近年、SDGsをはじめ、サステナビリティに関連するコンセプトへの注目が高まっています。この国際的なトレンドの中、企業も社会の一員として、サステナビリティに関し一定の責任を果たすことが求められるようになりました。ですが、企業のサステナビリティへの対応は、一朝一夕で成し得るものではなく、多くの企業が頭を悩ませています。
そのような現実を反映し、現在では多くのコンサルティングファームが、企業のサステナビリティへの対応について、ソリューションを提供するようになりました。しかし、SDGsやサステナビリティを謳ったコンサルティングサービスの存在は知られていても、各社のサービスの違いはあまり知られていません。
今回は、SDGs対応などサステナビリティに関するサービスを提供している10社を厳選し、それぞれの特色をご紹介いたします。
※2021年9月時点での情報です。
【目次】
PwC Japanグループ:厳格な第三者保証業務
PwC Japanグループは、サステナビリティ戦略立案支援、CSV/SDGsビジネス構築支援、リスクマネジメント支援、経営管理支援、情報開示支援と、包括的なサステナブル経営コンサルティングサービスを提供しています。これ以外に、金融機関が金融面のレバレッジを利用して環境や社会課題の解決を図る、「サステナブル金融」の実行支援や、気候変動・生物多様性・人権など、テーマに特化した支援も行っています。
同グループの特色は、グローバルなネットワークと監査法人としての業務経験を生かした、厳格な第三者保証業務です。近年、企業のサステナビリティ報告書などが国際的に求められるレベルに達しているかどうかについて、第三者のチェックを経ることが重要視されています。第三者保証業務自体は珍しいものではありませんが、同社の国際保証業務基準ISAE3000に準拠した手続きと、同社の最新の世界動向に関する知見は、同社の第三者保証業務をより強固なものとします。このサービスについては、保証業務実施前にレビューとフィードバックを提供する「プレアシュアランス」や、海外拠点の監査といったオプションが設けられています。
参考:https://www.pwc.com/jp/ja/services/assurance/sustainability.html
参考:https://www.pwc.com/jp/ja/services/assurance/sustainability/sustainability-csr-report-assurance.html
KPMGあずさサスティナビリティ株式会社:RBAへの対応支援
KPMGあずさサスティナビリティ株式会社は、サステナビリティに関して、クライアント企業の現状分析から、計画立案、調査・モニタリング、報告書作成まで、幅広く支援を行うコンサルティングファームです。同社も、国際保証業務基準ISAE3000に準拠して第三者保証業務を行っており、サステナビリティ報告書、温室効果ガス排出量、鉱物サプライチェーンにおけるデューディリジェンス、以上3分野について実施しています。
また同社に特徴的な点として、Responsible Business Alliance (RBA) 加盟企業への対応支援があります。RBAは電子部品のサプライチェーンのサステナビリティ向上を目指す団体です。その加盟企業らが非加盟の取引先に、調査票への回答や監査受け入れを求め、取引先が対応に追われるというケースがあるのです。同社はそうした手続きへの対応を支援するだけでなく、RBAに関する手続きを利用して自社の環境改善を図りたいという企業への支援も行っています。
参考:https://home.kpmg/jp/ja/home/services/advisory/risk-consulting/sustainability-services.html
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社:リスクとチャンスを可視化
サステナビリティ課題を、企業にとってのリスクとチャンスであると捉える、デロイトトーマツコンサルティング合同会社。独自の「サステナビリティ・センシング・フレームワーク」により、サステナビリティ課題に関して、クライアント企業にとってのリスクとチャンスを可視化する支援を行っています。このフレームワークは、縦軸を国際的なステークホルダーの関心度、横軸をクライアント企業にとっての優先度として、当該企業が取り組むべき課題を分類するものです。
同社は、上記フレームワークで可視化したリスクとチャンスを踏まえ、サステナビリティを中心に据えた企業戦略の策定・実行を支援します。さらにステークホルダー対話の実行支援を通じて、クライアント企業のレピュテーション向上を図ります。そしてそこで得られた知見を再びフレームワークによる分析に還元する、というサイクルで、総合的なコンサルティングサービスを提供しています。
