戦略コンサルティングファームの「案件」を類型別に解説【背景から実際の割合まで】

今回の記事では、戦略コンサルティングファームが実際に受注するプロジェクトの案件について類型別にご紹介します。

【目次】

  1. 案件の種類は大きくは三つに分類
  2. ピュアの戦略立案
  3. デュー・デリジェンス
  4. オペレーション改善/戦略実行支援

案件の種類は大きくは三つに分類

戦略コンサルティングファームが受注する案件は、基本的に大枠で三つの類型があります。一つ目が、ピュアの戦略立案案件で、時代の潮流に即した全社戦略再構築/赤字に陥っている事業の再生等が該当します。二つ目が、デュー・デリジェンス(通称DD)と呼ばれる案件で、買収予定の企業の評価やシナジーの検証等が該当します。三つ目が、オペレーション改善/戦略実行支援の案件で、生産性向上やコスト削減等による利益率向上に向けた取り組みや上述で描いた戦略の実行等が該当します。
戦略コンサルティングファームが受注する案件の類型は、より細かい粒度で細分化する事も可能ですし、切り口を変えて別の類型での整理も可能ではあります。本稿では、案件を大きく三つに区分しつつ、その区分の中で派生的に具体的な案件例を紹介していきます。

ピュアの戦略立案

戦略コンサルティングファームが受注する案件の類型の一つとして、ピュアの戦略立案案件が挙げられます。ピュアの戦略立案の案件は、時代の潮流に即した全社戦略再構築/赤字に陥っている事業の再生等が該当し、ピュアの戦略コンサルが最も得意とする領域と言えます。

従来は、圧倒的に赤字に陥っている事業の再生や会社全体or特定の事業の利益率を高めるための戦略立案支援の案件が非常に多く、古典的な戦略立案とも称される案件が非常に多かったようです。

一方、昨今の案件としては、時代の潮流に即した全社戦略の再構築の案件が非常に多い印象があります。背景として、インターネットの普及/急拡大から端を発し、AI、IoT、ブロックチェーンといったある種のバズワードが乱立する中で、デジタルトランスフォーメーションという漠としつつも比較的王道の方向性が、上場企業の経営トップ/取締役レベルに浸透した事が、大きなターニングポイントになっているでしょうか。

時代の潮流に即した全社戦略の再構築の案件は、例えば、昨今の外部環境の変化を大きな変革の時期と捉えた場合、渦中に取り残されないための案件が非常に多い印象を受けます。
これは、ある特定の技術革新、例えば通信規格の5Gから6Gへの移行等にピン止めをして、その移行の中で既存事業をどの様に梃入れする必要があるのか等の戦略オプションの立案や、様々な技術トレンドの中でクライアント先に影響し得るものを全て俯瞰したうえで、全社戦略を練り直す等、案件によってスコープの幅は多岐にわたります。

また既存事業の延長線ではスケールの維持/拡大が難しい場合も往々にしてあり、その場合は技術トレンドに即した新規事業の立ち上げ支援や、新サービスの価値検証といった案件が該当し、昨今増加しています。特に、製造業で言うと、要素技術や特許は大量に保有しているものの、その技術や特許を活かしてデジタル化の流れに呼応する方法論を支援して欲しいというニーズも多く、IT系コンサルティングファームが昨今事業規模/人員規模を急拡大している背景ともなっています。

案件別の割合は、ファームによって後述のDD案件を取る取らないの姿勢の違いや、単価が減少傾向のオペレーション改善/戦略実行支援は極力手掛けないというファームもあるので一概には言えませんが、肌感覚として戦略コンサルティングファームが抱える案件の5~6割がピュアの戦略立案案件と捉えています。

デュー・デリジェンス

戦略コンサルティングファームが受注する案件の類型の一つとして、デュー・デリジェンス(通称DD)が挙げられます。デュー・デリジェンスの案件は、クライアント先が買収を検討している/予定している企業の評価や買収シナジーの検証等が該当します。

デュー・デリジェンス自体には法律面/金融面/事業面等の多様な観点があり、戦略コンサルティングファームが担うのは、主に事業面の観点です。具体的には、買収検討/買収予定企業の企業価値を、手掛ける事業の市場の将来性や、買収した場合のクライアントの既存事業/既存リソースとのシナジー等を踏まえて評価/算出し、クライアントが買収判断する際のサポート/助言を行います。

