SIerにおけるPM以降の役職とキャリアパス

システム開発現場においては、プログラマ(PG)、システムエンジニア(SE)、プロジェクトリーダ(PL)と様々な役割があります。どの役割が上でどの役割が下ということはありませんが、PM(プロジェクトマネージャー)はプロジェクトの責任者を指し、最も重い役割を担っているとも言えます。

PMを目指してキャリアアップを考えている人は多いかもしれませんが、一方で「PM以降のキャリアパスがイメージしづらい」という声をお聞きすることも多いです。今回は、SlerにてPM以降の役職やキャリアパスにはどのようなものがあるのかご紹介します。

【目次】

  1. SlerにおけるPMのその後① : システム開発部門の部長というキャリア
  2. SlerにおけるPMのその後②:CIO、または事業部長というキャリア
  3. SlerにおけるPMのその後③:PMO部門長というキャリア
  4. SlerにおけるPMのその後④:研究部門のセンター長というキャリア

SlerにおけるPMのその後① : システム開発部門の部長というキャリア

<役職の説明>

ご存じの通り、PMとは役割を指すため、会社内でPMという役職がある訳ではありません。ただ、ほとんどのSIer・システム開発会社では、PM=課長レベルの人間がなることが多いでしょうか。必然的に課長の次のキャリアは、部長ということになります。

Slerにもよりますが、例えば金融・製造・物流など、クライアントの業種によって部門が分かれていることがあったり、単に担当地域で部門が分かれていることがあります。Slerにおける部長は、それら何らかの系統に分かれている部門の長として、配下の開発プロジェクト全てに責任を持つ立場です。

<どのような方がなるのか>

SIerにおいてPMがひとつのプロジェクトだけを担当することはまれで、複数のクライアントの案件を同時進行させるケースが多いです。当然、同時に複数のプロジェクトを進行させ、かつすべてのプロジェクトを成功させることが求められます。プロジェクトの成否は良いプロジェクトメンバを集められるかにもかかっていますから、各部署と調整・交渉したりする高い「コミュニケーション能力」が求められます

<PMから目指すとすればどのようなキャリアを歩むべきか>

PMのその後のキャリアとしてシステム開発部門の部長を選ぶ場合、自らの担当するプロジェクトを成功に導いた経験が求められます。経験を積めば積むほど、PMとして複数のプロジェクトマネジメントを同時に受け持つことを求められるのが一般的です。複数のプロジェクトマネジメントを同時進行させることを、マルチプロジェクト・ジャグリングと呼びますが、プロジェクトの規模・人数・性質によってマネジメント方法を変えるなど、難易度の高いスキルが必要になります。

また、担当以外の開発プロジェクトの状況を把握して助言したり、部門や会社全体のプロジェクトマネジメント手法に対して提案するなど、会社におけるプロジェクトマネージメントの全体最適を考える姿勢も重要です。

部長となった時にいずれ会社から求められる要求を見据えて、まずは複数プロジェクトを成功に導き、部門全体の利益を考える視点でキャリアを築いておくべきでしょうか。

<役職に就くメリット>

正規の役職に就くことで、PMの立場よりも大きな権限が与えられ、年収も1,000万を超えるケースが大半です。

何より、PMとして結果を出すには、全てのチームの動きを熟知している必要がありますので、そこを突き詰めていくと、PMの次のキャリアは所属している開発部門の長というのは自然な流れかもしれません。

SlerにおけるPMのその後②:CIO、または事業部長というキャリア

<役職の説明>

CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)は、通常、企業における情報システム部門のトップを指します。
元来CIOは、事業会社が自社システムの運営やデジタル戦略策定の執行役員に位置付ける役職であり、クライアントのシステム構築を行うSIerには一見無縁に見えます。

一方で、SIerにおけるCIOは、自社システムの運営に関する立場ではなく、SI事業の推進に関わる立場として設置されている場合がほとんどです。

なお、各開発部門を束ねる本部長の立場(部長の上の立場)として、事業部長という役職を設置している会社もあります。事業部長の立場がCIOと同義の場合もありますし、事業部長のさらに上位の役職としてCIOが設置されている場合もあり、会社によって役職の呼び名や担当範囲は様々であることは認識しておいた方が良いでしょう。