さらに同社は、サステナビリティ課題をチャンスとも捉え、社会課題を解決しながら経済価値を創出していく「CSVイノベーション戦略」の策定支援も手掛けています。また同社も、国際保証業務基準ISAE3000に準拠して第三者保証業務を提供しており、CSR・環境報告書、温室効果ガス排出量・削減量、国連クリーン開発メカニズム有効化の3分野について実施しています。
参考:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/solutions/cbs/sustainability-sensing.html
参考:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/solutions/srr/jp-sdgs-strategy.html
参考:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/audit/solutions/ec/csrreport.html
参考:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/solutions/srr/esg-ir.html
EY Japan:持続的な調達支援
EY Japanは、サステナビリティ戦略の立案やステークホルダー対話など、幅広くサステナビリティコンサルティングサービスを提供しています。
同社も、広く非財務情報開示に関する第三者保証業務を行っています。しかしその範囲は幅広く、統合報告書、サステナビリティ報告書、温室効果ガス排出量、炭素クレジットやカーボンオフセット、グリーンボンドやソーシャル・インパクトボンド、そして鉱物サプライチェーンに関するデューディリジェンスなどが対象となっています。
また、同社は持続可能なサプライチェーンの形成に注力しており、人権や気候変動への対応、労働安全衛生リスク管理などの領域を含め、より包括的なサステナブルサプライチェーンを追及しています。同社は「国連ビジネスと人権指導原則」が求める人権デューディリジェンスや、英国や豪州の現代奴隷法への対応支援を提供しており、ニューズレター等での情報発信も盛んに行っています。
参考:https://www.ey.com/ja_jp/sustainable-development-goals
参考:https://www.ey.com/ja_jp/assurance/sustainability-supply-chain-advisory
アクセンチュア株式会社:サーキュラー・エコノミーの実践支援
グローバルに事業を展開するアクセンチュア株式会社も、サステナビリティサービスを実施しています。同社の多様な経験と業界知識を生かし、サステナビリティ経営に必要な戦略や仕組み・技術の開発と導入の支援を通じて、企業のサステナビリティ目標の達成をサポートします。
同社がサービスのターゲットとするのは、CO2排出量実質ゼロ、デジタルテクノロジーの活用、責任ある循環型バリューチェーンの確立、企業のトップマネジメントによる意思決定へのサステナビリティ指標の活用、リーダーを含む人材育成・組織作りによる継続的なサステナビリティの向上、サステナブルなブランド・デザイン・顧客体験の提供、以上6つの領域です。
具体的な支援例としては、企業の資産を循環的に利用し続ける経済モデル、サーキュラー・エコノミーについて、その実現に向けた戦略策定および実践の支援などを行っています。その他同社は、世界経済フォーラム、国連グローバルコンパクト、持続可能な開発のための世界経済人会議など、サステナブル分野で名だたる国際組織と、パートナーとして協働しています。
参考:https://www.accenture.com/jp-ja/services/sustainability-index
参考:https://www.accenture.com/jp-ja/services/strategy/circular-economy
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社:幅広い業種に対応
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社は、その総合コンサルティングファームとしての総合力を生かし、幅広い業種に対しサステナビリティコンサルティング支援を行っています。実際に支援を行ってきた対象セクターは、食品製造、精密機器製造、資源・エネルギー、サービス業などバラエティに富んでいます。
