「証券アナリストは意味ない」は本当か?転職先別のメリット・活かし方

「証券アナリストの資格を取得しても意味ないのか?」「『役に立たない』という声を聞いたことがある」といった疑問を抱く方がいらっしゃいますが、実際に証券アナリスト資格を取得した様々な方の生の声をもとに、証券アナリスト資格の活かし方についてご紹介します。

証券アナリスト試験は、日本証券アナリスト協会が行っている民間の試験ですが、金融機関では株式調査部をはじめとして当該試験をパスしている方も多く、当然ながら金融関係にキャリアを進める場合には一定程度有利に働く可能性があります。そこで、今回は特にコンサルティングファーム、PEファンド、投資銀行に絞って各々のフィールドでの活かし方についてお伝えします。

【目次】

  1. 証券アナリスト資格はコンサルティングファームのFASバリュエーションチームなどへの転職で役立つ
  2. 証券アナリスト資格およびCFAを最も活かせるフィールドは投資銀行の株式調査部(エクイティリサーチ:equity research)という声が多く、取得のメリットがある
  3. PEファンドでは証券アナリスト資格ホルダーよりも投資銀行やファームにて一定の経験を経た方が多い

証券アナリスト資格はコンサルティングファームのFASバリュエーションチームなどへの転職で役立つ

証券アナリストはコンサルティングファームへの転職において役立つ可能性があります。一言でコンサルティングファームと言っても、総合系コンサルティングファーム、戦略コンサルティングファーム、財務アドバイザリーファーム(Financial Advisory Services:FAS)など種類は様々ですが、具体的に証券アナリストの資格を持っていることで採用に一定程度有利になる、もしくは役立つのはFASでしょうか。

証券アナリスト試験では、財務会計、資本市場、証券規制等に関する幅広い出題がなされますが、コンサルティングファームで、このような財務や金融に関するアドバイザリー業務を行っているところはFASがメインです。近しい分野では証券会社の投資銀行部門が行っているM&Aアドバイザリー業務で、証券アナリスト資格を有しているものが何人か在籍しているということが多いです。

証券アナリスト試験では財務会計に関する基礎的な知識や、バリュエーションの基礎的な知識を習得できますのでそれらの業務に適性があるという点では、FASのバリュエーションチームやアドバイザリー業務を行うチームでも役立つでしょう。

もっとも、証券アナリスト試験で得られる知識は、基礎的なものからやや応用的なものが多く、会計士試験までには至らなくともそれなりに実務でも使用できる知識が習得できます。
そのためプロジェクトにアサインされ、例えば財務系の分析やバリュエーションであれば過去のエクセルモデル等を見ながら、未経験者であれば先輩や上司のアドバイスを得ながら仕事を進めることができるという声が多いです。

戦略コンサルティングファームでも、マッキンゼー、ボストンコンサルティング、ベイン&カンパニーといったMBBと呼ばれるようなコンサルティングファームでは、コーポレートファイナンス関連のプロジェクトを有しているところもあるため、証券アナリスト資格がある、もしくは過去に証券アナリストとして企業分析に関与した経験があるという方であれば、これらの案件に積極的にアサインされる可能性が高まるようです。

証券アナリスト資格およびCFAを最も活かせるフィールドは投資銀行の株式調査部(エクイティリサーチ:equity research)という声が多く、取得のメリットがある

証券アナリストの資格が最も活かせるのは投資銀行という意見が多く、取得するメリットがある印象です。その中でもM&Aアドバイザリーを行うような投資銀行部門(IBD: Investment Banking Division)ではなく、株式調査部(エクイティリサーチ:equity research)が最適でしょうか。

M&Aアドバイザリー業務でも証券アナリスト経験がある人は一定数いますので、中途で入社する際には過去のカバーしていたクライアントやセクター、財務モデル、DCFモデルに関する経験を述べることが重要になります。同じ金融機関出身ということもあり、財務分析や財務モデリング等、違和感なく業務に溶け込むことができるでしょう。
ただし、証券アナリストとして金融機関(投資銀行)で働く場合で、かつ株式調査部に所属する場合にはインサイダーへの抵触や、投資銀行部門とのコミュニケーションには細心の注意が必要です。