事業部長であれ、CIOであれ、IT戦略における執行役員という立場であることには変わりありません。

<どのような方がなるのか>

執行役員という立場からもわかる通り、求められるのは経営者の視点です。経営の視点から、ITを利用して事業を実現する思考と経験を持つ人が抜擢されやすいです。複数部門の責任者や協力会社との交渉や調整を行う場面が多々出てくる立場ですので、高い交渉能力を持つ人がなるポジションでもあります。

いずれもIT投資などの執行なども進める立場ですので、財務や人事、営業など、IT技術以外の幅広い業務の経験もできる限り積んでおくべきでしょうか。

<PMから目指すとすればどのようなキャリアを歩むべきか>

PM(役職的には課長レベル)から一段飛ばしでCIOや事業部長になることはほとんどありませんので、まず自部門の部長を目指し、そこからの昇格というキャリアが最も一般的です。

<役職に就くメリット>

当然ですが、会社の上層部として大きな権限が与えられ、部長以上に年収も大幅にアップします。何より、経営に参画するレベルの役職になりますので、Slerにおけるキャリアのひとつのゴールとも言えるのではないでしょうか。

また、豊富なCIO経験がある場合、プロCIOとして会社外部から召喚されるケースもよく見られるようになってきました。経験を積んでおくことで、自社以外でのキャリアへの道も開けます。

参考:“CIO(最高情報責任者)”の役割・導入企業・CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い・実際のキャリアパスについて

SlerにおけるPMのその後③:PMO部門長というキャリア

<役職の説明>

大規模プロジェクトになると、PMが全てをマネジメントするには対応範囲が広すぎるため、PMO(Project Management Office)が設置されることがあります。PMOのメインの仕事は、プロジェクトに参加し、運営事務局としてPMのプロジェクトマネジメント業務の支援を行うことです。

しかし、単にプロジェクトに参加し、PMをサポートすることだけでなく、

・組織におけるプロジェクトマネジメント方式の標準化
・組織内の各プロジェクト間における要員の調整
・プロジェクトマネジメントに関する研修や人材開発

など、会社内のプロジェクトマネジメントに関する横断的な業務を行っています。

プロジェクトや会社の規模によって、PMOが組織化されていない場合もありますが、大規模プロジェクトを請け負うSIerにおいてはPMOが導入されていることは珍しくありません。PMO部門長は、そのPMOの長ということになります。

<どのような方がなるのか>

プロジェクトにおけるPMOの役割は、PMをサポートすることですので、当然プロジェクトマネジメントの経験や知識が豊富であることは必須条件です。

さらに、PMOの業務では、組織を横断したプロジェクトの調整や、各プロジェクトのPMとのコミュニケーションや交渉も必要になってきますので、社内での広い人脈や交渉力、コミュニケーション能力が必要になります。

<PMから目指すとすればどのようなキャリアを歩むべきか>

自らの関わるプロジェクトを成功させることはもちろんですが、PMO、そしてその部門長となると様々なプロジェクトに対して助言できるだけの経験を持っていなければなりません。

開発プロジェクトにおけるPMOの役割からすると、PMの補佐的な面が大きいため、PMOの経験だけでは部門長になるのは難しいというのが実態です。

ですので、まずはPMとして、大小多くのプロジェクトマネジメント経験を積んでいくべきでしょう。

そして、社内のプロジェクトの標準化や後進のPMの育成など、自らが手がけるプロジェクトのことだけではなく、組織全体のプロジェクトマネジメントに関して積極的にPMOに進言する姿勢が必要です。

PMからすると、プロジェクトにPMOが参加することで、自分のプロジェクトマネジメント業務を監視されているような気分になってしまうケースも少なくないようですが、普段からPMOとは良好な関係を築いておくべきでしょう。

また、一般社団法人日本PMO協会が主催するPMOスペシャリスト認定資格というものもあります。PMOスキルに特化した資格試験になりますので、取得を目指すのもPMOへのキャリアを目指すことには役立つはずです。

<役職に就くメリット>

今までのPMのキャリアが存分に活かせる役職です。組織全体のプロジェクトマネジメントのレベルを左右する部門の長ですので、自らのプロジェクトだけではなく他のプロジェクトのことであっても普段からアンテナを張り、情報収集を怠らない姿勢を持っている人材が抜擢されやすいです。

