやすいポイントとその乗り越え方ついてご紹介しました。

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