ESG/サステナビリティ戦略の策定と社内体制の構築から、SDGsの経営への導入、人権マネジメント体制の構築、サプライチェーンESGマネジメントの構築支援、ESGに関するコミュニケーションや情報開示まで、総合的に支援を実施します。SDGsやESGに限らず、「ビジネスと人権に関する指導原則」にのっとった人権デューディリジェンスなど、様々な指標を用い、総合的なサステナビリティ支援を目指しています。
また、社内研修やワークショップなど、ESGの浸透活動支援も行っています。
参考:https://www.murc.jp/solution/private/sustainability/esg_strategy/
アビームコンサルティング株式会社:在中ビジネスへの支援
日系企業とビジネス上の結びつきが強い、中国。近年、中国でもESG領域への社会的関心は高まっており、その法制度化が急速に進んでいます。ただ、社会経済・文化的背景が違えば、社会が企業に対して期待する活動にも違いが生じるものです。つまり在中日系企業は、中国社会におけるESG方針と日本本社のESG方針、さらには急速に変化する国際的ESGトレンドに、同時に対応していく必要があるのです。
アビームコンサルティング株式会社は、一般的なサステナブル経営支援サービスを実施する傍ら、こうした中国でのビジネスに特化したESGコンサルティングサービスを提供しています。様々な国際的なガイドラインに、中国の法律や文化的背景を組み合わせた、独自の「ABeam中国標準チェックツール」などを利用し、クライアント企業のリスク診断レポートを作成。これに基づいて、必要に応じてESGアクションプランの策定や、マテリアリティの特定支援を実施します。
参考:https://www.abeam.com/jp/ja/expertise/SL244
株式会社クレアン:「統合経営」コンサルティング
「統合経営」コンサルティングを掲げる、株式会社クレアン。同社によれば統合経営とは、「共通目的の下に組織全体を統合し、マルチステークホルダーを巻き込みながら、『企業の価値創造と社会の価値創造を同時に推進する長期視点の経営』」を意味します。
統合経営の実現を目指す同社の戦略は、SDGsを経営に組み入れ統合し、CSR・CSV・ESG・統合報告といった隣接領域のサービスを総合的に提供することです。SDGsの統合に関しては、SDGsの社内での理解促進・社内体制構築支援から、優先課題の決定、KPIなどの目標の設定、経営への統合、報告書の作成やステークホルダー対話まで、幅広く支援を行います。また隣接領域に関しては、ESG指標やISO26000などへの対応支援を提供しています。
参考:https://www.cre-en.jp/service/consulting/
株式会社イースクエア:CSR経営からSDGsビジネスまで
株式会社イースクエアは、サステナビリティ・ESGに特化したコンサルティングファームです。同社のESGコンサルティングの特色は、FTSE ESG Ratings、MSCI ESG Ratings、The ESG Risk Ratingといった、国際的に高い評価を得ているESG評価機関のデータを活用して、クライアント企業のESG評価改善支援を行っていることです。
また同社は、企業のサステナビリティ経営の実現に対しコンサルティングを行うと同時に、民間企業が発展途上国で行う、BoP/SDGsビジネスの計画策定および展開に対する支援も実施しているという点でも特殊です。さらに同社は、社会貢献活動に対する戦略策定支援も提供しています。社会貢献活動にガイドラインを策定して一貫性を持たせ、社会に大きな成果をもたらす社会貢献活動を促進します。
参考:https://www.e-squareinc.com/index.html
参考:https://www.e-squareinc.com/management/esg.html
株式会社かいはつマネジメント・コンサルティング:途上国でのSDGsビジネス支援
株式会社かいはつマネジメント・コンサルティングは、JICAなどと連携したODA支援、民間企業や団体の海外進出支援を行う、開発コンサルティングファームです。数十か国で案件をてがける同社は、民間企業が主に発展途上国で行う、BoP/SDGsビジネスの計画策定および展開を支援しています。
同社は、途上国進出に向けた公的資金の獲得にはじまり、現地の投資環境・制度・市場の調査、現地政府機関との協議・交渉、現地住民との対話・啓蒙活動まで、幅広いコンサルティングができることが特徴です。コンサルティングサービス以外にも、事業運営に対するアドバイザリーサービスや、人材育成研修・セミナーをサービスとして提供しています。
参考:http://www.kmcinc.co.jp/services/business_support/206/
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