PM人材は不足傾向が続いていますので、後進を育てるという点でも、やりがいのある役職でしょうか。

SlerにおけるPMのその後④:研究部門のセンター長というキャリア

<役職の説明>

会社の規模によって状況は異なりますが、SIerでは自社に研究部門を持っているケースがあります。研究部門というと製品を販売している企業のものと思われがちですが、コンサルティングセンターなどのように、最新のIT技術動向などを調査・研究し、SI業務を行っているプロジェクトに助言・調査協力を行ったり、クライアントへの提案を行う際に営業部隊に協力するような部門も存在します。

また、Slerによっては、クライアントのシステム構築を請け負うだけではなく、自社のソフトウェア製品を持っている会社もあります。ただ製品を売るだけではなく、自社製品を取り入れたシステム構築を請け負うことはよく見られます。自社製品を持つSIerの場合、製品開発に関する研究部門があるケースもあります。

システム開発において、数多くの経験を積んだPMがそれら研究部門の部門長に就任するというケースは珍しくありません。また、組織内に研究部門があるケースもあれば、研究部門が子会社化されているケースもありますので、出向などという形でセンター長に就任するケースもあるでしょう。

また、最近ではCIOに加えて、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)を置く企業も増えてきています。CTOは技術戦略の策定や執行、研究開発部門の統括を担当範囲としており、CIOよりさらに技術寄りの執行役員を指すこともあれば、こういった研究開発部門の長を兼ねている場合もあります。

現在出回っている技術というよりも、数年後のIT技術・業界の状況を見据えたビジネス戦略を立てる立場と言えるでしょう。

<どのような方がなるのか>

PMはプロジェクトマネジメントが主な業務ですので、本来プロジェクトが開始されないことには業務も始まりません。しかし、実態としては、クライアントへ次期システムの提案をするなど、プロジェクトが開始される前の段階からPMがユーザ要望の吸い上げを行っているケースは珍しくありません。

業務改善を含めたシステム提案を行うことはコンサルティングに近いものがあります。そのため、コンサルティングに近いことを行なっていたPMがコンサルティングセンターに異動するケース、ユーザ要望を吸い上げることに長けたPMが製品開発センターに異動するケースが多いでしょうか。

PMとしてキャリアを積んでいればいるほど、研究員として一からキャリアを重ねるよりも、部門長は近い立場であるといえます。

<PMから目指すとすればどのようなキャリアを歩むべきか>

一般的には、研究部門の長を目指す場合、既存システムの改修のようなプロジェクトで経験を積むよりも、新規システムの開発プロジェクトのマネジメント経験、特に最近で言えばDX(デジタルトランスフォーメーション)でのプロジェクトの経験が有効です。

また、社外との交流、特に研究会など社外コミュニティへの参加や、学会への論文の寄稿や講演会での発表なども、研究部門へ異動するのに大きなポイントになります。

<役職に就くメリット>

よく「PMとしてキャリアを重ねると、管理業務ばかりになってしまい、最新のIT技術から離れてしまっているような気持ちになる」とお聞きすることが多いです。ある程度の年齢になると、個別のプロジェクトへの参画というよりも、もっと技術そのものを研究したいという思いが出てくる場合も多いでしょうか。

会社の研究開発部門の長になるということは、自社における将来のIT技術の方向性を決めるリーダになるということですので、そういったご志向の方にとってはやりがいのある役職だと言えそうです。

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<PMのキャリアに関する記事>

30代後半 SIer PMからCTO、CIO、CDOへのキャリアパス【必要なスキル~年収~転職事例まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pmcxo

SE・PMのキャリア形成に人気の資格とその実情
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/qualification_sepm

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一口にPM以降の役職といっても、会社の規模や社風、資本の違い(国内企業・外資系企業など)などでも、キャリアパスはまったく異なってきます。

なお、会社の規模によっては、PMとして自らシステム開発をマネジメントしながら、経営層としても情報システム戦略を策定する立場にキャリアチェンジをすることも、決して珍しいことではなくなってきています。

スタートアップ企業や中小SIerなどに転職することで、CIOやCTOなど、大企業では非常に狭き門である役職に就かれるケースも増えてきています。

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