デュー・デリジェンスは非常にタフなプロジェクトで、戦略コンサルタント泣かせの仕事と言えます。事業面を様々な観点で評価/検証しなければならないため作業負荷が高い一方で、往々にして買収契約を早期に締結させたいファンドから昼夜を問わない圧力がかかるため、戦略コンサルタントの中でデュー・デリジェンスは携わりたくない、という方が非常に多い印象を受けます。ファームによっては、デュー・デリジェンス専門の部隊がいるほど、生産性や効率性が非常に求められる案件と言えるかもしれません。

他方で、企業価値の足元の評価や将来の伸びしろ等をクイックに評価するスキルは、売り手と言えるファンドや投資銀行等でも転用できるため、ベンチャーキャピタル、投資銀行、ファンド等をポスト戦略コンサルティングとして見据えている方にとっては最適な修行の環境です。
加えて、デュー・デリジェンスは比較的事業横断のプロジェクト、言い換えれば、特定業界に腰を据えるのではなく様々な業界の取引案件に携わる傾向が強いため、業界知見や企業のビジネスモデル等をクイックに捉える力が養われます。そのため、ピュアの戦略コンサルティングファームでは、戦略立案案件とデュー・デリジェンス案件を交互に行き来する、もしくは戦略立案案件を複数回行ったら間にデュー・デリジェンス案件を挟ませる等のローテーションを回し、戦略コンサルタントの成長を更に促してくれる/育ててくれるファームもあります。

オペレーション改善/戦略実行支援

戦略コンサルティングファームが受注する案件の類型の一つとして、オペレーション改善/戦略実行支援が挙げられます。オペレーション改善/戦略実行支援の案件は、生産性向上やコスト削減等による利益率向上に向けた取り組みや、戦略の実行等が該当します。

オペレーション改善案件は、厳密には二パターンあり、一つは結果的にオペレーション改善に辿り着いたパターンです。上述のピュアな戦略立案案件の中で、利益率を高めるための打ち手を洗い出した上で、クライアント先が打ち手の一つを選択(意思決定)し、特定のオペレーションにフォーカスした改善を行うために、戦略コンサルティングファームへ継続支援を依頼されるパターン。
もう一つが、他の戦略ファームで戦略オプションは既に洗い出されており、行う事が決まっているオペレーションの改善を支援するパターンです。
戦略コンサルティングファームの場合は、前者の戦略立案の流れから継続受注する事が多い印象があります。逆に、後者は総合系/IT系コンサルティングファームが、戦略コンサルティングファームよりも低単価で対応する/IT等のシステム導入を含んだオペレーション改善パッケージとして受注を受ける事が多い印象です。

また、戦略実行支援の案件は、昨今の戦略コンサルティングファームで増えてきています。背景には、従来は高い報酬を得てピュアな戦略立案やデュー・デリジェンスの領域を担っていたものの、クライアント側が徐々にコンサルティングの使い方を学んできて、戦略を絵に描いた餅にしないために実行支援まで求めるニーズがここ10~15年で増えてきている事があります。また、戦略実行支援は、クライアント先に常駐して日々現場レベルの方と接しながら/ディスカッションしながら進めていくため、事業会社の経験がないコンサルタントにとっては非常に良い就業体験ができる機会となっている印象です。
類型の切り方/捉え方にもよりますが、新規事業の立ち上げの並走支援も戦略実行支援に含める見方ももちろん可能で、新規事業のサービス仮説をターゲット顧客に対して検証して、サービス価値の評価/検証を行う事等も戦略コンサルティングファームで案件として増えてきている印象を受けます。

昨今は、オペレーション改善の一つのツールとしてIT技術の活用(デジタル化)を推進するクライアントが増えており、IT系コンサルティングファームが凄まじい勢いで規模を拡大しているのに追随する形で、マッキンゼーやBCGは社内にデジタル部隊を配備したり、ローランドベルガーは先端技術に強いベンチャーとの連携を支える価値共創ネットワークを構築したりと、戦略コンサルティングファームの進化も足元で活発になっています。今後戦略コンサルティングファームがIT系コンサルティングファームの案件の中で戦略寄りの(高単価の)案件を奪還する可能性があるのではないでしょうか。

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>戦略コンサルティングファームへのキャリアに関する記事

戦略コンサルタントの【魅力】と【つらさ】<生の声>
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/strategic_consul_realvoice

「戦略ファームの役員になれる」ITコンサル、「システム屋で終わる」ITコンサル
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/itconsultantst

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今回の記事では、戦略コンサルティングファームが実際に受注するプロジェクトの案件について類型別に紹介しました。
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