なお、投資銀行部門のM&Aアドバイザリーや、ブティック型のM&Aアドバイザリーを行う投資銀行で働く場合には株式調査業務ではなくクライアントサービスとしてアドバイザリー業務を行うので、アナリストとしての経験を活かすよりは、証券アナリストの資格勉強を通じて得た知識を活かすことになります。日本の証券アナリストのみならず、米国証券アナリスト=CFAを取得している人も多く、特に日本では、CFAホルダーが少ないことから重宝される傾向にあります。

実際のM&Aアドバイザリー業務では、対象会社の財務分析を行うことは日常的にありますので、証券アナリスト資格で得た知識を活かすチャンスは多いでしょう。また、バリュエーションは類似上場会社比較法、DCFモデルなどを中心に幅広に行いますので、テキストベースの知識も役立ちます。証券アナリストとして株式調査部で実務経験を積んできた方であれば、アナリスト時代のレポート作成の際に、簡易財務モデルを作成している経験がありますので、そのようなスキルを活かすこともできます。実際に外資系投資銀行の株式調査部から、他の投資銀行のM&Aアドバイザリーチームに転職する例は一定程度あります。

PEファンドでは証券アナリスト資格ホルダーよりも投資銀行やファームにて一定の経験を経た方が多い

一方で、PEファンドでは、証券アナリスト資格を直接活かして働くということはやや想定しづらいです。というのもPEファンドでは資格で業務を行っているわけではなく、投資銀行業務のようなM&Aアドバイザリーの経験と戦略コンサルティングのような経験が有機的に一体となって行われるためです。

ただし、稀に証券アナリスト経験がある方がPEファンドで採用されることがあります。この方の場合、証券アナリスト資格を保有しているだけでなく、株式調査部において特定のセクターのリサーチを行っていた、経営陣やCFOとのコネクションがある、業界への深い理解と知見があるということが証明できれば採用可能性や、PEでも特定のセクターに特化しているようなところであればフィット感もあり、活躍できる可能性も高まります。

証券アナリストの経験のみでは、採用試験でM&Aに関する質問や財務モデリングに関する質問に回答することが難しいということもありますので、一定程度の準備は必須です。
そのため、一般的には証券アナリストを取得後に、FASやIBD(投資銀行部門)でのM&Aアドバイザリー、資金調達に関するアドバイザリー業務を経験し、PEファンドに転職される方が殆どです。
ただし証券会社において企業分析業務や、対象会社のマネジメントとのコミュニケーションをとった経験が多い方であればPEファンドへの転職可能性もあり、実際に入社して、投資対象の会社とのコミュニケーション、投資提案で役立てることはできるでしょう。
実際に創設者が証券会社の株式調査部出身といった新興のPEファンドもあるため、証券会社内でも十分に投資経験を積むことは可能であると考えられます。

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>証券アナリスト資格に関する記事

【実話】事業会社からコンサルティングファームに転職して辛かったこと&驚いたこととは?
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/asset-management-qualification

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このように、証券アナリスト資格を活かすには資格試験に合格した事実のみならず関連する実務経験と実績がないと中々難しいことが分かります。FASは比較的採用において業界未経験者に寛容ですが、投資銀行やPEファンドといったプロフェッショナルファームは未経験での採用は非常にハードルが高く、証券アナリスト資格を持っているだけではチームに貢献することは難しいことは理解しておくといいでしょう。

ただし、投資銀行でも株式調査部という部署であれば、証券アナリスト業務を行うことになりますので、資格を活かしてカバーするセクターを持って、シニアアナリストとともに働くことは可能です。

ただ現在では証券アナリストのセクターアナリストになるのはそれなりに難易度が高く、最近はMIFIDなどの規制もありますので、2000年台前半のように花形でかつ儲かるという状況でもないようです。

投資銀行のM&AアドバイザリーやPEに行きたいという気持ちがあるならば、証券アナリストに加えてCFAを取得、会計士等を取得して業務に活かせるような努力をすることも大事です。

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